ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜 作:らっくぅ
時を同じくして。
「あ、あれ……ココ? まつりちゃんっ? フブキちゃん!?」
「しまった……〈
突然仲間の姿が見えなくなり、上ずった声を出すトワを横目に、かなたは神眼を凝らして周囲を窺う。
「やばいよかなたっ。これ敵の待ち伏せってことだよね!? と、トワたちの動き、ずっと監視されてて──」
「落ち着いて。〈
「そうそう。囚われたのはキミたちだよ、天使ちゃんと悪魔ちゃん」
軽い声色とともに、1人の男が廃ビルの陰から姿を現した。
「ついでに言うと『スターク』もだね。ちょっと余計なものを混ぜちゃったけど。ああ心配しないで。彼らにもちゃんと相手を用意してあげてるから」
「だれ……は、破滅派…?」
トワはおそるおそる尋ねるが、風貌からして破滅派とはかけ離れたチャラい雰囲気だ。
しかし同時に、いつ引き金を引くのか分からない、そんな恐怖を醸し出している。
「アリスタルフ・ブレスト。破滅派かどうかなんて……私はただ、魔術を使えれば何でも」
「じゃあ質問を変えるよ。これも計画のうち?」
かなたが一歩前へ出る。
既に臨戦体制だ。
「天使と戦うなんてまたとない機会………だから私はその質問、イエスと答えさせてもらうよ!」
「っ!?」
突如、ブレストから紫電が跳躍してきた。
(魔法陣なしに!?)
だが地面を跳ねるように襲いかかるこの雷撃、おそらく〈
この魔法は対人用に設計されており、例えば今地面を跳ねているように、物体はこの雷撃の影響を受ける事はない。
故に、
「〈
「トワ動かないで!」
しかし、かなたの魔法障壁がトワの術式よりも早く完成され、〈
(はっ…や…!!?)
術式の構築速度が圧倒的なまでに違いすぎる。
それでいて自分の障壁とは違い、攻撃を完全に防ぎきっている。
「下がってて、僕から離れないで!」
〈
よって、次に来るのは本命。
「だからその前に叩く! 〈
分かっているのに。
「…っ」
その先につなげられない。
トワが魔法障壁を張ろうと術式を作り始めた時、かなたは既に〈
これが実戦。
ひよっこもひよっこが首を突っ込む余地などない。
たった一度の撃ち合いで、そう宣告された気がした。
「光属性の魔法かぁ。ならより大きな光で飲み込んでしまえばいいよな?」
対するブレストは臆する様子もなく、高速で迫る光の砲弾に手をかざす。
たったそれだけで、
「ひっ──」
「逃げてッ!!!」
輝く太陽が現れ、砲弾が容易く呑まれる。
かなたの言葉よりも早く、半ば反射的に〈
今の今まで2人がいた場所を巨大な光が抉った。
「〜〜〜〜っっっ」
間一髪、だった。
あともう少し〈
だがビギナーズラックはそう何度も起こらなかった。
(かなた……かなたがいない…!?)
なんとか体勢を整え辺りを見回すが、かなたがいない。
自分とは逆方向に避けたのか、それとも吹き飛ばされたか。
だがどちらにせよ、今この場にはトワとブレストしかいない。
途端に胸の奥に冷たさを感じる。
しかし、こんなこと想定外だったと嘆くわけにはいかない。それでも友人について行くと決めたのは、自分なのだから。
(一対一……いや、せめて時間稼ぎだ。もしかなたがケガしてるなら、今あいつをかなたに近づけさせるわけにはいかない)
何も正面切って戦う必要はない。
ヒットアンドアウェイでこちらに注意を惹きつけるだけで十分。あわよくばダメージを与えられれば良い。
その間にかなたはきっと来てくれる。
さっきの魔法によって辺りに土煙が舞っているせいか、ブレストはまだこちらに気付いていないようだ。
今なら強力な魔法を撃つ猶予がある。
(1発勝負……できるだけ威力のある魔法を…!)
「〈
10門の〈
さすがに〈
現時点で放てる最大火力。
照射された黒陽は土煙を穿ち一直線、ブレストに襲いかかる。
間違いなく、直撃コースだった。
「あぁ、そこにいたんだ」
にも関わらず。
「あ、……え?」
漆黒の熱線はブレストの前で散り散りとなって虚空に消えた。
あまりの呆気なさに、術式を誤ったのではないかと錯覚してしまう。
「いくら集束しているとはいえ、並の魔法で魔術師を倒せるとはゆめゆめ思わないことだよ、悪魔っ娘ちゃん」
そして、それに気を取られて足を止めてしまったのが良くなかった。
「っま、ずッ……!!!!!???」
ゆるりと、ブレストがトワに手のひらをかざした。
「つあッッ!!!」
「かな、!?」
と同時に、横からかなたが飛翔しトワを攫う。
刹那。
トワのいた所が眩い十字の光に包まれた。
激しい轟音と共にエネルギーの奔流が吹き荒れ、周囲を激しく叩く。
「ぐぅっ……こっち!」
爆風に制御を奪われながらも、かなたは何とか建物の合間に転がり込む。
「ぅげっ。はぁ…はぁ……」
「生きてる、ね……良かった」
「かなた、こそ…」
自分はまだ生きているのだろうか。
でも死んでいたら、きっとこんなに心臓が主張してくることはないはずだ。
だから、トワは深呼吸して意識を引き戻す。
途端に、じくじくと後悔が心の中を侵食してきて、思わず口に出る。
「……かなた、ごめん」
やっぱり、何もかもが分不相応すぎた。
学生の自分が首を突っ込むには、あまりに。
「気にしてるの? 自分が役に立ててないんじゃないかって」
「う、……うん。トワがいるせいで、かなた全力で戦えてないし……かといって、かなたを助けることもトワには、できない……」
「君は学生でしょ。それに今の時代魔法の撃ち合いなんて高度なこと起きるわけないんだから、追いつけなくて当たり前だよ」
だがかなたはあっさりと返す。そんなことは想定内であるかのように。
それが逆に、悔しかった。
子供だから。
素人だから。
かなたにとって、トワは守る対象であり、守られる存在なのだ。
「……全部、分かってるのに。あいつが放ってくる魔法も、かなたの使う魔法も、知ってるのに……それでもその先が届かない」
「それを言うなら僕もだよ。あいつの魔法、規格外すぎて……って、全部? じゃあ、あいつが最後に撃った魔法も?」
かなたは驚いたように聞き返す。
「〈
なおも俯くトワに、かなたはそっと息を吐く。
やれやれ、とでも言いたげだった。
「あるじゃん」
「え…?」
「戦う事だけが魔法使いじゃない。そうでしょ?」
「あ…」
その言葉でふと頭に浮かんだのは、「魔法名」だった。
かつて魔法使いや魔術師は、魔法を使う意義を、魔術を求めた理由を、自らに刻んでいた。
魔法とはすなわち、理想をかなえるための道具なのだ。
大事なのは手段や方法ではなく、理由。
「そうだった……」
思い出せ、原点を。
「魔法は、誰かを打ち負かしたり、言うことを聞かすためにあるんじゃない──」
自分が魔法を探究しようと決意した、あの日を。
「誰かを支えて導く。それがトワの魔法だ」
そんなトワを、かなたは眩しそうに見つめる。
その上で、
「トワ、一緒に戦おう。僕達が力を合わせれば、倒せない相手じゃない」
その言葉に、トワは力強く頷く。
次回に続きます。
あとがきも次回にがっつり回します。