46-1:概念武装
狛治の打撃と哀絶の斬撃が正面からぶつかる。
両者は"元"鬼と言うことは共通している。
しかし前者は人間として、後者は死徒として生きることを選んだ。
そして、そんな二人の最初の激突は──────。
ピシリ、と。
狛治の灰錠に亀裂が走る。
それを見て、哀絶は物悲しそうに口を開く。
「やはりお前は弱くなった・・・」
「しつこいぞ哀絶。それとも、俺に何度も言わせたいのか?"お前を殺すには十分だ"、と」
「鬼のときよりも、口だけは達者になったようだ・・・」
「そうか。なら見せてやろう──────本当に口だけかを」
その言葉の後、狛治の身体が前方へ弾かれた。
そしてそのまま、哀絶に拳を振るう──────と思いきや、
「素流・砕式──────万葉閃柳」
真下に向けて、放たれた一撃。
狛治の拳を中心にして地面が放射状に砕かれると、哀絶は身体のバランスを崩す。
それにより生まれた隙を、狛治は見逃さなかった。
一気に距離を詰めると、徒手空拳の間合いへ。
「素流──────鬼芯八重芯」
重く鋭い8連撃が放たれる。
似たような技の乱式と比較すると、手数を減らし威力を高めたのが鬼芯八重芯と言える。
対する哀絶は碌に防御も出来なかった。
無理もない。
槍の間合いでは無いからだ。
哀絶の受けたダメージは深刻で、右半分の頭が無くなり、右腕は肩ごとちぎれ、左腕は肘から先が消えていた。
胸に一つ、腹部には二つ開いた大穴。
槍の柄は三分割され、見る影もない。
そして何よりも。
「傷が・・・治らん」
哀絶が弱々しく言葉を漏らす。
対する狛治は不敵に笑った。
「驚いたか?俺が今身に着けている装甲は、概念武装というやつだ。お前たち死徒は、復元呪詛によって肉体を修正する。だがこの灰錠は、それを無効化できてしまうんだ」
「つまり・・・我々は元居た世界より、相対的に不死性が下がったということだな・・・哀しいことだ・・・」
「理解力が高いな。その通りだ。代行者は鬼狩りよりも不死の怪物を殺すことに長けている。さらに、だ」
「他にもあるのか・・・勘弁してくれ・・・」
哀絶がうんざりしたような口調で、ため息をつく。
対照的に狛治は、調子が出てきたと言わんばかりに、口調が速くなる。
「"お前たち"は純粋な死徒じゃないからな。さらに対策が必要だった。だから俺は、最近やっと完成した珠世の特注品を持ってきたんだ。わざわざバチカンまで行って、な」
「珠世・・・だと?」
「おっと・・・話過ぎた。聞かれているんだよな」
「・・・本当に忌々しい女だ・・・どこにいても邪魔を・・・」
「今度会った時に伝えておく・・・それじゃあ、さよならだ哀絶」
狛治は哀絶の頭に手を置き、洗礼詠唱を始めた。
すると、青白い光と共に、哀絶の身体は塵となり消えていった。
狛治 VS 哀絶 完