65-1:ノエルと狛治
童磨とロアの戦いから、時は少し
上弦の鬼たちが住まうアパートのドアから、ノエルと狛治が外へ退出していた。
「黒死牟のことはシエルに任せて、俺は獪岳を探してくる」
「・・・私は、どうすれば?」
「危険な任務は嫌だろう?だから、遠野志貴を遠方から見守るだけで良い。それと、前回と違い遊撃もしなくて良い。戦闘になったらすぐに救援を呼ぶこと」
「ハァ~イ!」
命の危険がある任務ではないことが分かったのだろう。
ノエルは活き活きとした表情で、そう返した。
◇
65-2:黒死牟、日光を克服する
アパートの一室。
六つ目の侍──────黒死牟が、眠りから目を覚ました。
すぐそばには、修道着に身を包んだシエルが正座をしている。
「・・・起きましたか、黒死牟さん」
「・・・どれほど・・・私は眠っていた?」
「だいたい5時間くらいでしょうか」
「・・・そうか・・・」
黒死牟は、まだ目が醒め切っていないのか、ぼんやりとした表情だった。
そんな彼を見たシエルは立ち上がると。
「まだ実感が無いようですね。では、これならどうですか?」
そう言って、カーテンを全開にし、窓を開けた。
すると、部屋の中に日の光が差し込んでくる。
以前であれば、殺してでも止めたであろう行動だが、 半覚醒的な状態の黒死牟は反応できずにいた。
「・・・ッ・・・何を・・・」
黒死牟は、思わず目を細め、窓から顔を背けた。
直射日光が、彼の眼球に入り込んできたからだ。
だが、焼かれることは無かった。
黒死牟の瞳は大きく開かれ、再び大空の方を向く。
そして、手のひらを掲げると、指の隙間から差し込んだ光を見つめた。
「なんと・・・眩しいことだ・・・これではまるで・・・」
その直後、黒死牟はハッとした表情を浮かべると、視線を落とし続きの言葉を飲み込んだ。
そして、軽く咳払いをする。
「これで私は日が昇っている間も修練が出来るのだな・・・」
「はい、好きなだけ出来ますよ。ですが、我々協会が、タダで貴方ほどの食人鬼を強化するとお思いですか?」
「・・・何?」
後から条件を付けてくる、シエルの態度が気に入らなかったのか。
それとも、食人鬼呼ばわりが心外だったのか。
黒死牟の表情は、一気に強張った。
対するシエルは、1mmも動揺せず、言葉を続ける。
「黒死牟さん。貴方には、珠世さん特性の猛毒のカプセルを埋め込みました」
シエルの言葉に、黒死牟は返答しないまま、刀の柄を握った。
だが次の瞬間。
「──────ッ──────!」
突如、高圧電流が流れ、黒死牟の身体が仰け反った。
シエルはその様子を、冷たく見下ろした。
「言い忘れていました。私たちに反意を抱くと自動で発動する術式もセットです」
「・・・私を・・・飼いならす・・・つもりか・・・」
「ただの保険ですよ」
「・・・ぬかせ・・・」
「では、改めて、"お話"しましょうか」
黒死牟、日光を克服する 完