☆ヒロインアンケート、はじめてます
友人二名とつるんでいる時の友人の行動により、理不尽な目で見られている兵藤一誠には気にかかることがある。
「待ってよ、うつろんー」
「逃げなくていいじゃない?」
担任教師の無羽うつろのことだ。金髪にメッシュが入り、ときおりうなじが見えるときに見える赤い羽根のような痣。休日に見るときや昼食時間には外しているものの、授業の時にはよく見る眼鏡を着用しているものの、暗いようには見えず、ファッションとして引き立てている。第三ボタンまで留めなければ、教師であるという予備知識がなければホストに見えていたことだろうか。そして整った顔立ちである為だろう、女子生徒の一部にはうつろのファンクラブがある。
「無羽先生!」
「兵藤か。いいのか?松田と元浜を放っておいて」
「こら、兵藤!うつろんを困らせない!」
「お前には兵藤が俺を困らせているように見えるのか?村山」
「そ、それは……」
一誠がうつろに手が千切れんばかりに手を振れば、うつろは軽い会釈ではあるものの返してくれ、どうも女子に評判が悪いらしい一誠は
「で、なんか用か?」
「あっ、はい!今取り込み中ならいいんスけど……」
「そうか。……では、すまんな、村山。さっさと行くぞ、兵藤、時間は待ってくれないからな」
「……はい!」
うつろに取り巻きとしてついてきた女子生徒達としては、大方、うつろが指す『時間』だとか『待ってくれない』というのは二大お姉さまの一人の朱乃のことだろう、と察した。何でも、誰かが聞いた話によると本当に幼少期からの付き合いがあるらしく、うつろは当時から容姿が一切変わっていないという。その当時から半月眼鏡をかけて攻撃的な目つきだったかと言われれば、真意のほどは誰も分からないが。呆気にとられる村山を放っておいて、うつろは一誠を連れて職員室へと向かった。
「……ふふ、うつろったら。やっぱり、私が一番ってことですのね?うつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろうつろ……」
そうっと角から顔と手先を覗かせ、ポニーテールを揺らめかせながら、姫島朱乃は一連のやり取りを見ていたようだ。彼女にとっては担任教師として受け持つクラスの生徒だからこそ、興味を持たないうつろはこのように愛情を捧げるべき存在であり、魔力を使って気配を悟られないようにした上で様子を見るのが一種の日課となっていた。学園における二人の立場が教師と生徒である以上、うかつに噂をされるのはうつろの立場としてもまずい。なにかあれば自分が出張ると言って憚らない旧知の彼女に対し、うつろは次期シトリー当主の支取蒼那が学園の表を見張る生徒会である以上、『
「またはじまったのね、いつもの朱乃の悪癖が。無羽うつろと、兵藤一誠、ね……」
そんな親友の普段と違う様子を感じ、背後から声をかけようと悩んだのは赤毛の魔王の妹のリアス・グレモリーだった。朱乃と並び、二大お姉さまの一人の彼女は現魔王を排出したグレモリー家の出身であり、サーゼクスがうつろに助けてくれるように頼んだサーゼクスの妹である。制服の上からも主張する豊満な実りに長身、長く手入れの施されている赤髪とプロポーションは天から二物どころではないほど与えられていた。兄からは『助っ人』程度にしか紹介されていないが、驚くほどに悪魔の気配を感じられず、けれども魔力が感じられるところから当初の印象は魔術使いの人間ではないかと思ったほどだ。そんな男にプライベートでは親友である、彼女の眷族の
「……まずは、あの子を止めないといけないわ。ご執心でもストーカーにさせちゃいけないもの」
がっくりと肩を落としたリアスは朱乃が魔力で作り出した、魔力の帳に干渉すると、朱乃は我に返ってリアスの方に気づいた。一瞬、ビクッとしたように見えたのは見なかったことにして、やがてリアスは朱乃と共に彼女たちの部室に向かうことにした。朱乃自身が必死にうつろの様子を監視していたのを隠そうとしているようなので、リアスはそれを察したのか、「今日のお茶請けはなにかしら?」と朱乃に話題を振ったりしつつ、追跡癖が徐々に板に付きつつある親友の恋が叶いますように、と願うばかりであった。心の隅につっかえたことを忘れないようにしながら。
ーー食堂
うつろに連れてこられるようにして食堂に訪れた一誠と共に無言であった。かつては女子校であった名残か、テラスのテーブル席が存在している。うつろは足組みをしたまま、無言で遠くを見据えている。それぞれの前には自販機で買った缶ジュースがあるが、うつろに至っては勘を開けてすらいない。
「で、なんだよ。俺に用があるんだろ?言われなきゃわからねえし、昼飯食わせろ」
「いや、別に食えばいいじゃないっスか。って、無羽先生、昼飯食ってねえんスか!?」
「食い忘れていた」
淡々と言い切ってしまうが、一誠は反論の余地がなかった。この『問題』に関してはなんと切り出せばいいのか分からなかった。進路相談でもなければ、これは日常生活における問題でもない。語るべきかですら定かではないのだ。うつろが待ちきれないのか、ポケットから取り出したコンビ二のストロー。長細いストローの紙の包みをあければ、プルタブを開けてストローを差して掌に載せて吞みはじめた。昼食を摂っていないならば早く食べればいいのに、と思う一誠だったが、うつろの意地というものがあるのだろう。頑なに食事をしようとしないのは、意地っ張りなんだろうな、と一誠は感じた。
「先生、単刀直入に言います」
「おう、早く言え」
「先生、俺にはどうやら、--が憑いているようなんスよ」
「なんだって?」
「だから、『悪霊』が憑いてるみたいなんスよ」
『悪霊』。
そのキーワードには、うつろに聞き覚えがあったし、デジャビュを覚えた。共鳴反応、ではなかったが『イン・マイ・ワールド』が傍らで声を上げているように感じる。喜びの上で発しているのか、それとも鎮めるべき敵として認識しているのか。いずれにせよ、『イン・マイ・ワールド』が反応しているので教え子もまた『同じ異能』を持っているんだろう。ヴィジョンを持ち、物に触れ、周囲に影響を及ぼすところは『悪霊』と言い得て妙だろう。どのようなきっかけで自分が『異能』に目覚めたかは喪った記憶を思い出さなければ気づくことはないだろうが、一学生が『異能』に目覚める理由は漫画のように『元々持っている』又は『何らかの危機によって目覚めた』かのどちらか。未だにスタンド能力が何かについて分からない以上、うつろは軽率な判断が出来なかった。
「……兵藤、頭がイカれてんじゃあないか?俺でよければ悩みは聞くが」
「だから、これが悩みなんスよ。父さんや母さんにも話したし、神社で御祓いも受けた。それでも効果がなかったから、神主って言うんでしたっけ?その人には、もっと霊能力の強い人に祓ってもらえ、とは言われたんだけど、『親近感』を感じてしまって」
「ならいいじゃねえか。俺の出る幕もねーっつうか。、俺は帰らせてもらうぜ」
「あッ――!」
これ以上、話をする必要はない。
うつろは一誠の要領を得ない説明から、缶ジュースを飲み干してゴミ箱へと投げ入れ、その場を後にしようとした時だった。不意に伸びる、『見えない何かによる手』。その手が自らの異能、『イン・マイ・ワールド』のような無機質と暖かさのある、その境界のような感触を『イン・マイ・ワールド』が一誠の異能の手首を掴む。実際に掴んだ箇所が手首かは未だに振り向いていないうつろには、見えていなかったが『イン・マイ・ワールド』で掴んだ箇所の上に大きな感触を感じるので強力なエネルギーを有した異能と見た。
「先、生……ッ!?まさか、それは……!」
「……やれやれ、テメェにも気づかれちまったか、兵藤。そうさ、お前が俺の服を掴もうと伸ばした先にある『感覚』--。それが俺とお前の持つ、異能だ。手足の延長線ともいえるし、どうやら俺とお前のような能力者は引き合うらしいな」
「……ッ!?」
うつろの言い分には一誠も覚えがある。うつろに向けて手を伸ばそうとした時、手足の『先』の感覚を操れるような気がした。普段は一誠の意思と無関係に動き、一誠が『悪霊』と呼ぶように周囲に様々な影響を及ぼしてきた。今考えれば、絡んできた不良を問答無用に吹き飛ばし、松田や元浜のように有名になってきた原因は自らのこの『異能』によるものではないか、と。自分の手足も同然、すなわち自分の身体の延長器官で纏めれば、『自分自身』と言えようか。担任教師の『異能』は肩から赤い羽根が突き出ており、羽根がビッシリ生えている翼でなく、ただ赤いだけの羽根が生えている猛禽類のような鋭さと威圧感を持つヴィジョン。対して、自分のヴィジョンがどんなものかと振り返ってみればーー。
「先生、まさか……」
一誠の『異能』のヴィジョンは何処までも紅く、甲冑を着込んだ戦士のようだ。体型は筋肉がほどよくつきはじめている一誠の同級生の年齢より多くついているくらいで、これからの『将来性』と『成長』を感じさせる。ただ、毒々しいような『紅さ』を持つ兜の口元はガパッと開き、鋭い牙がズラリと並んでいる口内が覗く。紅い篭手が象る両手両足の爪は鋭く、今にもうつろと『イン・マイ・ワールド』に襲い掛からんとしており、猛禽のようなヴィジョンを持つ『イン・マイ・ワールド』はうつろと同じ目で睨めつけている。
「兵藤、その異能は俺もそうだが傍らに立っているだろう?」
「傍には、立っていますが……」
「その能力について、て俺が名付けるとするならば、『
「スタンド……」
うつろの傍で腕組みをし、仁王立ちをする『イン・マイ・ワールド』。自分の在り方、存在の定義を知った兵藤の『スタンド』は意味を知ったことを歓喜しているのか、猛々しい戦士のように吠えたように見える。すると、『イン・マイ・ワールド』に向かって突っ込んでいった。軽く赤い羽根のスタンドは紅いスタンドをあしらうが、そのパワーは赤い羽根のスタンドと同等かそれ以上だ。
「クソッ、戻れ!」
「兵藤、ここはマズイ!補習授業を行なう!テメェらもこっちを気にするんじゃねえ!これはあくまで、『演劇』だ!」
スタンドとのワード、異能、そして『イン・マイ・ワールド』によってあしらわれた、紅いスタンドのフィードバックによって席から落とされた一誠。突然、学園内の有名人が金髪教師とのやりとりの中であったことにより、大声で一誠が叫んだのもあってか、まだこの時間でも駄弁っている生徒の視線を浴びているからか、うつろは咄嗟に浮かんだ嘘を使った。
『演劇』。
これほど
毎回の文字数が不定期、仕方がないことさ。
一誠がスタンドに覚醒、理由が奇妙な英雄と似てるとか言わない、いいね?