ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜   作:らっくぅ

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第十三話 足元を見れないアンタに魔術師を名乗る資格はない

 途中、崩壊するビルにびくつきながらも、トワは何とかブレストの背後に回ることができた。

 位置は遠いが、ちょうどかなたと真反対、つまりブレストを挟み込んでいる事になる。

 

(やっぱり、あいつの探知範囲はそこまで広くない。かなたが時間を稼いでくれてる間に術式を……)

 

 トワはブレストに向けて手をかざし、術式の構築を始める。

 

 術式を用いた魔法の場合、実際に魔法陣を描いて発動することもできるが、実戦では現実的ではない。

 あらかじめ魔法陣だけどこかに描いといて、必要に応じて魔力を流し発動する──すなわち魔導具を用いることもあるが、頭の中で描いた術式を〈魔筆(ピクト)〉によって具現化させるのがメジャーだ。

 もちろんそれには、頭の中で正確に術式を描けるだけの想像力が要る。一朝一夕では身に付けられない高度な技術だ。

 

「…………」

 

 術式の構築なんて嫌というほどやってきた。今でも構築速度は魔界学校の先輩達には遠く及ばないが、それでも譲れないものはある。

 

 だが今回のそれは、難易度が桁違いに高い。

 

 トワは目の前の戦闘を忘れ、ただひたすら術式の構築に専念する。

(かなたが時間を稼いでくれてるんだ……絶対に無駄になんかしないっ!)

 

 

 瞬間、黒い閃光が走る。

 

 

 

 

 意識を現実へ向けると、ブレストに対峙しているかなたが崩れ落ちるのが僅かに見えた。

「っかなた…!!!!?」

 あれはさっき自分が撃った〈 獄炎殲滅十砲(ジオ・グレイツェン)〉だ。

 熱線は自分のより遥かに細かったが、それは集束させているからだろう。かなたが無事でいる証左にはなり得ない。

 

 トワは歯噛みする。

 もう少し術式を調整したかったが、そんな余裕はない。

(撃つしか……ないっっ!!!!)

 

 

 

「アリスタルフ・ブレスト!!!!!」

 

 恐怖と不安を抑え、トワはめいっぱい声を張る。

 

「くらえ、〈極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)〉ッッ!!!!!!」

 

 

 まるで戦艦の砲身のような黒鉄の魔法陣から放たれたのは、この世の災厄全てを詰め込んだかのようにドス黒い紫をした火球だった。

 

 火球はまっすぐブレストに向かって飛んでいく。

 その行く先にあるものを、空気やマナすらも焼き尽くしながら。

 

 滅びの火球がブレストに当たる寸前、かなたの姿が消えるのが見えた。おそらく〈瞬間転移(ロア・ガトム)〉を使ったのだろう。

 トワは安堵しつつも、しかし火球を注視する。

 

 

「──ッ!!」

 

 さすがのブレストも、これほどの魔法が飛んでくるとは思わなかったのだろう。

 表情からこれまでの余裕は消え、障壁の展開に全力を注いでいるようだった。

 

 

 それもそのはず、これは燃えないはずのものを燃やし、滅びないはずのものすら滅ぼす、終末の炎。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 もしオリジナルを使って倒せなかったら。

 ブレストにこれ以上ない武器を与えてしまう。

 下手をすれば、世界なんか簡単に滅ぼせてしまうほどの禁忌を。

 それだけは何としても回避しなければならなかった。

 

 ある種の妥協ではあるが、その威力は禁忌の名に恥じないレベルのはずだ。

 トワの全力がかかっているのだから。

 

 

 

 ガガガガギギギギギギ!!!!!!!!!!!!!! と、甲高い摩擦音が撒き散らされる。

 

 〈完成(ジ・エンド)〉によって完成された魔法障壁は、あらゆるものを滅ぼす〈極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)〉に削られながらもなお、術者を守り切っていた。

「でも〈極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)〉の方が少しだけ強い…! もう少しであいつを──」

 

 倒せる。

 

 

 

 

 そう希望を抱いてしまったのは、やはりまだ未熟だったからなのかもしれない。

 

「いや本当に危なかったよ。〈完成(ジ・エンド)〉を使う私が、ちょっぴりマジになってしまったくらいには」

 

 

 じわり、と。

 

 

「…………………………う、そ」

 決定的に選択を誤った予感が、トワの脳を支配していく。

 

 

 魔法障壁からすり抜けるように現れたのは、トワが撃ったのと同じドス黒い紫の火球。

 

 〈極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)〉だった。

 

 

 2つの滅びの火球は火花を散らしながら互いを滅ぼし合っていくが、すぐに片方が敗れた。

 

 トワの火球がブレストの放った完璧な〈極獄界滅灰燼魔砲(エギル・グローネ・アングドロア)〉に貫かれ、滅びの炎が枯葉のように辺りに散る。

 

 

「どうやらそれが切り札だったようだけど、少し威力が足りなかったね」

 紫の火球がトワの近くを過ぎ去り、空間を、秩序を滅ぼしていく。

 

 直後、空が黒に染まる。

 滅びの炎が空を燃やしているのだ。

 

「あっ! ぅぐ……」

 削られた空間が元に戻るのに引っ張られ、前のめりに倒れてしまう。

 だが、もう立ち上がることはできない。そんな力は残されていなかった。

 

「はぁ……はぁ……っ」

「もう一度撃ってみるかい? 今度はもっと上手くね」

 それができない事はブレストにも分かっているはずだ。

 いくらレプリカとはいえ、深層大魔法を発動させるのに自分の魔力はおろか、周囲のマナをすべて使ったのだ。

 

 

 トワの中には、もう何も残っていない。

 残り火のようにちらちらと燻っている残骸がその証拠だ。

 

 

 それでも、這いつくばりながらもトワはブレストを睨み付ける。

 もしこれが最後になるのなら、問いたださなねばならない。

「なん、で…っ! 〈完成(ジ・エンド)〉はこんなことのために使っていい代物じゃない……! アンタも魔法使いなら分かるでしょっ!?」

 ずっと理解できなかった。

 破滅派がなぜ世界を滅ぼそうとするのか。

 なぜ、世界をより良くするはずの魔法を、破壊の為に使うのか。

「魔法使いなら、何で魔法を使うのかくらい──」

 

「なぜ……はぁ、最後の最後につまらないねぇ……」

 

 

 

 

 だからこそ。

 

 

 

 

「世界で一番強くなりたいからに決まってるじゃない。〈完成(ジ・エンド)〉も世界を滅ぼすのもただの過程……ま重要な一歩ではあるけどね。いちいち動機に拘泥してちゃ、魔術師やってけないでしょ?」

 

 

 その言葉で、トワは()()()()()()()()

 こいつらは自分達とは根本的に違う存在なのだと。

 遊びや気まぐれで人の命を奪ってしまえる狂人なのだと。

 

 

「で? 時間稼ぎしたってどうせ勝てっこないんだからさ、潔くやられちゃってよ。あ、強い魔法教えてくれてありがとね? 君の魔法は私がもっと完璧に使ってあげるよ」

 

 

 静かに、トワは口を開く。

 

「確かにトワは……先輩達ほど魔法の才能はない……術式を描くスピードも、魔力の多さも……到底敵いっこない……」

 たった1つだけ。

 これだけは譲れないものがある。

 

 ブレストの眉間に疑念が走り、直後何かに気付き慌てて足元を見る。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、君は…最初からこれを狙って……!!」

 

「でも魔法への思いなら。誰にも、シオンちゃんにだって負けない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それでもって。

 

 トワは鋭い視線を向ける。

「アンタ、〈完成(ジ・エンド)〉を過信しすぎだよ。どんなに強い魔術を使ったって、術者が弱いままじゃね」

「きさ、っこの……学生風情がぁぁぁぁァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「〈交響詩篇(セブンスウェル)〉」

トワの冷たく、しかし力強い声と共に七色の積層魔法陣が浮かび上がり、まばゆい光を放つ。

 

 

 それはまるで偽物の魔術師に見せつけるかのように。

 

 

「足元を見れないアンタに魔術師を名乗る資格はない」

 

 

 

 

 

 

 刹那。

 

 

 

 

 

 

 色が。

 

 

 

 

 

 音が消える。

 

 

 

 

 

 




 3話にかけてかなトワバトル回を繰り広げました。

 今回は魔法+ちょこっと魔術回です。
 魔法一辺倒だとどうしてもパワーと技術の勝負、逆転の余地が少なく面白いのが書けなさそうだったので、味変で魔術を取り入れてみました。
 魔法やら魔術やら、どういう使い分けしてんだいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は気分です()
 一応、この世界における魔法と魔術は、

魔法→魔力を用いて行使する術
魔術→魔法の中でも、神話や伝承から特定の現象を再現する術

という感じです。
 大雑把に言うと元ネタがあるのが魔術で、いわゆる“魔法”全般が魔法です。なので厳密には、魔術も魔法の一種です。
 じゃあ〈完成〉は元ネタがあるのか、というとちゃんとあります。ほら、西尾維新先生の……()
 というわけなので、完全な〈完成〉はもっとチートです。後述のようにブレストが魔術師として未熟だったために不完全な状態でしたが、いずれちゃんとした状態で再登場させたい魔術ですね。
 うすうす気づいている方もいらっしゃるのではと思いますが、らっくぅは設定厨です。
 なので魔法や魔術に関してはまだまだ語ってない設定があるのですが、後の作品のために、いったんここまでにしておきます。

 そして、前回からそうですが1バトルに注力して書いてみました。
 さらに今回はかなトワ回。
 かなたそは前作にも登場していたので書き馴染みがあったのですが、トワ様は今作初登場&バックグラウンドも特に考えず進めてしまったので、どうしたものかと悩みました。いつもの見切り発車。
 同じ魔族・魔法キャラという事で、魔界学校組と絡めつつ、知識という自分なりの強みを見出す、という感じに落ち着きました。
 何だかんだ、かなトワ回というかトワ様回…?
 やはりかなたそは天使なので、こういう先人的ポジが似合いますね。逆に言うと個別で活躍させるのが難しいということでもある()

 今まで主人公目線で物語を進めることが多かったので、こうしてがっつり他キャラの内面を描くのは新鮮で楽しいですね。
 これからも色んなキャラを活躍させていきたいと思います。

 対するアリスタルフ・ブレスト、けっこうキャラ付けむずかったです。まだまだ悪役キャラの解像度が低くてすまない……それとなく『仮面ライダーガヴ』の酸賀さんをイメージしましたが、あんまりぽさは出てないかもですね……
 〈完成〉を操る魔術師(というか魔法使い?)ですが、作中でもいくつか描写されているように。魔法使いの中では下も下だったりします。
例えば前作から魔界学校組などがよく行っている『魔眼を凝らす』ですが、ブレストは一回も行っていません。
 そんなブレストが破滅派である背景は特に描写していませんが、ただ、魔術師としては三流も良いところのブレストが〈完成〉を求めた理由こそ、彼が破滅派である理由だと思っています。
 最強になりたいという理由、目的ではなく手段であることにブレストは気づいているんでしょうかね……。


 ということで、次回は再びスメラギくんと結翔に視点を戻し、お話を進めていきます。
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