ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜   作:らっくぅ

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すみません、1つ抜けてた話があったので追加させていただきました(2024/5/22)。


第二話 そのまさかです

 生きていれば成功も失敗も、成長も挫折もあるだろう。これはただ、失敗し、挫折したというだけの話だ。しかしそれが、1人の男の運命を決定的に捻じ曲げてしまった。世界を滅ぼしうる程までに──

 

 

 

 

 

「リノセウス…と言ったな。お前は何も分かっていないらしい」

 地下廃墟。異世界大戦時の遺物だ。当時は極秘裏に研究・開発されていた兵器の、まさにその施設として利用されていたらしいが、今となってはその面影はない。

 中年の男は値踏みするように目の前の青年をまじまじと見る。

「“破滅派”というのは手を挙げて参加するものじゃない。こんな名前で呼ばれちゃいるが、実際のところ同じ思想を持った個人の総称に過ぎない」

「だがアンタは組織的な行動を取っている。これから“破滅”するのに仲間を集めるなんてな」

「人1人の限界を知っているだけだ。私がリーダーを務めているのも、ただそういう適性があっただけの話だ」

「なら、俺にもそういう適性はあるさ。世界を滅ぼすだけのな」

 リノセウスと呼ばれた青年は右手を出す。すると、すぐにそれは禍々しい程の滅紫に染まった。

 それを見て、中年の男はわずかに目を見開く。

「…なるほど。この世界の『スターク』は彼だけだと思っていたが」

「あんなのに期待を抱いていたのか? 奴は力だけだ。甘すぎる」

「自分は違うと?」

「この世界が憎い。どんなに品行方正に生きてたって理不尽が唐突に全てを奪っていく。それがこの世界の当たり前だ。だから消す。この捻じ曲がった世界を」

 リノセウスは男をじっと見据える。その時、男は彼の目に底知れぬ闇を見た。

「それがお前の価値というわけだな」

 ならば、断る理由もない。

「良いだろう。計画を大幅に変える」

 彼は志を同じくする“共犯”だ。

「準備は整えてある。始めよう。世界の再生を」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──都市アイゼオン郊外。

 青と緑、そしてたまに土色が見えるだけのだだっ広い平原。

 そこに2つの線が走った。

「くそ、くそッ!!! 何でよりによって『エース第3位』なんだ!!!?」

「さすがは“韋駄天”と呼ばれるだけはある…! けど、その異名は君には相応しくないっ!」

 地上をとてつもない速さで駆ける男を追いかける、パワードアーマーを着けた青年──スメラギは、リパルサーレイをターゲットに向けて放つ。

「チッ!! 魔法障壁を張ってるからって好き放題──」

 その時。

 ッッッダァァァァァァァン!!!!!!!! と、男の目の前で地面が爆ぜ、男はバランスを崩す。

「しやがっ、て…!!?」

『マスター。見事命中しました。』

「はいはい…これで終わりだ!」

 その隙にスメラギは両腕からワイヤーを射出し、男を地面へ縫い付ける。

「確保っと…APRILもお疲れ様」

『私の貢献度に対して報酬が比例していません。マスター、私の正確無比な射撃に対して何か言うべきことがあるのでは?』

「恩着せがましいなぁ……でも君のお陰で依頼を無事に終えられたよ。ありがとう」

『今回はこのくらいで満足しておきましょう。』

「何も言わなければ可愛げがあるのに……さて」

 スメラギはアーマーをナノマシン・パッケージに、センチュリオンを格納庫へ収納すると、拘束した男に近づいた。

「天馬早介、ターミナル02 ha-01出身。中学校後期課程中退、その後は無職のまま現在まで至る。罪状は強盗、公務執行妨害、傷害致死…全て言う必要はないよね?」

「テメェはサツの代わりに来たってのかよ! 社会の雑用係ッ‼︎」

「声紋は3日前の銀行強盗で採取したものと同じ。偽物の心配もなし、と。じゃあ警察に引き渡すよ」

 そう言うとスメラギは再びワイヤーで男を拘束すると、地面に縫いついていたワイヤーを引き剥がし、男を背負いこむ。そしてそのまま飛ぼうとして、先程アーマーを収納したことに気がつき、再びスラスター部のアーマーを構築した。

「おい…! 聞いてんのか雑用!」

「あぁ、一応聞いておくけど何であんな事を?」

「新しい魔法を思い付いたから試したんだよ。お前には効かなかったけどなこの化け物が‼︎」

「それだけの理由で…」

「てめぇだって新しい道具を手に入れたら使いたくなるだろ」

「…君が僕と違う人種だってのはよく分かったよ」

 スメラギは思わず呆れた声を出した。ともかく、後は彼を警察署まで連行するだけ。依頼はほぼ達成だ。ようやくこれで連日の依頼オンパレードから解放される……スメラギはそっと心の中で安堵した。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 無事依頼を終え帰宅したスメラギは目の前の扉を開けた。といってもここはアルヴィアスの傭兵に用意された簡易寮であり、自宅と呼ぶには些か狭すぎた。

(相変わらず殺風景だ…)

 スメラギの故郷は数千年前の超兵器──ゼノクロスによって滅ぼされてしまった。その為、当初は住まいもなければ戸籍すら存在しない有り様だった。この世界に来てからはずっとゴタゴタしていた為、これらが無いことで不都合が生じることがなかったのがせめてもの救いか。

 とはいえゼノクロスの一件が終わった後、流石に戸籍は作ったが。しかしろくに時間も取れなかったせいで住居は未だにこの簡易寮のままで、さらにその部屋も生活必需品が最低限あるだけの状態だった。

(そういえば“あの”スメラギの家はけっこう洒落てたな。彼女の影響もあるんだろうけど…そんなに変わるものかな…?)

『ところでマスター。ここの規則についてご存知でしょうか。』

 ヴヴッとデバイスが鳴ったかと思うと、電子音声が発せられた。これはスメラギが所有している機動兵器“センチュリオン”のAIであり、スメラギの相棒でもあるAPRILの声だ。

「規則? 何の話?」

『この簡易寮は本来短期間の滞在を目的としたものです。』

 まぁそれもそうだ。アルヴィアスに所属している傭兵は世界中で億単位はいる。何ヶ月も部屋を占領していては、当然ながら異世界からやってくる他の傭兵が利用できなくなってしまう。故に簡易寮はあくまで短期間。それ以上は宿でも何でも見つけて自分で何とかしやがれスタイルなのだ。

 

 ということは。

「あれ? まさか…」

『肯定。そのまさかです。()()()()()()()。』

「えぇ⁉︎もっと早く言ってくれよAPRIL!」

『1週間前に言いました。アルヴィアスから催促のメールも届いています。』

 慌ててデバイスのメールアプリを開くと、「簡易寮の滞在期限が近づいています」というタイトルのメールが未読のまま2週間放置されていた。

『ここ数日は依頼続きだった為、忘れてしまうのも仕方ないと私は思います。』

 ヴヴッとデバイスが震える。慰めているのか弄っているのか、無機質な声色からは判別できない。

「う、うぅ……けど幸い金はあるし、しばらく宿を借りることはできる…」

 しかし結局のところ問題を先延ばしにしたに過ぎない。どこか根を下ろす場所を決める必要がある。

「問題はどこに引っ越すか…。流石に都市部がいいしアイゼオンかギエルデルタになるかなぁ。ゼボイムは少し“回廊”から遠すぎるし…」

 すると、ヴヴッ─とデバイスが鳴る。

「だったらアイゼオンがいいよー。スメラギくんにベストな住まい探してあげる!」

「えっ」

 デバイスからおっとりとした声が聞こえたかと思うと、白とピンクのメッシュを入れた少女のホログラムが投影された。

「やっほースメラギくん。AZKi先輩が後輩の悩みを解決しに来たゾっ☆」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「…たく、APRIL? 君は相棒である前に僕のサポートAIなんだから、客人が来る時は予め知らせて欲しかったんだけど?」

『申し訳ございません。マスターには是非羽を伸ばしてもらいたく』

「もースメラギくんいつまでも気にしないの! 私とAPRILのサプライズは完璧だったでしょ? …あ、そこそこ!」

 というわけで呼ばれた先はアイゼオンにある小さなカフェだった。新現代には珍しい──しかしヒステラルムにおいて田舎であるこの世界ではそれほど珍しくもない──ノスタルジックな扉を開け、中を進んでいくと……

「…あの、AZKi先輩」

「ん? なに? ちょっと待ってね〜…よっと」

 ホログラムの少女──AZKiはフッと姿を消したかと思うと、スメラギの隣に再び姿を現した。それも見る限り生身のようだ。

 制服にメガネ、あまりいじっていないボブ、という地味な女子高生の見本みたいなその姿は、電脳世界で生きるAZKiが現実世界で生活する為の“肉体(アバター)”だ。彼女にとって電子の世界こそがリアルであり、“肉体”は仮初のものに過ぎない。しかしそれはAZKiが現実世界と触れ合うことのできる唯一の手段でもあった。

「あの…本当にあの席なんですか…?」

 しかし見慣れていたスメラギにとってそれは注意を向ける対象ではなかった。それどころではなく、目の前にもっと注目すべき人物が、2()()()いた。

「そうだよ。やっほー2人とも! 連れてきたよ〜」

 

「あっ! 君があずきちゃんの言ってた後輩くん?」

 よりにもよって。

 あらゆる意味で自分から遠い存在である彼女たちが目の前に。

「え? は、はい…!」

「わたし、ときのそらだよ! よろしくね!」

「私は星街すいせい。よろしくねー後輩くん」

 白黒のパーカーを着たやや明るめの茶髪の少女、それと白のセーラー服にカーディガンの青髪少女はそれぞれ軽く挨拶をする。できるだけ目立たない格好をしているが、それでも明らかに周りとは空気が違っていた。

「は、初めまして、スメラギです…」

 対するスメラギは、もちろん彼女達の名前など知ってはいたが、“ここ”の彼女達とは初対面であった為、挨拶を返す。

「流石に緊張しちゃってるか? まぁ今をトキメくスーパーアイドル3人に囲まれちゃあそれも止むなしか!」

「すいちゃんそれ自分で言う? スメラギくん、リラックスしていいよ。私達今日はオフだから」

「あ、ありがとうございます…」

 そんなこと言われてもこちらとしては気が気ではない。

 

 元の世界でAZKiやそら、すいせいはアイドルでありスメラギの先輩でもあった。男女問わず、生徒のほぼ全員が彼女達に憧れの眼差しを向けていた。スメラギもその1人だった。

 しかしスメラギは元来アイドルや芸能人などにあまり興味がない。スメラギは彼女達と個人的な付き合いがあり、そこで人間的な素晴らしさを目の当たりにしたのだ。スメラギにとって彼女達は尊敬の対象であり、同時に絶対に到達することのできない、自分とは対極にいる存在だった。

 

「ね、ね、どう? 画面の中のすいちゃんと生のすいちゃんは。思ってたのと違った?」

「あ、い、いえ! 変わらず優しそうな感じで!」

 思わず変なことを口走ってしまう。そういえばすいせい先輩はいつも口調は優しかったのにどこか恐怖を感じさせる印象だったなーと遠い目をして思い出す。

「まだ全然話してないじゃん。君面白いね〜」

 ちょうどこのように。

「そ、そういえば今日は何故お2人が? そもそも、何故ここに来たのかもよく分かっていないんですが…」

 スメラギは慌てて話題を切り替える。

「あれ、あずきち言ってないの?」

「ん? さっき言ったよね? 君にいい部屋教えてあげるって」

 そう言われてスメラギは思い出す。確かにそんな事言っていたような…

「でもなんでお2人を…」

「3人寄れば文殊の知恵ってことで!」

 そんな理由で売れっ子アイドル2人を呼び出したのか。いやAZKi自身もそうなのだから、そもそも彼女が自分と会ってくれる事自体が珍しいのだが。

「それにさ、君にはもっとこの世界に馴染んで欲しいんだよね」

 と、AZKiはスメラギに耳打ちする。

「ちょ…AZKi先輩! お2人に僕のこと、全部話してませんよね…!?」

「もちろん。君はそういうの嫌うでしょ?」

「誰だって()()()()と一緒くたにされるのは好まないと思いますけど…」

「それはそうっ。並行世界(パラレル)を渡る時のマナーだよっ!」

「そんなマナー、あるんですか…?」

「私が決めた! 大丈夫、2人には高校時代の後輩とだけ言ってあるからっ」

 

「…ていうか、スメラギ君ってあのアルヴィアスの? だよね?」

「あぁ! 『エース第3位』の! あずきちすごい人と知り合いなんだぁ」

 ──それ以上の情報が伝わってるのは気のせいだろうか。

「と、脱線しちゃったね。2人とも大丈夫? そろそろ本題入ろうよ」

「うん、オッケー! 可愛い後輩に神物件見つけてあげるよ! 大丈夫大丈夫、最近私地図見るのハマってるんだから!」

「お部屋探しって地図だけでどうにかなるものかな…?」

 そらの疑問はさておき、彼女達が物件に詳しいというのはあながち間違いではない。彼女達は普段のアーティスト活動以外にも、最近の需要に合わせ、ゲーム実況や案件など様々なジャンルの配信を行ないマルチに活動している。そんな理由から、住まい選びにはセキュリティは勿論、防音性やネット環境、立地条件エトセトラエトセトラ、数多くの要素を考慮しなければならない。

 

 

 スメラギの過去の情報が間違っていなければ、この件に関して彼女達は信用していい。問題はその先なのだ。

(高校の後輩だなんて……。そんなこと言ったら、2人とも僕の先輩で…僕がここにいるはずなんてないのに…)

 




完結してないのに番外編の話を持ち出してしまって申し訳ありません。催促が来たら少しやる気出します。構想は考えてあるんですという言い訳だけしておきます。

そしてお分かりかもしれませんが、今作は新主人公結翔とスメラギのダブル主人公で行きたいと思ってます。互いの苦悩と成長を描けていけたらと思ってます。
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