MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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大変お待たせいたしました。
詳細は活動報告の方に……



35話 さざめく嘲笑

 

「アークエンジェルに、ドミニオンか……」

 

 満身創痍のアークエンジェルとドミニオンが、誘導を受けて流れ落ちる巨大な滝にその巨体を突っ込んだ。

 滝の奥には隠されたメインゲートがあり、それと周囲の兵士達の視線が両艦を出迎えている。

 ゆったりとその巨体を奥へ奥へと進めるその様子は、地下深くの一室のモニターに逐一映し出されていた。

 

「ハルバートン提督とアズラエル理事は無事、あれを連れ帰って来たというわけか」

「とはいえ、見るも無残ですがな」

 

 陰湿そうな笑い声が会議室の中を満たした。

 その中の一人が、ふと気が付いたように周囲を見回しながら聞く。

 

「サザーランド大佐はどうしたのかね?」

「彼なら、アズラエル理事の出迎えに。こちらとしては好都合ですな。気取られずに済む」

 

 頷く将校たちは、皆一様にユーラシア連邦の所属であった。

 ドックに到達したアークエンジェルとドミニオンが停止すると同時に、モニターに映る映像が切り替えられ、次々とモビルスーツの映像、スペックが映し出される。

 大西洋連邦の開発したGAT-Xシリーズと似通った頭部にシンプルなデザインの身体、背部に背負った2対のウィングバインダーが目を引く機体。

 そのMSと全体的なフォルムは似通っているものの、顔はツインアイからゴーグルタイプに変更され、背部のバインダーも右側のみを残し左側は武装のマウントラッチに変更されている機体。

 次々と映し出されるユーラシア製(・・・・・・)のモビルスーツ達に、将校達が感嘆の声を漏らした。

 

「『X』計画は順調のようだな?」

「ええ……まさか、ガルシア君の拾い物がここまでのフィードバックを齎してくれるとは、思いもしませんでしたがね」

「彼も必死だったものな」

 

 引き続き、本国の演習場で行われた起動実験と機動テストの映像が映し出された。

 

 『X』計画。

 モビルスーツの開発に成功し、その量産に着手した大西洋連邦への対抗と戦後の発言力維持を見据えた国家プロジェクト。

 プロジェクトの開始と共にユーラシア連邦は実験部隊『X』を創設し、その指揮官はアルテミス要塞の司令官であったジェラード・ガルシア少将。

 当初は鹵獲したジンだけの貧相な編成であったが今や新型モビルスーツのみで編成された特殊部隊の如き様相……まさに特殊戦技教導隊への対抗部隊の如き様相を呈していた。

 

 試験の映像が終了し、今度は別の機体の映像が映し出される。

 通常のモビルスーツを優に超える全長、背部に装備された巨大な円盤状のユニット。

 あまりにも異様な機体だった。

 

「これこそが、巨神(ギガンティス)の末裔……」

 

 将校の中で、最も高位な男が何かに魅了されたように言う。

 あまりにも巨大な、そして異様な機体だったが映し出されているデータの中では、その巨人が動き出す映像が流れていた。

 ひとしきりその映像を眺めた後、最も高位の将校が尋ねる。

 

「例の情報は、確かなのだな?」

「はい。『協力者』からは、パナマは偽であると。大西洋連邦も、この情報までは掴んでいない様子です」

 

 将校たちから再度の陰湿そうな笑い声。

 既にユーラシア連邦の主力部隊はビクトリア奪還作戦のためと称して本国への移動準備を開始しており、その補填としてカナダ近郊の大西洋連邦の部隊が臨時の守備隊として配置され始めている。

 全ては思い描くシナリオの通り、推移しつつあった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「あーあー、折角の機体がボロボロ……予備パーツを用意しといて正解でしたネ」

 

 ドミニオンのモビルスーツデッキでメンテナンスベッドに固定されたストライクとダガーを見、アズラエルはやれやれと肩を竦める。

 修理作業中の整備員たちが怪訝そうに彼を見遣るが、それを全く意に介さずキャットウォークを進みアズラエルは混じってコクピット内で作業しているサクヤに声をかけた。

 

「精が出ますネェ、サクヤ君?」

「アズラエル理事」

 

 探しましたヨ、と言うアズラエルに他の整備員と同じく怪訝な視線を向けつつ手を止めるサクヤであったが、やはりアズラエルはそれを意に介さず続けた。

 

「あー、そのまま作業続けてていいですヨ。キミに新しい仕事を持ってきただけですしネ」

「新しい仕事……次はパナマですか?」

「お、流石察しがイイ……ええ、君というか、君達にはパナマに行ってもらいマス。ウワサ通り、ザフトが本格的に侵攻するみたいでしてネ」

 

 同行させていた秘書から受け取った数枚の書類をサクヤに差し出し、受け取るように促す。

 それを斜め読みしつつ、どこか引っ掛かる言葉を見つけたサクヤが思わずそれを口に出した。

 

「『第13独立部隊』……?」

「総司令部直属の独立部隊……ま、キミからすれば立場は全く変わらないワケですガ」

 

 サザーランド君がゴネたのとキミが地球に降りちゃったから立ち上げが遅くなっちゃいましたがネ、とアズラエルが付け加える。

 強襲機動特装艦たるアークエンジェル級、その2番艦であるドミニオンを中核とし、1コMS中隊基幹の機動部隊を有する司令部直属の遊撃部隊。

 制式量産機たる『GAT-01A1 ダガー』と簡易量産型『GAT-01 ストライクダガー』のハイローミックス部隊、そしてその部隊の隊長機としてのサクヤの『GAT-X105 ストライク+I.W.S.P』。

 対ザフトへの宣伝効果を狙ったプロパガンダ部隊としては、100点満点だろう。

 ゆくゆくはMS運用機能を追加した艦を増加し、MS部隊も大隊規模まで発展させる……と将来設計まで記載されたその書類を斜め読みしながら、ますますアズラエルの私兵と化していくのだな、と無感動に思った。

 読み進めていくうちに、部隊編成表へと目が映る。

 そしてそこでも、無感動にサクヤが呟いた。

 

「ドミニオン艦長、ナタル・バジルール大尉……これは理事が?」

「ン? まぁ、ボクというよりかはサザーランド君ですネ……彼は彼女の事を高く評価しているようデス。キミも元鞘に収まるいい機会なんじゃないですカ?」

「向こうが嫌がりますよ」

「……キミ、戦ってるときは鋭いのにこういうのはてんでダメですネェ」

 

 やれやれとアズラエルがキャットウォークの手摺に背中を預けてため息をつく。

 そうは言われても……と記憶の中にある様々なやらかしが頭の中を駆け巡ると同時に若干の生々しい記憶が蘇り、参ったなとばかりにサクヤが手を止めてこめかみのあたりをぽりぽりと掻く。

 見慣れた仕草を横目に、アズラエルはもう一束の書類をサクヤに手渡した。

 

「ああ、そうそう。キミにはMS隊の指揮を執ってもらう事になりマス」

「自分が、ですか?」

「エエ、キミは何でも一人でやりたがるクセがあるようですから……士官なら部下を率いる、ってコトも覚えてもらわないと」

 

 コクピットから出たサクヤがその書類を受け取り、ぺらぺらと捲って読み進めていく。

 ルーズベルト飛行隊以来の隊長職に不安を感じつつ、ドミニオン艦載機全体の長ともなればその規模は相当なものだろう。

 妙に期待されてしまっているな、とサクヤは少し首を捻った。

 

「おや、不服で?」

「いや……そういう訳ではないんですが、隊長職なら他に適任がいるんじゃないかと」

「それはサクヤ君、キミが期待されてるからですヨ。ボクとしても、キミがただのワンマンアーミーで終わって欲しくないワケでして」

 

 アズラエルがビシっとサクヤを指差した後、ストライクを指差す。

 その意図を理解しかねて、再び怪訝そうな視線をアズラエルに向けた。

 いまだ意図を理解しかねているサクヤに、アズラエルは肩を竦めて意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「ま、そのうち理解してもらうコトになりマス……ああ、その中にキミの部下たちの個人情報も入ってるので扱いは厳重にお願いしますネ」

 

 そう言い、アズラエルは秘書を伴って格納庫から去っていく。

 言う通り挟み込まれていたやけに薄い個人情報の書類の束をめくっていくうちに、サクヤの額に皺が寄っていく。

 やはり、いつかは出てくるかと思っていたがやはりこのタイミングで、と唸った。

 

「サブナック、アンドラス、ブエル……」

 

 72柱の悪魔達を由来にした名を持つ少年達。

 いつかは出てくるだろうし、アズラエルのもとに居ればその3人とも関わり合いが出てくるだろうとも思っていた。

 そしてこのタイミングでの宇宙への移動は、事態が物語の通りに推移しつつある事の証左なのだろう、とも思う。

 もし、そうであるならば……と考えたところで、目の前で爆発したストライクとイージスの姿が脳裏を過ぎり、サクヤの気分を重くさせた。

 

「それは、虫が良すぎるよな……」

 

 何か、無力感のようなものを感じると同時にナタルとアサギの2人の顔が思い浮かび、少し自己嫌悪した。

 誰かに会いたいと思うのは、心が弱っているからなのかもしれないと感じながら最後のページを見、そして固まる。

 なぜここに、と思いつついやしかしあり得ない話ではない……と鈍くなりかけていた脳細胞が回転しだすのを感じながら、何故かエンデュミオン・クレーターで見た巨人のような何かが記憶の中で蘇る。

 混乱し、重くなっていく頭を支えるように、サクヤはキャットウォークにもたれかかった。

 

「どうなってるんだ……全く」

 

 そもそもの話で巨人の幻影を見たこと自体がおかしい話であるのに、それに加えてこの情報がサクヤの処理能力をパンクさせていく。

 しばらく考えた後に、もう分からないと諦めを付けて再びコクピットへ戻っていった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 傷を手当され、病衣姿で眠り続けている若い兵士―――アスラン・ザラがこの病院に運び込まれたのはつい先日。

 オーブ政府高官がよく利用するこの病院には、他の患者の好奇の目に晒されないよう医師と関係者のみが立ち入ることのできる区画があり、アスランはそこで治療を受けていた。

 コーディネイターでなければ確実に死んでいた、コーディネイターであっても五体満足で生きていることが不思議と呼べるような惨状で一命を取り留めたアスランであったが、その意識は未だ戻ることなく絶対安静の上面会謝絶という処置が取られていた。

 

「アスラン……」

 

 アスランが眠っているベッドの傍の椅子に座ったカガリが、複雑な視線を彼に向ける。

 その隔絶された区画で、医師以外で唯一アスランの病室に出入りできるのは彼をここに運び込んだキサカと彼女のみであった。

 

 ドミニオンとアークエンジェルがオーブを出港してすぐ戦闘があったことはオーブも確認していることであり、アークエンジェルからの救難要請でオーブ軍が現地に赴いたことも世間には知れ渡っている。

 現地での捜索活動の結果、そこでは何も発見できず、破片のみを回収した……というのが政府筋の発表である。

 しかし事実はそうでなく、アスランはここにいる。

 その理由は、救助隊に同行した(押掛けた)カガリであった。

 爆散したイージスのコクピット内で瀕死となっていた彼を身元不明の行き倒れとして連れ帰り、この病院に運び込んだのも彼女である。

 

「キラは、見つからなかったってさ……なぁ……!」

 

 いまだ眠り続けているアスランに、カガリが投げ掛ける。

 同じく爆散したストライクのコクピット内に、パイロットの姿は無かった。

 投げ出されたのかもしれない、とオーブ軍による捜索は続けられていたが既に72時間の期間を過ぎて打ち切られていた。

 

 彼と殺し合っていた相手の安否を、何故伝えるのかは分からない。

 ただ言って、自分の感情を発散させたいから? 相手を詰りたいから?

 そうではない、そうではないけれども……! とカガリは両手の拳をぎゅっと握り締めた。

 ただ、哀しいことが起きていたことだけは間違いなかった。

 

 ヘリオポリスで出会い、砂漠で再び出会った危なっかしくて、やさしかったキラ。

 無人島で、銃を向け合って感情をぶつけ合いながらも、どこか思い出の中にいたアスラン。

 その2人が、今までずっと戦ってきていて、そして―――

 

「カガリ!」

 

 ぐるぐると思考の渦から抜け出せなくなっていた彼女を、病室に飛び込んだキサカが引き戻す。

 普段は寡黙な彼がかなり焦っている様子は、カガリを思考の渦から引っ張り出すには十分すぎた。

 

「どうした!?」

 

 病室ということも忘れ、カガリが立ち上がって大声で返す。

 病室の扉の向こうからは医師たちの咎める声も聞こえていたが、それを全く意に介さずキサカは続けた。

 

「アラスカが、壊滅した……!」

 

 壊滅? 地球軍の本拠地が? なぜ?

 そう考えるカガリの脳裏を、つい先日出航した2つの艦の姿が過ぎる。それに乗っていたクルーたちの姿も。

 そして最後にいつも自分を叱ってくれて、自分の間違いを気付かせてくれた男の姿が過ぎる。

 あの皆がいて、まさか、そんなと衝撃を受けたカガリがよろめいた。

 

「アークエンジェルは……!? ドミニオンは、無事なのか!?」

「ドミニオンは、つい先日にパナマに向かったという情報があるから無事だろう……だが、他はまだ分からん」

 

 そこまで言ったところで、キサカに追い付いた医師たちが一斉に喚き始める。

 しかし、それらはもうカガリの耳には入ってこなかった。






こんなの、ボクは聞いてないぞ……!

―――ドミニオン艦橋で取り乱す出資者

映画のキャラを

  • 出せ♡
  • 出すな♡
  • 設定が固まってから出せ♡
  • ノベライズ下巻出るまで考えろ♡
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