スレッタとミオリネがあるきっかけで一線を越える話
 

一回消したやつの再投稿です

ガールズラブ、キャラ崩壊注意です


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スレッタとミオリネの逢引

 

 その日、スレッタはミオリネの部屋にいた。二人は頬を赤らめながら、同じベッドのふちに腰掛けていた。けれど、二人は顔を合わせようとはせず、お互いにうつむいていた。

 二人は婚約者である。けれど、ミオリネにとってはスレッタは名目上の婚約者であったし、スレッタは水星生まれゆえに、同性同士での婚約という事態そのものに困惑していた。それゆえに一度たりともキスやセックスといった行為を行ったことはなかったし、そもそもそういった行為を自分たちが行うこと自体が意識の外にあった。

 

 しかしつい先ほど、二人はそういった行為を行っている生徒たちを見かけてしまったのである。

 

 スレッタもミオリネも、わざとだったわけではない。ただ二人並んで人通りの少ない廊下を歩いていたところ、くぐもった女性の声と、ほんの少しの水音が聞こえてきたので、気になって廊下の角から覗き見たところ、二人の女生徒がキスをしていたのである。背が高く、髪の短い女性が、背の低い、髪の長い女性を壁に押しやり、右手を壁につき、左手で顎を上げさせながら、覆いかぶさるようにキスをしていた。互いに息を荒げ、頬を赤らめ、舌を絡めていた。背の高い女性はさらに、右脚を、背の低い女性の股の間に入れ、時折ゆするように足を動かしていた。背の低い女性は、脚をゆすられるたびに、ピクリと反応し、甘い声を重ねた唇の間から漏らしていた。背の高い女性が、唇を離すと、名残惜し気に突き出された舌としたの間に、細い唾液の橋がかかり、プツリと途切れた。背の低い女性は、熱を帯びたうるんだ瞳で、媚びるような視線を送り、背の高い女性は、獣性の宿った、嗜虐的な瞳で、見下ろしていた。

 

 そこまで見たところで、二人は慌てて、けれど気づかれないように早歩きで、そこから近かったミオリネの部屋に転がり込んだのだ。

 大した運動量ではなかったはずなのに、二人は顔を真っ赤にして、肩で息をしていた。二人は、疲れた様子でともにベッドへ向かい、腰かけた。そうして息を整え、顔の熱を払って。

 

 そこでようやく、二人はお互いに目を向けた。

 

 スレッタもミオリネも、顔を合わせた瞬間、相手の唇へ無意識に目を向けてしまった。自分が目を向けてしまったこと、相手もまた、自分の唇に目を向けていることに気づいた二人は、顔を真っ赤に染め上げて顔を伏せてしまった。

 お互いが、お互いに、婚約者であり、ああいった行為をしても不自然ではない、どころかむしろそういった行いをすることこそが、自然なことである、ということに今更ながらに気づいたのだ。

 スレッタは、同性のミオリネとああいったことをする、ということ自体、想像することすらできていなかったが、つい先ほど見た光景が、頭から離れず、あまりにも強烈なイメージをスレッタの中に浮かび上がらせていた。つい先ほどの光景を、背の高い方を自身に、ミオリネを背の低い方に置き換えてイメージすると、無意識に自分の唇を指でなぞっていた。自分とミオリネがああいったことをすることもあるのか、と思うと、頭がぼんやりとして、思考にもやがかかるような気がした。

 ミオリネは、先ほど見た光景が、頭の中でぐるぐると回っていた。自分とスレッタは、名目上であっても婚約者である。以前の婚約者であるグエルに関しては、敵対心が先行し、そういったことは一切考えることはなかったし、相手もまたそうであろうと思えた。スレッタが婚約者になってからも、そういった方面のことは一切考えてはいなかった。しかし、先ほど見た光景はあまりにも鮮烈だった。女性同士での、深い、深い、まぐわいのようなキス。それはミオリネに、そういったことを意識させるには十分すぎた。ミオリネはベッドのシーツを強く握りしめ、顔を赤くした。胸の内がぐちゃぐちゃで、訳の分からない苛立ちをぶつけようと、スレッタの方を向くと、スレッタは呆、としながら自身の唇を指でなぞっていた。怒鳴りつけようとした口は、しかし声は出ず、ハクハクと口を開閉した後、ミオリネは何故だか恥ずかしくなって、うつむいてしまった。見てしまったスレッタの顔は、なにか遠くを見るような目で、褐色の肌が見てわかるほどに赤く色づき、指でなぞられる少し湿っているような半開きの唇は、あまりにも倒錯的で、官能的だった。

 

「ミオリネ、さん…」

 

 少し震えた、熱のこもった声に、ミオリネはびくりと、怯えるように震えて、ますます顔をうつむかせてしまった。スレッタはもまた、顔を伏せたままだったが、それでもミオリネの方を向こうとした。ゆっくりとミオリネに顔を向けようとすると見るからに力の入った、シーツを握りしめるミオリネの手が見えた。ミオリネの顔を見ようと顔を上げると、ミオリネはうつむいて、そっぽを向いていた。けれど、白い髪の間から見える耳は、真っ赤に染まっていて、少しだけ見える長いまつ毛の先は、緊張を表すかのように震えていた。スレッタはそれを見て、体の内、臍の下の辺りを中心に熱が昇ってくるような気がした。力を入れすぎて震えているミオリネの手に、スレッタは優しく、手を重ねた。ミオリネの手は、ひどく熱を帯びていた。

 

「…何」

 

 ミオリネは、気丈に返事をしたはずの、自分の声のあまりの弱弱しさに、愕然とした。これではまるで、初心な小娘のようではないか、と怒りが込み上げてきた。苛立ちに突き動かされたように、顔を上げ、スレッタの方を見た。

 

 心臓が、キュウ、と軋みを上げた。

 

 スレッタの顔が、ミオリネのすぐ目の前にあった。目の前で見るスレッタの瞳は、明らかに、性の熱を感じさせた。

 スレッタは、ミオリネの頬に手を添えた。はぁ、とこぼれた息は、湿り気を帯びていた。ミオリネの手に重ねた手は、探るように、ミオリネの力をほぐすように動き、指と指を絡めていた。

 

「私、たちって、婚約者、なんですよね…」

 

 ミオリネは初めて見るスレッタの表情に、動揺を隠せずにいた。いつも気弱で、オドオドしているスレッタはそこにはいなかった。熱で浮かされたようでいて、まるで決闘の時のように、真剣な瞳で、自分をとらえていた。逃げるように顔を反らそうとするも、頬に添えられたスレッタの手が、それを許してくれなかった。せめて、と目を反らすも、目の前に、鼻の先が触れ合うほどの距離でこちらを見つめるスレッタの視線の熱からは逃れられなかった。

 

「私たちも、ああいうこと、するん、でしょうか…」

 

 ミオリネは、何も答えられず、けれど泣きそうなほど、瞳をうるませていた。

 

「…私、ミオリネさんと、したい、です…ああいう、こと…」

 

 熱とともに吐き出せれるようなその声に、ミオリネは喉の奥が詰まるような思いだった。心臓はうるさいほどに暴れ、頭は熱く、うまく思考ができなかった。

 

「いや、だったら…ふりはらって、くださいね…」

 

 言いながら近づいてくる、スレッタの顔から、ミオリネは目を反らせなかった。近づいてくる、スレッタの瞳に、とらわれてしまったようだった。ミオリネは、スレッタの、その言葉に、瞳に、

 

 観念するように、待つように。

 あるいは、誘うように―目を、閉じた。

 

 触れ合った唇は、ひどく熱く、やわらかかった。数秒程、触れ合い、スレッタは、無意識にミオリネの唇を食むように、唇を動かしていた。手のひらから伝わる、ミオリネのスベスベとした頬の熱も、かつてないほどに近づいた、すこし涙の付いた閉じた長いまつ毛も、フルフルと震える体も、触れ合っている柔らかな唇も、すべてが愛おしく、恋しかった。堪能するように、味わうように動かしていた唇を離して、目を閉じたミオリネを見た。赤く色づく、白い肌も、閉じた目も、捧げるような唇も、ひどく、美しかった。

 ミオリネは、触れ合っていた熱と柔らかさが離れたことが名残惜しくて、薄く目を開けた。ひどく愛おしそうに、切なそうに、こちらを見るスレッタの瞳と、目が合った。なぜか、胸の内から、感じたことのないような愛おしさを感じた。スレッタの垂れた眉が、目が、潤んだ瞳が、可愛いと、思ってしまった。

 

 だから、もう、言葉は、いらなかった。

 

 もう一度、唇を重ねた。少し離れて、また重ねて、また離れて、また重ねて…。ミオリネは、スレッタの首に腕を回した。スレッタは、ミオリネの体を抱きしめ、ミオリネをベッドに、優しく押し倒した。

 二人は息を荒げ、顔を少しだけ離した。目を合わせて、息を少し整えて、二人はまた、唇を重ねた。スレッタはうかがうように、舌をミオリネの唇に触れさせた。ミオリネは少し震えて、恐る恐るその舌に、自身の舌を触れさせた。触れ合った舌は、ゆっくりと絡み合いながら、お互いの口の中に入った。スレッタは、味わうように、貪るようにミオリネの口内を蹂躙した。ミオリネは、されるがままになるしかなかった。口の中から響く、舌の絡み合う水音が、ひどく官能的だった。

 プハッ、と、息継ぎをするように、舌のまぐわいは終わった。息を整えるような、はーっ、はーっ、という息遣いにお互いの官能が高まっていった。

 

「ミオリネ、さん…」

 

 息を整えたスレッタの、熱い、熱い声に込められた意味を、ミオリネは熱に浮かされた脳で、正しく理解した。

 

「…すきに、しなさい…」

 

 顔を伏せながら言う、弱弱しいその声には、しかし確かに、期待がこもっていた。

 

 スレッタは、ミオリネの服に、手を、かけた。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 スレッタは、プールの後のような倦怠感とともに、目を覚ました。目の前には、肌を晒して、無防備に眠るミオリネがいた。スヤスヤと眠るミオリネを愛おしそうに見つめていると、スレッタはミオリネの首筋に赤い斑点を見つけた。昨夜の情事の最中、我慢しきれずにつけてしまった痕だった。スレッタはそれを指で擦るように撫でると、ミオリネはむずがるように身をよじらせ、目を覚ました。

 少しの間、ぼんやりと愛おし気なスレッタの顔を見つめていると、ハッとしたように目を見開き、ハクハクと声にならない声を上げた。

 

「おはようございます、ミオリネさん」

 

 その声が、あまりにも幸せそうで、ミオリネはあきらめたように微笑んだ。

 

「…ええ、おはよう、スレッタ」

 

 いつも言っているはずの言葉なのに、なぜだか妙に気恥ずかしくて、二人は顔を見合わせて少し笑った。

 

「あ、着替え、用意してきますね」

 

 と言って、体を起こしたスレッタの背中には、細かなひっかき傷があった。それを見たミオリネは、思わず、あ、と声を上げた。

 

「?どうしました、ミオリネさん」

 

 とスレッタが振り向くと、ミオリネは恥じらうように口元を隠し目を、反らしながら言った。

 

「その、ごめんなさい、背中…いっぱい、ひっかいちゃって」

 

 スレッタの背中のひっかき傷は、昨夜の情事で、快感に耐えるようにしがみついたときについた痕だった。

 

「あ、いえそんな…それに、私も首に…」

 

 そう言いながら、スレッタはミオリネの首筋の痕に触れた。お互いが自分では見えない部分に、痕を点けられていた。二人は、まるでお互いがお互いを、自分のものだと示すような痕だと思った。そう思うと、何故だか嬉しくて顔を合わせて笑ってしまった。

 

「ミオリネさん…」

「スレッタ…」

 

 二人は、キスをした。

 触れるような、愛を確かめるような、幸せなキスだった。

 

 

 

 


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