第62話:童磨、学校へ潜入する
62-1:童磨、学校へ潜入する
──────高等学校。
大正でいう、中等教育学校に該当するため、当時の高等学校とは違い、後期中等教育機関らしい。
さらに、今となっては共学が主流であることに加え、男女ともに卒業後は高等教育に進む人が半分以上とのことだ。
(・・・俺は寺子屋すら行ってないけどね)
そんなことを心の中で吐き捨てつつ、遠野志貴がいる学校の校門の前に立ちながら、ここで教師をやっているノエルちゃんの合図を待っていた。
そんな時。
黄色い声が鼓膜に響いた。
俺は2階の窓に、視線を移す。
すると、5人ほどの女の子たちと目が合う。
甲高い声を上げながら手を振ってきたため、俺も同じく振り返してあげた。
(俺は目立つからなあ。栄養状態が良いこの時代でも、俺の身長が高い方だったのは正直意外だったよね)
そんな中、ノエルちゃんが1階の玄関から出てきて、手招いてきた。
対する俺は軽くうなずくと、敷地内に足を踏み入れた。
校内を歩いていると、この学校の女子生徒たちから、ノエルちゃんとの関係を聞かれた。
仕事上の関係、と俺は答えるが、疑ってきたり、同じことを何度も聞いてくるため、ちょっと鬱陶しかった。
女の子は俺に好意を示す一方、ノエルちゃんに対しては嫉妬を露わにしていた。
男女の仲では無い、と言っているのに、この子たちは馬鹿なのかな?
と純粋な疑問を抱いていると、騒ぎが落ち着いてきた。
流石に飽きてくれたかな?と思っていたが、ノエルちゃん曰く、どうやら今まで授業の合間の休み時間だったようだ。
やっと落ち着いて話ができる時間ができたところで、俺の前を歩くノエルちゃんが口を開いた。
「私、男子生徒からは人気なんですよね。だから、女子生徒からは嫌われているというか」
とのこと。
自逆風自慢といった感じか、気にしている素振りはなく、普通に嬉しそうだった。
自分でそれを言ってしまえるのが、女の子から嫌われる理由では無いのかな?
と思ったが、こういうことは言わない方が良い。
(・・・でも確かに、男子には人気なのかもね。実際、先ほどまで俺は、同性からの敵意や殺意の集中砲火を受けていたからなあ)
と、俺は心の中で納得した後、話題を切り替える。
「ノエルちゃん、遠野志貴は授業中かな?」
「はい、そうです。ただ、本日最後の授業なので、50分ほど待てば話ができると思いますよ。遠野君にも、放課後茶道室に来るよう言っておきましたし」
そう言って、ノエルちゃんは足を止め、目の前のドアを開いた。
目に飛び込んできたのは、畳の間。
ノエルちゃんは靴を脱いで上がり、座布団を3人分敷き始めた。
俺は軽くお礼を言った後、同じく草履を脱いで畳に上がった。
「よっこいせ、と。50分って半刻ぐらいだったよね確か」
「はい、それで合ってますよ・・・本当に昔の人なんですね」
ノエルちゃんが若干引いたように見えたが、気にせず情報共有を進めた。
初対面の時の、警戒し切った態度とは変わり、ノエルちゃんも気の抜けた表情を見せるようになった。
さらに、雑談も交えているとあっという間に時間が過ぎていった。
すると、コンコンと扉をたたく音。
ノエルちゃんがどうぞ、と返すと扉は開かれ、眼鏡をかけた男子生徒が入ってくる。
「失礼します。それと、初めまして、童磨さん。俺の名前は遠野志貴です」
「やあやあ、初めまして、志貴殿」
童磨、学校へ潜入する 完