【完結】翼無き不死鳥は陽を見るか   作:ふくつのこころ

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こっちの方がメインになってるぞ、と思われがちですが、Sさんはエタりはしません。
ということで、結婚式ルートならぬフェニックス一族と戦争ルートはじまります。


FalldownPhoenix
白百合のような過去


???――――

 

 夜の住宅街はすっかり昼間の賑やかさは失せ、また別の魅力を醸し出す。

妖しい満月の下で、その『白』は百合の華のように咲き誇っていた。背中ほどの長さのある、その銀髪は結ばれており、女性の象徴はこの上なく成長して北欧系のような顔立ちは整い、『白』の美貌を引き立てる。纏う衣装は戦闘を行ないやすいよう、動きやすさ・軽さを求めた結果として軽い素材で出来ている。

 碧眼は鋭く獲物を見据える猛獣のようで、背中から展開する宝玉付きの光翼はその銀髪とともに夜に映える。白のワンピースでも着せれば清純さが際立って男性受けも良いだろうが、彼女には今はその余裕はなかった。

 

『この付近か?気配を感じたのは』

 

「うん。それに間違うわけないでしょう?短い期間だったとはいえ、私の家族も同然だから」

 

ーー一緒に魚捕りをしたいと思ったんだ!魚捕りをしたことがなかったから!

 

こんなに濃厚なファーストコンタクトを仕掛けてきた者が他に居ただろうか?傷だらけで頬は腫れあがり、ついさっき殴られたような腫れ具合でいたたまれない様子というのに眩しい真夏の太陽のような笑顔を浮かべていた。家では、すっかり浮ついた存在で追放されてしまった自分を見放さず、あくまでも関わりを持ちたい、と彼女が慕う『おにいちゃん』は確かにそう言ったのだ。

 彼女のまわりに積み上がる、無数の敵の山は女と『おにいちゃん』とで時間が経ったことを示し、あのとき大好きな人の為に役に立てなかったのを悔いるように戦いを求め、鍛錬を行なってきた。

そう、戦を求め、経験を積んでいくことで経験値を重ね、『おにいちゃん』よりも強くなり、その背中と身と心を護る為に。疲弊しきった心を、安寧の場所を、これからは自分が護って行けるように。

 

 魚も捕れるようになった。

 生き抜く術も身に付けた。

 あの隣を歩いていけるよう、座学も懸命に勤めた。

 そして、今は成長した自分を褒めてもらえるようにめかしこむ術を覚えた。

 

放浪としていたところを拾い、知識を与えてくれ、育ててくれた育ての親はそんな自分をからかいながらも、『おにいちゃん』の行方を捜すことを承諾してくれた。度々、話題に短い時間ながらも会話の中に登場することから、よっぽどの事情だと理解してくれたんだろう。

 元々、能力を制御する才能に溢れていたものの、その異能に偶然にも通じていた育ての親の培い研究してきた知識と合わさり、今の彼女ーーヴァーリ・ルシファーは数々の宿主から受け継がれてきた自身の神をも滅ぼす異能(セイクリッドギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディバイング)を所有する白龍皇の中でも最強とさえ謳われるようになった。

 数々の名声を得て、それに驕らずに努力を積み重ねてきた少女の前には夢にまで見た黄金色の髪が揺れている。

 はぐれ悪魔と戦闘を行なっているらしく、どうも、上級悪魔らしい『懐かしい金髪』の下僕であろう学生と思われる少年と金髪の優しそうな美少女を従え、戦闘を行なっている。未知の神器を備えているのか、直視できないほどの速さで殴られている、はぐれ悪魔。

 懐かしい金髪ーー『□□□□・□・□□□□』の方が戦闘を行なっていないのを見ると、部下二人の実戦経験を積ませているところか。少女と先ほどの声の『主』は現在、夜のとある町の住宅街にいる。

 修道服に近くの学校の制服をそれぞれ纏った少女と少年は四苦八苦しながらも、はぐれ悪魔と戦っている。『□□□□』の方は死角からの攻撃を見れば、二人に指摘して回避させるようにしていた。

 鮮やかな戦闘方法、その心地よい声色は間違えるはずもなく、『あの人』で物陰から隠れて先頭が終わるのを窺うと、はぐれ悪魔にトドメを差す前のやり取りを終えれば、駆け寄ろうと決心ーー。

 

 

「そんなに……ッ、タイプで強いなんてとんだ王サマねぇ?金髪坊や……っ!」

 

「どうしましょう、『先生』?トドメを刺しましょうか?」

 

「ああ。早くしないと体力を取り戻しちまいますよ?」

 

 そんな忘却へと消えた『過去』のことなぞ、すっかり抜け落ちてしまっている無羽うつろは眷属となっており、そして生徒でもある兵藤一誠、アーシア・アルジェントの二人を脇に従え、はぐれ悪魔バイサーと向かい在っている。バイサーは美しい容姿をした悪魔の女だが、魔力に当てられて変貌した姿は上半身は裸体の女、下半身は怪物のものという本来の美しさを損ねたかのようだ。

 はぐれ悪魔討伐をリアス側から依頼され、それを達成していく度にグレモリー家から報酬が出るというのが無羽うつろとグレモリー家令嬢が交わした契約の中にも含まれている。ただ、生活資金欲しさと眷属(せいと)を鍛える為に事務的に行っているが、そうでもなければ名義上はサーゼクスのプライベートの私兵として雇われているうつろは依頼を受けようとは思わない。

 あくまで報酬が合ってこそ、この世で信用していいのは指で数えられるだけの者達だけだ。

それが失われた記憶と関係しているかと聞かれれば、確かめる方法は見当もつかない。

 

「そこで待っていろ」

 

「あらぁ?先生が自らレッスンしてくれるの?カワイイ顔して生意気ね、坊や?」

 

 一誠とアーシアを制すると、瀕死のバイサーの前にしゃがみ込む。不敵に笑い、口元を歪めるバイサーは哀れにも助命を要求したレイナーレとその部下とは大違いだ。アーシアを眷属にしたことは伝えていないが、堕天使の一団が民間人を殺していた、との事実を伝えて突き出すと、助命むなしくレイナーレらはリアスの手によって滅びの魔力を使用され、跡形もなく消し飛んだ。

 しかし、バイサーは主から逃げてきた悪魔である悪魔との対話の仕方を心得ているのだろう、本音を決して見せずに幼い頃から知っている少女の親愛の意味でのスキンシップと違い、誘うようにうつろの頬に触れて撫で回し、顔を近づけようとしていたところをうつろのスタンド『イン・マイ・ワールド』が叩き落とす。不可視の腕によって叩き落とされたとの事実は未だに信じられず、血に塗れた頬にうつろの手が触れれば、ぬめりとした血が手に付着する。唖然とするバイサーをうつろはただ見つめるだけ。

 

「先生、一体、何を……?」

 

「待てよ、アーシア。先生が無意味なことをするはずないだろ」

 

「……ゴシュジンサマは大した人望をお持ちのようなのね?羨ましいわ、こんなカワイイ坊やに従っているのが。貴方をメチャクチャにしてしまいたい、支配してしまいたいわ」

 

「やってみろよ、お前の頭をすぐにでも吹き飛ばしてやるがな」

 

 冷淡なうつろの声はゾクリ、と空気を凍てつかせる。完全にキレたアーシアであっても、この力を使っていて経験で言えば、うつろの方が上だ。スタンド能力に強い・弱いはないという結論に至ったものの、各スタンド使いが己に目覚めた能力をどのように使うかで勝敗は作用される。何事も応用性なのだ。バイサーは本能から背筋が凍てつくのを感じるが、それ以上に『黄金色の髪の悪魔』はかつて、主の下に居た時には既に知っていたような気もする。それが何者であるかは一向に分からないものの、予想外に心地よさを感じることができた。

 

「坊やは私をどうしたいの?」

 

「坊やと呼ぶな、バイサー。魔力を溜め、即座に放出出来る俊敏さ……。磨けば光るだろうな、その才能は」

 

「……へぇ、ご主人さまは私をお気に召したの?坊ちゃん(、、、、)?」

 

坊ちゃん、という単語がうつろの琴線に触れたのか、予備動作なしのラッシュが叩き込まれる。不機嫌そうな表情へと早変わりし、これほどに取り乱している様子をアーシアと一誠は見たことがなかった。バイサーをスカウトしようと思っていたのが心のどこかにあったんだろうが、金髪のある一族(、、)が脳裏に浮かべば、それを振り払うようにスタンドを使ったのが正解だろうか。

 無慈悲な拳による連続のラッシュはバイサーを気絶させ、その額に騎士(ナイト)の駒を挿入した。

 

「腐ってやがんな、受け入れるとはいえ。アーシア、あとで回復をしてやってくれ」

 

「わ、分かりました、先生」

 

『クレイジー・ダイヤモンド』を出してアーシアがバイサーを回復する傍ら、一誠はアーシアに寄り添う。治療が終わるまでの暇つぶしとして周囲を見て回ることとした、うつろは気配のする物陰に視線を向ける。先ほどから視線を向けていたんだろうか、それともついさっきからか。見慣れない『銀髪の少女』が大人びた印象を与える黒いカッターを着ており、角に手を添えて様子を窺っている。

 金髪と銀髪。

対照的なうつろと少女の容姿。

 

「ねぇ、あの、『おにいちゃん』?」

 

「『おにいちゃん』、だと?俺には妹はいないし、兄と呼ばれる筋合いもないが……。こんな時間に何をしているんだ?夜遅くに一人で歩き回るもんじゃねえよ。学生か?お前」

 

「……本当に覚えていないの?心配してくれてありがたいけど、私なら大丈夫だよ。ほら、私だよ、『□□□□』♪」

 

 少女は仔犬が尻尾を振るようにポケットに手を突っ込んでいる、うつろの左手を出して白い両手で握る。人懐こい笑顔は可愛らしく、魅力的ではあるものの、『聞きなれない名前』と『見知らぬ少女』のスキンシップはただでさえ、朱乃が懐いてくることも問題に挙げられている為と(職員会議又は保護者の間でも、だ。これについては朱璃は全面的に許可をしているらしいが、真偽は不明)夜遅くとは言え、アーシアが全裸も同然の女を治療しているのだ。

 そんなところを見られて通報をされるのは避けておきたかった。一教師としても、男としても。

世間的には女子高生ほどの年齢と思われる少女だ、バイサーを見られること、こうして手を触れられているのを深夜であっても通行人や住宅の中から見えるため、避けたかったというのもある。

 

「センセー、治療終わったらしいっすよー」

 

 眷属(一誠)が呼ぶ声がする。

 きっと、バイサーの治療を終えたのだろう。それを知らせに来てくれたとは、鍛錬の後とは言え、疲弊しているだろうに気を遣わせている。手を振り払い、一誠が「えっ、無羽センセー、彼女さんですか?姫島先輩とイチャイチャするのに飽き足らず、こんな銀髪少女を一体何処で引っ掛けてきたというのか。羨ましいなー、ご飯奢って欲しいですなー」とからかっているので手刀を入れようとすると、俊敏な動作でそさくさと避けていった。

溜息をつきつつ、バイサーを背負い、一誠の家にアーシアがホームステイすることとなったので二人を家に送ることに決めた。ショックな様子の銀髪少女をかわし、うつろはただ帰路へとつく。

 それ以上関わるのは危険と見たから。

 

「帰るぞ、兵藤とアルジェント。……銀髪のお前も、早く帰るようにしておけ。百合みてェに綺麗なんだからよ」

 

「センセー、茶々を入れるなんてナンパしているようにしか見えませーん!」

 

「イ、イッセーさん……」

 

バイサーを肩に背負い、じゃれ合いのつもりでチョップを入れた。入れた場所がこめかみだった為か、一誠は来る方向を予測できなかった。一体、こないだまでフツウの高校生だった少年がどうして“悪魔で先生”のうつろの攻撃を予想できるだろうか。

 うつろを超えたい。

そんな一誠の意思は更に強くなり、アーシアは心配そうに見守るばかりだ。

 銀髪の少女は、うつろの跡を追う少年と少女をただ見据えていた。

 

                  ※

 おにいちゃんが私を覚えていなかった。

もちろん、長い間、顔を合わせていなかったというのもあるけど、いくらなんでもツレないと思う。

どこまでも私を心配してくれたり、気遣ってくれるのは嬉しいし、あの二人のことが大事なのはわかる。

 あの男の学生の方にいたっては、アルビオンと同じような感覚がする。アイツが赤龍帝?そんなの認めてなるものか。おにいちゃんは私のもの、おにいちゃんがあの二人に騙されているなら、取り戻す必要がある。

 ヒメジマセンパイ?誰か知らないけど、私とおにいちゃんの仲は邪魔させないよ。

 大好きな人だから、渡さない。

 一緒に暮らしたいからこそ、私はこうやって探しに来ていると言うのに。アルビオンが言った宿命の相手との戦いを楽しみにしていたというのに。期待を裏切るだなんて信じられないよ、お兄ちゃんもそう思うよね?

 

『……ヴァーリ?』

 

 ふふっ、でも、おにいちゃんのことは許してあげるよ。百合のように美しい、ってとっても嬉しいな。

 折角、綺麗になることを覚えたんだもの。忘れちゃったなら、私が思い出させてあげる。

大好きだよ、『□□□□』♪ 

 




バイサーが眷属になりました。
騎士として。
【悲報】宿主が病んでたったww【白龍皇、病む】
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