S.H.I.E.L.D.長官のボディーガードは魔女   作:LemoИ

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大変お待たせしました。
続きです。

※もう1人オリジナルキャラ出します(どこまで深掘りするかは未定)


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー③

私の誕生した年を暴露したのは、意識をデータとして機械の中に入れて今日まで生き長らえていたヒドラの科学者アーニム・ゾラでした。

 

 

「なんだ、まだ言ってなかったのか。レッドスカルの遺した魔女よ。」

 

遺した……か。

 

「……。」

 

そして奴は、第二次大戦でヒドラが滅びることなく戦後発足したシールドの中に入り込み、寄生虫のように蔓延っていたことを2人に告げました。

 

キャプテンやナターシャと違い、私はマスターから既に聞かされ覚悟していました。

いつか彼らが再び表へ現れる日が来ると。

 

そこまでは記憶にありましたが、後のことはぼんやりとしか覚えていません。

多分、それくらい…私のキャパシティが溢れてしまったのでしょう。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「スケジュールが、変更になった。チャンスは少ない。レベル6が2人とレベル10が1人だ。既にゾラがやられた。10時間以内に仕留めろ。こちらからも特別1人応援を出す。」

 

 

「すみません忘れ物しちゃって、携帯電話……取りに…」

 

 

「おい、レナータ。ノックぐらいしろよ……」

 

 

「はぁ……殺れ。」

 

 

悲運なレナータの命を刈り取ったのは、いつの間にか彼女の背後に立っていた1人の金色の髪と瞳の女によるナイフの一閃だった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「うっ、ん…ここは…。」

 

目が覚めた私は、キャプテンの大きな背中の上でした。

 

「起きたか。」

 

「はい、あっ、申し訳ありません。今降りますので…」

 

背中から脱出しようと身じろぐと、私のリュックを持っていたナターシャがそれを止めてきました。

 

「いいえ、モルガンもう少し休んでいなさい。」

 

「ですが……」

 

「大丈夫だこのくらい。なんなら軽すぎるくらいだ。ちゃんと食べているのか?」

 

食生活が粗雑になっているのは自覚があります。

忙しすぎて片手間で食べれる栄養補助食品に頼ってばかりです。

 

「………人並みには食べていま…いるはずです。」

 

「はぁ……」

 

道中何があったのかを掻い摘んで教えてもらった後、砂埃に覆われた私たちが辿り着いたのは初めて見る家でした。

玄関の前でやっと私を降ろしたキャプテンは、ブラインドで覆われた窓をノックしました。

 

ナターシャの後ろでその様子を眺めていると、出てきたのは、以前キャプテンを迎えに行った時一緒にランニングしていた男性でした。

 

「急に来て悪いが、匿って欲しいんだ。」

 

「知り合いが皆殺しに来るの。」

 

「……俺以外はな。」

 

そう言って彼は事情も知らないのに、突然現れた私たちを迎え入れてくれました。

 

「ありがとう…ございます。」

 

「そいつ、顔色最悪だが大丈夫なのか?」

 

ほぼ赤の他人の人でも分かるくらい今の私の状況は酷いものらしいです。

 

「はい…気にしないでください。」

 

「ちょっとね……」

 

彼の名前はサム・ウィルソン、今は退役軍人省にいると教えてくれました。

 

私たちは彼の家で順番にシャワーで身体中の土埃や汚れを落とし、束の間の安らぎに近いものを得ていました。

私とナターシャがタオルで髪を拭いていると、タンクトップ姿のキャプテンが部屋に入ってきます。

そして、彼はそのままナターシャの目の前に座り、彼女へ話しかけました。

 

私は、少し離れた所で体育座りをして静かに2人の会話に耳を傾けました。

 

「大丈夫か。」

 

「……えぇ。」

 

「どうした?」

 

「シールドに入って真っ当になれたと思った。KGBからヒドラに鞍替えしただけだった……はぁ、何が嘘かは分かってる自信あったけど、何だかもう分からなくなった。」

 

私は、過去に聞いたナターシャの経歴を脳裏に思い起こしていました。

 

「この仕事に向いてないんじゃないか?」

 

「借りが出来た。」

 

「気にするな。」

 

「正直に答えて欲しいの。もし私があなたを助けるかどうかって状況だったら、私が助けるって信じる?」

 

「…今は、信じる……僕はいつも正直だ。」

 

「前の戦争での苦労が無駄だと分かった割に元気ね。」

 

2人は一通り会話を終え、今度は私の方へ向きました。

私の番が来ることは大体予想できていました。

2人ともこのことに触れていいのか躊躇っている様子が伺えます。

 

「……モルガン、君は「私は、本当はあなたの敵になる可能性がありました。」

 

その言葉にキャプテンの表情が変わりました。

 

「……。」

 

「……ウィッチクラフト計画に聞き覚えは?」

 

それは、歴史の黒い影に埋もれた負の塊。

私がその血の滴る計画の全貌を知ったのも後になってからでした。

 

「いや……」

 

「第二次世界大戦末期、ヒドラ──レッドスカルは、 4次元キューブを用いた銃器の作成に成功しました。」

 

「あぁ、戦場では何度も手を焼かされた。」

 

「……ですが、彼の実験はそこで立ち止まることはありませんでした。」

 

「どういうことだ?」

 

「兵器が実戦投入された後今度は、キューブの持つ無尽蔵のエネルギーを人体に適応させる実験を始めました。」

 

「なっ?!」

 

震える声で私は続きを話します。

もうここまで来たら、2人にどのように思われようと、どうでも良くなっていました。

 

「超人血清とは別の方面からの試みでした。もし成功していたら、そのエネルギーによって強化された人となり、あなたに対抗する切り札になるはずでした。しかし、あのキューブの力と適合出来る人は居ませんでした。薬品を用いて肉体を強化したとしても被検体たち全て死亡し、大々的な成功を納める前にレッドスカルはあなたに倒され、戦争は終結しました。」

 

「………。」

 

「ですが1人だけ、地獄のような実験を生き延び、成功例として誕生しました。」

 

そして私は、掠れた声で残りの言葉を振り絞りました。

 

「それが……私です。」

 

「ゾラが言った1925年……私は確かにその年に産まれたと記録にはあります。記録としてと言うのは、私に実験以前の記憶はありません。」

 

「えっ……」

 

やめてくださいナターシャそんな、深刻な顔をする必要なんてありませんから。

 

もう、両親がどんな人だったのか、他に家族が居たのか子どもの頃の私はどんな人物だったのか。

それらをもう知ることは出来ません。

もしかしたら兄弟や姉妹が居たならまだ生きているかもしれない。

そんな淡い期待は40年以上前に潰えました。

 

「そして、1945年にキューブのエネルギーをこの身に宿して以来……わ、私の容姿は20歳の時から変化することは無くなりました。」

 

心の余裕の無さが、逆に私のことを饒舌にさせていました。

破損した水道管の様に、口からどんどん言葉が溢れてきます。

手は自分でも分かるくらい冷たくなり、部屋の端に置かれている鏡にはいつも以上に青白い顔色をした私が映っていました。

 

「以前、2人の前で使ったあの力は……ニューヨークを瓦礫の山にした『四次元キューブのエネルギーを由来としたもの』です。その力は、血と同じように今もこの身体の中を巡っています。」

 

そして、私は見慣れたサイズの青白いサバイバルナイフを何も無かった右手から魔力で生成しました。

 

「私がいつも武器を生成しているのはこういうことです。」

 

「キャプテン、あなたとハウリングコマンドーズは、私を実験していたそのヒドラの実験施設を攻め落としています。そして、その混乱の中で私は施設から逃げ出しました。」

 

「その後しばらくはヨーロッパで一人で細々と生活をしていました。その中で数十年前、私はマスターと出会いました。」

 

他にももうひとつ、ある意味奇跡のような出会いがありました。

私が今力をこうして己の手足のように扱えているのは紛れもない〝彼女〟のおかげです。

その邂逅は、私の力の源が四次元キューブであることを知ることにも繋がりました。

そして、その過程で当時はまだ長官ではなかったマスターとも出会ったのです。

 

ですが、それは2人を混乱させるだけなので今話す必要はないでしょう。

 

「マスターは……私のことを秘書兼ボディーガードという形で拾い上げ、隣に立つことを許してくださり、今まで護り支えてきました。」

 

「だからニックのことをマスターって。」

 

「……はい。彼とは主従関係としてずっと仕えてきました。」

 

「そうだったのね、ありがとうモルガン。話してくれて。」

 

そう言って私の左隣にいたナターシャが包むように抱き寄せてきました。

 

「その……申し訳ありませんでした。」

 

私は、2人の方を見れずに、俯いたまま会話を続けました。

そしてこの謝罪は、今まで恐怖故に秘密にしてしまっていたことに対する謝罪…

 

「それは、どうして?」

 

「今まで、決して浅い関係ではないのに、黙っていたことをです。」

 

「はぁ……」

 

そして、急に頭を撫でてきました。

 

「いいのよ、あなたは悪気があったわけじゃないんでしょう?」

 

「……はい。」

 

「うん、じゃあモルガン、あなたが謝る必要は無いわ。」

 

確認をするように、チラリとキャプテンの方を見ると、彼も同様なのか頷いていました。

 

「あぁ、僕らはその力も含めて君のことを肯定しよう。」

 

「……ありがとうございます。」

 

「何か、歳上って感じはしないわよね。」

 

キャプテンもどこか腑に落ちるような表情をしていました。

 

「どういうことですかそれ…」

 

「何か…放っておけない、妹?みたいな。」

 

「はぁ……もうなんでもいいです。」

 

会話がほんの少し和らいだタイミングで扉をノックする音がしました。

 

「あー朝ごはんが出来たんだが、君たち朝飯食べるのか?」

 

ウィルソンさんのその言葉に、この瞬間まで忘れていた空腹感が段々と蘇ってきました。

 

「モルガン、食べれそう?」

 

「えぇ、多少は……」

 

テーブルについた私たちは、ウィルソンさんが用意してくれたハムエッグをナイフで小さめにカットして口へ運びながら、会話に耳を傾けました。

 

「あ、モルガン、口の端にちょっと付いてる。」

 

「え?あっ…」

 

まず、シールドに所属していないウィルソンさんへ現在の状況を説明することから始まりました。

ナターシャとキャプテンの説明に私が補足する形で、会話は進んでいきました。

 

「問題は誰にミサイル発射権限があるか。」

 

キャプテンは、私の意見が欲しいのかチラリと視線をこちらに向けてきました。

 

「一応私にもあります。ですが、もうこの状況ではもうその辺は当てに出来ないかと。そして核ミサイル……そこに関しては1番可能性があるとしたらピアーズかと。」

 

私の脳裏には数日前に会った時の彼の姿が浮かびました。

最低限の関わりしかありませんが、マスターと話している姿は、近くでこれまで何度も目にしてきました。

 

「世界一セキュリティが厳重なビルにいる…」

 

「では、今回も私が……って2人ともどうしたのですか、冗談です。」

 

私が直接正面玄関から〝交渉術〟で乗り込む作戦を提案しようとしたら、何故かキャプテンとナターシャに睨まれてしまいました。

 

「はぁ………仲間が居るはずだ。あの船にゾラのアルゴリズムがあった。」

 

「………シットウェルも居たわね。」

 

「なるほど。」

 

話の流れは彼を捕まえて利用する方向に進み始めました。

 

「問題は、今やお尋ね者となっている3人でどうやってシールドの職員を誘拐するかだ。」

 

「そうですね…変に騒ぎになると市民を巻き込み、更に余計に面倒なことになりかねません。」

 

「あんたらじゃなきゃ、良いんだろ。」

 

そう言ってウィルソンさんは、ファイルをテーブルに放りました。

 

「これは……?」

 

「俺の履歴書。」

 

私は、ナターシャの隣で彼の経歴が書かれた書類を覗き見していました。

 

「バクマラに居たの?カリードを捕らえたのもあなた?落下傘部隊なの?」

 

詳しくは知りませんが、彼が元軍人であることはそれとなく察していました。

 

「これがライリー?」

 

そして、戦争での離別による痛みを抱えていることも。

 

「あの任務、ヘリは使えなかったんでしょう?ステルスパラシュート?」

「いや……これだ。」

 

ナターシャの疑問に対してもう1つのファイルをキャプテンへ渡しました。

その表紙に書かれていたのは…

 

「ファルコン?」

 

「パイロットじゃなかったのか?」

 

「そうとはひとことも言ってない。」

 

「ですが……あなたは、もう戦場を離れたのでは?」

 

場所や状況は違えどもう一度戦乱へ身を投じるということです。

 

「そうだ、君にやってくれとは頼めない…」

 

「キャプテン・アメリカとその仲間が助けを求めている。これ以上の戻る理由あるか?」

 

「……。」

 

今私たち3人を引っ張っているのはキャプテンです。

つまり彼をこの災禍に巻き込むかを決めるのも彼。

 

なので私は、キャプテンの返答を待ちました。

 

「これは何処で手に入る?」

 

「メリーランドの基地にひとつだけ。警備員付きのゲート3つと分厚い壁の向こう。」

 

「……その程度なら、問題無いかと。」

 

 

◇◇◇

 

 

その後、ウィルソンさんが電話でシットウェルを呼び出し、ビルの屋上で尋問することにしました。

 

「ゾラのアルゴリズムとは?」

 

「知らない!」

 

「レムリアスターで何をしていた?」

 

「ゲーゲー吐いてた。船酔いだ。」

 

「さっさと、答えなさい。」

 

キャプテンに突き飛ばされて座り込んだシットウェルの喉元に私は黒い刃を向けました。

 

「ヒッ!」

 

私の凄みに彼から情けない声が漏れました。

キャプテンはそんな彼を掴み屋上から端に追い詰めました。

 

「どうした?屋上から突き落とすぞと言いたいのか?それは君のやり方じゃないだろう?」

 

「あぁそうだな…僕のやり方じゃない。」

 

「……どうぞ。」

 

私は彼女へ道を譲るように脇へ避け、右手をシットウェルの方へ指し示しました。

 

「彼女だ。」

 

今までの鬱憤を晴らすかのように、彼の鳩尾へナターシャの蹴りが炸裂しました。

 

「あーそうだ。経理部のあの子……ローラだっけ?えっと……」

 

「えっ???」

 

「リリアンだろ?唇にピアスの。」

 

急な会話に一瞬戸惑いましたが、その名前と特徴から直ぐに脳裏に顔が出てきました。

 

「えぇ、良い感じよ彼女。」

 

「確かに、何度か仕事で話しましたが、親しみやすい印象でした。」

 

「あぁ、でもまだいい。」

 

3人でスティーブの相手の女性の話をしていると、先程遠ざかったはずの叫び声が再び近づいてきました。

一般人が地面に落ちればまず助からない高さからでしたが、ウィルソンさんが下から〝拾う〟ことで、シットウェルは死にそうになる恐怖を味わうだけで済みました。

 

「はぁ、はぁ……インサイトのプログラムだ!アルゴリズムでターゲットを選ぶ。」

 

奴は落下の恐怖で折れたのか、捲し立てるように私たちに秘密を明かし始めました。

 

「ターゲットは?」

 

「お前ら3人や、カイロのテレビキャスター!国防次官!アイオワの高校の卒業生代表!ブルース・バナー!ストレンジ!ヒドラの驚異となる連中全部だ。今も……未来においても。」

 

過去を分析するのはともかくとして、未来を?

 

「未来というのは?何故分かるのです?」

 

「ふはははっ、あなたほど優秀な人が何故分からない?21世紀はデジタルで読み解ける。ゾラがヒドラに読み方を教えた。銀行の記録、医療記録、投票パターン、メール、電話、テストの得点。ゾラのアルゴリズムは人々の過去を分析し、未来を予測する……」

 

「その後は?」

 

「マズイ、ピアーズに殺される……」

 

「その後は!」

 

「さっさと答えなさい!!」

 

私の思わず右手はシットの右頬をビンタしていました。

ですが彼は、一度は下げた頭をゆっくりと持ち上げて、赤い頬をこちらに向けてその後を告げました。

 

「ヘリキャリアの武器を使って対象人物を消す。一度に何百万人も。」

 

イラつくシットウェルのその顔を、もう一度殴りつけたい衝動を抑える私は、無意識のうちに手のひらに爪を立てていました。

 

 

◇◇◇

 

 

私たちはそのままシットウェルも乗せてウィルソンさんの運転でトリスケリオンの方面へ移動することにしました。

 

「ヒドラはリークを許さない。」

 

これまで、組織の存在が明るみにならずに来れたのも徹底した隠蔽工作のおかげなのでしょう。

ですが、その器用さが私たちのことを後手に回らせていることは明らかです。

 

「じゃあ漏れないように栓しとけよ。」

 

「インサイト計画実行まで16時間。急いで。」

 

「こいつを使ってDNAスキャンをクリアし、ヘリキャリアにアクセスする。」

 

私の権限は既に凍結されたと見ていいでしょう。

 

「何?正気なのか?!」

 

「煩いですシットウェル、その口を縫われたくなければっ!?」

 

突然上から鈍い物音がしました。

軋むような音を立てながら生えてきた金属の腕がシットウェルの襟元が掴み、彼は情けない声と共に対向車線へ放り投げられました。

 

「うあああああーー!!!」

 

「ちっ!」

 

発砲音と共に上から銃弾が屋根を貫通して車内へ撃ち込まれました。

 

咄嗟にキャプテンがサイドブレーキを引いて緊急停止し、敵は車の前方に滑るように着地しました。

 

漆黒の戦闘服と銀色に輝く左腕の人物。

 

「……ウィンターソルジャー。」

 

ナターシャから聞いたその暗殺者の名前を私は呟きました。

 

ですが、敵は考え込む余裕を与えるつもりは無いようです。

次の瞬間、後ろから灰色の装甲車が衝突してきました。

 

ウィンターソルジャーはジャンプして再度、私たちの車のボンネットに張り付き、窓から突き破ってウィルソンさんの握るハンドルを引きちぎりました。

 

「ちょっ、おい!」

 

後手に回っていては埒が明かないと判断した私は車のドアを蹴破り、敵の注意を引くために空中へ跳躍しました。

私を狙う弾丸は全て剣で弾き、そのまま魔力で形成した斬撃を装甲車に放ちました。

その攻撃は戦闘の車両へ命中し、制御不能の火達磨になって道路を転がっていきました。

ですが、別車両から現れた敵が、アスファルトに着地した後も私に向かって銃を撃ってきました。

ですが、それも他と同様に剣の側面で弾きます。

装甲車の上から降り立ったウィンターソルジャーが、味方からグレネードランチャーを受け取り構える姿が見えました。

そして、奴が狙っている人物の名前を叫びました。

 

「っ!キャプテン!!!」

 

私の声に反応したキャプテンは咄嗟に盾を構えてその攻撃を正面から受け止めましたが、そのまま

ハイウェイの下まで吹き飛ばされてしまいました。

戦闘は開始早々に混乱へ包まれました。

 

「はぁあ!」

 

魔槍の攻撃をウィンターソルジャーへ放ち、こちらへ注意を引きました。

 

ゴーグル越しの視線が私の方へ向いた瞬間、ベルトに挟んであった拳銃を素早く抜いて、ウィンターソルジャーへ発砲しました。

しかし、その銃弾は全て左腕に阻まれてしまいました。

 

「ちっ!」

 

空になった拳銃は放って、魔槍を馴染ませるように構え直しました。

 

横目でチラリとナターシャたちの方を見ると、少し離れたところで既に銃撃戦が開幕していました。

 

「援護には行かれなそうですね。それよりも、私にだけ弾幕が厚い気がします……な、ナターシャ!!」

 

グレネードランチャーの2発目は私から少し離れた所を走っていたナターシャの近くに放たれました。

 

一瞬焦りましたが、爆煙の中から彼女はワイヤーで器用に下に降りて行く様子が見えました。

 

 

◇◇◇

 

 

〈女を殺る 奴を追え〉

 

〈もう1人の女の方は?〉

 

〈そっちは、例の奴にやらせろ〉

 

 

◇◇◇

 

 

4人の中で1人だけ明らかに異能を操るからか、先程まで激しかった私への銃撃がパタリと止みました。

 

遮蔽にしていた車の残骸から顔を出すと、突然すぐ横をナイフが通過していきました。

 

「っ?!」

 

先程まで私の方を狙っていたウィンターソルジャーや他の兵士たちは降下して、キャプテンとナターシャの方へ向かいました。

 

「あなたが私の相手をして下さるということですか?」

 

「……」

 

私の目の前に佇んでいたのは、背中に黒い西洋剣を斜めに固定し、ウィンターソルジャーと似た服装をした、金髪で身体のシルエット的におそらく女性の人物でした。

 

着ている黒い戦闘服は、ナターシャの物と若干似ていますが、至る所に装備されているプロテクターや、警棒やサバイバルナイフ、そして何より、黒いゴーグルとマスクが威圧感を与えてきました。

 

「自己紹介は無いのですか、お名前は?」

 

私のその言葉に対する向こうの返事は、銃弾でした。

 

「随分と無愛想ですね。」

 

魔槍で全ての銃弾を受け流すと、向こうはナイフを構えて距離を詰めてきました。

無言の彼女は様々な軍隊で用いられるCQBで私に仕掛けてきました。

 

おそらく、私の武装だと近距離はやりにくいと思っているのでしょう。

 

私は魔槍を消して、顔を狙う相手の手首を直に掴むことで、その攻撃を回避しました。

 

そして、相手の手を捻って握っていたナイフを落としました。

 

「ぐあっ!」

 

手を離した瞬間、細い足とは思えない威力の回し蹴りが私の脇腹に入りました。

 

「げほっ、」

 

灰色のアスファルトに転がされた私は、すぐに手で跳ねるように起き上がり、魔槍を再度出しました。

 

そんな私の姿を見てか、敵は背中に固定していた剣を抜いて両手で構えました。

そして、アスファルトを凹ませる勢いでこちらへ接近し、斬りかかってきました。

 

「ぐっ!」

 

甲高い音を立てながら2つの黒い刃がぶつかり合い、時折細かい火花を散らしました。

こちらの魔槍の方がリーチが長いので有利に思えますが、向こうの一撃は全て重く、その都度私の手を何度も痺れさせました。

 

『流石ダナ魔女、唯一ノ成功者』

 

聞こえてきたのは、人の声を電子化させた無機質なものでした。

 

「あなた…何者です?」

 

その私の問いかけに対する返答はありませんでした。

 

ただの1兵士では無いのは明らかです。

どちらかと言うとキャプテンに近いような…

 

今の私は、魔力で武器を生成するだけではなく、身体の方も強化しています。

 

それにも関わらず相手は、私の攻撃に対応出来ている…

 

その後も格闘術を交えつつ斬り結ぶものの、双方とも決定打を与えることは叶いませんでした。

 

『今日ノコチラノ任務ハ貴方ノ気ヲ引ク事……サラバダ』

 

突然向こうが戦闘を終えるような発言をしてきました。

 

「逃しません。」

 

私は再度魔槍から、斬撃を発射しました。

 

しかし彼女は、その攻撃をなんと持っていた剣で防ぎ、そのままハイウェイから飛び降りました。

私はハイウェイの上から下を覗き込みましたが、そこに居たのは逃げ惑う一般人だけでした。

 

 

ゴーグルの奥に一瞬見えた感情の無い虚ろな瞳……

 

 

どこか記憶にあるその不気味さは、否が応でも私の心に恐怖として刻み込まれました。

 

「厄介……ですね。」

 

 

◇◇◇

 

 

蹴られた所へ魔力を流して痛みを緩和した後、私は直ぐにキャプテンとナターシャの方へ向かうことにしました。

先程の敵が降りたのとは逆側の端から、難なく地面に降り立ちました。

そして、戦闘の後が色濃く残る道路を自らの足で走ると、視線の先にあったのはまだキャプテン達が、ストライクチームに拘束されている様子でした。

 

「そうなりますか……」

 

「おい、魔女お前もだ、こっちに来い!!」

 

少し離れていた所に居た私の存在にラムロウは直ぐに気付いてしまいました。

 

「地面に膝をつけ!」

 

その言葉に従い、私は右手の魔槍を霧散させて跪き両手を後頭部に当てました

背後からは数人の怒号が聞こえ、後頭部に無機質な銃口が当てられた感触がします。

 

私はともかくとして、もし従わなかった時3人が傷つけられるのは嫌でした。

 

ですが、少なくとも公共の面前であのキャプテン・アメリカを銃殺刑にすることはないでしょう。

おそらく、ここから移動はするはず。

チャンスはそこです。

 

「……ん?」

 

突然私のパーカーのポケットにあったスマートフォンが小刻みに数回に渡って振動し始めました。

 

「ふっ……」

 

その振動の意味を理解した私は、静かに魔力感知範囲を広げることでこの後に備えました。

 

「おい!何がおかしい!!」

 

「え?あぁ、すみません……ただ、本当に彼らは私が必要とした時に来て下さるなと思っただけで。」

 

「どういうことだモルガ『車両の接近を確認!!』

 

私たち4人の周りに数台の黒塗りのバンとバイクが停車しました。

進路上に居た数人の敵が轢かれてましたが、当然の報いでしょう。

後部座席のスライドドアが素早く開き中からバタバタと戦闘員が溢れ出てきました。

 

彼らが投げたフラッシュバンが、数メートル先に転がったのに気づいた私は、一瞬で魔力で両眼と両耳を包み込み、光と音から保護しました。

 

「本当っ!あなたは無茶しますね!」

 

私はその声に反応して瞼を開きました。

突如現れたその部隊の胸部には共通して私の魔槍と同じ青白い紋様が描かれていました。

 

 

Team Wizard───現着。

 

 

 

敵が混乱した隙をついて後ろに蹴りを入れて、体勢を立て直しました。

 

私が魔槍で銃弾を防ぎ、その後ろからウィザードのメンバーが発砲するというこのチームでは基本の布陣で、敵が焦ってるうちに倒していきます。

基本的に銃弾は私が全て弾きますが、それだけではなく、部隊メンバーの装備も私が魔力で補強しています。

ですが、今すべきなのは敵部隊の制圧ではなくこの場からの離脱。

まずは……

 

「ナターシャが負傷しています、先に車へ!」

 

「分かりました、援護します!」

 

まず被弾しているナターシャを先に車に乗せ、そこに続く形で、スティーブとウィルソンさんも、乗り込もうとしていました。

 

「キャプテン!!」

 

私は、持っていたスマホに一瞬で魔力を流し込み術式を付与しました。

体内にあったものが一気に引き抜かれる不快感と倦怠感が、襲ってきますが、見て見ぬふりをして、端末を彼へ放り投げました。

乗る直前に急に渡されて混乱した様子のキャプテンは、そのまま部隊メンバーに車内へ押し込まれてしまいました。

 

「ビーコンを向こうに渡しました。私が殿で順次離脱を!」

 

「「了解!!!」」

 

廃車を盾にしながら撃ち合うウィザード部隊は、お互いで援護しつつ、乗ってきた装甲車へ帰還していきました。

 

本来であれば、部隊を率いる人物が殿を務めるなんて論外でしょう。

ですが、私たちの部隊だけは、いつの間にかこのやり方が最適なものになっていました。

 

魔槍を力を抜いて片手で持ち、身体をスピンさせながら銃弾を味方から弾いていきます。

 

「隊長!!」

 

「全員の離脱を確認したら私も行きます。」

 

車両を狙うストライクチームのを気を引きつけるために魔槍を斧へ変形させ、アスファルトに打ち付けました。

 

「通すものですか!モルゴースッ!!」

 

何も無いアスファルトから溢れ出た魔力の波が車諸共敵兵を打ち払いました。

ですが、それでもまだ残っていたラムロウと他十数名が、私を取り囲んで銃口を向けてきました。

 

「お前1人残って何のつもりだ。」

 

「いえ、特に意味は無いですよ?」

 

私は右手を構え指を1回パチンとスナップしました。

 

「ただの時間稼ぎです。」

 

その軽い音と共に、私の全身を黒い霧が包み込み、姿をくらましました。

段々覆われていく視界の先には、激怒しながらこちらに手を伸ばすラウロウの姿がありました。




こんなに投稿テンポが遅い駄文を読んでコメントを下さる方がいらっしゃることに本当に感謝です。

遂にモルガンの設定を開示した感じになりました。
北欧(アスガルド)関係やエターナルズ関係等色々考えたのですが、最終的にはこの形に落ち着きました。
まだ設定等がガバガバな部分もありますが、とりあえず今のところはマキシモフ兄妹に近い感じと思ってもらえれば分かりやすいのかなと。

次回はついにあれです。
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