上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第5話:死徒二十七祖①

5-1:作戦会議

 

どうやら、志貴という男も一緒に戦うらしい。

しかし、俺とアルクェイドはネロの監視を受けているため、彼とは一度別行動をとっている。

 

そして、その志貴こそ、今回の作戦の鍵とのことだ。

 

作戦はこうだ。

 

まずアルクェイドと俺がネロを引き付ける。

次に志貴がネロに致命的な一撃を加える。

 

──────以上。えらくあっさりとしている。

俺はこの内容を耳にした時、なぜ志貴がその役割なのかを聞いた。

 

すると、アルクェイド曰く、志貴には不死の怪物すら殺せる力があるとのこと。

正直疑ってしまうが、どんな奴かを実際に見てみないと分からない。

 

ちなみに、これらのやり取りはネロに聞かれないよう、喫煙所や電話ボックスなどの中でおこなわれた。

 

 

5-2:獣王の巣

 

各自、持ち場に着いた。

 

公園のベンチに座るアルクェイドと、彼女の左側に生い茂る草木に身を顰める志貴。

 

そして俺は、アルクェイドと同様、ネロの監視がついているため最早隠れる必要は無く、堂々と彼女らの周囲をうろついている。

 

そんな中だった。

気付いたら、黒い外套の男がアルクェイドの前に立っていた。

 

「待たせたな・・・真祖の姫君」

 

「ずいぶんと待たされたわネロ・カオス。それとも・・・フォアブロ・ロワインと呼んだ方が良いかしら?」

 

「・・・よもやな。人の身であった頃の名を聞く事になろうとは夢想だにしなかった。さすがは我らの処刑人。死徒二十七祖の経歴など知り尽くしているわけか」

 

ネロとアルクェイドの会話で、なんとなく分かってきた。

 

まず、死徒は元人間だということ。

さらに、死徒二十七祖という、おそらく十二鬼月のような括りがあり、ネロはその一員ということ。

 

そして、アルクェイドはそれらを狩る処刑人。

・・・そう言えば、真祖の姫君とか言ってたな。どういう意味なのだろうか?

 

などと考えを巡らせていると、早速志貴がナイフを低く構えたまま、ネロの背後を突かんと飛び出す。

しかし、ネロは後ろを振り向くわけでもなく、背中から顕われた猛獣が、志貴に襲い掛かったのだ。

 

そして、それを難なく殺す志貴だったが、猛獣の身体が泥のように崩れ、彼の足を飲み込む。

 

ネロは志貴の存在を歯牙にもかけない様子で、アルクェイドの方を向いたまま口を開いた。

 

「残念だったな。私に奇襲は通用しない。私の領域に入ったものは私が気が付かなくとも私達のいずれかが発見しこれを迎撃する。」

 

「・・・そうみたいね。わたし以外のモノを一切見てなかったのに背後に反応するなんて、それが群体の強みという事かしらね」

 

アルクェイドはそう言って、一歩、ネロの元へ踏み出す。

対するネロは不敵に笑った。

 

「面白い。空想具現化もできぬほど衰弱している貴様が私に挑むと?」

 

「そんなもの、いらないわ」

 

「──────たわけが」

 

ネロは口の両端を堅く結び、憤りをにじませた。

そして、黒い外套をはためかせると、ゴボッと音を立てながら猛獣が這い出てくる。

 

「その身を()れ。アルクェイド・ブリュンシュタッド」

 

アルクェイドとの体格差は倍以上。

猛獣は勢いよく飛び掛かり、それを見ていた俺は、気付けば彼女の元へ駆け出していた。

 

しかし、

 

──────間に合わな・・・

 

ドッ!!!と大きな音がしたかと思えば、猛獣の頭部はつぶれ、地面に倒れ込んでいた。

そしてアルクェイドには傷一つない。

 

それもそのはず、彼女は死徒にとっての処刑人だと先ほど聞いたばかりだっただろう。

焦ってしまった自分が恥ずかしくなってしまった。

 

アルクェイドは鋭い爪をネロに向けると、この爪で充分と言ってのけた。

 

対するネロは黙ったまま、やれるものならやってみろと言わんばかりに、一気に四匹もの猛獣を召喚する。

 

しかしアルクェイドはものともしない。

 

クマだろうが、トラだろうが、ワニだろうが。

何匹来ようが、舞い踊るように命を奪っていく。

 

そして一気に踏み込むと、アルクェイドはネロを一刀両断。

 

短い断末魔を上げて地面に転がるネロ。

対するアルクェイドも力を使いすぎたのか、息を切らしている。

 

だが、まだ終わっていない。

 

以前戦って分かった。

ネロは俺たち鬼と似ている。

縦真っ二つにしようが、首を落とそうが、死なない。

 

例外的に鬼は日輪刀で首を斬られれば死ぬが、ネロ相手ならそれもどこまで有効か。

 

俺は警戒しながらネロの元へ近づく。

そして、アルクェイドと俺とで取り囲むような位置に立ち、鎌を構える。

 

「アルクェイド、油断するなよなぁぁ。こいつは死んでないからなぁぁ」

 

すると案の定、ヌルリと黒い外套が起き上がった。

 

「まさか・・・な。それほどの衰弱をしてその戦闘能力か。さすがは真祖達が用意した処刑人。曰く──────"白い吸血鬼にはかかわるな"か。同胞達の忠告は正しかったとみえる」

 

「そうなっても生きてるなんてね。だけど・・・あなたが使役する程度の使い魔では何匹だろうとわたしは殺せないわ。ましてやそんな状態でわたしに勝てるなんて思ってはないでしょうね」

 

「・・・使い魔?今の貴様にはそのようにしか視えないのか。貴様の相手をしたのは私自身だ」

 

ネロの言い放った内容、つまるところ今周囲に転がっている猛獣すべてがネロであり、今目の前で話しているのもまたネロということだろう。

 

つまり、こいつは命を複数もっているということ。

言い換えれば、鬼とは違い、有限の命ということだ。

 

とは言え、その命を削り切るのにどれだけかかるのだろうか。

流石に鬼であれば、何度も頭をつぶされれば死にはせずとも弱ってくる。

 

だが、ネロはこれだけ殺されても、まだ底が見えない。

 

そんな中、アルクェイドに斬り落とされたネロの右半身から、泥水のような塊が勢いよく吹き上がる。

 

しかし、彼女は難なくそれを斬り裂く。

すると、黒い塊は枝分かれしながら数匹の蛇を形成し、アルクェイドに巻き付いた。

 

さらに続けて、地面に転っている獣の死体からも蛇が生まれ、夥しい数の群れを形成する。

 

こうなれば仕方が無い。

巻き込まないよう自重していたが、とっておきの出番だ。

 

「円斬旋回・飛び血鎌」

 

地面をえぐりながら螺旋を描く血の刃は、蛇をバラバラにして吹き飛ばす。

 

一方アルクェイドも、4匹程度の蛇であれば問題なく引きちぎったようだ。

 

すると、ネロは眉を(しか)める。

 

「ならば、これはどうだ?」

 

黒い外套から飛び出した猛獣は、あろうことか俺とアルクェイドを素通りし、志貴の元へ向かっていく。

 

(まずい、こいつはネロ攻略の鍵なんだろ!?いつまでも寝てんなよなぁぁ)

 

俺は志貴を助けに行こうと動くか、突然身体に激痛が走る。

視線を下げると、目に飛び込んだのは蛇が俺の足首に牙を立てている光景。

 

咄嗟に血鎌を振るうが、次から次へと蛇が巻き付いてくる。

 

そうしている間にも、志貴に覆いかぶさるように猛獣が集まり、ゴリゴリと捕食する音を響かせていた。

 

死徒二十七祖②に続く

 

 

 

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