59-1:契約
シエルは魔術詠唱を始めた。
すると、床に横たわった黒死牟の周りに魔法陣のようなものが形成される。
それを、狛治、童磨、妓夫太郎は黙って見つめた。
そして、2~3分ほど経過した後、妖しい光はすうっと引いていった。
「これで目的は完遂しました。私は持ち場へ戻りますので、後は頼みますよ。狛治」
「分かった」
狛治が短く返すと、同僚からの了解を得たシエルは改めて目配せし、その後廊下に出ていった。
がちゃり、と玄関のドアを開ける音が響く。
それから少しの空白を置いた後、妓夫太郎がおもむろに口を開いた。
「何がなんだか分からないんだよなぁぁ」
「それも無理はないだろう。俺が話す」
妓夫太郎への説明を申し出たのは、狛治だった。
「結論から言おう。黒死牟には、我々教会に逆らった時に発動する術式と、珠世特性の猛毒のカプセルを埋め込んだ」
「はぁぁ?なんだよそれ?俺たちを信用してくれるんじゃなかったのかぁぁ?」
「妓夫太郎、堕姫・・・ついでに童磨については信用している。お前らの目的は生きること。であれば、人間を襲って食うといった、教会に目を付けられることはしないと、我々も判断している。だが黒死牟は違う。妓夫太郎、お前だって分かるだろ?」
「・・・あぁぁ・・・否定は出来ないなぁぁ」
「黒死牟は、"強さ"を求める。そのためなら教会に目を付けられることだって
「よく分かったよ。じゃあ梅には同じものは入ってないんだな?」
「入れていない。俺の命に代えても保証する」
真剣な面持ちで、狛治は言って見せた。
対する妓夫太郎は、重々しい表情で見つめ返す。
妓夫太郎にとっては、絶対に許してはならない一線なのだろう。
観察眼を光らせており、もしかしたら透き通る世界で脈拍なども見ているのかもしれない。
しばらく沈黙が続いた。
だが、狛治の潔白が分かったのか、妓夫太郎は息を大きく吐きながら姿勢を崩した。
「疑って悪かったよ猗窩座さん。今度は前もって言ってくれよなぁぁ」
「こちらこそすまない。この話は、シエル、童磨、俺の3人の中で秘密裏に話し合ったことでな」
「・・・童磨さん知ってたのかよ・・・」
妓夫太郎が童磨の方へ
対する童磨は、ばつが悪そうに頭を掻いていた。
「いやぁ、ごめんな妓夫太郎。仲間外れにするつもりは無かったんだが、計画実行前は出来るだけ少数の者だけに情報を留めておきたかったのだよ」
「・・・まぁ、梅がなんともないのなら俺はなんでも良いけどよぉ。・・・ところで黒死牟さんにはなんて言うんだ?」
「暴れられると困るし、シエルちゃんから直接伝えてもらうことにしているよ。まぁあの子はさっき、黒死牟殿がいつ目を覚ますかも分からないから、帰っちゃったけどね」
「怖ぇなぁぁ。俺と梅は避難しておくからなぁぁ」
契約 完