MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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39話 ドミニオン・チルドレン

 

「いやいや、いいモノを見せてもらいましたヨ? 流石はトップエースといったところで」

「褒めても何も出ませんよ。ただ、あのままじゃ戦場には出せませんね」

 

 そういうもんですか、と聞いてくるアズラエルにサクヤは頷く。

 2人が見ているモニターにはサクヤとストライクを敵機とした模擬戦の映像が映し出されており、丁度ストライクがビームサーベルをイージスのスキュラへと突き立てていた。

 表示データ上では、ストライク以外の4機は機体の限界性能に迫る勢いの数値を刻んでいる。

 その数値は、過去に搭乗していたレナ、エド達を上回るものであった。ただし、低軌道会戦時の数値であったが。

 

「連携が出来てなさすぎです。個々が個人技に走って、最終的に足を引っ張り合っている。これだと分断されて各個撃破されます」

 

 サクヤが端末を操作して表示されている映像を停止し、それぞれ4機の撃破されているシーンを表示させる。

 どれも、独りで仕掛けていなされ、隙が出来たところを撃破されているシーンだ。

 それを見た研究者達が、ばつが悪そうに顔を背ける。

 

「次の作戦まで、時間はあります。それまでに4人に、せめて教導隊レベルの連携が取れるようには」

「中々、スパルタじゃありませン? それ」

「……そこはまぁ、過去の経験に倣うということで」

 

 キミに任せますヨと言うアズラエルに、そういえばとサクヤが訊く。

 ブーステッドマンを運用する上での懸念―――概要説明をした際に疑問として挙がったそれに関連することだろうな、と当たりを付けた。

 

「ああ、彼等のオクスリ(γ-グリフェプタン)の事ならイイですよ、キミの管理デ」

「理事!?」

 

 特に気にした様子もなく、それ、適当にやっといてくだサイと言わんばかりの調子のアズラエルに、研究員の一人が慌てて食い付く。

 これまで薬をエサにしてブーステッドマン達に過酷な試験を課し、満足する結果が得られなければ『お仕置き』と称してそれを与えないことがあった。

 耐えがたい禁断症状を彼等に与えて次は、次こそはと懇願させる姿を見て密かに悦に入っていた研究員は、自分の研究が無価値だと切り捨てられてしまうといった妄想じみた強迫観念が浮かび上がっていた。

 それを知ってか―――アズラエルは意地が悪そうに研究員を見つめる。

 

「こ、困ります理事! あの薬は彼等のっ」

「首輪―――そう言いたいんでショウ? でもね、戦場でクスリが切れて撃墜なんて知られれば、いい笑い者じゃあないですカ。ボクは笑われたくないんデ。サクヤ君、彼等を万全な状態に仕上げてやってくだサイ」

「了解です」

 

 彼等の所に行きます、と言いサクヤはその場から離れていく。

 その背を恨めしそうに見ながら、研究員は今しがた思いついたプランを脳内で必死に磨き上げていく。

 

 得体の知れないマシンチャイルドはともかく、担当したブーステッドマンはこの試験で何の成果も挙げられていない。

 それも、コーディネイターでなく何の強化もされていないただのナチュラルのパイロットに、自分達の作品の価値を貶められている。

 そんなことは有り得ない、私達の研究は何も間違っていない筈だ。

 かくなる上は―――

 

「理事、一つご提案が……」

 

 持っていた端末に、γ-グリフェプタンを含めた薬物のデータを表示させてそれを恭しくアズラエルへ差し出す。

 胡乱な視線を彼に向けたアズラエルは、それを受け取りふぅんと鼻を鳴らしながらデータを閲覧していく。

 

「サイジョウ中尉の戦闘機動、そしてそのデータには驚かされるばかりです。では、その彼をこの試薬で強化したならば……」

 

 研究員の脳内で、試薬の実験体にされたサクヤが禁断症状に苛まれ、ブーステッドマン達と同じように次こそは、次こそはと懇願する姿が思い浮かぶ。

 このプランなら、理事の不興を買うことなく自分の研究成果をアピールできるとアズラエルにアピールする研究員。

 しかし、アズラエルはつまらなさそうに端末を彼に突き返すと、首を傾げながら呟いた。

 

「一応エリートを集めたつもりだったんですが、ネェ……」

「?」

「ああ、その反応……もういいデス。キミ、もうクビ」

 

 クビ。

 数秒空けて、自分の置かれた立場を認識した研究員は完全に硬直する。

 やれやれ、と目元を揉みながらアズラエルは鬱陶しそうに彼を見据える。

 その視線は、既に諦めの境地に入っていた。

 

「金の卵を産む鳥を見つけたら、腹を裂いてみずにはいられない……ボクはこの寓話を気に入ってましてネ。常々気を付けているつもりデス」

 

 周りの研究員達にも言い聞かせるように、わざと声を大きくして話し始める。

 当の研究員は、頭が真っ白になったようで既に何も聞こえていなかったが。

 

「長期的に利益を得たいなら、利益を生み出す資源は大事にしないといけまセン。この実験が失敗した時、我々は大きく2つ。OSの戦闘機動データを生み出す人物と戦果を挙げるエースパイロットを同時に失う訳デス」

 

 それに、とアズラエルが付け加える。

 先ほど言った事よりも、これから言う事が最も大事であると勿体付けたように。

 

「ただの人間(ナチュラル)であるから、価値があるんですヨ」

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「だあぁっ、やってらんねぇっ!!」

「……ウルせぇ、ウザい」

「同感、いちいちうっさいんだよ……」

「っ……」

 

 ドミニオンの格納庫、その一角にXナンバーの5機が屹立する一角がある。

 ダガー系列機が整然と並ぶ中、毛色の違う5機が並ぶそこは軍隊然としない、どこか研究施設のような雰囲気が漂っている。

 それもそのはず、機械油に塗れた作業服姿の整備員たちの姿よりもシミ一つない白衣の研究員達の方が多いそこでは、彼等が持ち込んだ端末に取り付き収集したデータの精査を行っていた。

 

 白衣の一団を見下ろせる位置、ガンルーム(待機所)では黒いノーマルスーツに身を包んだ少年3人と少女1人が先程のシミュレータの結果に不平を零していた。

 金髪で長身の、高貴な雰囲気を感じる少年は髪を掻きむしり、大人しそうな色白の少年は鬱陶しそうにぷかぷかと浮かんでいる。

 その隣で利発そうな赤毛の少年が飲み物のチューブを口につけ、水色の髪の少女は自身の機体でもあるデュエルを見つめている。

 オルガ・サブナック、シャニ・アンドラス、クロト・ブエル、そしてノーマ・レギオの4人は、地球連合軍の―――もとい、大西洋連邦軍のいわば秘蔵っ子であった。

 アズラエルを最大の出資者として進められてきた生体CPU計画の実戦投入モデルである彼等3人の『ブーステッドマン』、そして別計画の『マシンチャイルド』である彼女は月面でのテストの後、最終調整と実戦テストを兼ねてドミニオンへ乗艦していた。

 

「トリガー引いたらそこにはいねぇ、避けた先に撃たれる、近付いたらバッサリ、どう戦えってんだ!」

 

 オルガが飲み干したチューブを八つ当たりするように壁に投げつける。

 1時間ほど前に終わった実戦テストでは、4人の結果は散々なものであった。

 数度試行されたそれでは、一度もサクヤのストライクに有効打を与えることはできず寧ろ彼等が撃墜される始末。

 これまで研究施設で幾度も戦ってきたデータ上の相手で、その時は撃墜すらできていたのに現実にやり合ってみれば手も足も出ない。

 ぽっと出のよく分からない少女、ノーマが加わったところで焼け石に水であった。

 

「大体、テメェはなんなんだよっ! さっきから全然喋らねぇしよ!」

「……中尉から、話す許可を得ていません。悪しからず」

「うわっ、喋った……」

 

 合流して初めて話す彼女に、クロトが目を丸くする。

 シャニは相変わらず無反応であったが、オルガはクロトと同じく驚きつつも苛立ちの矛先を彼女に向けた。

 壁を蹴り、詰め寄ろうとするオルガと驚きつつわずかながら制止するように、クロトが抗議の声を上げるも全く気にしていなかった。

 

「んだと、この……!」

「ちょっと、止めなって……」

 

 ノーマは相変わらずデュエルを見つめ続け、オルガの苛立ちが更に強まっていく。

 部屋の雰囲気が段々と険悪になっていき、クロトはもう知らない、と2人に関わるのを止めた。

 づかづかと少女に近付くオルガ。その手が肩を掴もうとした瞬間、ドアのスライド音と共に4人の視線がそこに集まる。

 

「空気が悪いな。仲良く、とまでは言わないが」

 

 薬のケースを抱えたサクヤが、仲裁するように部屋の中心へと進んでいく。

 ばつが悪そうにオルガが手を引き、ノーマが一礼する。シャニはそのままぷかぷかと浮かび、クロトは腕を頭の上で組み飲み物のチューブを咥えて上下させている。

 まるで学級崩壊寸前のハイスクールだな、とため息をつきながら抱えていたケースを3人に押し付けた。

 

「サブナック、ブエル、アンドラスには予備の薬を渡しておく。少なくなった時には、申し出るように」

 

 ノーマはそういうのは無いな、と確認すると彼女が首肯して返す。

 押し付けられたケースを開くと、そこには確かに摂取しなければ耐え難い禁断症状を引き起こす、あの薬が整然と陳列されていた。

 困惑したように薬とサクヤを交互に見つめる3人。これまで必要最低限の分しか支給されていなかったγ-グリフェプタンが、少なくとも数週間分のストックと共に手元にある。

 何故こんなことを……と困惑する彼等だったが、サクヤは何も気にしていない様子で続けた。

 

「戦闘時も、予備を多めに出す事を忘れないように。もし、切れそうになった時は個人の判断で帰艦して補給していい」

 

 薬が切れることはない、手持ちが切れた時は申し出れば渡してもらえる―――そんな甘い話が、ある訳がない。

 そこまで考えたところで、オルガ達はああ、これはどうせ罠であるなと感じた。

 今更この上官を使って、自分達を懐柔しようとしている。

 そして、また結果が出なければ以前と同じ―――『お仕置き』が待っているのだ。

 

 そういうものだ、と擦れ切った心にはそれ以外の考えが浮かび上がってこなかった。

 とはいえ、幾らかの反骨心がない訳でもない。

 3人は、一度もサクヤに勝てていないのだ。これは、ノーマも同じではあるが。

 

「今後について話すが―――まず、4人には最低限の連携を覚えてもらう」

 

 こいつらと、連携―――!?

 有り得ねぇ、といった風にオルガ達が顔を歪める。唯一ノーマは無表情だったが、無意識下で嫌悪の感情が読み取れた。

 

「ガンダム・チームとして、恥じない動きをしてもらう。早速、20分後に模擬戦を始める。準備」

 

 踵を返し、サクヤが部屋から出ていく。

 不機嫌そうにオルガが。また模擬戦かよ、とウンザリしたようにクロトが、そして無表情でシャニとノーマが続く。

 そしてこれが、彼等4人がドミニオンの日々でまず最初に思い出すことになる、地獄の始まりだった。

 





なんでイージスの方が速いのに追い掛けられてるんだよォ!!

―――赤毛のゲーム好きな少年

映画のキャラを

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  • 出すな♡
  • 設定が固まってから出せ♡
  • ノベライズ下巻出るまで考えろ♡
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