上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

48 / 67
第48話:黒雷神

48-1:黒雷神

 

獪岳は凄まじいスピードで縦横無尽に駆け回り、稲妻を放つ。

彼が通り過ぎるだけで葉は吹き荒れ、木々は軋み揺れ動いた。

 

正に暴風雨の如く。

人間である志貴はどうしようもできず、ただただ目を泳がせるだけ。

 

ただし、アルクェイドは違った。

流石は真祖の姫というべきか、彼女は獪岳を瞳で捉え続けていた。

そして、降り注ぐ雷はすべて、自身が爪を振るった際に生じる衝撃波でかき消し、己と志貴の身を守っている。

 

そんな様子に、獪岳は上空から不満を漏らす。

 

「あぁ、つまんねぇなぁ!真祖の姫君よぉ!はやくそこの弱虫を放り出して俺とやり合おうぜ・・・!」

 

そう言って、一段とギアを上げる獪岳。

シイイイと、空気が漏れるような音と、それに続いたのは。

 

「雷の呼吸 玖ノ型──────黒雷神(くろいかづちのかみ)

 

その直後、遠野邸から見渡せる範囲すべての夜空を塗りつぶすように、"黒"が広がった。

 

黒雷神──────それは国産みの神、伊邪那美命(いざなみのみこと)が黄泉に下り、腐り切った彼女の身体から発生した八雷神(やくさのいかずちのかみ)の内の一柱。

 

司るのは、雷害の予兆として現れる真っ黒な曇り空と、それによって太陽光が遮断された薄暗い大地である。

そして、その御業はたった今、獪岳はよって再現された。

 

さらに続く。

 

「雷の呼吸 終ノ型──────大雷(おほいかづちの)──────」

 

と、言いかけたところで獪岳の言葉が中断された。

それはなぜか。

 

答えは、彼の腹部に広がる、赤黒いシミ。

その中心には、十字の剣が刺さっていた。

 

そして口から一気に血を噴き出すと、獪岳はべしゃり、と地面に落下した。

 

「・・・ハッ。良いところだったのに横やりとはな。行儀が悪いぜ、代行者」

 

吐き捨てるように言った獪岳、そしてその視線の先には。

 

「俺にとっては関係無いことだな。さぁ、観念しろ、獪岳」

 

突如現れたのは、両手両足に装甲をまとった男。

その者の名は──────

 

「・・・狛治さん・・・?」

 

志貴の声が弱々しく響く。

対する代行者──────狛治は何も答えず、すぐに敵の追撃に走った。

 

「素流・砕式──────万葉閃柳」

 

仰向け状態の獪岳目掛け、振り下ろされた拳。

それを、身を転がして躱した獪岳は、そのまま回転を利用して技を放った。

 

「雷の呼吸 参ノ型──────聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)

 

狛治の周囲を取り囲むようにして、無数の斬撃が走る。

しかし全てを紙一重で回避した上で、狛治はさらにカウンターを放つ。

 

対する獪岳は後ろに飛んだことで避けた。

 

「ハハッ・・・良いじゃねぇか」

 

獪岳は笑う。

この戦いを心底楽しんでいるように見えた。

 

そんな中、玉壺が興味深そうに声を上げる。

 

「ヒョッ・・・これはこれは猗窩座殿・・・"そこ"に舞っている花弁はもしや・・・?」

 

その言葉の後、狛治の表情が一変した。

 

「・・・くそっさっきの攻撃で・・・」

 

狛治の腰に付けた小さなポーチに斬り傷が入り、そこから青い花弁が舞っていた。

 

「・・・中は無事か・・・?」

 

狛治は冷静さを失っていた。

ポーチの中に手を入れ、いくつか花弁を手に取る。

 

すると彼の表情に少しだけ安堵が宿った。

それを見ていた玉壺は、顎に手を当てた。

 

「やはり青い彼岸花・・・まさか本当に実在するとは・・・ではでは猗窩座殿・・・わたくしと大事な話し合いをいたしましょう」

 

「おいおい、せっかく良いところだったのによぉ」

 

「黙れバカガキが!・・・コホン失礼。ではでは皆様、こちらをご覧ください」

 

そう言って、玉壺は、獪岳が持ってきていた荷物のジッパーを開けた。

 

そこには──────。

 

黒雷神 完

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。