MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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お疲れ様です。
劇場版とそれのノベライズを読みながらプロットを修正したりしなかったりしてるのですが、この人滅茶苦茶出したい……と思う人らがちらほらいます。
とはいえここで出すのも……と思う自分もいたり。
どうなんでしょうね。




30話 渦中

 

 小馬鹿にされているな、アスランは思う。

 それはデスクを挟んで、プリントアウトされた書面を叩きつけているイザークも同様に感じているのだろう、とも思った。

 隣に立つハイネも苛立たし気にそれを読み今は目を瞑っているし、ニコルでさえ怪訝な顔で覗き込んでいる。

 

 オーブ近海を潜航中のボズゴロフ級潜水母艦のブリーフィングルームには、アスランをはじめとするザラ隊のパイロット達とハイネ、そしてボズゴロフの上級者らが集合しており、漸く届いたオーブ政府からの解答の書面を受け取ったところであった。

 そして、つい先ほどそれを机に叩きつけたのがイザークであった。

 声には出さないが、集まっていた全員がイザークと同じような思いを共通して持っていた。

 

「何だこの書面は!? 馬鹿にしているのか!」

「寄港の目的はあくまでも外交の一環であり、寄港期間中でのザフト艦の来航は受け付けられず―――地球連合所属艦艇が領土外から退去した以降は、貴艦の来航を歓迎する、だってさ。なーんか、イザークの言う通り馬鹿にされてる気分だぜ」

 

 

 普段は飄々としているディアッカも、この書面には立腹のようだ。

 既に艦長をはじめとしたクルー達やイザークの間では押し切るべきだ、そんなことをすれば外交問題だと議論の火蓋が切って落とされている。

 そもそも大西洋連邦軍、ひいては地球連合軍の艦艇であるアークエンジェルとアスラン達が奪取したXナンバーはオーブの保有するコロニーのヘリオポリスで建造されており、それが今は新たな艦も共にオーブへ堂々と入港している。

 中立を表明したのにもかかわらず、である。

 これでは地球連合との関係を疑ってくれ、と言っているようなものだ。

 アスラン達をはじめ、ヘリオポリスに潜入した彼らの不信感は絶頂に達していた。

 とはいえ、そこで感情論に逸らないのがアスランであり、ザフトのエリートたる所以だった。

 

「とはいえ、オーブの正式な回答がこれであるなら従わざるを得ない。下手に動いたら、それこそ本国を巻き込む国際問題になるぞ」

 

 正論を提示され、強硬論を主張していたイザーク達がぐっとつまる。

 ただ、イザークとディアッカだけはすぐに嘲笑するような顔つきになった。

 

「流石は冷静な判断だな、アスラン―――いや、ザラ隊長?」

「じゃあ、はいそうですか、って素直にずっと待つわけ?」

「そうだ」

 

 元からアスランに対する反抗心の強い彼等だけあって、その言葉には棘がある。

 ニコルがむっと2人を諫めるように睨みつけるが、効果は薄いようだった。

 議論には参加せず、腕を組んだままのハイネは先程から黙ったきりだ。

 

「ここで強行突破したり、潜入したところで得られる情報は少ないだろう。だったら、確実にいるであろう足付き達が出て来たところを叩いた方がいい」

 

 勿論、カーペンタリアや本国からの圧力をかけてもらうようにも要請するが、と付け加えつつアスランは自分のこの判断が実際正しいのか判別できずにいた。

 領海内への強行突入は論外として、領土内、つまりはオーブ軍あるいはモルゲンレーテ内の潜入は、ある程度の成果を挙げられるのではないか、とも思う。

 しかしながら、ここで下手に動き正体が露呈してしまえばそれもそこまでである。

 では、どうすれば―――と堂々巡りになる思考に制止をかけたのは、イザークだった。

 

「分かった。ここは貴様に従おう。だがな、貴様の判断が本当に正しいと認めた訳ではない!」

 

 血気に逸りやすいとはいえ、イザークもザフトのエリートなのだ。正論を説かれ、それに対して感情のみで反論するにはいささか聡明に過ぎていた。

 しかし従うと言っても、反感が解かれたわけでもなく彼とディアッカは不満げに身を翻し、ブリーフィングルームから出ていく。

 クストーのクルー達も出ていき、アスランはため息をつきながらデスクに手をついた。

 

「……お前の判断、間違ってないと思うぜ」

 

 これまで黙ったきりであったハイネが初めて口を開く。

 アスランとニコルが2人の先輩を見上げると、むっつりと閉じていた目を開いて笑いかけた。

 

「隊長、ってのも難しい立場だよなぁ。部隊行動の全てを左右するんだ。当然、そこには部下なり何なりの命が懸かってくるわけでさ」

 

 やや自嘲気味な笑みを浮かべながら、ハイネがアスランを励ます。

 先の戦闘で部下を全て失い、帰艦した際には到底話しかけられるような雰囲気ではなかった彼だったが、ここまで回復してくれたことはアスランにとっては有難い事実ではあった。

 しかし自暴自棄になっている可能性もあるのではないか、と一抹の不安が彼の心の中を過ぎる。

 ハイネは、それを感じ取ったかのようにアスランの肩を叩いた。

 

「戦争やってるんだ。割り切らないと、こっちも死ぬんだ。ただな……」

 

 ハイネが目を伏し、アスランの肩に乗せた手に力が入る。

 割り切る、と言っても苦楽を共にしてきた部下が一気に全員死んだのだ。

 そう簡単な話ではないだろう、とアスランは思う。

 

「あいつらの仇は必ず取る。あのストライクと、連合の新型は必ず落とす!」

「俺達も協力します、ハイネ先輩」

 

 そう言うと、ハイネはふっと笑い「先輩はやめろっての」とアスランの肩を小突く。

 いつもの調子が戻ったハイネが部屋から出ていき、彼に言われた言葉を反芻する。

 敵味方に分かれ、何度も戦ったかつての友人、キラ・ヤマト。

 何度も剣を交え、死合っていたはずなのに未だに彼への未練―――と言うには、どこかおかしいが―――そのような何かが、断ち切れていないのだ。

 

 戦争だから、と割り切る。言葉で言えば、短く簡単そうに聞こえるそれだが、しかしアスランにとっては未だそれが出来るような気がしなかった。

 次こそは、次こそはと言いつつ必ずどこかで迷いが出てしまう。

 その迷いが剣筋を鈍らせ、銃口を揺れ動かさせた。

 どうすれば、いい。

 

 ただ一人残っていたニコルが、ヘリオポリス以降晴れないアスランの表情を見て、怪訝そうな表情になった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「ちょっと、1号機も似たり寄ったりだったけどこの機体は……」

「ここまで擦り切れてると修理より新造した方が早い気がするぜ」

「なんだこの摩耗!?」

 

 自身の機体のあちこちに取りついた技師が悲鳴交じりの驚愕を見上げつつ、それはそうだろうなとサクヤは思う。

 スペック的には可能とはいえ単機での大気圏突入紛いのことをやりかけ、精密器材にとって劣悪な環境である砂漠、海といった環境で、機体に多大な負荷をかけるマルチプルアサルトストライカーをほぼ常に装備して、ザフトの名だたるエース達と戦ってきていたのだ。

 それでいて艦内で可能な野整備だけでここまで運用してこれたのは、Xナンバーのフレーム自体が堅牢かつ優秀であることを証明していたが、しかしそれでもいずれ限界は来る。

 開発元の工廠で整備が出来るのは僥倖であったが、今後の事を考えればアラスカまで機体が保つだろうか。

 だからこそのアズラエルが用意した(実際はモルゲンレーテで開発中の)新型なのだろうが、それでもこの機体から―――自身にとって初めてのガンダムから、降りることになるであろうことは、サクヤの心を少し暗いものにさせた。

 

「なぁ、ちょっと人を探してるんだが……って、あんたか」

 

 いきなり話しかけられ、ストライク2号機との思い出のスライドショーを邪魔されたサクヤは、若干不機嫌そうにその声のもとへ振り向く。

 視線の先には、いつも通りにTシャツにカーゴパンツ姿のカガリが立っていた。

 

「いつも制服とかだったから、気付かなかった」

「あまり制服でうろつくな、って言われたんだ。まぁ、仕方ない」

 

 折角国元へ帰って来たというのに、モルゲンレーテの工廠内やM1アストレイの試験場にばっか顔を出してうろついている。

 国家元首の娘ともあれば、それも容易いのだろうがそれにしたって色々と甘過ぎる、と思うのがサクヤの本音だ。

 しかしここでそう言えばまた騒ぎ出すのが彼女であるし、今はそうやって技師達の作業効率を下げる訳にもいかないと思い別の話題を振ろうか、と考えたところ。

 

「なぁ、あんたは外に出ないのか? アークエンジェルとかの皆は、外出許可が出て遊びに出たりしてるそうじゃないか」

 

 それはカガリの純粋な疑問だった。

 本来の流れでは非公式な寄港であり、アークエンジェルのクルー達はほぼほぼ艦から出ることが出来ず、その行動を制限されていた。

 しかしながら今回は外交目的を伴った公式な入港であり、ある程度の自由が認められていた。

 故に家族と会ったヘリオポリスの少年少女達は実家に帰ることが出来たし、ムウなどはモーガンやエド達と街へ繰り出している。

 

「どうにも、気乗りしなくてな……まあ、今日は出ざるを得ないんだけども」

 

 どこか遠い目をするサクヤを、カガリが怪訝そうに見つめる。

 この国は、二度と帰れなくなった故郷と雰囲気が似てしまっているのだ。勿論、明らかに違う差異だってある。

 街は見た事もない店ばかりで、走っている車も行き交う人々も全て違う。

 それでも、どこか郷愁のようなものを感じてしまっているのはこの国の歴史がそうさせているのだろう。

 そして、すぐそこにあるはずの危機を現実のものとせず、無関心であろうとする市井の人々の雰囲気も苦手だった。

 

「というかそれより、その、なんだ……あー……」

 

 遠い目をしてここではないどこかを見つめるサクヤを現実に引き戻すように、カガリが話題を変えようとする。

 しかし、どこかぎこちなくそして言葉はたどたどしい。

 頬を掻きながら僅かに目線を逸らした彼女を、今度はそれに気がついたサクヤが怪訝そうに見つめた。

 

「その……ありが、とう……色々とさ……叱ってくれて」

 

 いつもとは全く違うしおらしい様子に、思わず吹き出すサクヤ。

 顔を真っ赤にして抗議する彼女を笑いながらなだめつつも、心中では少し驚いていた。

 砂漠での一件や無断出撃の件から、何も変わっていないだろうと思い込んでいた。

 人の話を聞かない世間知らずの箱入り娘(国からは出ていたが)のままだと思っていたが、そうではないらしい。

 

「わ、笑うなっ! 私だって、色々、あれから考えて……!」

「いや、それならいいんだ。それなら……」

 

 人は変わっていくものだ、と誰かが言っていた気がする。

 どこか遠い記憶になりつつあるその言葉をふと思い出し、成長しつつある彼女を嬉しく思う自分がいることにも少し驚く。

 これでは不出来な妹の成長に喜ぶ兄だな、と思うと心中がむず痒くなってしまうが。

 

「これからは、別の戦場で戦う事になると思うが……人の話を聞いて、色々と勉強するようにな」

「ああ……そうする」

 

 励ますように、彼女の背を優しく叩く。

 特に抗議もなく、素直に頷く彼女だったがそこで何かを思い出したかのように手を叩いた。

 

「あっ、そういえばアサギが……」

「あーっ!! 中尉、まだそんな格好して!!」

 

 話し出したカガリを遮るように、入口の近くから少女の大声が工廠内に響き渡る。

 何事か、と技師達の注目を集めながらもずんずんとサクヤに歩み寄るアサギの私服姿は、無骨な機械が居並ぶこの場では全く場違いであったが、彼女はそれに構うこともなかった。

 

「もうっ、私昨日から楽しみにしてたんですからねっ! 早く着替えてきてください!」

「あ、ああ……」

 

 パーソナルスペースなどお構いなく、近くでまくしたてる彼女にサクヤもカガリも何も言えず、去っていく彼女を見送ることしか出来なかった。

 アサギの姿に圧倒されていたカガリはそういえば、とふとある事を思い出す。

 

 この男、副艦長との件はどうなったんだ、と。

 





別にどこの誰が若い女性と海鮮ジョンゴル鍋を食べに行ったなど私にとってどうでもいい話ですがそもそも軍人として他国の……

───早口で不機嫌にまくしたてる副艦長

映画のキャラを

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  • 出すな♡
  • 設定が固まってから出せ♡
  • ノベライズ下巻出るまで考えろ♡
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