上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

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第50話:成立

50-1:横槍

 

志貴は現在の状況に対して、取り残されていた。

知らないことばかりで、口を挟む隙すら無く、事態は進んでいった。

 

そして目の前で起きている戦闘でも同様に、取り残されていた。

 

雷霆の如く動きまわり、攻撃を放つ獪岳。

人間である志貴の動体視力ではどうしたって追いつくことはできない。

 

「・・・くそっ・・・後で詳しく聞かせろよな、アルクェイド」

 

そう独り()ちた後、志貴は怪物同士の激闘に身を投げ出した。

一見無謀かつ軽率な行動に見える。

 

しかし、勝機が無いわけではない。

 

たしかに獪岳の速度は目で追えないほどだ。

しかし、方向を変える際に、一瞬だけ停止していた。

 

そのため、辛うじて獪岳の身体を瞳で捉えることができるタイミングが存在した。

 

志貴は静かに獲物へ近づく。

そして、この一撃にすべてに賭けるように、全身の力を振り絞った。

 

幸い、獪岳の意識はアルクェイドに注がれている。

今までにない強敵を前にして興奮状態にあるのと、それ以上に、少しの油断が命取りの相手だ。

 

対する志貴の存在など、獪岳にとっては羽虫程度のものだろう。

現に、志貴の接近に何の反応も示さない。

 

だがそれが、致命的な判断ミスだった。

──────志貴の瞳は、獪岳が次に来る位置を予測するように、絶え間なく動いていた。

 

どうやら、獪岳の動きのパターンを掴んできているようだ。

 

それもそのはず。

雷霆の如き速度で動くことが出来るとしても、自身の思考が付いてこなければ地面や壁に衝突して肉体が破裂する筈だ。

そのため、獪岳は軌道をあらかじめ決めて、それをルーチン処理しているだけに過ぎない。

 

力を手に入れて日も浅い。

せめて持て余さぬよう編み出した、苦肉の策が見て取れる。

 

尤も、志貴がそこまで理解していたかは定かではない。

 

そして、意外にも決着はすぐについた。

 

「がっ・・・!?」

 

獪岳の左腕が、血飛沫を上げながら宙へ飛んだ。

一瞬、思わぬ横やりに対して呆気にとられたようだったが、表情はすぐに激情へと変化した。

無理はない。せっかくの戦いに水を差されたからだ。

 

対する志貴は、今の一撃に体力すべて使い果たし、倒れ込む。

しかし、入れ替わるようにアルクェイドが腕を振り抜き、獪岳の身体は吹き飛んでいった。

 

 

50-2:交渉成立

 

アルクェイド、志貴と獪岳が戦った場所から離れ、遠野邸の敷地の端まで移動した玉壺、狛治、そしてロア。

そして、すでに交渉は終わったようだった。

 

「ヒョッ。では、交渉成立ですな。約束通り、青い彼岸花はいただきましたし、代わりにロアの身柄はそちらに引き渡しました。それでは、これにて」

 

「おい、待ちやがれ。絶対に忘れるなよ。協会に対して二度と同じ手が使えないよう、お前たちは別の街に行くという約束をな。それに、そっちとしてもその方が都合も良いだろ?」

 

「ええ。素晴らしいご提案でした。移動が完了するまで、追跡も解いてくださるとは」

 

「・・・だったら良いけどよ。それじゃあ、別の街で会った時は遠慮なく殺すからな」

 

「ヒョッ。怖い怖い。ではさようなら」

 

成立 完

 

 

 




補足:獪岳は左腕を斬り落とされ、吹き飛ばされた後、傷を癒すためにも一旦撤退を選びました。
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