45-1:素山狛治
突然現れた代行者に、哀絶の表情が一変する。
「・・・会いたくは無かったな・・・」
そう言って槍を引き、2~3歩後ろに下がった。
志貴も同様、想定外の乱入者に動揺を隠せない。
「・・・あなたは?」
「──────素山狛治」
代行者は自らの名を名乗る。
そして。
「急いでるんだろ?ここは俺に任せてくれ」
狛治がそう言うと、志貴は頷き、走り出した。
しかし、先には行かせまいと哀絶の槍が遮ろうとする。
だが、次の瞬間には狛治の蹴りによって上に弾かれたため、志貴の身体を突き刺すことは無かった。
そして代行者は視線を移し、目の前の"異端"を睨みつけた。
「久しぶりだな。──────半天狗」
「・・・猗窩座」
「今は猗窩座じゃない。鬼じゃないんでな」
その言葉の後、狛治の手足に、装甲が出現した。
この武装の名は──────灰錠。
多くの代行者が使う、鎧型の概念武装。
シエルが愛用する
さらに狛治の場合、素流をベースとした戦闘スタイルを得意とするため、灰錠の形状と相性が良かった。
武装した狛治は重心を下げながら、右足をダン、と地面に叩きつける。
そして、右手を前に構えた。
「──────素流」
一連の動作は、彼が何度も繰り返してきたものであり、見事なまでの流麗さを誇った。
続けて、上半身をひねり、一度前に出した右手を後ろに引いた。
ここまでで、貯めの動作が完了する。
そしてついに──────力の解放があった。
「空式」
狛治の右手が勢いよく突き出される。
すると同時に、パン、と何かが弾ける音がした。
かと思えば、哀絶の身体が見えない何かに弾かれ、吹き飛んでいった。
勢いそのまま樹木に衝突する。
だが、大したダメージにはなっていないようで、表情には全くの変化が無い。
「・・・懐かしいものだ・・・」
「そうか?だったらもっと見せてやろうか?」
「いいや、その必要は無い。哀しいが今ので分かった。お前は弱くなっている。鬼であった時よりも」
「だったらなんだと言うのだ。お前を殺すには十分だ」
「そんなこと言うな──────哀しくなる」
哀絶は槍を構える。
その瞬間、周囲に冷たい空気が漂う。
「激涙──────刺突」
槍の切っ先から、5つの斬撃が飛ぶ。
それを迎え撃つのは。
「素流──────乱式」
狛治の拳から放たれる、無数の打撃。
連続した衝突音が、森に鳴り響いた。
狛治 VS 哀絶②に続く