上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第44話:哀絶 VS 遠野志貴

44-1:行かないで

 

「それより、敵はどうしたんだ?」

 

志貴のその問いに、秋葉と琥珀は目を合わせる。

すると、琥珀が口を開いた。

 

「あの客人の方が秋葉様を守ってくれたのではないでしょうか?ねえ、秋葉様?」

 

「そ・・・そうね。本当に助かったわ」

 

2人とも、目が泳いでいる。

志貴はそんな彼女らの様子に違和感を覚えたのか、眉を(ひそ)める。

しかしすぐに、ハッとしたような表情を浮かた。

 

「アルクェイド・・・!アルクェイドは!?」

 

志貴がそう問うと、秋葉は屋敷の外を指さす。

 

「・・・でも、生きています。兄さんは安心して、休んでいてください。私が必ず、助け出します」

 

真剣な眼差しで言い切った。

これは当主としての責務なのだと、言葉にしなくても瞳がそう訴えていた。

 

秋葉は、身体を起こそうとする。

しかし、志貴の手がそれを中断させた。

 

「俺が・・・カタを付けてくる」

 

「・・・兄さん、お願いですから、行かないでください・・・」

 

秋葉が泣きつく。

すると、志貴は優しく微笑み返す。

 

「心配するな秋葉。必ず帰ってくる。それと翡翠、琥珀。秋葉をよろしく頼む」

 

「「はい、志貴様」」

 

そんな使用人2人の返答を聞き、志貴は頷いた後、屋敷の外へ飛び出す。

取り残された秋葉の手が、力なく虚空を掴んでいた。

 

 

44-2:哀絶 VS 遠野志貴

 

志貴は走る。

真祖の姫の元へと。

 

本来であれば、彼の助けなどアルクェイドに対しては不要だ。

 

しかし、遠野邸を守るために、2度も敵の攻撃を真正面から受けた。

そのため、蓄積されたダメージにより本来の力を出し切れていない。

 

現に、いまだに激しい激突音が鳴り響いている。

これは、彼女が万全であれば有り得ない事だった。

 

あと少し。

あと少しで、志貴はアルクェイドの元へ到着する。

 

──────筈だった。

 

「・・・哀しいことだ」

 

志貴の進路に立ちふさがるように、槍を持った青年──────哀絶が現れた。

 

「貴様らが寄ってたかっていじめるせいで、分身体も儂1人・・・」

 

「──────そこを、どけ」

 

「そんなことを言うな哀しくなる。儂だって好きでここに立っているわけではない。力を使いすぎたから、仕方が無く足止めの役割をしているだけだ」

 

「お前の事情なんて、知ったことか」

 

悠長に会話をしている暇など無い、とばかりに会話を早々に切り上げ、志貴の身体が弾かれたように前へ。

 

眼鏡はすでに外されている。

すなわち、"直死の魔眼"が、哀絶の死の線を捉えているということ。

線をなぞれば、その傷は絶対に再生出来ない。

 

ましてや、"点"を付けばいかなる不死であろうと、殺すことが出来る。

 

だが、哀絶はそれを知っている。

妓夫太郎とネロとの戦いから情報を得ていたのだ。

 

そのため、決して近づかれぬよう、哀絶は後ろにとんだ。

それも、一気に5メートル。

 

「その目は、近づかなければ脅威ではない。さらに、間合いはこちらが有利・・・哀しいことだ。つまり貴様は絶対に儂に勝てないということ」

 

その言葉の後、重心を低くしたまま一歩踏み出す哀絶。

 

──────風が一瞬、凪いだ。

 

そして次の瞬間には、見事なまでの槍さばきを見せた。

 

それは、凄まじいスピードで放たれる、連続の突き技。

 

志貴は受けるので精いっぱいで、距離を詰めて死の線を斬ることなど到底不可能だった。

 

「くそっ、アルクェイドを助けなきゃ・・・いけないのに」

 

志貴の表情に憤りが宿る。

それは、目の前の敵に対してか。

それとも、不甲斐ない自分に対してか。

 

そんな中。

 

「──────手を貸そう。遠野志貴」

 

ナイフと槍が交差する金属音に交じって、代行者の声が響き渡った。

 

哀絶 VS 遠野志貴 完

 

 

 

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