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紅い龍を自らの精神のヴィジョンとした少年と優しくも譲れないものを護ろうとする少女。
過去とは違う、『改変』を測ろうと試みる白い龍を宿す銀色の少女。
彼らの目的や思想は違えど、一人の黄金色の元へと向かっていた。彼らに共通して言えることといえば、『無羽うつろ(トラヴィス)から離れない』の一言に尽きる。師匠という意味でも兄という意味でもなく、ただ彼を愛するから。性愛というわけでもない、情愛というわけでもない。三人と一人の間には引き千切れないほど強固な鎖、否、縁が繋がっている。
紅と白の因縁があるように。
黄金色の因縁があったように。
一纏めにして繋がっているのだ、繋がりは完全に隔てることはできない。
かつて、弱かったあの日との決別を計って必ずや最愛の人のそばに立つと決めた少女は恐るべき力を物とし、わずかな魔力の残滓を追って冥界へとやってきていた。皮肉にも出てきた場所は『トラヴィスと少女が出会った』川のほとりでそこから彼の魔力の香りが彼と同じ反応を放っている。
決意に時間は無用、早くあの人を抱きとめなければ。
紅い龍を自らの精神のヴィジョンとした少年は力技で魔法陣を彼を慕う少女と共に潜り、少しタイミングがずれた辺りで川のほとりへとやってきていた。匂いを辿るのは師の引き連れる小さな妖精。
決意に時間は不要、あの人はきっと無茶をする。
誰にも助けを求められず、外にでなく『内』に見出したかつての少年は無意識のうちにその影響によって『助け』を呼んだ。
* * *
「貴様が、だと……!?」
「ああ、そうさ。実に呆気なかったよ、ライザーよ。父親の背中ってのは、案外小さいモンだな。簡単に壊れちまったよ。なぁ、治し方を教えてくれよ?」
「貴様、何を言っている!?不死鳥が再生できぬほどの致命傷を負った時、それは死を意味するのだぞ!?両方とも貴様は殺したのか!?」
はは、黙れよとうつろの乾いた笑いがホールに響く。うつろの顔は怒っているようにも泣いているようにも見え、不気味なものだ。目には光がなく、一般的に言うところのハイライトがないと言ったところか。必死で凄味をかけて脅そうとするライザーに対し、うつろの瞳はその名前を表すかのように表情は笑っていない。カラカラとした笑い声はユーベルーナを震え上がらせる。
こいつは何者だ?
ライザーとユーベルーナはそのような感想を抱くが、誰も結論や回答にたどり着くことはない。うつろは理由を問いただせば、今のうつろならば間違いなく『フェニックスのせいだ』と一点張りして否定しないだろう。次に何を行うのかわからないところ、スタンド能力の秘匿を含めても眷属全員を集合させたところでも、以前の一方的な蹂躙によって彼らはうつろとその能力にトラウマを抱いているので姿を積極的に見せることはないだろう。
あくまでもレーティングゲームではプロである以上、いずれはスタンド能力による恐怖を眷属から拭わせたいと思っていたライザー。
「押し寄せよ」
「まだ話は終わっていないぞッ!」
ライザーの話を遮り、うつろは『CTW』に命じて重圧をライザーとユーベルーナに与えんとする。これでもライザーとて王、眷属であるユーベルーナを護るために自らの鳥類のようなスタンドから放つ炎によって攻撃を遮った。重圧をも燃やす何万度以上はありそうな灼熱の炎は風と炎を司る悪魔らしいとも言えるし、激しい激情家であるライザーには合っていると言えようか。
火炎による温度の上昇は少なくとも、ライザーやうつろは平気であったが純フェニックスでないユーベルーナには耐えられないものだった。片方は本物のフェニックス、もう片方は紛い物でありながらもフェニックスの炎に怖れをなさない。
ある意味では、フェニックスの炎と言うのは知る悪魔ぞ知る恐ろしいもので恐怖を知っていれば、まともな判断力と動きはできまい。そんな中で無羽うつろというフェニックスの紛い物である男は不可視の剛腕を振るい、火炎に重圧をかけて打ち消していた。重圧で炎が消えるとは不思議だが、互いの能力同士の相性が良かったらしい。家の中での戦いである以上、ライザーは手加減をしているように見られ本気の火炎は出していない。
出した時がうつろにとっての好機、ライザー・フェニックスを殺す上で最高のタイミングだ。
フェニックスの才児と謳われたライザーを、フェニックスの落ちこぼれと呼ばれているうつろが殺して食い尽くす。七つの人間の欲求の中に執着とやらを加えなければなるまい、とうつろは口角を上げた。
「貴様の母親はゴミも同然だな、ライザー・フェニックス」
「なんだと!?それが母上に対する態度か、『トラヴィス=A』兄さん!」
「いい顔だ、最大級の炎で俺を殺せ」
たった一瞬。
ほんのたった一瞬のことだったが、ライザーは何年ぶりかうつろを兄として認めた。しかし、時すでに遅し。復讐に囚われた男は二度と変わることができないまま、火炎球をスタンドと合わせるようにして作り出したライザーに向けて重圧で屈折させたエネルギー球をぶつける。火炎球とエネルギー球がぶつかり、やがて激しい互いの放ったものの摩耗の末に跳弾したソレがライザーに直撃する。その後、ライザーを庇おうと飛び込んだユーベルーナによってライザーへの直撃を避けられたもののバイサーの最期と重なるうつろにはユーベルーナに寄り添い、泣き叫ぶライザーが怒りを通り越して愉快でならなかった。
血縁関係があるだけの金髪の野獣は壁に立てかけてあった、変な仮面を引き剥がしてうつろに殴りかかる。が、何度殴ったところでうつろのスタンドはそれらを受けつけずにライザーの腕を掴んで捻り回す。年上の兄に立ち向かおうとする年少の弟の図、といえば想像が容易いだろう。
羽虫による抵抗にも流石のうつろも飽きてきたのか、とどめをさすためにライザーに魔法陣を開かせようと重圧による拷問をかける。ライザーは叫びながらもうつろを罵り、お前に生まれて来る価値はなかっただのこの恨みは忘れないだのと負け犬の遠吠えと言わんばかりの罵詈雑言を向けてくる。
それが弾みとなって古い石仮面がうつろの顔面に覆い被さり、うつろの脳に刺激を与えるまでにそう時間はかからなかった。スタンドは封じた、わずかな痛みが胸に走るもののすぐに慣れる。
自分が行ったのはあくまでも塵駆除であること、こいつらは家族ではないのだと。体裁を気にする上層部によってサーゼクスの部下でありながらも、生家を破壊して血族を始末したと知られたらタダでは済まないだろう。死刑は免れないだろうし、ああ見えてタヌキなサーゼクスなら私のために死んでくれ、と殺しかねない。湧き上がる凶悪な衝動はうつろに様々なことを吐き掛ける。しかし、不思議と心地良い。脈に触れてみるとまだまだ息があるらしいユーベルーナ。
雌犬にしてはやけに丈夫だ、と感心して喉元に『犬歯』を突き立てると暖かく鉄の味のする血液が口内に広がる。不思議なものだ、これが新しい誕生だというのか。
心が安らぎ、燃え盛るフェニックス邸が素晴らしいものに感じられる。
ひらり、と舞い降りた愛おしい名を呼ぶ声とともにうつろは振り返る。
「遅いじゃあないか。僕は待ちくたびれたよ」
若く、けれども凶悪さと無邪気さが同居する声。左目からは血を垂れ流し、まともに見えているかは定かじゃない。しかし、そんな状況でもなお『無羽うつろ』だった教師ーートラヴィス=Aは言うのだ。
「愛してるよ、世界の誰よりも」
愛を囁かれ、満面の笑みを口角を上げて示した者は彼の元に駆け寄った。
『リリー・ルシファーEND』
これから、ヴァーリIFエンドに繋がるわけで。
割と短くまとまったなぁ。
じゃ、続きは割と自由な二周目