ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜   作:らっくぅ

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 何となく1ヶ月で1話投稿を意識していたのですが、普通に1日オーバーしました。
 自分で作っといてなんですが、今作むずかしいやんね……


・追記
地の文ミスってたのに今更気づいたので修正しました。


第十話 アンタ、隠してたな

 結翔達を乗せるトラックは、荒廃した街のような所に辿り着いた。

 

 

「城郭都市…の遺跡? ここがちょこ先生の言ってたとこ〜?」

「いいや、ちょこ達は既に暴走の原因になりそうな個体を討伐していたみたいだ」

 

 

 結翔は辺りを見渡す。

 マナが澱んでいるのか、肌にまとわりついて鬱陶しいし、魔眼もよく見えない。

 しかし、強大な個体が居そうな気配はない。見えるのはどれも小さな魔力ばかりだ。

「なら今は他に危険因子を探してるってことか? こんな所に魔物がいるとは思えないが」

「危険因子は何も魔物だけじゃない」

 スメラギはしかし、静かに遺跡の群れの中へ入っていく。

「どゆことすか? 魔物が街を襲うのを防ぐって話じゃ?」

 遺跡は近代都市に近い造りになっていた。

 どういう経緯で廃墟となったかは不明だが、大通りもあれば細い路地もある。魔物はともかく、対人戦ならば地形を使って有利に事を運ぶこともできそうだ。

 

 

「地盤固めは終わりってこと。マナが異様に高い事に目をつぶれば、悪くない選択だと思うよ」

「やい天使公! もっと分かるように話せって!」

「うるさいって…! 桐生ってあの“桐生会”でしょ? 自警団なら自分達を狙う敵の対処法くらい知ってると思うけど」

 かなたんが慌ててココの口を塞ぐ。

 この天使はどうやら姫森ルーナと同じタイプらしい。答えてくれるっちゃくれるが、相手に思考する余地を残してくる……初心者に優しくないタイプだ。

 

 

『破滅派の本来の目標はスメラギだということだ。魔物で誘き寄せるという手段が潰えたならば、スメラギを直接狙ってくるだろう。局地的に言えば、現在我々は有利を取っている』

 その上で。

 

 セトはスメラギの方を向く。

『この際理由はいらない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 戦略的には有利ではないと、彼は考えているのだろう。

 実際、破滅派の計画は不自然な点が多く、先が読みづらい。スメラギの殺害という目的こそ判明しているものの、その方法については未だ不明だ。

「メモリーを奪ったのが破滅派の仕業だと?」

 すなわち、重要なのは“なぜ”ではなく、“どうやって”なのだ。

『姫森ルーナとの会話の中で触れたと思うが』

「そ、そうだったかな…? 確かにリヴァイエラもそんな事を言ってた気もするけど、彼に君の事を聞いたのも、その後に破滅派の計画に乗せられたのも、偶然でしかない。因果関係があるとは思えないけど……」

『因果はないが、関係なら見出すことができる。論理的に』

「…? 俺か?」

 と、セトは結翔に目を向ける。

『破滅派の1人は彼を見て、別で進めている作戦が上手くいったことを知った。それがどのようなものであれ、スメラギを動かす為にそれだけ大規模な計画を立てていたという事だ』

「アンタなにもんだ? 『エース第三位』ってのはそんな戦略級につえぇのか?」

「……」

『無論だ。彼はゼノシリーズの集大成を倒した男なのだから。むしろ一テロリストがどう挑もうが返り討ちにされるはずだ』

「ゼノシリーズ…」

 姫森領の時からそうだったが、彼らと話していると、自分が周回遅れかのような気分になる。何もかも分からない事だらけだ。

 彼らは、いやスメラギは、確実に何かを隠している。

「買い被りだよ。仲間が居なければ、僕は何もできなかった」

 ジェイデン・アーマストリエはなぜ他の誰でもなく、『スメラギ』を捜せと遺したのだろうか。

 それがきっと、スメラギと破滅派を結び、引いては“鍵穴”を見つける糸口になる。そんな気がした。

 

『肯定だ。君だけでなく彼女達が相手になるのなら、破滅派が勝利するのは至難の業と言えるだろう』

 

 

 

 仲間。

 

 

 

 

 そこで結翔はふと気付いた。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 故に、

 

 

『だからこそ、計画はもっと前から始まっていたのではないだろうか。君を狙っているのは、いや君の正体を知っているのは、彼らがゼノクロスの一件に関わっていたからだと──

 

 

 

「破滅派だ」

 ただ一言告げる。

 

 

 

 瞬間。

 

 

 

「はめ…、ッッッッ!!?!?」

 

 

 

 戦慄が。

 

 

 

 

 根源から凍えるような恐怖が、身体中を駆け巡る。

 

 

 

 

『これは……スメラギの、いやオーガストの持つ『力』と同質のもの』

 無機質なアンドロイドの声すらも、微かに震えているように聞こえる。

 

 

 

 恐怖の元を辿ってみると、いつの間にか前方に1人の男が立っていた。

 

 

「てめぇ…誰だ」

「ブレストのやつ、分断しきれてないじゃないか。まぁいてもいなくても変わりはないが」

 その強大な力に反して、見た目は普通の青年という感じだ。

 灰色の長いコートとマフラーで一見わかりにくいが、体格や顔つきからして、駆け出しの傭兵といった雰囲気を感じる。

 唯一普通から外れているとするならば。

「初めまして、でいいのかな、出来損ないの『スターク』。あんたがずっと『力』を持ち続けているせいで、この世界はとても平穏だ」

「『スターク』……」

 その目はひどく澱んでいた。

 邪神の力だけではない、何か人ならざるものを感じる。

「……僕はその為に『力』を使っているつもりだからね。君はどうなんだ?」

「平和を手放しに善い事だと勘違いしているんだな。平和を維持する為に、どれだけの人間が犠牲になっているか知っているだろ? 人よりちょっと強い力を持ってる者は排斥され、多く成功している者は理不尽に虐げられる。自分もその1人だって気付かないのか?」

 パチ、パチ、と空気が弾ける音がする。

 結翔はほぼ反射的に魔法陣から火炎剣烈火を取り出していた。

 だが、それは目の前の敵に対してだけではない。

 

 

 結翔の中でかちりと、ピースがはまった。

 何故破滅派はスメラギを狙っていたのか。スメラギ達があえて明言していなかったものが。

「アンタ、隠していたな。『スターク』だってことを」

「……隠していた事を謝ろうとは思わない。『スターク』というのはそれだけ危険な存在なんだ。だからこそ、無関係な君達を巻き込みたくはなかった」

 そう告げられたスメラギは、苦虫を嚙み潰したように顔をゆがめ、呟いた。

 

 

 『スターク』。

 誰が言い出したか、今となっては不明だが、邪神の力を持つ者を人はそう呼ぶ。

 神の力を宿せる人間はそう多くはない。

 普通は宿した瞬間、その力に身体が耐えきれず崩壊するか、運良く五体満足だとしても力の行使にまでは至らない。その瞬間制御を失いやはり自滅するからだ。

 そんな中で邪神の力をその身に宿し、かつ自滅しない程度にまで『力』を制御できる者、それが『スターク』なのだ。

 しかし秩序から外れた邪神の力は、うっかりやちょっとした出来心で世界を滅ぼす。制御とはあくまで自分を傷付けないというレベルであり、他者に危害を加えないなどという保証はどこにもない。

 故に『スターク』はただ存在するだけで脅威なのだ。

 その者の善悪など関係なく、存在そのものが悪だと、この世界は規定している。

 

 

 “鍵”なんて穏やかなものじゃない。

 スメラギ・カランコエは爆弾だ。それも戦略級の。

 

 その上で。

「別に守って欲しいなんて思っちゃいねぇよ」

 吐き捨てる。

 こいつの正体が世界の脅威だとか、破滅派がこいつの『力』を利用して世界を滅ぼそうとしているだとか、そんなことはどうだっていい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『白石結翔……君は……』

「おいおい、さっき聞こえてたろ? 分断するつもりだったって。君に出しゃばられると困るんだよなぁ…」

 空虚なまでに白い髪の青年の中で、『力』が強まっていく。

「っ結翔下がって! 奴も『スターク』なのを忘れるな!」

 

「ッ変身!!」

「遅いよ」

 ワンダーライドブックをベルトに装填し、火炎剣烈火を引き抜く。

 だが一瞬早く、青年から放たれた波動が結翔に迫り来る。

「っ!」

「おせぇのはァ! …テメェの方だ、テロリスト」

 スメラギの声色が突然低く、そして荒々しいものへと変わる。と同時に、恐怖がもう一度この場を包み込んだ。

「そうそう、そうこなくっちゃ」

 青年は不敵に笑う。

「正体現したな」

「テメェの対処は後でしてやるガキ。今はもう1人の『スターク』だ」

 スメラギは一歩前に踏み出し、しかしすぐにその足を止める。

「ちっ、分かってるよスメラギ……おいセト、あの天使の位置はわかるか」

『反応自体はこの周辺だが、姿が確認できない。おそらくは別次元にいるのだろう』

「魔法か……テメェらはアイツに“鍵”を渡せと伝えろ。俺は『スターク』をやる」

「おい、まんまと敵の手に乗ってんじゃねぇよ」

 結翔はスメラギに並び立つ。

 こいつを全力で戦わせたらどんな被害が出るか計り知れない。ましてや、相手もまた『スターク』なのだ。

「あぁ構わないよ、何人で来ても。仰々しく手順を踏んでいるが、要は最終的に世界を滅ぼせればいいのさ」

 

「チッ、セト!!」

 返答が聞こえる前に、戦いは始まった。

 白の青年から横薙ぎの波動が放たれる。

「ッ〈獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)〉!」

 それを結翔は飛んで避け、黒き太陽で返す。

「へえ、若いのによくやる」

 対して青年は避ける事すらしなかった。彼の纏う滅紫(けしむらさき)のオーラが黒炎を滅ぼしたのだ。

「背中がお留守だぜ『スターク』さんよ…ッ!」

 と、青年の後ろから声がした。

 いつの間にか背後にいたスメラギは五指を滅紫に染め上げ、青年に突き出す。

「とんでもない、待ってたのさ!」

 青年は振り向きざまに、同じく滅紫に染まった腕で手刀を防ぐ。

「はぁッ!!」

 今度は逆に結翔に背後を見せる格好となり、すかさず結翔は落下と共に剣を振り下ろす。

 が、

 

 

「くっ…!」

 その一撃が青年を斬り裂くことはなかった。

『力』のオーラが薄く、だが強固な壁となって立ちはだかっている。

「スメラギ、君は今こう思っているんだろ? なぜこの世界にもう1人『スターク』がいるんだ……なぜコイツはよりによって破滅派なんだ……ってな」

「聞いたら律儀に答えてくれんのかよ」

 ぐぐ、とスメラギの腕が押し返される。

「まさか。どうせ世界を滅ぼすんだ、せっかくならもう少し楽しんでから終わらせたいだろ!」

 不気味に嗤うもう1人の『スターク』は『力』を放つ。

 それは無秩序に周囲に撒き散らされ、結翔達を吹き飛ばす。

「がぁッ!!?」

「つッ…!!」

 

 

「こいつ……固有の『力』を使ってねぇ。手の内を明かさないつもりか……それともんなもん使わずとも俺達を殺せると思ってやがるのか? どちらにせよ舐められたもんだな…」

「舐めているついでに少しだけ教えてやるよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!() ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()!()

 白の青年はスメラギの懐へ踏み込み、みぞおちに拳を打ち込む。

 それは身体を捻ることでギリギリ回避されるが、彼の攻撃はまだ終わらない。

『エース第3位』と呼ばれるだけの実力はあるはずだが、肉弾戦は不得手なようだ。単純な『力』の差もあり、押されている。

「忘れてんじゃねぇよ…」

 

『必冊読破!』

 

「ッ!!」

 スメラギのガードが破れ、滅紫の拳が胸に突き立てられようとした瞬間、スメラギの姿が消える。

熾炎竜斬(しえんりゅうざん)ッ!!!!」

 同時に、結翔は火炎剣烈火とブレイブドラゴンの力を引き出し、必殺の一撃を放つ。

 視界を灼くほどの激しい炎が青年に浴びせられ、周囲が火の海と化す。

 

 

 しかし、

 

 

「やっぱり若いのによくやるね…本当にただの学生なのかな?」

 青年には傷一つついていない。コンクリートを溶かすほどの炎の中を悠々と歩いている。

「化け物かよ…」

 規格外すぎる。

 彼我の戦力差が、あまりにも。

 

 

 

「…っ?」

 刹那、視界の端で何かが光った。

 見上げると、鍵のような形をしたものが飛んでいた。

「ったくおせぇんだよセト…!」

 スメラギもそれに気づき口元をわずかに歪める。

「何をしようとしているのかな? 敵は目の前にいるってのにさぁ!」

「開幕はテメェの勝ちってことにしといてやるよ」

 青年の放つ波動を瞬間移動で避けると、スメラギは光り輝く鍵を掴み取った。

 

 

 

 

 

 瞬間。

 

 

 

 

 

「…ッッ!!!!」

 これまでの何倍もの『力』が周囲に放たれ、遺跡の一部が瞬時に灰燼と化す。

 

 

 

「拘束制御術式“ヴェロク”第一段階解放」

 

 

 

 この世界の『スターク』が、不敵に笑う。

 

 

 

「さぁ、第2ラウンド開始だ」




 かなたん呼びなのは仕様です。誤字ではないです。
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