MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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27話 輝刃

 

 時は少し戻る。

 

 地球周回軌道上には、ザラ隊を援護するための軌道降下部隊が展開中であった。

 降下ポッドに進入するジンの肩は橙色に塗られており、それらがハイネ・ヴェステンフルスの部下達であることを示している。

 地上でアークエンジェルを強襲する部隊と連携して、大気圏外より奇襲降下するモビルスーツ隊によって仕留める二段攻撃の作戦。

 砂漠の虎、紅海の鯱という地上軍の巨頭を討ったアークエンジェルとストライクの2機を仕留めるには、まだ戦力が足りないのではないかという懸念と技術局からの要望、評議会強硬派からの後押しもあり、地上強襲部隊にはモビルスーツの改修とプラントの技術を結集した新型機の派遣まで行ったこの作戦の成功率は、どれだけ敵の脅威を最大に見積もったとしても7割を切ることは無かった。

 例え軌道降下部隊がその降下準備中に、連合軍からの攻撃を受けたとしても。

 

 しかし、その見積の中に『地球連合軍の新型モビルスーツによる攻撃』といった、敵の可能行動は採用されていなかった。

 そしてその欠けた想像力は、すぐに現実によって埋め合わされることとなる。

 

 警戒中のジンが突如爆発。

 僚機も臨戦態勢をとる間もなく時すでに遅く、先のジンと同じ運命を辿った。

 他の警戒部隊もほぼ同時に襲撃を受け、その全てが撃墜されたとあっては全く予想外の状況に混乱状態に陥る降下部隊。

 そして、その混乱に拍車をかけるように雪崩れ込む地球連合軍のモビルスーツ部隊。

 特殊戦技教導隊のダガー3機、第8艦隊所属のロングダガー隊の機動部隊は極めて統制の取れた行動で次々にザフトのモビルスーツを、艦船を、そして降下ポッドを撃破していく。

 

 全く予想外の敵の出現による大混乱は破滅的な結果を招いた。

 戦闘時のセオリーとなっていたNジャマーの稼働が仇となり発見が遅れたことも混乱の理由の一つではあったが、しかし最大の理由は彼等コーディネイターがナチュラルを大きく侮り、局地的にでしかモビルスーツを運用できないと高を括っていたからである。

 結果として、軌道降下部隊は降下準備中という最大の弱点を曝け出して文字通りの壊滅。

 間違いなく、想像力が欠けた結果のツケであった。

 その光景の一部始終を見ていたアズラエルは、終始上機嫌だったという。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 そして、今。

 軌道降下部隊を損失もなく全滅させ、悠々と単艦で降下したアークエンジェル級2番艦『ドミニオン』とモビルスーツ隊は味方の窮地を救う西部劇の中の騎兵隊の如く颯爽と、苦境に陥るアークエンジェルの前へと現れてみせた。

 パーフェクトストライクを援護するように展開する、エール、ソード、ランチャーの各ストライカーパックを装備したダガーの3機。

 今ここでは、モビルスーツ数において連合とザフトのその数は拮抗した。

 

「エドさん!? その機体はっ」

「話は後よ。『ドミニオン』から新型ストライカーパックが来るわ」

「レナ中尉!? 教導隊みんなで降りて来たんですか!?」

「いいから行け! さっさと新型に換装してこい」

 

 最早懐かしの声となっていた特殊戦技教導隊の面々の中に混じる知らない男の声。

 低軌道会戦後、ユーラシア連邦からの訓練交換士官として暇を持て余していた彼は運良く教導隊に拾われ、今は教導隊長としてその名を馳せていた。

 勿論、一時離脱していたサクヤはその事実を知る由もなかったが。

 

 上空から現れた黒いアークエンジェルことドミニオンは、傷ついたアークエンジェルを援護するように火線を撒き始め、その開いたカタパルトからスカイグラスパーとも、主力戦闘機である『F-7D スピアヘッド』とも違う何かが射出された。

 マルチプルアサルトストライカーのユニット全てを分離し、射出されたそれとストライクが同期して同一軸へと並び出す。

 

「させるかよ! チッ、新型が!?」

「おいおい、そりゃ無粋ってもんだぜ?」

 

 それを阻止せんとゲイツ改が再度迫ろうとするが、エド達ダガー3機の連携攻撃によって阻まれてしまう。

 サクヤにとって初めての空中換装であったが、しかし不安感は全くなくむしろどこか馴染むような感覚さえあった。メビウス・ゼロや、ガンバレルストライカーと同じような感覚。

 

「ドッキングモード、相対速度、軸合わせ……今っ!」

 

 背部からの軽い衝撃と共に、サクヤのストライク2号機が新たな装備(Gear)を身に纏う。

 肩から前方に伸びる巨大な砲身に、両脇には大型の実体剣。

 巨大なX字にも見える黒鉄の翼は、ストライクの巨体を空に浮かせるのに十分な役割を果たしていた。

 そして、モニターに表示されるはそのストライカーパックの名!

 

「『I.W.S.P』、インストール!!」

 

 装着と共にバッテリーが急速に回復し、更には教導隊がこれまで蓄積してきた各種のファイルデータをストライクがセーブし統合され(Integrated)新たな武装(Weapons)が読み込まれていく。

 

「新型のパワーパックに、演算ユニットまで……!」

 

 一種の電子兵装(データ・ウェポン)でもあるこのストライカーパックは機体の支援演算ユニットとしても利用でき、更新されずにいたストライクの機体データが次々と更新されてOSの最適化までも進めていく。

 初の実戦、初の空中換装を見守っていたドミニオンの、もとい教導隊のメカニック達の歓声が上がった。

 それを背に、輝く刃のストライカーを背負ったストライクのツインアイが再び光る!

 

「背負い物が新しくなったところでっ!」

「ファイルロード……! やれる、これならっ!」

 

 両脇の9.1m対艦刀を引き抜き、再度ストライクがゲイツ改と対峙する。

 飛行能力を得たストライクに、ハイネのゲイツ改が怯む様子を見せるもしかし臆することなく両腰のビームサーベルを引き抜いて連結し、突貫した。

 両手の対艦刀を構え、同じく突貫するサクヤのストライク。

 振り上げたビームサーベルと対艦刀が交差し、鍔迫り合いとなる。

 

「おおおおっ!」

「はあああっ!!」

 

 9.1m対艦刀のビームコーティングがじりじりと蒸発し、ハイネがそのまま押し切ろうと背面のスラスターを吹かすが負けじとサクヤもI.W.S.Pのスラスターの推力を全開まで上げていく。

 完全に膠着した2機であったが、その均衡を破るようにストライクが両肩の105mm単装砲を撃ち放った。

 PS装甲に阻まれて有効打を与えられずにはいたがその衝撃でゲイツ改の体勢を崩すことには成功し、2機の間合いが切れる。

 再度の睨み合う態勢、しかし状況は完全にサクヤの有利となっていた。

 

「クソッ……クソッ! ただのナチュラルに、こうもやられるとはっ」

「ハイネ先輩! 一旦態勢を立て直しましょう!」

 

 アークエンジェルとドミニオン、そしてキラのストライクからの狙撃を回避しながらアスランのイージスがゲイツ改に通信を入れる。

 突然の敵の増援に浮足立つザラ隊の面々であったが、いち早く状況を理解したアスランは作戦の失敗を悟っていた。

 既に軌道降下部隊の到着予定時刻を過ぎており、来ているのは敵の増援。そして、上空から味方が降りて来る気配はない。

 完全に形勢を逆転された、と悟った。

 

「軌道上の味方は、連合の増援にやられたか……!」

「どうしますか、アスラン!?」

「オーブの領海も近い! 一度退いて、体勢を立て直す!」

 

 焦った表情のニコルがアスランに指示を仰ぐ。

 ドミニオンからの砲撃とグゥルとは違う支援ユニット(SFS)に乗った大西洋連邦のモビルスーツからの攻撃を回避しながら、アスランは信号弾を射出して撤退していく。

 何合もサクヤのストライクと切り結んでいたゲイツ改も、間合いを切ると背部のリフターに乗ってイージス達の背に続いた。

 敵が退いていく姿にアークエンジェルの艦橋は安堵の空気に包まれるが、甲板に着地したエールダガーからの通信で、再度の緊張に包まれる。

 アークエンジェルのモニターに映ったのは、立派な髭を蓄えた壮年の男だった。

 

「こちらは特殊戦技教導隊、隊長のモーガン・シュバリエ大尉だ。間に合って良かった」

「アークエンジェル艦長のマリュー・ラミアス少佐です。救援に感謝します……あの、そのモビルスーツに、黒いアークエンジェルは……」

「ン? ああ、ハルバートン提督からの手土産だ。本当は閣下がここに来たかったらしいがな」

 

 ひとまずは着艦許可をと笑うモーガンに慌てて着艦許可を出すと、片手を上げて了解を示したモーガンが通信を切って甲板から飛び上がる。

 時を同じくして、エドとレナのダガーもアークエンジェルに着艦、最後にサクヤとキラのストライクが格納庫に降り立った。

 かつてないほどに賑わう格納庫に、マードックが喜びの悲鳴を上げた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「指示に従い、先導艦へ続け」

 

 教導隊の面々を迎えたアークエンジェルは、ドミニオンと並走しつつオーブ領海内へと進入していた。

 エスコートのオーブ海軍艦艇に四方を固められながらオノゴロ島のドックに向かっていく姿をマリューは全く釈然としない表情で眺めていた。

 着艦したモーガンら教導隊の面々から告げられたのは、自分達が第8艦隊からアークエンジェル救援のためにハルバートンから派遣された部隊であること、事情が事情でアークエンジェルに乗り込んでいたサクヤを本属に戻すこと、そしてアークエンジェルはこれからドミニオンと共にオーブへ入国すること、この3点であった。

 

 救援に来てくれた事実は非常にありがたかったし、本来の部隊が来たのであれば本属の人間をそこに戻すことにも何の異議はない。

 しかし最後の、ドミニオンと共にオーブに入国することにはまだ釈然としていなかった。

 オーブを経由してアラスカへ向かうのは大回りになるだけであるし、時間の浪費にもなる。

 モーガン達が言う様に、第8艦隊が保護したヘリオポリスからの避難民をドミニオンが移送してきたことは事実であろうし、それを本国へ送還するといった理由も事実であろう。

 

 しかし、砲艦外交でもあるまいにわざわざドミニオンとアークエンジェルを並べて入国する必要があるのだろうか。

 何か裏の目的があるのだろう、と油断しないようにマリューは隣を走るドミニオンを、そして前方に迫るオノゴロ島を見つめた。

 

 マリューの心配を他所に、隣を走るドミニオンのブリーフィングルームにはアークエンジェルに戻った教導隊の面々と月面からオブザーバーとして乗り込んできていたアズラエルを加えた5名が、ストライク2号機のメインカメラが捉えた映像を大型モニターに映し出し、それを食い入るように見つめていた。

 宇宙でのクルーゼの試験型ドラグーンを搭載したシグーとの戦い、砂漠でのバルトフェルド率いるバクゥ部隊、その人が駆るラゴゥとの戦い。空中から迫るディン、海中から襲い掛かりストライクを海へと引きずり込むモラシム隊のゾノとグーン。

 そして直近の火器運用試験型ゲイツ改との戦闘を含めた多数のデータは何物にも代えがたく、非常に貴重なものである。

 少なくとも、この部屋に集まった5人の認識はそうであった。

 

「ストライク……というよりもモビルスーツがあれば、砂漠の虎も形無しってワケか」

「実際、ギリギリでしたがね……」

 

 モーガンが顎髭を撫でながら感慨深げに呟く。

 自身の率いる部隊をバルトフェルドに潰され、それを自身の無能に転嫁されて厄介払いに近い体でユーラシア連邦を追い出された彼にとっては、どこか思うところがあるのかもしれない、とサクヤは思う。

 上層部に再三モビルスーツの研究を進言して煙たがられた彼が大西洋連邦の特殊戦技教導隊に参加しているのも、そういっためぐり合わせなのだろうと運命に感謝しつつ、モニターの映像を巻き戻す。

 橙色のモビルスーツが画面に映ったところで停止し、その機体の各部をピックアップしたうえでズームして映し出した。

 

「おっ、さっきの新型か」

「はい。今回交戦したこの敵の新型ですが、これまでのザフト製モビルスーツとは様々な相違点が確認されました。詳細は手元の資料で確認をお願いします……急いで作成したので、完全版はまた後日に」

 

 プリントアウトし、席に配布されていた数枚の資料を各人が手に取り確認し始める。

 臨時のブリーフィングに間に合わせるために文書としての体裁は若干崩れてはいたが、しかし要点を押さえて簡潔に纏められていたそれは、概要をおおむね把握するにはそれで十分であった。

 その資料を読み終えたオブザーバー、この中での唯一の民間人でもあるアズラエルが机を人差し指と中指でトントンと叩いているのを見て苛立っているな、とその場の4人が認識を同一にした。

 映像の中ではゲイツ改がパーフェクトストライクを圧倒し、圧し込んでいる姿が映し出されていた。

 

「PS装甲を惜しげもなく使い、ビーム兵器にレールキャノン。マルチプルアサルトストライカー並みにエネルギーを消費しそうな武装構成にもかかわらずその兆候もなし、と。いやはや……全く、信じたくはないものですねェ」

 

 こんなものを見させられなければ、あり得ないと一蹴してましたヨとアズラエルが付け加える。

 その言葉に頷きつつ、資料に記載されている一文にモーガン達の視線が集中した。

 『―――以上の点より、今回交戦した新型機については核動力もしくはそれに準ずるものを搭載しているものと思料する』

 まさか、とエドが疑う様に言うがニュートロンジャマーを開発したのはザフトであり、造ったそれを無効にするものの開発も可能だろうとモーガンが言えばレナとサクヤがそれに頷き、エドも首を傾げながら納得する。

 しかし、アズラエルは苛立たし気に机を叩き続けていた。

 

「交戦した本人として、実際どうです、アレ? 鹵獲できません?」

「やれ、と言われればやりますが……少なくともここの半分は帰ってこれなくなります」

「フーン……あんなので渡り合ったキミが言うんなら、そうなんでしょうネ。ボクとしては、やって欲しいところなんですが」

 

 また無茶なことを、と教導隊の面々が怪訝な表情になる。

 それに加え、ブリーフィングの開始時にはなんでマルチプルアサルトストライカーなんて頭の悪いもの使っているんだ、と散々な言葉を投げかけられサクヤは久方ぶりにアズラエルへの怒りでレーザーポインタを投げそうになったが、その後の戦闘データでストライカーパック自体の汚名を返上することで若干収まりつつはあった。

 

「ニュートロンジャマーを無効化する技術、ねェ……さしずめ『ニュートロンジャマー・キャンセラー』と言ったところですか。もしそんなものが実用化されていたなら、これはとんでもないコトですヨ」

 

 これまではニュートロンジャマーという大量破壊兵器を抑止する存在により、核兵器の応酬という完全な人類種自体の絶滅戦争の体を取らずにいた。

 が、その枷が無くなったとなればこれまでのミリタリー・バランスは完全に崩れ、プラント側が一方的に核兵器を使用してナチュラルの廃滅すら可能となってくる。

 ここまで開発したモビルスーツとその関連技術、そしてどうにかして復活させた各種のインフラやサプライチェーンや通信網すら全て無用の長物と化すその存在は、既にミリタリーだけの問題ではなく地球規模のものと化していた。

 

 核兵器による一方的な蹂躙。

 奇しくも開戦前の地球連合軍もといブルーコスモスが計画していたプラント本土への全面的な核攻撃を、今度は地球全土にやり返そうというのだ。

 皮肉にしては、あまりにも出来過ぎていた。

 

「折角『ストライクダガー』の量産計画が承認されそうってところに、これですからねェ……ま、この新型はキミ達教導隊になんとかしてもらうとして」

 

 またこれか、とサクヤ達が怪訝な表情になった。

 出資者が無理難題を実務者に突き付けるのは世の常であったが、これでは何でもできる便利屋扱いだと抗議をしたくもなる。

 そんな空気を感じ取ったのか、アズラエルはぱんと手を叩き自身に注目を集めさせ、モニターの前に立った。

 

「その前に、一つオシゴトです」

 





これ実はエネルギー全部使う武装とか積んでません?

───I.W.S.Pの仕様書を確認している中尉



ちなみに今回IWSPを出すかそのままパーフェクトストライクで行くか滅茶苦茶迷いました。
パーフェクトストライクの方の展開も、if展開みたいな感じでそのうち書いていきたいですね。
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