6-1:直死の魔眼
斬っても斬っても、蛇が巻き付いてくる。
・・・キリがない。
俺は心の中で舌打ちをする。
(こうしている間にも志貴が)
彼と周辺の獣たちを一瞥した。
その瞬間──────自身の背後から、岩盤から爆ぜるような音が聞こえた。
咄嗟に振り向こうとするが、俺の視線が真後ろを向く前に、アルクェイドの横顔が視界を一瞬遮る。
──────そうか、志貴を助けに。
(・・・だったら俺は、好きに暴れて良いんだなぁぁ)
「血鬼術 跋弧跳梁」
血鎌を高速で振り回し、自身の周りに斬撃の嵐が生まれる。
すると蛇は、屑のようにボロボロと崩れ落ちていく。
次に、自由になった身体で血鎌を構え直し、ネロの元へ一気に飛ぶ。
すると、俺の血鎌は敵の身体へ容易に届いた。
──────ぐしゃり
上弦以上の不死性を持つ怪物は、もはや回避行動すらとらないのか、あっけなく身体が崩れる。
しかしすぐに、地面に転がった別の個体からネロが這い出てくる。
そしてまた殺す。その繰り返し。
ホテルでのネロとの初戦を思い出す。
何度も何度も何度も。
ネロを殺した。
その度に何事も無く、再び立ちはだかってきた。
・・・その時から、分かってはいた。
俺が持つ強みの一つが、この相手にはまったく無意味だということに。
確かに血鎌は猛毒。一つの命を簡単に奪える。
だが、群体が相手であれば別だ。
やはり俺は、ネロに勝てない。
こいつに勝てるのは、やはり──────。
アルクェイドの方を窺う。
すると、彼女は懸命に、志貴に喰らい付かんとする猛獣を斬り払っていた。
しかし、志貴を巻き込まないように、控えめに爪を振るっているように見える。
そのため、アルクェイドの護りから零れ落ちた猛獣が志貴を襲う。
(──────もう、だめ──────なのか?)
諦めかけた、その時だった。
ばしゃり、と赤黒いものがまき散らされる。
しかしそれは、志貴の血でも、アルクェイドによって狩られた獣のものでも無い。
志貴を囲んでいた猛獣が、ナイフで綺麗に両断されたのだ。
続けて一匹二匹と葬られ、あたりに血の雨が降る。
その中で、鈍い光を放ちながら両の目がこちらを捉えていた。
「あ・・・はははっ。ハハハハハハハハハハハハハハッ」
「貴様・・・」
ネロは訝し気な目線で睨み返す。
対する志貴は、まるで踊りに誘うかのように構える。
ただし、その手にナイフを握って。
「・・・くくっ。俺を殺したいんだな吸血鬼。・・・いいだろう。さあ殺し合おう。ネロ・カオス」
明らかに別人となった志貴。
アルクェイドはへたり込み、困惑の表情で彼を見つめている。
その後志貴は、驚異的なほどの殺戮能力を見せた。
猛獣が四方を取り囲むようにして彼に飛び掛かるが、鋭い牙と爪は虚空をなぞる。
次の瞬間には、猛獣は
鮮やかな手際で行われる解体作業。
志貴が通った道は死体しか残らなかった。
それだけではない。
一番目を見張ったのは、彼が猛獣を一突きで葬る姿だ。
これは流石に、人間には不可能だろう。
鬼狩りの中にも、こんな真似をする奴は居なかった。
(待て待て、このままじゃネロを本当に殺しちまうんだよなぁぁ)
それはネロも同じ考えか、警戒心を初めて志貴に向けた。
今までになく、空気が張り詰める。
「よかろう。貴様を我が障害として認識する」
死徒二十七祖③に続く