S.H.I.E.L.D.長官のボディーガードは魔女   作:LemoИ

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全話が昨年4月なので、10ヶ月ぶりですね…はい。
二部終章を終え、段々余韻が抜けてきたマスターです。
福袋は5人目の陛下をお迎えすることが出来ました。
最近は原神と毎週のStrange Fakeを楽しんでいます。


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー②

私の手当も出来るからちょうどいいと判断したらしいナターシャは、法定速度ギリギリで車を走らせました。

 

目的地は当然、マスターが搬送された病院です。

道中は、既に搬送先に居るエージェントとナターシャの通話のやり取りを聞きながらスマホでマリアと連絡を取り合いました。

彼女も当然私を心配していましたが、一先ず病院で落ち合うことになりました。

 

◇◇◇

 

「……着いたわ。行きましょう。」

 

スマホを見ていたら、いつの間にか車は病院の目の前に停まっていました。

周囲には既にサイレンを光らせるパトカーたちが停車しています。

 

「えぇ、ありがとう…」

 

私たちは、車を降りて病院へ入ると、ナターシャは直ぐに看護師の1人に声をかけました。

 

ここの病院は、単なる一般人向けのものではありません。

SHIELDエージェント向けの病院として

 

「ほら、モルガン行くわよ。」

 

私が連れていかれたのは、診察室でした。

 

「あ、ちょっ、ナターシャ!私のことよりマスターが……」

 

「…あなたは、こっちが先。」

 

珍しく凄みのある様子のナターシャに、流石に私もぐうの音も出ませんでした。

私は、自分よりもマスターのことが気になって仕方がありません。

ですが、ナターシャは決して軽傷とはいえない私をそのまま連れ回す気は無かったみたいです。

 

◇◇◇

 

「……もう結構です。」

 

慣れた手つきで傷の手当をしていた看護師を私は止めました。

固まりつつあった額の血も拭われ、既に包帯が巻き付けられています。

 

「ですが…」

 

患者の健康を優先するのがこの人たちの役目です。

でも…

 

「大丈夫です。」

 

今の私には、己の怪我以上に気になることがありました。

 

足がまだ少し痛むのを無視して、私は診察室から廊下へと出ました。

恐らく先にマスターのところへ向かったナターシャの後を追いました。

 

ナターシャの気配に近いものを探知すると、1つの部屋に辿り着きました。

部屋の前にはちょうど、中に入ろうとしているマリアがいました。

 

「あ……マリア」

 

「モルガン」

 

包帯を巻かれてボロボロの姿を見て、今にも泣きそうな表情のマリアは、優しく私を撫でてきました。

一緒に薄暗い部屋に入ると、そこにはキャプテンロジャースとナターシャが既にいました。

そして、その部屋の窓の向こう側には……

 

「……マス、ター」

 

窓の向こう側では、全身を薄いエメラルドグリーンの服に身を包んだ人達が慌ただしくしていました。

 

「弾の分析は…」

 

「3発よ、旋条痕は確認出来ず。」

 

「ソビエト製……」

 

「えぇ。」

 

ナターシャとマリアが会話しているのは分かっても、その内容までは頭に入ってきませんでした。

 

『心拍が乱れています。』

 

『心室頻拍。』

 

『ドレープを。』

 

『除細動器。』

 

マスターの前に用意されたのは、私も見たことのある心肺蘇生用の機器…

 

『100にセットしろ。』

 

「あんまりじゃないニック……」

 

『3、2、1、クリア!』

 

その合図で2つの機器がマスターの胸部に当てられました。

それと同時に電気ショックで身体が跳ねる異様な光景が目に入ってしまいました。

 

『戻ったか。』

 

『次200に。』

 

『200チャージ、下がって!』

 

『3、2、1、クリア!エピネフリン用意!』

 

「嘘、そんなの嫌だ……やめて…」

 

今までマスターの治療をしていた人達の動きがパタリと止みました。

それが何を意味するのか分からないほど、私は無知ではありません。

 

『時刻は?』

 

『午前1時3分です。』

 

「何で……」

 

無意識のうちに、ガリガリと音を立てながら窓枠に爪を立てて掴んでいました。

そんな私の手をマリアが、そっと掴んで窓枠離してくれました。

 

◇◇◇

 

私はナターシャとキャプテンと一緒に、手術室から別室に運ばれたマスターが安置された部屋を訪れました。

 

ナターシャがマスターの近くに居るのに対し私は、壁際に寄りかかるようにしゃがんで俯いていました。

 

「………」

 

私を包むのは、どうやっても言葉として表すのが難しすぎる感情でした。

 

どれだけ時間が経っても。

どれだけ能力の研鑽を積んでも。

この脆弱な心だけはいつまで経っても…どうにもなりません。

マスターが聞いたら絶対嫌がることなんて目に見えてるのに、私は思ってしまいました。

 

その時撃たれたのが私だったらって…

 

「……彼を運ぶわ。」

 

後から部屋に入ってきたマリアがそう告げました。

 

「ナターシャ。」

 

行こうと、キャプテンがナターシャを促すと彼女はマスターの頭を優しく撫でてから部屋を後にしました。

 

私はナターシャと入れ違う形でマスターの前に移動しました。

 

そして、まるで眠っているかのようなマスターの顔を見つめます。

手術室で涙は出しきってしまったのか、涙腺からはもう何も零れ落ちませんでした。

 

 

「分かっています。」

 

 

自分のやるべきことを。

ここで私が折れて立ち止まっているわけにはいかない。

 

 

ですよね……

 

 

「マスター。」

 

 

ゆっくり目を閉じていた私は、心を切り替えるように視界を広げました。

 

◇◇◇

 

諸々の対応はマリアが引き受けてくれたので、私はナターシャと一緒に行くことにしました。

 

「何故彼あなたの家に?」

 

廊下では、ナターシャがキャプテンに問い詰めている真っ最中でした。

 

「キャプテン本部に戻ってくれ。」

 

ラムロウがキャプテンを急かすように呼んでいる声が聞こえました。

 

「嘘つくのが下手ね。行きましょうモルガン。」

 

ナターシャの言う通り、あの後マスターは彼の家に行った。

誰も信じることの出来ないこの状況で。

 

それなら……

 

その後ナターシャは、もうほとんど頭の回らない私の手を優しく握り、出口へと連れ出してトリスケリオンの私の部屋まで送り届けてくれました。

 

◇◇◇

 

翌朝、ほとんど眠ることの出来なかった私は、カフェイン剤等を購入するためにコンビニエンスストアへ向かうことにしました。

 

「あとは……頭痛薬もですね。」

 

いつものエージェントのスーツではなく、ラフな黒のパーカーとジーンズに身を包み、灰色のシンプルな帽子を目深に被ります。

拳銃はいつものようにホルスターで下げておくわけにはいかないので、スボンの中に仕舞いました。

全身鏡で見ると暗色とは言え、直ぐにエージェントとバレてしまうような怪しさはありません。

 

そして着替え終わった私は、暗号化されたスマートフォンでとある人物を呼び出しました。

 

『送った位置情報の場所に私服で一人で来てください。くれぐれも内密にお願いします。それと……』

 

送信後、なるべく人を避けてガレージに足早で向かった私は、愛車を発進させました。

 

コンビニで、カフェイン剤と朝食、そしてコーヒーを2つ購入した私は、車を停め、リフレクティング・プールを一望出来るベンチに腰掛けました。

 

平日の午前中とはいえ、周りにはランニングや散歩をしている人達が目に入ります。

そんな人達を眺めながら、まだ湯気の立つコーヒーをひと口飲み込むと、突然私と似た服装の男性が現れ、隣に座りました。

右手にはよく見るデザインの黒色のリュックがあります。

 

「………あなたの急な無茶ぶりにも慣れましたよ。ですが流石に今回は笑えなさそうですね。」

 

「えぇ……くれぐれも内密に。少なくともマリア以外には。」

 

そう言って私は1つの端末をベンチの中央に置きました。

 

「了解です。」

 

隣に座ったのは、あのニューヨーク決戦も共に乗り越えたチームWizardの隊長でした。

 

「……このまま私は本部に戻らないと思います。なので、信用出来るメンバーの選抜はあなたに委ねます。」

 

「良いんですか?」

 

「……マスターがあなたを私の直属の部下に任命した。マスターが信じたあなたを……今日までこんな私に着いてきてくれたあなたを信じます。」

 

「はぁ……」

 

「ともかく、連絡は暗号化させた上で最低限でお願いします。あとこちらは、完全に個人で用意している端末ですので……それと、コーヒーは私の奢りです。」

 

「分かりました。ありがとうございます。それとこちら、言われていた物を詰め込んでおきました。」

 

「どうも、では。」

 

リュックを受け取り、私は一般人に紛れた雰囲気のまま駐車場へ向かいました。

荷物を後部座席に放り込んでから自分の車の運転席に腰を降ろし、見慣れたロゴのコーヒーカップを隣のホルダーに納めました。

この後のことを思案しながら、朝食のサンドウィッチの最後の一口を放り込みました。

元々、食に興味がある方ではありません。

ですが、職務に支障をきたさないためにも摂取は怠りません。

 

指紋認証も内蔵されたスイッチを入れると既に聞き慣れた唸るようなエンジン音が鳴り響き、私の愛車は、滑るように公道へと走り出しました。

 

 

状況が状況なので、警戒は怠らずに走っていると、突然トリスケリオン内の異常を知らせるアラートが車内に鳴り響きました。

 

「動きがありましたか。」

 

ハンドルの端にあるスイッチをいくつか操作すると、左端にトリスケリオン内の監視カメラの映像がリアルタイムで表示されました。

 

「……マズいですね。」

 

ヒビ割れた監視カメラの映像に映ったのは、エレベーター内で10人近くに襲撃されるキャプテンロジャースの姿でした。

 

彼はエレベーターを制圧すると、今度は窓を突き破ることで包囲網を突破し数階下のロビーに盾で着地しました。

 

彼のコスチュームの発信機と監視カメラの映像から格納庫に向かっていることが分かりました。

 

「ちっ!」

 

行き交う車たちに煩わしさを覚えて珍しく舌打ちした私は、減速せずにハンドルを切りました。

 

少し走らせてトリスケリオンの入り口の橋に近づくと、黒煙を放ちながら堕ちるクインジェットが見えました。

そのすぐ近くには、ステルスコスチュームに身を包んだキャプテンアメリカの姿が見えます。

私は軽くドリフトしながら彼の目の前に急停車し、サイドウィンドウを開けました。

 

「モルガン?!」

 

「話は後で、とにかく移動しましょう。」

 

私の出迎えに最初は狼狽えた様子でしたが、切羽詰まった状況で覚悟を決めたのか、ガタイのいい体を後部座席に滑り込ませました。

彼がドアを閉めたのをミラーで確認し、私は再びアクセルを踏み込みました。

 

視線はフロントガラスの先の道路に向け、周囲の警戒を怠らずに運転します。

それと同時に、一方的にシールドデータベースにアクセスし、登録された車両が居ないかもマップに表示してチェックしています。

 

「キャプテン、まずあなたはその今着ているステルススーツを処分する必要があります。」

 

「処分?」

 

「…発信機です。そこのリュックに服があるはずなので、それに着替えてください。」

 

私は、数分走らせたところにあったコンビニの前の路肩に着けました。

 

「念の為、私はここで待機します。トイレで着替えてきてください。いつ彼らが来るか分からないので手短に。」

「分かった。」

 

◇◇◇

 

数分後、ステルススーツから着替えたキャプテンがコンビニから出てきました。

服装自体に違和感は無いものの、スーパーソルジャーとしてのガタイの良さは隠しきれていません。

 

「……似合うか?」

 

事務的なやり取りしかしてこなかった私相手に気まずそうに尋ねてきました。

 

「及第点といったところですかね。スーツはどうしましたか?」

「そのままトイレに放置してきたよ。」

「では、ここに長居はよろしくないですね。」

 

コンビニの店員への罪悪感をほんの少しだけ感じながら、私はアクセルを踏み移動を再開しました。

 

「モルガン、昨日行った病院に向かって欲しい。」

 

「理由は?」

 

「フューリーから預かったものを回収したい。」

 

「…分かりました。」

 

何故私ではなく、彼に預けたのかは気になりますが、一旦そのことは置いておくことにしました。

私は手早く病院へのルートを検索し、その方向へハンドルを切りました。

 

◇◇◇

 

「直ぐに戻る、ここで待っていてくれ。」

 

「…分かりました。怪しいのが来たら連絡します。」

 

「あぁ、頼む。」

 

病院のほとんど目の前に停めると、キャプテンは直ぐに出ていってしまいました。

 

「はぁ……」

 

1人の空間になり、ほんの少しだけ緊張が解けた気がします…

状況的にはあんまり良くないかもしれませんが。

 

私は彼を待ちながら、ほとんど冷めた半分ほど残っていたコーヒーを口に傾けました。

仰け反りながらコーヒーを口の中へ注ぐ間も通行人への警戒は続けます。

特に道中キャプテンに教えてもらった敵側のストライクチームは要注意です。

 

10分ほど経つと、病院の表玄関からフードを被ったキャプテンが出てきました。

ただ今度は1人ではなく、その後ろには……

 

「…ナターシャ?」

 

2人を視認した私は車を再起動し、いつでも走り出せるようにしました。

そして、ナターシャが私の隣の助手席に座り、キャプテンは最初と同じ後部座席に腰を降ろしました。

 

「とりあえずそれの中身を調べるためにも、どこかパソコンを使える場所に行きたいわ。」

 

チラリと後ろをミラーで見ると、キャプテンの手のひらの中には見覚えのあるUSBがありました。

 

なるほど…

 

残念ながら探知されることを警戒して、リュックの中にパソコンやタブレットの類いは入れて貰いませんでした。

 

「……この辺だと、モールかしら。確か展示用で誰でも使えるパソコンが置いてあったはず。」

 

「では、そちらに向かいます。」

 

再度私はエンジンを起動しました。

 

◇◇◇

 

「今度は私も同行します。人が多過ぎるので、警戒の目は多い方が良いでしょう。」

 

「分かった、頼む。」

 

モールの中は案の定人でごった返していました。

私が普段このような所を訪れない大きな理由は、この人混みです。

感知能力が人より優れている分、どうしても入ってくる情報量が多くなってしまいます。

ですが、当然わがままは言ってられません。

 

モールのマップで、目当ての店舗を見つけたナターシャを先頭に怪しまれない速度で移動します。

 

「潜入その1……走るな歩け。」

 

「この靴じゃ走っても脱げる。」

 

傍から見ると、仲良くモールに来た3人組に見えなくもありません。

しかし、ナターシャのその美貌故か、時折振り返って見つめる男性が居ます。

 

「2人とも、周りから挙動不審に思われない程度に急ぎましょう。」

 

数分歩くと、直ぐに目的の店舗が見えてきました。

店内の机の上に何台もパソコンが置かれているのがこちらからも見えました。

 

「私はここで見張りをしますので、2人はUSBの方をお願いします。」

 

パソコンを注視する2人の代わりに、店の外で周囲を警戒することにしました。

目視で見覚えのある顔が無いかを気にしつつ、同時に魔力による感知も行います。

 

「うっ……」

 

短くない時間注がれ続ける情報量に、鋭い痛みが走りました。

ですが、私が耐えれなくなる前に2人の姿が見えてきました。

 

「もう済みましたか?」

 

「えぇ、行きましょう………大丈夫?」

 

「……問題ありません。」

 

流石スパイといったところでしょうか。

察しが良すぎます。

 

「向こうにもバレてるはずだ、行くぞ。」

 

◇◇◇

 

「来ました。ストライクチームです。既にメインゲートから入って、各階に散開して私たちを捜索しています。」

 

「来たか……」

 

「駐車場までの最短ルートで行きます。着いてきてください。」

 

私は、不自然に思われないように歩く速度を上げました。

同じ階に居たメンバーは、器用に数人の集団を利用して気付かれずにすれ違いました。

そして、駐車場のある階へ向かうエスカレーターに乗り込みました。

広めの吹き抜けにあるエスカレーターなので、遠目でバレないか若干怖いですが…

 

「マズい、ラムロウです。」

 

私たちが乗った上へと向かうエスカレーターとすれ違う降りエスカレーターに、ラムロウが乗って来てしまいました。

まだ私たちに気づいていないのか、彼はキョロキョロと辺りを見渡しています。

 

「ちっ……」

 

私は直ぐに、軽い認識阻害──幻覚に近いものを自身にかけました。

これによって、目の前に人は居ても、それが私とは認識出来ないようにしました。

後ろの2人は、庇う形で何とか隠します。

そして、握手出来そうな距離でもバレずにラムロウとすれ違うことが出来ました。

 

ホッとした私は、後ろの2人の方を見ると……

 

???

 

「……。」

 

何故か2人がキスをしていました。

それも挨拶の際の一瞬のものではなく、交際相手とする比較的長めのをです。

 

「……ヴッヴン」

 

「「あっ……」」

 

軽い咳払いで、2人は目の前に私が居ることに気づき、キスを終わらせることに成功しました。

ただ、エスカレーターを降りてからの私たち3人の間には気まずさだけが余韻のように残っていました。

 

「そろそろ車を変え時かと。」

 

私は少し前から気になっていたことを2人に切り出しました。

 

「そうね、モルガンの車はシールド側にも知られてるわ。」

 

GPSは既に切っていますが、見た目は誤魔化せません。

 

「それなら……」

 

◇◇◇

 

「どこで車の盗み方、覚えたの?」

 

「ドイツでね。これは借りただけだ。足を乗せるな。」

 

リュックを膝に抱え、身体をドアの方に委ねていると気づかないところで溜まっていた眠気が襲ってきました。

 

「ふぁぁ……」

 

「しばらく走るから寝てて良いわよ。」

 

「ですが…」

 

「さっきもずっと感知広げてたでしょ。しばらく休みなさい。」

 

「そんなの…わ、たしが………」

 

◇◇◇

 

車が停車する振動で、急に私の意識は浮上しました。

 

「ここは……?」

 

「ニュージャージーにある軍事施設よ。」

 

既に日は傾いていて、辺りはオレンジ色がかかっていました。

鉄条網の向こう側には、古そうな建物が幾つか見えます。

 

「ここか。」

 

「ファイルの出処はこの座標。」

 

「僕もだ。」

 

キャプテン・アメリカ生誕の地ということですか…

 

キャプテンの顔にはどこか懐かしそうな表情が浮かんでいます。

 

◇◇◇

 

私たち3人はしばらくその軍事基地を調べて周りましたが……

 

「手がかりなし。熱反応も信号もなし。無線も飛んでない。あのファイルを作った奴にはめられたみたいね。」

 

すると私は、キャプテンが1つの建物を見つめていることに気づきました。

 

「キャプテン……どうかしましたか?」

 

「あぁ、兵舎から500m以内に武器弾薬を保管するのは禁止だ。この建物はおかしい。」

 

キャプテンはそう言って弾薬庫の方へ歩き始めました。

 

軍人だからこそですかね…

 

 

キャプテンが盾で倉庫の錠前を切断し、中に入るとそこにあったのは倉庫ではなく、埃をかぶったオフィスのような空間でした。

そして1番奥の壁には、私たちにとって見覚えのある鷲のマークがありました。

ですがそのデザインは、最近のスタイリッシュなものよりも幾分か古そうなものでした。

 

「……S.H.I.E.L.D.。」

 

「ここから始まったのか。」

 

 

手分けして探している中でキャプテンが棚の裏にある謎のエレベーターを発見しました。

 

「秘密のオフィスの中にある秘密のエレベーターですか……」

 

見るからに怪しいですね。

 

ナターシャがパスワードを割り出して、私たち3人はその怪しいエレベーターに乗り込みました。

そのエレベーターが私たちを連れていった先は、古い機器が大量に配置されたサーバールームのような空間でした。

 

「あのファイルの出処にしてはテクノロジーが古すぎる。」

 

確かに、今では絶対見かけることのない骨董品ばかりです。

そんな機械たちの中に、明らかに最近の物と思われるUSBポートが机の上に置かれていました。

 

「……ナターシャ。」

 

私の意図に気づいたのか、ナターシャはその異彩を放つポートにフューリーから託されたUSBを差し込みました。

 

すると突然、電源が入ったかのように部屋中の機器がキュルキュルと動き始めました。

旧時代の監視カメラのような機械が電子音を立てながらこちらを向き、レンズで私たち3人を順々に映していきます。

 

『システム起動しますか?』

 

私たちの目の前にあった旧式のモニターがそう尋ねてきました。

キーボードに近かったナターシャが代表して返事を打ち込みます。

 

「Y、E、S よ…………ゲームをしましょう。って映画のセリフよ。」

 

「ゲームをしましょう……?」

 

「知ってる。観た。」

 

「モルガンはないの?」

 

「えぇ……今まで縁がなかったもので。」

 

映画もゲームも、これまで楽しむ機会はほとんどありませんでしたし、今後も発生するとは思えません。

 

 

『スティーブ・ロジャース。1918年7月4日生まれ。』

 

その声は、キャプテンの生年月日を宣言してきました。

同時に、中央のモニターには怪しげな緑色のノイズが走り始めました。

 

私の心をどす黒い不快感で包み込むその声は、否応に奥底にあった記憶を掘り起こしてきました。

 

「………」

 

『ナターリア・アリアノーヴナ・ロマノフ。1984年11月22日生まれ。』

 

 

『そして、モルガン・ル・フェ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1925年生まれ。』

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

キャプテンか或いはナターシャか……2人のどちらかの口から驚愕の声が漏れていました。

 

そして、ほとんど同時に後ろに居た私の方へゆっくり振り返りました。

こちらを見つめる2人の瞳の中にあるのは、彫刻のように無表情の私。

 

 

意図的に隠し続けた気はありません。

単に近しい人からは聞かれなかったから言ってなかっただけ。

 

いえ……そんなの言い訳です。

実際は、異物と思われて腫れ物にされたら怖くて話すのを後回しにしていただけでしょうね。

本当に自分が情けないです。

まだ職場が同じだけのキャプテンはともかくとして、会う度にこんな私のことを気遣ってくれるナターシャになら、いつか打ち明けても良かったと思っていました。

 

 

でも、出来れば……

 

 

自分の口から言いたかったです。

 

 

 

「あぁ………バレてしまいましたね。」




筆者は可哀想な過去を持ってる系主人公が好みなのかもしれません(今更)

遂に、執筆当初から決めていた設定を明かすことが出来ました。

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