上弦の鬼たちは月姫世界に転生したようです。   作:白澄星火

58 / 67
第58話:妓夫太郎、日光を克服する

58-1:妓夫太郎、日光を克服する

 

妓夫太郎が青い彼岸花を接種してから一夜明け、時刻は午前8時ごろ。

上弦の鬼たちが暮らすアパートの駐車場に、童磨は立っていた。

 

彼は鬼であるにもかかわらず、日光を浴びても平気になっていた。

太陽の方へ身体をむけ、姿勢をぐーんと伸ばし、大きく息を吸う。

そのまま数秒伸びをキープした後は、だらんと脱力しながら息を吐いた。

 

そして、自身が暮らす部屋のドアから視線を感じたのか、くるりと向きを変えた。

 

「おーい、妓夫太郎も怖がらずこっちにおいで」

 

そう言いながら、手招きをする童磨。

彼が話しかけた相手は、ドアの隙間から顔を半分出した妓夫太郎だった。

その表情は、隠れていても分かるほど、疑念や不安に満ちていた。

 

「童磨さん、本当に大丈夫なのかぁぁ?俺だけ焼け死ぬってことは無いよなぁぁ」

 

「どうしてそんなことが起きるというんだい?妓夫太郎は心配性だなぁ」

 

「はぁぁ・・・しょうがない。これがうまくいけば、梅にも日の光を見せてやることもできるからなぁぁ」

 

妓夫太郎は観念したようで、階段をとぼとぼ降りていく。

しかし、日陰と日向の境目を超える寸前で、足を止めた。

 

妓夫太郎は深呼吸をする。

それを、童磨は何も言わずただ見守っていた。

 

そして。

 

ついに妓夫太郎は(まなじり)を決し、一歩踏み出した。

その後二歩、三歩と、しっかりした足取りで童磨のもとへ歩いていく。

 

そして二人が向かい合うと、童磨は優しく微笑んだ。

 

「どうだい?感想は」

 

「・・・あったかい・・・なぁぁ」

 

「それはなによりだ。ほら、上を見てごらん」

 

「──────、──────」

 

妓夫太郎は思わず言葉を失った。

頬には、涙が伝っている。

 

「・・・梅にも見せてやりてぇなぁぁ」

 

 

58-2:工作

 

時刻は昼の12時過ぎ

昨日と同じく、アパートの屋根には狛治、中にはシエルというフォーメーションで代行者は上弦の鬼たちの元へ訪れていた。

 

そしてどうやら、堕姫への青い彼岸花接種は終わっているようで、妓夫太郎の膝の上で寝息を立てている。

つまり残るは黒死牟のみだった。

 

シエルは、向かい合うようにして膝をつき、口を開けるよう促す。

対する黒死牟は、少しだけ渋った後、言われたようにした。

 

黒死牟の口の中に、青い彼岸花が入れられる。

数秒経ったところで、妓夫太郎や堕姫と同様に、眠りに落ちた。

 

するとシエルは顔をのぞき込んだり、脈を測ったり、頬を叩いたりして本当に黒死牟が寝ているか確認した。

それに何の意味があるのか、すぐ近くに座っている妓夫太郎は首を傾げている。

 

一連の確認を終えると、シエルは無線に話しかける。

 

「予定通り実行します」

 

がちゃり、と玄関のドアが開く音が響いた。

少し間を置いて、足早に歩いてくる音がしたと思えば、部屋のドアが開かれた。

 

そこには、代行者──────狛治が立っていた。

 

狛治は何も言わず、シエルにカプセルを手渡す。

受け取ったシエルは、黒死牟の体を起こし、口に無理矢理カプセルを入れた。

 

それを見ていた妓夫太郎は、当然のように声を上げた。

 

「おい、アンタらなにして・・・」

 

「まぁまぁ、妓夫太郎。ここは抑えておくれ」

 

童磨が制止する。

それで妓夫太郎は引き下がるが、瞳は不信感が消えない。

 

「後で説明してくれよなぁぁ」

 

「もちろんだよ」

 

妓夫太郎、日光を克服する 完

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。