MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。




38話 インター・ミッション

 

「では、現在の状況について、認識の統一を始める。目的としては……」

 

 ドミニオンのブリーフィングルーム。

 副艦長らが超特急で纏めあげたスライドを表示しつつ、読み上げている内容を聞きながら主だった士官たちはプリントアウトされた配布資料に目を落としていた。

 モニターの隅には現在も偵察活動を続けているモビルスーツ隊から、リアルタイム伝送されている映像が映し出されている。

 資料を斜め読みしながら、サクヤがちらと視線をオブザーバー席のアズラエルに向けてみれば案の定、右手の人差し指が苛立たしげにリズムを刻んでいた。

 

「司令部及び防衛隊とは連絡が不通。JOSH-Aについてはその機能を完全に喪失し、臨時司令部を……」

 

 モニターの隅が拡大され、ぽっかりとアラスカの大地に大穴を開けた風景が映し出される。

 その光景はまさしく、秘匿されたエンデュミオン・クレーターに穿たれた墓穴と同様に全てを抉り取っている。

 見る者が見れば、それはあの兵器を使ったのだろうと予想はできる、が───過去の記録を辿っても、アラスカにサイクロプスが設置されたという事実はどこにも無かった。

 

「現地で、放射線反応は検出されなかったのだな?」

 

 一通りの説明を聞き終えたナタルが口を開く。

 ニュートロンジャマーキャンセラーがザフト側で実用化された以上、核動力モビルスーツの運用以外にも敵の可能行動(E/C)として核兵器の使用といった項目が追加される。

 ただし、ナタル達の認識としてあるのはそれらしきものが実用化されている可能性が大である、という推測のみでそれが実在するかどうかはまだ疑わしい、というのが見解である。

 

「検知器を使用してみましたが、そういった類のものは検出されませんでした。同じく、MOAB(大規模爆風爆弾兵器)使用の形跡も」

「………………」

 

 ナタルが渋面を作り、顎に手を添えて考え込む仕草を取る。

 隣のオブザーバー席では、やはりアズラエルが苛立たしげに一定のリズムで机をトントンと叩いていた。

 

「現在の見解では、ザフトが一帯を破壊するような新兵器を使用したものと見積もられます。臨時総司令部も同じくその見解のようです」

 

 『敵の新兵器』と言ってしまえばそこで締め括れてしまうし、現状ではそう判断するしかないだろう。

 本来の真相を知っているサクヤも、自分の知っているそれに自信が持てなくなっていた。

 

(理事に加えてサザーランド大佐もこの件を全く知らなかった、とするなら……ザフトの新兵器、と考えるのが筋なんだろうが……)

 

 そこまで思考して、この時点でザフトが使用可能な広範囲破壊兵器が存在しないことに気付く。

 あるにはある、がそれを実行するには大々的な準備が必要であるし、何よりアラスカだけの被害で済むはずがない。

 では一体、思考を始めるサクヤを他所にナタルが艦長指導を終えてその場を締める。

 ぞろぞろとブリーフィングルームから退出していく士官達を横目で見送りながら、思考を続けていると不意にナタルとアズラエルが自分の方を見ていることに気付いた。

 

「……何か?」

「イーエ、深く考え込んでるなァ、と……」

 

 本当は分かっているんでショウ? といった視線をサクヤに向けるアズラエル。

 あれが初めて目的外で使用された現場にいた2人だからこその共通認識であったが、それを全員の前で言うことは憚られたし何より確証が持てなかった、というのがある。

 しかし、アズラエルは確証を持っているようだった。

 ただ1人、取り残されたナタルは怪訝そうに2人を交互に見ていた。

 

「仮に理事が考えているような『それ』だとして、わざわざ友軍を巻き込んでまで実施するようなメリットがありますか?」

「ナイですネ。そもそも設置されている事実だってないワケで」

「……理事に中尉も、何の話を?」

 

 2人が何を言っているのか分からない、といった風にナタルが聞く。

 そういえば艦長サンは知りませんでしたね、とアズラエルが軽く答えた。

 

「サイクロプス、ですヨ。ボクとサクヤくんはあのクレーターに似ているのを見た事あるのでネ」

「サイクロプス……? しかしそれは、資源採掘用のものでは?」

「モノは使いよう、でしてネ……暴走させれば、あの地域一帯を消失させることは容易いデショウ」

 

 ただし、それがアラスカ基地に設置されていたかどうかなんて事はボクもサザーランド君も知りませんが、と付け加える。

 そんなバカな、と狼狽えるナタルと考え込むサクヤを見ながらそこでふと、アズラエルはアラスカ基地到着後に受けたレクチャーを思い出す。

 基地防衛を担っていたユーラシア連邦の部隊はビクトリア奪還作戦のための転地演習で不在し、その穴埋めに大西洋連邦の部隊が転用されていた事。

 パナマ防衛の戦力抽出をユーラシアがビクトリア奪還作戦のために拒否し、大西洋連邦のみでの防衛を余儀なくされた事。

 

 今考えてみれば怪しい───と言えばそうではあるが、あまりにも出来すぎていて疑う余地すら湧かなかった。

 そして同時に、この出来すぎている状況を作り上げた男の顔さえ浮かんできてしまった。

 あまりにも幼稚で分かりやすいシナリオ、だからこそ見逃してしまったのかもしれない。

 ビジネスマン、とは全く程遠いところにいるあの男―――言うなれば、妄想癖の宗教家と言うに相応しい。

 普段なら、全く相手にするようなレベルでない人物であったが、もしも敵に回ったとすればかなり厄介な相手になるだろう。

 

「……理事?」

「イヤ……ちょっと小憎たらしい顔を思い出しただけデス。艦長、ちょっと通信室をお借りしますヨ」

「構いませんが……」

 

 ナタルの返答を背で返事しながら、アズラエルはブリーフィングルームから出て行く。

 その重そうな足取りは、2人がこれまでに見た事のないようなものだった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 アラスカを離脱したアークエンジェルは、その動きを誰にも知られる事なくオーブへと再び入港していた。

 プラントのラクス・クラインから最新鋭機の『フリーダム』を託され、アークエンジェルと合流したキラも今はその艦と行動を共にしていた。

 今や復帰すべき原隊もなく、復帰した際の自身らに下される処断を予想すれば、誰も軍に戻るという選択肢は浮かび上がらなかった。

 

 そしてオーブは、傷つきさまよう彼等を拒みはしなかった。

 ドミニオンと共に入港したオノゴロ島のドックとは別の、秘密ドックへと静かに入港していく艦を見守っていたエリカ達モルゲンレーテの整備士達はその姿に傷ましさと安堵のこもった視線を向ける。

 そして同じく、カガリも……その様子を見守っていた。

 接岸したアークエンジェルから降りてきたキラに駆け寄り抱き着いたところで、カガリは漸くキラの無事を確認した。

 

「アスランが、ここに……!?」

「ああ……命に別状はないみたいだけど、まだ意識が戻らないんだ」

 

 降りてきた一団から離れたキラとカガリは、艦の傍に佇んでいた。

 受けたショックが大きかったのかもしれない―――と言ったところで、カガリは慌てて口を閉じた。

 

 目の前にその彼と殺し合い、今は自分と話しているキラの表情が見るからに暗くなったからだ。

 

「す、すまん……」

「ぼくは彼の仲間を傷付けて……アスランも、ぼくの仲間を傷付けてきた……どうしようもなかったんだ、ぼくたちは……」

 

 カガリはキラの横顔を窺う。

 銃を向け合った相手への憎しみは感じられず、寧ろアスランのことを気にかけているような表情に少しほっとした気分になる。

 2人は、あまりにもどうしようもなかったのだ。

 片方は巻き込まれ、もう片方は軍命で、お互いに譲れないものだってあった。

 キラとアスラン、2人の狭間を知るカガリはその事情を思うと本当に、どうしようもない気持ちになった。

 

「アスランは、さ……すごくしっかりしてて、ぼくはいつも助けてもらってた。ぼくのトリィも、アスランが作ってくれたんだ」

 

 すごいだろ、とキラは優しい表情で肩に止まった緑色の機械の小鳥を見つめる。

 そんな風に、友達を紹介するような様子で話すキラに、カガリは無神経だと思いながらも、浮かんでいた疑問を口にした。

 

「なんで……その、お前は、そんな仲の良かった友達と、戦うことを選んだんだ?」

「え?」

 

 こんなことを聞くのは、本当は良くないと思っている―――けれども、どうしても聞きたかった。

 

「いや―――だって、お前、友達同士で戦うなんて、そんな悲しいことっ」

「ぼくがやらないと……皆が死んじゃうと思ったから……でも、どうしてぼくだけが、って思う時もあったんだ」

 

 その決断をしたときを振り返るように、キラは遠い目をする。

 今はここにいない、誰かの背を見ているようだな、とカガリは思った。

 

「でも、砂漠で……サクヤさんが、『アークエンジェルを守ってくれ』って、言ったんだ」

 

 ナチュラルで、キラ以上にストライクを扱うパイロットの存在。

 敵を撃て、ではなく皆を守ってくれという言葉はその場凌ぎのそれだったのかもしれない。

 言った当人はこれはその場凌ぎだ、と心の中で謝りながら絞り出した言葉であったが、キラにとってはそれが自分だけじゃない、と思えるような特別な言葉であった。

 

「コーディネイターだから、じゃなく……「ぼく」に皆を守ってくれ、って言ってくれたんだ」

 

 そこまで言って、キラは再び俯く。

 あの男なら、そういう事は言いそうだな、とカガリは思う。

 現実的にものを見ろ、と言う割にはどこか理想を追い駆け続けているような物言いをして、自分を叱ってくれた。

 そしてキラにもそういう言葉を投げ掛けていたのだな、と思うとどこか嬉しくなった。

 

「だから……ぼくは、ここに戻ってきたのかもしれない」

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「オラオラオラァ!!」

 

 バスターの両肩の6連装ミサイル・ポッドから次々と吐き出されるミサイルの嵐と、連結されたライフルから撃ち出される対装甲散弾が、流星の如くスラスターを煌めかせる機体に殺到する。

 背部にガンバレルストライカーを背負ったその機体、ガンバレルストライクは緩やかに機体をロールさせて背部に装備された4つの円筒(ガンバレル)を分離させると同時に、その鉄鋼の嵐を回避していく。

 機体から離れた4つのガンバレルは、巡航形態で機動しつつ今まさにストライクへ襲い掛かろうとしているイージスへと殺到した。

 

「っぶね! このッ、抹ッ殺!!」

 

 機体を変形させて急制動をかけ、ガンバレルから放たれた新型の徹甲弾を回避するイージス。

 再度変形してその包囲網から抜け、両手足を開いて攻撃形態へと変形し、中央にある580mm複列位相エネルギー砲『スキュラ』を薙ぎ払う様に撃ち放つも、追い縋っていたガンバレルは散らばるように避けてストライクの背部へと戻っていく。

 回収の隙を狙ったか、近傍のデブリが歪み出す。

 

「ウザいんだよ……!」

 

 何もない空間から3連装超高速運動体貫徹弾『ランサーダート』が射出され、ストライクに迫る。が、ガンバレルを背負った機体はその弾が発射されることを分かっていたかのように回避した。

 しびれを切らし、ミラージュコロイド・ステルスを解除してビームサーベルを展開しながら斬り掛かるブリッツだったが、いなし躱され、その背へと蹴りが叩き込まれる。

 

「がっ、アッ……!」

「いい攻撃だったが……もう少し、辛抱した方がいい」

 

 背から衝撃を叩きつけられて喘ぐシャニにとどめを刺さんと、ビームライフルの銃口を向けるサクヤだったがすぐにそれを引っ込めてその場を離脱する。

 ストライクのいた場をミサイルの嵐とビームライフルの光条が襲い掛かり、サクヤは再度ガンバレルを射出して2基をその射撃の大元へ殺到させて、同時にリアスカートに増設したウェポンラッチからビームサーベルを引き抜いた。

 それとほぼ同時に、高速接近したデュエルがストライクへと斬り掛かり、お互いに斬撃をシールドで受け止める。

 

「これもいいタイミング、だが!」

「……!」

 

 切り結ぶデュエルとストライク。

 僅か数秒の押し合い圧し合いに、その背から飛び出したガンバレルの2基がストライクを射線から外す位置で猛烈に徹甲弾をデュエルに撃ち込んでいく。

 体勢を崩し、たまらず後退していく機体の未来位置を読み、その方向へビームライフルを向ければ、後は全てその通りであった。

 

「!」

「2方向から、斬り掛かってくるべきだったな。この場合は、ブエル少尉と組んで―――」

「コイツーッ!」

「……連携しろ、と言ったのにこれだものな」

 

 逆上したブリッツが、再びビームサーベルを振りかざしてストライクへと突っ込んでいく。

 大振りとなった機体の動きを完全に見切ったストライクが、カウンターと言わんばかりに鉄拳を顔面に叩き込み、姿勢を崩すと同時にビームサーベル・ユニットが同じようにコクピットへ叩きつけられた。

 接触回線から聞こえる嘔吐の音に、やれやれと顔を顰めながらサクヤは演習の終了を通告し、ブリッツの襟首を掴む。

 その通告と同時に、ドミニオンの艦橋内でアズラエルはやれやれと息をつき、そして隣で顔面蒼白となっている白衣の研究員に視線を向けた。

 

「全く……案外、だらしないものですネェ。『ブーステッドマン』も、『マシンチャイルド』も」

 





いくらなんでも、ガラが悪すぎやしませン?

―――頬杖を突きながら実機演習を眺めている出資者

映画のキャラを

  • 出せ♡
  • 出すな♡
  • 設定が固まってから出せ♡
  • ノベライズ下巻出るまで考えろ♡
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