【完結】翼無き不死鳥は陽を見るか   作:ふくつのこころ

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おまたせっ!
お見合いだよ!
サーゼクスがはっちゃけるよ!朱乃が病むよ!イッセーの胃がマッハでやばいよ!


BloodBypass
ロスヴァイセ


「お見合い?」

「そう。無羽先生のお見合いなんだってさ。サーゼクス様かららしいんだけど、兵藤くんは何か聞いていないかい?」

「いや、センセーは特に……」

 

   数日後、俺はアーシアといつも通りに登校してきた。すると、こちらの姿を見つけた木場が俺にセンセーのお見合いについて知らないか、と尋ねられたのだ。もちろん、センセーからは何も聞いていない。割と大事なことは漏らさずに話してくれるのがセンセーのいいところなんだと思うんだけれども、センセー、いくら隠したいからってそれはねえぜ。

 

「というと、イッセーさん」

「うん?どうしたんだ、アーシア」

「先生、結婚するんですか?」

「そういうことになるね」

 

    アーシアの疑問を木場がご親切にも答えてくれた。爽やかにかつスマートに答えるって、お前はなんなんだよ!「ふっ、これでも無羽先生の教えを守っているんだよ」はいそうですか、イケメン死すべし許すまじ。センセー?あの人は簡単には死なないよ、なんたって無敵の『IMW』を持っているし、なんといってもセンセーは能力が未だに正体不明な癖に観察眼が鋭い。俺が気がつかないことや論点にもセンセーは気づいてしまうし、独自の視点や煽り術も大したものだ。

   あれほどに余裕のあるイイ男に俺もなりたい。なれるよな?紅さん。『懐かしいな、お前!?てっきり忘れたのかと思ったぞ、相棒!』で、俺はなれるのか詳しく教えて欲しい。

   『なれるとも。これからも共に戦って行こうぞ、相棒』とまぁ、紅さんからのお墨付きをいただいたところで俺たちが気がつかなければならないものがあるとすれば、姫島朱乃先輩が目前にある恐らく好記録を出せそうな握力でギリギリと壁を破壊しながらこちらを覗いているのですがどうしたらいいんですかシェンシェー!?

 

*                                           *                                       *

 

 

   うつろが、結婚?ねえ、嘘でしょう木場くん。兵藤くん、アーシアちゃん。だって、うつろは私だけの私の『にーさま』で私の『うつろ』なんじゃないの?フフフフフ、うつろ。帰ってきてよ、早く帰ってきて私のそばでその優しい声を、暖かさを感じさせてよ。うつろの傍はとうさまやかあさまの傍と同じくらい、いいえ、それ以上の暖かさを持っているし私が大好きな安心できるものだっていうのにどうして他の人のところに行ってしまうの?他の子のところに行ってしまうの?私と夫婦になってくれるんでしょう、うつろ?だって、去年も一昨年もクリスマスは一緒に過ごしたし、小さい時はかあさまととうさまと一緒にプールにまでついてきてくれたし、夏祭りも花火も行ったよね?それに、うつろとカウントダウンだってしたじゃない。

   私がどうなっても世界がどうなっても、うつろは、私を護って助けに来てくれたうつろだけは誰にも渡さないって決めているのに。

    うつろは私の王子様、うつろは私のにーさま、うつろは私のーー私だけの『にーさま』。翼があっても、翼がなくても、大切な人。私が翼をあげたい、否、飛べないというなら私がうつろに翼を作ってあげるの。毎日、ご飯を作ってあげるように私はうつろに食事を作るように呼吸をするように簡単作ってあげなきゃいけないんだ。うつろの家庭事情だとか、うつろの因縁はわからない。よくよく考えれば私だって小さい頃に鮮明に覚えている記憶にある出来事だって一つ間違えていたら、一つでもズレがあれば、かあさまは死んでいただろうし、とうさまと会話できていたかさえも怪しい。

   うつろがいてくれたから、私は家族を愛することができている。うつろがいてくれたから、私は自分を嫌わずに愛することができている。

   だからーー置いていかないで、うつろ。私のそばに、いて欲しいわ。

 

*                                          *                                       *

 

      との思いがある中で当の無羽うつろ本人は冥界のーー否、人間界の料亭へとやってきていた。鹿威しが水を溜め、落ちる音から侘び寂びを感じてサーゼクスから伝えられた時から着物で行くと決めていた。そういえば、たまに夢で出てくる自分を褒めちぎってくれた十二の翼を持つ男が出てきた時に彼もまた同じような服装をしていた。まだまだ日本の知識に浅かったとき、朱璃によると『ユカタ』と言うらしい日本古来からあるという服の延長線にあるとのこと。

   そんな細かいことよりも、今年はそういえば朱乃と夏祭りに行っていなかったのを思い出した。

   もしかしたら、朱乃が悪魔になった日から行けていなかったかもしれない。

 

「トラヴィス様、こちらです」

 

   いらない気遣いか、サーゼクスは料亭には最近発覚したトラヴィス=Aという名前で登録しているらしい。ニホンに拘るグレモリー家に生まれた男、流石は長男といえよう。家の流儀にここまで綺麗に染まれるとは最早感動を覚える。給料をもらって下で働かせてもらっている以上、文句を言うつもりはさらさらないが。初老というよりも少し皺の入った、何処か荘厳な雰囲気を漂わせる従業員の女性に案内され、『久遠の間』とある部屋へとやってくる。障子を開ける前に女性が一言『失礼します』と言い、障子を開けるとうつろは女性に礼を言ってから部屋に入った。

 

「初めまして、お嬢さん。私は魔王サーゼクス・ルシファーが部下として勤めております、トラヴィス=Aという者です。トラヴィスともアウルともお呼び下さい」

「は、はい、よろしくお願いします!わだす……い、いえ!私はオーディン様のお側に仕えております、ヴァルキリーのロスヴァイセと言います!」

「や、遅かったね。それじゃあ、後はお若い二人でごゆっくり」

 

    部屋に先に入っていたのは、お見合い相手の銀髪の女性だった。自己紹介の前半に訛りが見えたのは、おそらく彼女の故郷のものとみて間違いない。そして実に自然に混ざっている紅い上司が「ヤァヤァ、遅かったねえ」と言って、そして理由も話さないで立ち去ろうとしたので肩を掴んだ。そのとき紅い上司、こちらを真顔で振り向いた。本日はスーツでの来店らしく、仕事モードというヤツが切れてむすっとしている。うつろが教師になる前からすでに魔王であることと、聞いたところによれば子持ちらしいのでいい年をしているんだろう。

   妻・グレイフィアとの出会いは冥界では生きながらにして、さながら伝説のように舞台として語られているらしく、冥界で有名な逸話でありラブストーリーらしい。知ったことではないが。

 

「なんだいなんだい、ロスヴァイセさんと私が話して悪いのかい?」

「……ムスッとするな、いい年した魔王がなにやっている?グレイフィアさんはどうした?」

「えー、私にも敬意を見せてよー」

「しゃんとしろ、魔王!」

 

   ぷうう、と頬を膨らませる魔王に対して金髪の老け顔教師は侮蔑の視線を送るが、即座にやめた。この男はこうと決めたら行う、頑固さと強かさがある。そんな男に何を言おうと無駄であり、普段はグレイフィアに尻に敷かれている紅い魔王でも有事の際にはグレイフィアはサーゼクスの指示を受け入れる。なお、注意としてこれは小声で行われている。サーゼクスにとっては部下のお見合いはミウチとして重大案件らしく、ロスヴァイセと話している間も全身を見ていた。

 

「いい子じゃないか、真面目そうだし。なにより、胸が大きい。着痩せするタイプと見たよ!」

「五月蝿い!本人の前で何を言っている、あんたって人はァァーッ!ノリが中学生か。中学生の修学旅行の夜かよ」

「あ、いいね。今度、旅行行こうよ、慰安旅行。私、お金出すぞ!」

「話聞いてた?聞いてないよな?」

 

   小声の意味をなさないほどにノリノリな彼はまずは言いたかったであろう、ロスヴァイセのプロポーションについて語る彼の目は爛々と輝いていた。なんとなく一誠がうつろに絡んでくる時のようなものを感じたので、おそらく、この2人は気が合うとみた。ノリと勢いで生きていそうなあたりが特に。思いつきだったり、前にマオウカプセルなるヒーローアイテムの製作をうつろに依頼してきた時のものに近しいものがある。マオウカプセルの効果としては瞬時にマオウカプセルの先端から放たれる黒紫の魔力によって変身者を運動神経の向上を行った上で巨大ヒーローに変えるとのものだが、それ以外は何もない。 変身者に実力やらは依存する作りとなっている。

   サーゼクスが「ああっ、酷い!」とわめくのを聞きながら、その背中を押して部屋から追い出した。

 

「それでは、ロスヴァイセさん。本日は改めてよろしくお願いします」

「は、はいっ!よろしくお願い申し上げます、そ、その……アウルさん」




不穏な章の変わりは気にするな
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