ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜 作:らっくぅ
かなたはちらりと結翔の方を見やる。
それ以上の追及はないようだ。
「じゃあ本題に入りたいところだけど……その前に、この子達を人間界に帰す準備をしないとね」
「えぇ!? 何でよー!」
「流石に『スターク』が相手となればねぇ〜」
そもそも、今までだって同行することを手放しに認めていたわけではない。
事態がより深刻になった今、彼女達には荷が勝ちすぎていた。
「うっ、確かに……」
「まー普通そうっすよねぇ」
そして彼女達自身も、それは自覚があった。
たった一度の戦闘だが、彼女達は何もできていない。せいぜい、一緒にいたロボ子の足を引っ張らないよう、傍を離れなかっただけだ。
だが1人、そうではない者もいた。
「トワは……ごめん、やっぱり破滅派を追いたい」
「トワちゃん?」
声は少し震えていた。しかしはっきりと、トワはそう告げる。
「破滅派と戦って、魔法をあんなことのために使う奴を見て……許せないって思った。魔法士として……ううん、魔法使いとして、トワは止めたい。魔法は人を支える為にあるものだって、伝えたい」
「トワ、キミの気持ちは分かるよ。でも今回の勝利はビギナーズラックに過ぎない。この先、本物の魔術師が現れるかもしれない。キミの全てを使ってなお、太刀打ちできるって保証はないんだよ。それでも──」
「それでも」
強く返す。
今まで自分が、何も知らない学生だったことを思い知らされた。
先輩達がどんな思いで戦っているのか、ようやく身をもって理解したのだ。
「トワはこのお節介を誰かに押し付けようとは思わない。……確かにトワじゃ力不足なのはその通りだよ。でもこのまま帰っていつも通りの日常が戻ったとしても、きっと後悔する。そんなの嫌だ」
「そんなの、白上も……嫌ですよ」
耳をぺたりと倒して、フブキはぽつりとつぶやく。
「誰かが危ない目に遭うの、嫌なんです……。白上達には実力もない。かなたさんの言う通り、全てを投げ打っても倒すことはできない。むしろ白上達がいることで、皆さんの足手まといになりかねない」
フブキは自分から前に出るタイプではない。一歩引いて、みんなを見守るタイプだ。
当たり前の思考ではあった。
いくら元々魔界学校の生徒であろうと、刀の扱いに長けた獣人であろうと、学生は学生だ。才能や訓練だけではカバーしきれない決定的な溝が、スメラギ達との間にはある。
「白上だって、止められるなら止めたいですよ。でも……潔くここで手を引いた方が、お互いのためだと思います」
フブキらしい判断だ。
“世界”が違っても、白上フブキという根幹は何一つ変わっていない。
少しの感傷と共に、スメラギはそう思った。
「うーん……」
と、自分の記憶通りなら真っ先に口を開きそうなオレンジ髪の少女が、しかし唸り声を上げていた。
「スメラギ氏、1つ聞きたいんですけどー、まさか『スターク』を倒せば終わりだなんて思っちゃいませんよね?」
あくまで軽い調子で、しかしその言葉に、全くの遊びはない。
「破滅派はそんな単純な組織じゃない。つーかそもそも組織ですらない。ちょいと頭角を現しただけの個人を1人ぶっ飛ばしたくらいで大人しくなる連中なら、テロなんて大それたことせず、ぬくぬくと布団の中でネットの海に愚痴を垂れ流してると思うんすよ。
ココは『桐生会』という自警団の一族だ。
この“世界”ではどうだか分からないが、少なくとも、そちら側に属していることは確かだ。
「アンタらが“独善”を押し通すっていうんなら、私はアンタらを監視しなくちゃいけない」
その彼女が今、学生ではなく、1人の自警団員として、物事を見ている。
桐生会はこの世界の危機に対して超法規的に行動できる自警団ではあるのだが、実際のところ、世界全体を守れるほどの力は持っていない。
人間界の大都市が襲撃されてなお、動き出さないのがその証拠だろう。
だからこそ、せめて自分達の居場所だけは守らなければならない。
“勝手に”救おうとしている誰かの一挙手一投足に敏感になるのは当然のことだ。
「『スターク』が倒されて負けを悟った破滅派があちこちで無差別テロを起こす、なんていう最悪は避けるさ。僕の仲間が、そのために動いてくれている」
「……」
「これは僕の“独善”なんかじゃない。この“世界”を守りたいと思う者達の“最善”だと、僕は思う」
ココはしばしスメラギを見つめていた。
「……ま、ならいいですけどね! どっちにしてもアイツらが私に喧嘩売ってきたのに変わりはないので付いてきますけど!」
「結翔はどう? って、聞くまでもないかもだけど」
「俺は──知りたい。アンタが何でそこまでこの“世界”に固執するのか。アンタ達が何で
結翔はまっすぐこちらを見る。
先程とは違い、敵意はない。そして、確固たる意志も。
だが、一歩踏み出したような、そんな気がした。
ならばそれに応えたい。
応えなければならない、とスメラギは思う。
かつて仲間達が自分にしてくれたように。
「かなた、ロボ子。わがまま言ってもいいかな」
「そう言うと思った」
「ふふっ、キミは変わらないね〜」
そんなスメラギに、かなたとロボ子は思わず苦笑する。
しかし、だからこそ。
彼を守りたいと思えるのだ。
「君達、僕達の言うことちゃんと聞くんだよ? あと、付いてくる以上、君達を戦力として数えるから。覚悟してよね?」
相も変わらず、かなたはぶっきらぼうに言い放つ。
「たりめーよ! ワタシらがただの学生じゃねーってとこ、見せてやんよ!」
「白上達はただの学生ですよココちゃん……! うぅ、どうしてこんなことに……」
「こうなったからには覚悟するしかないよフブキちゃん。トワも、習った魔法復習しとかないと……」
「ほら学生! そうと決まったら早く移動するよ! おしゃべりしてないで早くセンチュリオンに乗ってってば!」
「もー、せっかちだなぁかなたんは」
まつりは苦笑いしながら、トワやココの後を追う。
「まつりちゃん」
その背中を、フブキが止める。
「ん? どしたフブキ」
「まつりちゃんは、どうして?」
スメラギ達についていく理由。
まつりだけ、何も言わなかった。
言えなかった、のかもしれない。
あの時のみんなの言葉は、どれも本物だった。自分の為すべきことや気持ちに正直で、そこに嘘や見栄はなかった。
ただ、自分だけが。
そんな気持ちを隅に追いやり、まつりは笑いながら答えた。
「……みんなを置いて帰れないから。1人だけやっぱ帰りますは格好つかないでしょ? フブキにはまた心配かけちゃうかもだけどさ……」
「ううん、慣れっこだから。さっきのはちょっとしたわがまま」
「うっ……まじでごめん……」
やっぱりこの親友には頭が上がらない。
あとで何か奢ってあげよう、と思うまつりだった。
長らく溜めてきた分の半分を吐き出し終えました。
休止期間を経て、ようやくストーリーが固まってきました。多分、本来はこの時点で執筆を始める、あるいは投稿し始めるんでしょうね……いつもながら見切り発車らっくぅですまない。
ただその分、キャラ描写を以前よりも丁寧に描けてる気がするので、この調子で今後も書き進めていきたいです。