鈍として青く   作:ヤン・デ・レェ

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幕間 尋問

マーリンを尋問することになり、私はアグラヴェインとガウェインを押しのけて、トリスタンに書記を任せ、ランスロットにマーリンの拘束を命じた。

 

いざや本番と張り切ってマーリンと向かい合い、私はあらかじめ考えていた通りに尋問を行った。長時間かかるかと思われた尋問はしかし、たったの一言で終わってしまった。あまりに拍子抜けである。しかし、その一言が問題だった。

 

マーリンは言った。

 

「だって好きになっちゃったんだもんッ!」

 

その破壊力たるやトリスタンに詩を即興で三篇書かせるほどであった。

 

このイカれた花の魔法使いの恐ろしい発言の真意を理解しかねていると、今度は訳知り顔でランスロットが私に語り始めた。

 

「王よ、マーリン殿はこのように言っているのです。初めは確かに憎しみ、それから嫉妬だったかもしれない。しかし、今日この日、ようやく私は真理に辿り着いたのです。王の運命を拐すものだと思い、そう信じて戦ってきたつもりが、実は只管に心騒めかせる貴方への、仄かな愛の芽生えであったことを!私は老婆に姿を変えて貴方を騙してしまったけれども、実は貴方はすべてを知っていて、それでも尚、私だから、私のためだからと死地に向かわれたのですね、と。心浅はかな私をお許しください。そのためにも、この夢魔の体を今一度愛で満たし、そのうえで竜への勝利に相応しい褒美として、名誉と、それから美姫である私の心と体を捧げます…と。マーリン殿は訴えているのです。」

 

私が呆れていると、書記机で詩を書き連ねていたトリスタンが立ち上がった。

 

ガタッ!と音を立てて椅子を倒すや、「然り!!」と一声吼え、それから竪琴を出して歌い始めたではないか。

 

「あな悲しき恋の詩!私は戦おう貴女のために!例え貴女に欺かれようとも私は貴女のために剣を取り、勝ち目の戦いにさえも喜んで挑み、そして勝利を、或いは死を捧げよう!この肉体が朽ちようとも、幾星霜の時間がかかっても、貴女の船が…ウグぅ…貴女の、船が来なかったとしても…あぁ、イゾルデ…ぐず…ぐすッ…まさか、マーリン殿がそのような悲恋を抱えていようとは…王よ!どうかマーリン殿に機会を!思いを伝え、一度でいいのです、一夜を!永遠に残るような一夜をお許しになられよ!」

 

おいおい、この者たちは何を言っているのだ。

 

私が混沌の中で気が遠くなる思いでいると、隣で顎をあんぐり開けて白目をむいていたアグラヴェインが私の代わりに叫んだ。

 

「きき、き、貴様ら!気でも狂われたか!」

 

そうだ!もっと言ってやれ!

 

「ザートム顧問はこちらにおわすアルトリア・ペンドラゴン様と添い遂げられる運命なのだ!!」

 

き、貴様ぁぁぁぁ!?なぜ、何故に今そのことを暴露するかぁぁッ!?

 

 

 

 

私が嘔吐しそうになっていると、今度はガウェインがおかしくなりはじめた。

 

「アグラヴェイン!では、我らが母上はいかがいたす!見たであろう?あの幸せそうなお姿を!あれほど幸せそうな母上を見た例が、私にはない!あの、あの癇癪もちで気難しく陰惨だった母上が!!あれ程までに、まるで別人ではないか!モードレッドにしてもそうだ!貴様はもう少しあの、どうしようもないけれども私たちを生んでくれた仕様のない母上に優しくできないのか!」

 

ガウェイン、貴様さては母上嫌いだな?

 

「ガウェイン!わかっておる!わかっておるが、それでも私は全ブリテンのことを考えた時、誰と結ばれるのが最も良いのか考えた時に、やはり我らが騎士王陛下であると、そう確信しておるのだ!見よ!この、我らが王のおぼこっぷりを!手すら繋げずに悩んでおいでである!貴殿らも、王に仕えし騎士ならば少しは主君の恋路を応援せんかぁッ!」

 

うぷッ…も、もう私にはどうすることもできん。本当にどうしてくれよう…。

 

ブリテン騎士が少し…否、かなりその質に問題があると理解できたところで、全ての元凶たるマーリンが立ち上がった。

 

「さぁ、マーリン殿!思いのたけを詩に!」

 

黙れトリスタン。

 

「略奪愛の道は険しいのですぞ!貴女にその覚悟がおありか!」

 

黙れランスロット!

 

「マーリン殿、悪いが身を引いてはくれまいか?それと、体が貴女のようにふくよかになる薬を是非とも我が王に。自信がつけば世界の見え方も変わり大胆になるはずです。」

 

も、もう、いい加減にしろ…アグラヴェイン。

 

「アグラヴェイン!気でも狂ったのか!いよいよ母上に勝ち目がなくなるではないかッ!この策士めが!」

 

気でも狂ってるのはお前だガウェインッ!

 

 

地下牢の間は阿鼻叫喚の様相を呈し、それは深夜まで続いた。最終的に他ならぬマーリンの肉体から魔法が解けたことにより一旦は終息を迎えたが…ブリテン騎士の間に深い亀裂が生じた一件となった。

 

円卓と羞恥の危機を迎えた我らが騎士王はたったの一日で随分痩せられた。その日の夕飯は進みが悪かったとは、彼女の師の談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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