ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜   作:らっくぅ

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今回短めです(当社比)







第十五話 だとしたら妙だよなぁ

 先ほどよりも強い『力』が吹き荒ぶ。

 並の人間なら、既に失神していたっておかしくないほどの恐怖が周囲に満ちている。

 

 その嵐の中心。

 神の力を持った人間が2人、相対している。

 

 

 

「ふぅん、今まで『力』を抑制してたってわけか。その鎖はあと何本あるのかな? 俺が今この場で全力を出すに値するのかい?」

 その片方──灰色コートを羽織った白髪の『スターク』はあくまで飄々と問いかける。

 見上げる彼の視線の先には、先ほど飛来してきた鍵の術式により『邪神の力』を解放した、もう1人の『スターク』が浮かんでいた。

 

「さぁな」

 

 直後、声は白髪の『スターク』の背後から聞こえた。

「──っ」

 スメラギが突き出した手刀を、白の青年はすんでのところで弾く。

「だがテメェだってこんなとこで死にたくはないだろ?」

「あぁもちろん。いつかは死ぬと分かっていても、死に場所くらい自分で選びたいよなぁ?」

「エゴイストが。テメェらの巻き添えを食う奴らに選ぶ権利はないってか?」

「権利まで奪うつもりはないさ。だがその選択は俺が塗り替える。散々選んでおいて、選択できるのが当たり前だと思っている奴らの末路は……全て全て全て全てすべてすべてすべてすべてェッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 波動の反撃を、スメラギは大きく瞬間移動することで回避した。

 そして同じ滅紫(けしむらさき)の波動で牽制しつつ、再び近接戦を仕掛けている。

 

 

 

「…………」

 少し離れたところで、結翔は火炎剣烈火を構えたまま2人の『スターク』の戦闘を注視する。

 

 

 戦術は大きく変わっていない。

 スメラギの戦闘スタイルを知っているわけではないが、ずっと『邪神の力』のみで戦っている。

 ネット記事ではパワードアーマーで戦う『エース第3位』の様子が書かれていたのに。

 

 それだけではない。

 先ほどから戦い方が消極的だ。出鱈目な『力』の一端を解放したにも関わらず。

 

(確かに強くなった……だが、まだあいつを倒すまでには至ってないのか)

 

 まだ本領ではない。

 お互いに。

 

 

「とんだ茶番だな……」

 結翔は吐き捨てる。

 さらに言えば、手の内を探っているのだろう。

 ここで倒せないにしても、せめて情報収集を、というのは合理的な判断だ。

 それに、いずれどちらも倒すべき“敵”ではある。結翔としても敵のデータを得られるのならそれはそれで良い。

 

 だが結局は意味のないことだ。

 どうせ『スターク』は同じ『スターク』でしか倒すことはできない。

 ここでスメラギに加勢したとて、何の意味があるというのか。

 

 

 故に。

 為すべきことは。

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

(あのガキは後退したか……一体何を考えてんのやら)

 目の端で赤い竜の鎧が下がっていくのが見える。

 出会った時といい、結翔の思考がいまいち読めないが、とはいえ誤爆を気にしなくていいというのは僥倖だ。

 

「よそ見をしていていいのかな? こちとらあんたを殺さない理由はないんだが」

 

『スターク』の掌から滅紫の線が走る。

 対するスメラギは──否、彼のもう1つの人格であるオーガストは、身体を捻ってそれを避ける。

 

「その割には、テメェこそ様子見のつもりか? そんだけ意気込んでる割には随分消極的だな」

 

 滅紫の線が鞭のように軌道を変え、オーガストの胴目掛けて飛んでくる。

 だがオーガストは空間を『奪い』、襲いかかる鞭をすり抜けた。

 そのまま『スターク』へ駆け出し、同じく滅紫に染め上げた五指を突き出す。

 

 ゴァッッッッッッ!!!!!!!! 

『力』の波動が至近距離で放射され、灰色コートの『スターク』ごと地面を抉り取っていく。

 

「所詮はテロリストのやることだ。やれることには限界がある。リソースもな。だからこそゼノクロスを使ったんだろ?」

 

 自分の中でも推測の域を出ていない。セトから少し聞いた程度で、確固たる証拠があるわけでもない。

 だが突如現れたもう1人の『スターク』。

 ゼノクロスを知っているかのような素振り。

 

 『手がかり』があるとしたら、きっとここだ。

 

 

 『力』が、舞い上がる土煙を横に切り裂いてオーガストに襲いかかった。

 しかし視界が遮られているからか狙いが甘い。

 瞬時にしゃがんでそれを避けると、そのまま足に力を込めて飛び上がり、土煙から抜ける。そして直上から再び滅紫の波動を放射した。

 

「だとしたら妙だよなぁ……ヤツが『スターク』を狙うっていうんなら、何故ゼノクロスはテメェを狙わなかった?」

 

 話しながら、オーガストは少しずつ思考をまとめていく。

 

「ヤツにそう教え込む──細工するにしても、セトはヒステラルム最高峰の人工知能だ。ましてあの時代に、『スターク』が認知されているわけもねぇ」

 

 同時に、何故破滅派は、セトがメモリーを取り戻してから動き出したのか、という疑問も生まれる。

 もし本気で世界を滅ぼそうとするのなら、こんな回りくどい計画など立てず、ゼノクロスに乗じて『スターク』の力で世界を滅ぼしてしまえばいいはずだ。

 

 やがて土煙が晴れる。

 依然、灰色コートの青年は無傷のままそこに立っていた。

 

 追撃は飛んで来ない。

 生徒の答えを聞く教師のように、青年はオーガストにただ目を向けている。

 

「テメェらは動かなかったんじゃなく、()()()()()()

 

 段々と、おぼろげだった考えが輪郭を帯びていく。

 

 (いち)テロリストにしては壮大過ぎる計画。

 しかしその全てが、計画の内にあるわけではなかったとしたら。

 

()()()()()()()()()()()()()()? つい最近の話なんじゃねぇのか?」

 

 偶然が計画に変わった瞬間。

 

「……」

「そしてテメェが元々破滅派だったのか、『スターク』になったから破滅派に取り入ったのかは知らねえが……今回の『起点』はゼノクロスじゃあなく、テメェなんじゃねぇのか? 2人目の『スターク』さんよ」

 

 その『起点』を破壊してやれば、終着点に行き着く前に瓦解する。

 

 

 

 

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