【完結】翼無き不死鳥は陽を見るか   作:ふくつのこころ

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うつろんが石仮面被れば、後天的に不死身にはなれるけど、教職辞めなきゃいけないからなー……。
ここで何かに乗れば、『仮面』ライダーになるんだけどなー(OHO)


その意思は砕けない

 一誠とアーシアはその後、一誠の方に至ってはハートの意匠を持つスタンドを考えないようにしつつ、ドライグに至っては『ウェルシュ・コネクション』という呼称を貰ってからより高慢になったようだ。アーシアと一誠について唆した後、彼等の初々しい『デート』をからかいながら、時折、その背後にいるアーシアのスタンドに怯えながら、茶々を入れていた。

二天龍の威厳もへったくれもありゃしない。

 

「じゃあ、ちょっとベンチでも座ろうか?」

 

「はい。イッセーさん、今日は楽しかったです、ありがとうございました」

 

 時間も丁度良いものとなり、二人は本来の目的である教会へと向かおうとしていた。道中に見つけたベンチを一誠が発見すれば、ベンチに座るのを提案する。二人とも身体的疲労がちょうどよい具合で回っており、このままアーシアの言う教会へと戻れば何とかなるだろう。まだ五時半だ、そこまで咎められる時刻でないはずだ。

 

「そういえば、アーシアのその力って……?」

 

「教会の皆さんは神から賜った力に名前を付けるというのは神に無礼だ、ということで名前はないんです。イッセーさんはあるんですか?」

 

「うん。『ウェルシュ・コネクション』って言って、俺の先生が付けてくれた名前なんだ」

 

『でも、ドライグと呼んでもらえれば俺としては嬉しいんだがな』

 

 ハートの意匠のスタンドは沈黙を守ったまま、ただドライグを見据えている。自由に動き回れるドライグと違い、本体のスタンド使いから射程距離(、、、、)から離れることができないらしく、そしてドライグより意思は強くないようだ。ドライグ自身が元は神器(セイクリッドギア)に封じられた魂というだけあって意思力が強いだけかもしれないが。

 

「へぇ、イッセーさんの先生、ですか……」

 

 ベンチからの見晴らしは下の世界を見下ろせ、まるで自分達が世界に二人だけで色んな人間を見下ろして居るような錯覚に陥る。アーシア自身、一誠がどのように自分の言葉を理解したのかは深い意味では分からないものの、それもまた『神の導き』ということで納得できた。

学校、というものに行ったことがないものの、生活最低限の知識はなんとか教会で習っているが、一誠の語る学校生活というものに憧れが生まれ、会ってみたいと思った。

 こんな親切な彼の先生に。

                     

                     ※

 

 無羽うつろは珍しく、一人で帰路に着いていた。明日の授業の準備を終わらせ、下校には着いてきていない近所に住む少女が部活動がある、ということでいないのもあり、最近ではこれまでは皆無だった悪魔としての自分の眷属となった一誠が悪魔となる前にスタンド使いとしての鍛錬を自宅の庭で施していたこともあって、一人でいる時間の方がかえって最近では珍しくなったものだ。

 生徒であり、眷属であり、自らの兵士(ポーン)となった少年が悪魔として転生する前に語った台詞はこれからもうつろの心に刻まれることだろう。

 

『先生は悪魔でスタンド使いだから、今までは俺は人間でスタンド使いだったんだけど、これでようやく同じスタート地点に立てると思ってる。今でこそ、経験では先生に敵わないけど、俺は必ず先生を超える悪魔のスタンド使いになってみせる。あくまで今の目標、だけど』

 

誰が上手いことを言えと、と言うような彼の宣誓は頭から離れない。

グレモリー眷属のように、うつろ自身を主として絶対服従するのではなく、あくまでも今までのように教師と教え子で構わない、と言ったところ、一誠は少し意外そうな様子だった。

 そんなに今の言葉がおかしかったか、と問いかけてみれば、そんなことを言う悪魔は先生だけだ、と言われて褒められているのか甞められているのか判断がつかずに一誠の手に無糖の缶コーヒーを押し付けておいた。

 

「……なんだ?あいつら?兵藤と、……やるじゃねえか」

 

久しぶりにこの町を一望できる場所へとやってきたうつろだったが、そこには既に一誠と見慣れぬ金髪修道女がいた。彼女もまたスタンド使いのようだが、仲睦まじい様子で色んな話題に華を咲かせているようだ。

 普段の一誠の態度を考えてみれば、ここで茶化しにいくのがセオリーなうつろだったが、あんなに楽しそうな顔をされては邪魔が出来ない。朱乃も早く兄離れして誰かとくっつけばいいのにと思うばかりだが、その願いが叶うか果たして怪しいところ。

踵を返して、ここは男として教師として生徒の恋を応援するべく、クールに去りたいところなので足早に去ろうとしたが、

 

「あっ、先生!何してるんすかー?」

 

「……よう」

 

「イッセーさん、この人がもしかして?」

 

 気遣いを無駄にした生徒がこちらに気づいたらしく、その傍らの少女もまたうつろに気づいたらしい。あどけない様子や仕草が少女の純粋さを引きたて、どこか危うく、そして優しさを感じる。あざとさが感じられず、人に愛されやすいタイプの人間なんだろう。

 

「ああ、俺のあーー先生だ」

 

「――このバカの担任の無羽うつろ」

 

一誠が主、と言いかけたのでうつろはただちに拳骨を下した。教会の人間になんてことを言ってるんだ、との意思の表れだが若干、こちらを殺しかねないような視線で睨まれたので無愛想に少女に自己紹介をした。教師である体裁として愛想良く振舞うべきだろうが、殆ど見ず知らずの相手に正体を明かさせかけそうになって許すほどお人よしでなかった。

 

「はじめまして、無羽さん。アーシア・アルジェントと言います。無羽さんもスタンド使い、なんですよね?」

 

「よくぞお気づきで。聡明なのは嫌いじゃない」

 

アーシアのスタンドがうつろの『イン・マイ・ワールド』を警戒しているように見えるのは何故だろうか?ハートの意匠のスタンドは『イン・マイ・ワールド』よりも身体つきがゴツく、身体の各所にハートの意匠が見られる。

 自らの傍に立つ者、立ち向かう者、スタンド。

スタンド能力が己の精神の具現だというならば、彼女のスタンドもまた同じなんだろう。優しそうに見えるだけでなく、確かに己を護り、闘争心を秘め、戦うときは相応の『覚悟』を秘める。うつろ自身はまだアーシアのスタンド能力を見ていないので、その能力は分からないが、自らの眷属たるイッセー、金髪の少女アーシアと言い、スタンド使いがこの町に集まっているようだ。

 

「……スタンド使いは惹かれあう、の法則か」

 

「?どうしたんですか、先生」

 

「別に大したことではない。俺はお前らを見かけただけだから、声をかけただけだ。お楽しみのところ悪いからな」

 

「うっ……」

 

元はと言えば一誠が声をかけたのだが、どうも、うつろは機嫌が悪いらしい。暗に一誠をアーシアの手前、攻めずに放っておいてくれればいいのにと言った様子が見え、うつろはまた踵を返して歩き出す。

 

「待ってください、教会のところまで行くんですけど、一緒に行きませんか?先生(、、)!」

 

「あ゛あ゛?」

 

呼び止めるアーシアの声に振り返れば、脳裏に金髪縦ロールの上品そうな少女が浮かぶ。出会った記憶はないが、確かに重なるところがあって自然と足を止めて魅入ってしまった。その目は不機嫌なうつろを案じているものなのか、妹同然の朱乃の幼少期の頃とも重なってしまい、振り切って逃げることすら許されないようだった。

 

「……しょうがねえな」

 

「さすが先生!」

 

 無羽うつろは、年月を経とうとも御人好しだった。

 

                    ※

 

「こんな時間にどこに行っていたの?アーシア」

 

「あっ、レイナーレ様……」

 

 教会の方までアーシアを一誠と共に送りにやって来れば、黒髪の女が出迎える。どこか朱乃のような雰囲気を持つ、その女はアーシアを待ちくたびれていたらしく、先ほどのうつろのように不機嫌そうだ。周囲に敵の反応はないものの、女のほうに至っては、うつろと一誠の方に殺意を向けている。

アーシアと共にいることが気に食わないのだろうか。

 

「そこの堕天使の匂いのする金髪は別として、金髪の隣にいる間抜けな顔の坊やは悪魔でしょう?」

 

「ま、間抜けってなんだよ!」

 

品定めをするようにうつろに近づき、くんくん、と鼻をひくつかせ、一誠を一瞥し、頬にその白魚のような指を這わせる。見蕩れていたらしい、一誠に至っては食って掛かっている。やはり、まだまだ子供である。よほど煽りなれていないのだろうか。傍らを浮かぶドライグはアーシアの方を見ている。前髪で目元が見えなくなっており、若干、暗くなっているのは気のせいだろうか。

 同じくして身体も震えていることもあり、それほど一誠を悪く言われたのがショックだったのか。

 

「悪魔の癖にいい男ね、貴方。どう?私に飼われてみない?」

 

「先生!ちょっと羨ましいから代わってくれ!」

 

『相棒、さっき、コイツにお前らの言葉で言う『Disる』ことをされたってのにいいのかよ、それで……』

 

女はうつろを誘惑するように誘うが、一誠ならまだしもうつろは数年間ほど、この女のように誘惑をする少女を知っている。すっかり、その手のハニートラップにはなれっこだったのでスルーしていた。保護者を見つけたとみたのか、うつろが一誠の肩に手を置いて帰ろうとすると、女はうつろが誘いに乗らなかったことでプライドを傷つけられたのか、光の槍を構えてうつろと一誠の背後から狙おうと遅いかかるが、それをアーシアは見逃さなかった。

 

「……か」

 

「あら、どうしたのかしら?アーシア」

 

「貴方、今、何をやろうとしているのか分かっているんですか!?イッセーさんを間抜け呼ばわりするなんて!何様なんですか!」

 

アーシアの背後から顕現する、そのスタンドはアーシアの怒りに震える言葉に呼応するように姿を見せる。荒々しさの中に優しさを感じさせる第一印象は消え、そこにあるのはハートの意匠を持つ憤怒に燃えるスタンドの姿がある。

『イン・マイ・ワールド』、『ウェルシュ・コネクション』のようなスピード、いや、それ以上のスピードといえよう。

 ドライグとしては、近接パワータイプ率が高いことを不思議に思うこと、そして遠距離タイプだとか他の物が見られないのが残念でしかない。

 

「フッ飛ばしてください!」

 

『DORAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 

アーシアの叫びに呼応するように、アーシアのスタンドは黒髪の女ーーレイナーレにラッシュを叩き込む。最初こそ、レイナーレはアーシアのスタンドのラッシュを受け止めようと光の槍でガードをしていたものの、徐々にスピードが上がっていく、そのスタンドパワーの爆発力は恐ろしいものである。うつろの考え、いや、予想であるもののレイナーレは堕天使のはずだ。一般人が勝てないだとか、治癒能力持ちのスタンドがまさか此処まで強いと誰が思っただろうか?

 アーシア・アルジェントのスタンド能力とは、『治す』能力である。

自分にこそ使用できないものの、触れたものを治す能力であり、それは一誠と出会ったときに一誠は既に気づいているはずだった。

治す能力と言えば、ただ傷を治したりと後方支援が一般的なイメージだろうが、アーシアのスタンドはその概念から大きく逸脱している。

 誰かに優しく、その為には自分より上位の存在であっても立ち向かおうとするダイヤモンドのように硬い意志を持つが、その優しさと意志と相反する位置にある彼女自身が秘める爆発力と狂ったように見せる怒り。

まさに、狂った金剛石(クレイジー・ダイヤモンド)

 高速でレイナーレに降り注がれる、そのラッシュの中でもあくまで『触れている』ことでアーシアのスタンド能力は発動する。

 

「……アーシア、強いな」

 

「え?今回、出番無し?」

 

『喜べよ、相棒。アレがこっちに向かってこないことを。見ろよ、不死鳥の小僧、全てを察したような顔になってるぜ?お前もアレくらい堂々として欲しいものだな、赤龍帝なのだから』

 

回復、その直後に突きの連打、回復、その直後に突きの連打……。繰り返されるルーチンワークのように行なわれる、まさしくいともたやすく行われるえげつない行為。殴れば回復、治せば殴る、という行為の繰り返しはアーシアの抑えられない怒りを顕しているんだろう。

無羽うつろとその眷属+α、呆然とその光景を見ていることしか出来ない。彼ら男性陣にはとても、あの中にはいることができなかった。

うつろ自身も何かあれば、一誠を引き摺ってでもアーシアを助けに行くべきか、と覚悟をしていた所でこの有様だ。

 

「アレ?二人とも、どうなさったんですか?」

 

「『HAHAHA、嫌だナァ、ナンニモシテナイヨー』」

 

スタンドとスタンド使い、大した同調具合である。後はドライグが近距離パワータイプとして動いてくれれば、うつろとしてはスタンド使いのフォーメーションを考えたい所だったがアーシアがスタンド使いであるのがわかり、さりげなく勧誘してみようか。

 

「なぁ、アルジェント嬢。お前、兵藤のことは好きか?」

 

「はい、優しくしていただきましたし。先生も親切な方ですよね!送ってもらいましたし、イッセーさんが尊敬するというのも分かる気がします」

 

「もし、行くところないなら、兵藤の家でホームステイするのはどうだろうか。学校に通わせてやろう」

 

うつろの言葉は魅力的だった。一誠はあたふたと成り行きを見守っているが、あくまで一誠にできることは流れを見守ることだった。両親がアーシアのホームステイを受け入れるかはさておき、一体、この担任教師は何を言っているのか。アーシアの好意を利用するつもりなんだろうか。

 ならば許せないが、アーシアは本当に嬉しそうだ。

 

「イッセーさんは、いいですか?私が家に行っても」

 

「ああ!我が家はいつでもウェルカム!」

 

『……やっちまったな、相棒。お前もまた歴代赤龍帝のように、業の深い覇道を歩むというのか。全く、宿主はこれだから面白い』

 

「ところで、もしかして、二人は悪魔なんですか?」

 

アーシアの希望を裏切りたくないが為にイエス、と言ってしまったが、そこはうつろが適当に取り繕ってくれるんだろう。いつぞやの堕天使襲来(もしかしたら、殴り飛ばされて伸びている女の仲間かもしれない)の後処理もうつろがしたと言うし、夜遊びした理由として両親への説明も嘘とも真実ともいえない調子大した手腕である。

 相変わらず、ドライグの語ることは何か分からないが、頭のネジが飛んでる独り言で厨二病の権化が自らのスタンドとは考えたくなかった。一誠にとって、ドライグの言う赤龍帝というワードは黒歴史と化したノートの内容に過ぎず、悪魔となった今でも信じていないほどだ。適当にドライグの言葉を流しながら、聞き捨てならないことを聞いてしまった。

 

(え?どうする、どうするんだよ!?アーシアのヤツ、キレるんじゃないか?信心深そうだし、もしかしたら……)

 

「ああ」

 

無羽うつろと言う男はどこまでも飾らなかった。一誠の心配を他所に、アーシアは一誠が悪魔であるのを良いことに自らもまた悪魔となりたいのだという。リアス・グレモリーのように悪魔となること、下僕となることを強要こそしないものの、信仰を捨てていいのか、と後ろめたい気持ちにもなる。

後で聞いてみれば、アーシアは非常にいい笑顔で「信仰と同じ、いえ、それよりも大切なものを貰えました。もちろん、イッセーさんに」と言った。

アーシア・アルジェントは紅い鳥のような頭部を持ったチェスの駒のうち、僧侶(ビショップ)として転生した。

 

 そして、そのスタンドの名前は『クレイジー・ダイヤモンド』と名付けられた。

 




フリードくんにはメタ発言の役を担ってもらいます。

前書きのレンゲルのフラグを回収できたよ!やったね、作者!

お待たせしました、次回からはフェニックスをボコる回です
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