ホロライブ・オルタナティブ第二章 feat.“Saber” 〜猛る烈火は誰の為にその命を燃やすのか〜   作:らっくぅ

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今回、気持ち世界観の説明多めです。
なんか地の文が続いてお話が長いよーという方は飛ばしていただいて問題ないです。


第九話 どういうわけかそうみたいだよ

 姫森領。

 スメラギ達と少し話をしてから、ルーナはさっさとサロンを去ってしまった。

 彼女の事だろう。今頃はもう破滅派の情報収集を進めているはずだ。

 

 ならば、こちらもモタモタしているわけにはいかない。

 

 

 

『──つまり、破滅派は()()()()()()()スメラギ君の殺害を目標にしているってこと?』

()()()()()()()そうみたいだよ。ちゃんと聖律を持ってきてるあたり、けっこう本気みたいだし」

「本人の前で嫌味を言うのはやめて欲しいなぁ」

 しかも通話していたのは自分のはずなのに、いつの間にか主導権を奪われてるし。

 何気に通話の際にスピーカーに変えやがった相棒にはあとで文句を言っておこう。

 

「じゃあじゃあ、僕達は向かってくる破滅派をただ倒して、ノエルちゃん達の囮になればいいの〜?」

『まさか。あいつらの目的はあくまで世界の破滅であって、スメラギ君は手段でしかない。むしろ追い詰められているのは私達の方だよ』

 襲う側か。守る側か。

 これは単純に立場の問題だ。

 その上、あちらはご丁寧に計画に従う必要もない。計画も目的もかなぐり捨てて暴れられたら、こちらの敗北は確定してしまう。

「逆に言えば、計画通りに事が進んでいれば、余計な被害が出ることもない……もちろん、僕の殺害を最優先としてくれれば、だけどね」

 とはいえ、わざわざスメラギを誘い出す為に街を襲うなどというリソースの無駄遣いをする余裕もないはずだ。どれだけ組織化しようと、計画を立てようと、実際に行動に移せる破滅派も、それに賛同する者も多くはない。

 はずだった。

「……いや、まだある。彼らが浪費できるリソースが。僕達はかつて、魔界でそれを経験している」

『魔物かぁ……でもアレってアンドロイドがナノマシンで操作してたんだよね? 人間の頭脳じゃ難しくない?』

 

 かつて、ゼノクロスが生み出した端末──マーシェはナノマシンを用いて魔物を操り、魔界の都市を襲った。しかしそれは、アンドロイドによる高度な情報処理によって成し得た業でもあったのだ。

 

「別に全ての魔物を操らなくたっていいんじゃない? 群れの中のリーダー、あるいはその地域の主さえ操っちゃえば、あとの有象無象は制御できるわけだし」

 というかなたの指摘はもっともだ。

 実際、先の襲撃でナノマシンの痕跡が見られてたのは一部の魔物だけだった。とはいえ数を重視したのか、その地域に主と呼べるほどの個体がいなかったのか、相当の数を制御下に置いていたのだが。

『なるほど。最悪を防ぐって意味でも、魔界に行ってみたほうが良さそうだね』

 

 そこで、セトが口を開いた。

『人間界にも同様のリソースはある。アンドロイドにある程度のセキュリティは施されているようだが、私に破られている以上安心はできないだろう』

 

 ちょうどセトが拝借している一般作業用義体のように、この世界においてアンドロイドはそれほど珍しいものではない。

 何せ世界自体が田舎な上に、各都市が分断されているものだから、労働力に偏りが生じてしまう。そこでアンドロイドの出番というわけだ。

 とはいえ、人工知能やネットワーク周りにやたら厳重なセキュリティがかけられている上、強制シャットダウン機能まで標準で組み込まれている事から、やはり飼い犬に手を噛まれるトラウマは根強いのだろう。

 もっとも、数千年前の科学全盛期に生まれた超高性能AIからしたら、この時代のどんなセキュリティも可愛く見えてしまうのだろうが。

 

「………なんか、前の経験ってすごい活きる事もあるんだなぁ」

 スメラギはそんな事よりも、襲う方って大体同じ思考回路になるんだなーなどと、いっそ感心すらしていた。

「呑気な事言わないでよ……盤面を固めてる間に襲撃を受けるなんてのは、1番避けるべきでしょ?」

「ま、まぁでも、アンドロイドに関してはあんまり心配しなくていいんじゃないかな? 元々高度なセキュリティがあった訳だし。あの一件を受けて改善もなされたらしいし」

 それにあの時はゼノクロスの端末、すなわち古代の技術が相手だったのだ。数千年の大戦を経て退化した今の科学技術では、あまりに分が悪かった。

『じゃあ私達はこのまま人間界に残るよ。捜索なら白銀騎士団に有望なのがいるからね!』

「任せたよ白銀騎士団。僕達は魔界でテロを予防しつつ、計画を探ってみる。じゃあね、ノエル団長」

「いやそれ僕のデバイス……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで。

 

「これから魔界に行くよ」

「えーなんで? どういう経緯でっ?」

「もう……話し合いに参加してないんだから聞かないでよ。要は魔界に破滅派がいるかもしれないってこと!」

 何だかんだまつりの能天気な質問に答えてくれるあたり、この天使はいい奴なのかもしれない。

 時折ガタゴトと揺れるトラックの中で、結翔はそう思った。

 

 厳密にはトラックではない。

 スメラギがエイプリル? とかいうAIを使って呼び出したロボットが変形した姿だ。

 荷台の中は結翔達がほぼ全員乗れるだけのスペースと簡易座席まであった。ちなみに1人だけ荷台に乗れず、乾き気味に笑いながら前方席へと移ったのはスメラギだった。

 

「さっきの奴らはどうするんだ? 人間界にも破滅派はいるはずだろ」

「それは相方に任せるよ。僕達はまず地盤を固めなければいけない」

 前からスメラギの若干くぐもった声が聞こえる。

 相方、とはさっきのお姫様が言ってた『団長』のことだろうか。

「魔界に行けば真相に近づけるのか?」

「どうだろう……少なくとも、僕と一緒に行動していれば破滅派はあちらからやって来てくれる。()()()()()()()ね……」

 そうして破滅派を追っていけば、この事件の真相も明らかになるというわけか。

 面倒だが、結翔とて破滅派の計画を暴く決定打を持っているわけではない。

 それに、()()()()()()()()()()()()()()()の遺言が正しいならば、スメラギと共に行動していれば、“ゴール”にはたどり着けるはずだ。

「それにしても、あの聖職者が言うように今回も世界規模の計画なんだろうな〜。やっぱりもう少し人手が必要かも?」

「うーん、いよいよ僕達が解決しなきゃいけない雰囲気だなぁ……」

「なんで? 警察とか傭兵が何とかしてくれるんじゃないの?」

 と、まつりが口を挟む。

「社会の授業で習わなかった? 人間界にもこの世界全体にも、統一政府がないの。世界規模の事件が起きた時、各自治体は他の都市をまとめ上げたり干渉するだけの力がない。だから結局、自警団に頼むか“勝手に解決される”ことを祈るしかないんだよ」

 完全な他人任せ。あるいは神頼みか。

 天使はため息を吐く。

 とはいえ神界が世界を統治する気もないらしい。

「だってそういうルールだし。今時、神々が統制しなきゃいけないほど統率のない世界なんて『第二世代』くらいだよ?」

「言い出しっぺの法則って神様には通用しないんだね……」

 トワが遠い目をして呟く。

『ふむ。今のは良いジョークだな、常闇トワ』

「セト〜君のリソースは人間性の向上よりもこの事件の解決に使って欲しいんだけどな〜」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 魔界。

 

 大都市ベルナバイドの中心部にあるアリーナに、癒月ちょこ達はいた。

「魔乃アロエ……? 有名なのか、このアイドルは」

 もちろん出演するわけではない。

 こうしたイベント会場の警備もまた、魔界学校の生徒が受けるクエストの対象なのだ。

「えー知らないのあやめちゃん。魔乃アロエって最近人気の歌手だよ。よくテレビに出てるじゃん」

「あらあら墓穴を掘ったわねあやめ。これはしばらく私達と一緒にクエストに出てもらうしかないわね」

「ま、待て! これ以上生徒会を離れるわけにはいかん! 余の決裁を待つ稟議が! 案件のメールが……!!」

 未だにグダグダ食い下がる生徒会長を横目に、ちょこは会場を見渡す。

 どこを見ても人ばかりだ。開演30分前だと言うのに、空席はあまり見られない。

 これだけの人がいれば、1人くらい奇行に走る者が出てもおかしくはない。

 だがそれも自分達が出張るほどの事ではないだろう。

 要は今回のクエストは、生徒会室に籠りっぱなしのあやめへの休暇だ。

 本来ならこの程度のクエストは魔界学校に入りたてのパーティが担当するはずなのだが、そんな理由でちょこが引き受けたのだ。

「生徒会長ともあろう者がクエストをほっぽりだす気かしら? ほら、メル様達と交代するわよ」

 

 その時、ちょこのデバイスが震える。

 魔法が発達した魔界でわざわざ科学的に連絡を取る者は少ない。

 ちょこは幾つかの顔を思い浮かべつつ、デバイスを耳に当てる。

「もしもし?」

 

 

「あぁちょこ。今大丈夫?」

 

 

 予想が外れてしまった。よりによって。

 ちょこは思わず顔をしかめる。

「スメラギかぁ……ということは事件かしら」

「僕はヒューマノイドタイフーンか何かか……? って自分で言ってて悲しくなるけど……」

 しかし滅多に連絡をよこさないスメラギがこうしていきなり電話をかけてきたのだ。絶対ろくなことがない。

「今はあやめの休暇中なの、あまり大事にしないでくれるとうれしいのだけれど」

「今回は予防として魔界に寄るだけだから大丈夫……なはず。ベルナバイド周辺に何かこう、ヌシみたいな魔物はいたりする?」

 随分アバウトで突拍子もないことを……と内心呆れつつちょこは脳内で検索をかける。そういえば最近、郊外に魔物が出るとかなんとか聞いて魔物討伐クエストを受けたような気がする。

 

「思い出した。確か近くの森に凶暴な飛竜がいたとかで、他の魔物が人里に降りてきたりしてたわね。でもそいつはもうちょこ達で倒しちゃったわよ?」

 そしてそのクエストであやめの動きがあまりに悪かった事がきっかけで、半ば強制的に休暇という名の警備クエストを受けることになったのだった。

「そうだったのか、なら良かった。でも一応警戒はしていてほしい……と言っても、あやめの負担にならない程度にね」

「何の忠告なのよ……」

 ちょこは怪訝な声を出す。とりあえず、単に魔物を警戒しているわけではないのは分かった。

 ゼノクロス関連ではなさそうだ。もしそうなら、一保健医に連絡などしない。

 

 そこでちょこは、第3の選択肢を思い出す。かつてちょこは、ゼノクロスの一件でその名を耳にしたことがあった。

「……もしかして面倒なのに目付けられてない?」

「ごめん。多分僕の『力』のせいだ。僕を殺してどうするのかは分からないけど、世界を滅ぼそうとしているのは確かだ」

「だと思った」

 いっそ、ちょこはため息をついた。

 『スターク(スメラギ)』を受け容れたのはいいが、そう何度も世界を懸けられては心が休まらない。

 自分の命が狙われている状況下で、尚も他人を気に掛けるようなお人好しでなければ、速攻見限っているところだ。

 

 そして。

 そんな彼がわざわざ仲間(ちょこ)に連絡をしてきたのだ。

 その意味くらい、理解している。

 

 

 よってちょこはこう答えた。

「まぁあやめも事務仕事より身体を使う方が本分でしょうし、何より後悔してほしくないもの。分かったわ。このクエストが終わり次第、私達の方でも動いてみる。そうそう、事が済んだらこっちに顔を出してちょうだいね? たっぷりこき使ってあげるから」

 それくらいなら、と苦笑する声が聞こえ、

「ありがとう。やっぱり君に伝えておいて良かった」

 こんな他愛もないやり取りを彼ができるようになったのも、成長の証なのだろう。

 思わず目を細める。スメラギとはほとんど同年代のはずなのに、何故だが年下の弟のように感じてしまう。

「……さて」

 通話を切ると、ちょこは深呼吸する。

 やっぱりこのクエストを受けておいて良かった。

 そうでなければ今頃、真っ先に我らが生徒会長に報告してしまっているだろうから。

「今はクエストに集中よちょこ。少しでもあやめの体調を回復させないと……」

 




なんか久しぶりにホロライブ・オルタナティブ書いたからか、微妙にキャラ変わってるような気がしないでもない……特にかなた。すまんかった。
別世界なんで、こういうかなたそもいるかぁという感じで大目に見てやってください。

というか一人称僕のキャラが3人も同じパーティにいるせいで、セリフの書き方にけっこう気を遣いますね……キャスティングミスとは言うまいな。

まぁそれはさておき、今回も下に設定を残してあります。


『第二世代』→異世界大戦中〜戦後に創られた世界、または新たな文明が築かれた世界そのもの及びその住人を指す。
 異世界大戦はヒステラルムに生きる者達だけでなく、彼らを創り出した創造神達にも打撃を与えた。魔法と科学の発展により神の絶対的優位が失われ、戦争の道具として力を利用される者や戦争を止めようとして逆に住人に殺される者などが現れたのである。
 そのため、ある神は文明を滅ぼし世界をリセットする事を選び、またある神は既存の世界に見切りをつけ、新たな世界を創造した。そうして生まれたのが、『第二世代』と呼ばれる世界群およびその住人である。
 世界のインター化後に創られたため、まだ異世界への対応や知識がほとんど無い。そのためいわゆる第一世代の世界も、これらの世界に対する干渉を厳しく制限している。

フォルミア・センチュリオン→可変機構を取り入れたセンチュリオン。一部武装を取り外して輸送に特化した車輌形態へ変形できる。車輌形態はユニバーサル規格のコンテナを1つ搭載できる他、最大で8人ほどを搭乗させることができる。ただし可変機構の為に機体が大型化している上、攻撃力は他のセンチュリオンよりも劣る。しかし並の魔物の群れを壊滅させるには十分。
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