61-1:遠野志貴と遠野四季
相変わらず黒死牟殿が起きない中、猗窩座殿はまず、ロアの件について話し始めた。
「まずは状況を整理しよう。今回のロアの転生体は、遠野四季──────遠野家の人間だ。そして、その男は遠野志貴という男とどうやら因縁がありそうでな」
「トオノシキがトオノシキと・・・?何を言っているのかな猗窩座殿?少し休んだ方が良いのではないか?」
かわいそうな猗窩座殿。友として心配だ。
俺は憐憫を垂れる。
すると猗窩座殿は、眉間にしわを寄せた。
「おい・・・その憐れむような視線をやめろ。四季と志貴は正真正銘、別の人間だ・・・さて、本題に戻るが、遠野四季・・・ややこしいからシキ1と呼ぶことにするが、詳しくは知らんが事故で死亡した養子らしい。そして遠野志貴──────シキ2が長男とのことだ」
「ではなぜシキ1(四季)は生きているのかな?ロアは死者すら蘇生させるのかい?」
「遠野邸で半天狗たちと戦った後に、現当主──────遠野秋葉に聞いたが、シキ1(四季)は死んでいなかった。前当主である遠野槙久が追い出したらしい・・・だがこの件に関して後ろめたいことがあるんだろうな、詳しいことは何にも答えてくれなかった」
「なるほど、じゃあ家から追い出されたシキ1(四季)が、ロアに転生されたということだね」
「そうだ。つまり、シキ1(四季)が遠野家を恨んでいても不思議ではない。現に、遠野秋葉からは、兄である志貴・・・シキ2を、屋敷の外にいる時は守ってほしい、と頼み込まれたからな」
猗窩座殿のここまでの話で、大体のロアの輪郭が掴めてきた。
(なるほど、それで猗窩座殿はシキ1とシキ2に因縁があると言ったんだな)
だが、強い違和感が1つだけあったため、俺は疑問を投げかけた。
「なるほど・・・・しかしだよ猗窩座殿。ロアに転生されたのであれば、それはシキ1(四季)ではなく、ロアだろう?もはや因縁というものは存在しないのではないかな?」
「いや、それは違う。ロアの転生はな、依り代がロアに変身するのではなく、ロアの思想を依り代が受け継ぎ、新しいロアになるんだ」
「では、シキ1(四季)とロアは半々の状態、といったところかい?」
「簡単に言えばそうだろうな」
猗窩座殿のこの回答を聞いて、俺はロア捜索の進め方が分かってきた。
だが、猗窩座殿が"この方法"を考え付かないとは思えない。
何か理由があるのだろうが、それも併せて聞いてみることにした。
「では、シキ1(四季)の人となりや、執着などが分かれば、潜伏場所を絞れてくるのではないかな?」
「ああ、だが、その情報を聞き出せるのは実質、遠野秋葉のみだ。にもかかわらず、志貴──────シキ2にこのことを話したら殺すとまで言われてな」
なるほど、そんな理由だったか。
だが、そんなことはもう気にしていられないだろう。
「おっかない女の子だねえ。けど、その子は肝心なところは答えてくれないんだろ?」
「ああ」
「であれば、遠野秋葉の忠告は無視して、シキ2(志貴)に聞くしかないのではないかな?」
「・・・」
苦虫を噛み潰したような表情を見せる猗窩座殿。
(律儀な男だからな。約束を破るのは気が引けるんだろう。だが、そんなことに拘っている場合ではないと思うぜ俺は)
「では、俺がシキ2──────遠野志貴に聞くことにするよ。遠野秋葉にバレたら、俺のせいにしてくれて構わない。それに、彼の身も守れるし、丁度良いだろ?」
「・・・すまない、恩に着る。今はシキ2(志貴)は学校にいるはずだ。ノエルが教師をやっていてな。奴に通しておく」
「承ったよ。猗窩座殿」
「黒死牟への説明と、獪岳の捜査は俺がやっておく。ではまたここで落ち合おう」
遠野志貴と遠野四季 完