お久しぶりです。大変お待たせしました。
決してルビコン3に出張したり、そこでカラテを習ってきた訳ではありません。信じてください。
ドミニオンが宇宙に上がってから数日。
実機とシミュレーションを交えた模擬戦で、今日もサクヤの駆るストライクに叩きのめされたブーステッドマンとマシンチャイルドの4人は、今やそのように見える肉の塊になってガンルームに転がっていた。
汗に塗れたノーマルスーツは脱ぎ捨てられ、部屋の中を漂っている。
4人ともに下着も同然の恰好であったが、唯一の異性であるノーマのその姿も他の3人には転がっている野郎のそれと同じほどの価値しかなかった。
「あのクソ野郎……背中に目でもついてんのかよ……」
「……そもそもオルガ、何で背後取ったらやられるって分かってるのにいつもそこ狙うんだよっ」
うるせえよ、と吐き捨てながら空になったドリンクのチューブを不平をこぼすクロトへ投げつけるも、力の入らない身体ではコントロールを失って明後日の方向へと飛んでいく。
大きく機体性能で差を付けられている訳でもなく、むしろ数の優位はこちらにあるはず、という認識は4人にあった。
しかしそれでも、ストライク本体に傷一つ負わせることはできず、唯一の戦果はシャニがビームライフルを破壊できたくらいで全ての模擬戦で撃墜判定、もしくは作戦行動時間切れで敗北扱いとなっていた。
『流星』のストライクは圧倒的だった。
オールレンジ攻撃を主体としたガンバレルストライク、それぞれのストライカーパックの大型武器による衝撃力に優れたパーフェクトストライク、そして全領域において総合戦闘力を十全に発揮させるストライク+I.W.S.P。
それに加わるのはモビルスーツ戦のパイオニアたる特殊戦技教導隊の創隊時のメンバーかつ、軍のトップエースであるサクヤ・サイジョウの技量。
最早ブーステッドマンとマシンチャイルドの混成であっても、4対1の不利という不利は存在していないようだった。
「……あれで、俺達みたいなの……やってないんでしょ」
「中尉……いえ、隊長は……ナチュラルと聞いてましたが……予想以上でした」
シャニとノーマが、思い思いに感想を言う。
クロトがそれに同調するが、納得できないようにオルガは自身の右腕を壁に叩き付けた。
「クソがよ……! 次は、ぜってー倒す……」
「一回は、いいところまで行ったのになァ……」
ぼやくように言い、ため息とともに空になっていたチューブが膨らむ。
遊んでんじゃねぇと小言を言うオルガを無視して、クロトは3人に向き直った。
「ねぇ、一番上手くいった時のことなんだけどサ……もっかい見てみない?」
若干回復しつつある体力でなんとか身体を引き起こし、クロトが近くを浮かんでいた端末を掴んで操作し始める。
のそのそと他の3人が集まり、映し出された戦闘ログに視線を固定した。
チームワークも連携も何もなく、各個撃破されている映像を飛ばし、28度目の戦のログを表示させる。
4人同時に仕掛けていたそれまでと違い、巡航形態に変形したイージスが先行してストライクに仕掛けた。
それの迎撃に気を取られた瞬間、背後からデュエルが斬り込んで意識をかく乱。デュエルの斬撃をシールドで受け止めている間に、ミラージュコロイド・ステルスで姿を消して接近したブリッツがグレイプニールを射出してビームライフルを掴み、無力化。
ストライクの動きが止まったところを、追い付いたバスターが狙撃する……が、ストライクはリアスカートから抜刀したビームサーベルをデュエルの腹に打ち込み機能を停止させると同時に、バスターの射線へと投げ出す。
超高インパルス長射程狙撃ライフルの火箭に機体を貫かれ、爆散すると同時にサクヤはミラージュコロイドを展開中のブリッツにガトリング砲を撃ち込んでいく。
展開中はPS装甲を使用できないブリッツは、いくらか被弾しながらもミラージュコロイドを解除し、姿を現した瞬間に飛来したビームブーメランで胴体を切り裂かれて爆散。
後は、逃げ回っていたイージスをレールガンの固め撃ちで機能不全まで追い込み始末した後、動きの遅いバスターが止めを刺され爆発四散したところで終わった。
「チッ、これのどこが上手く行ったんだよ。全員殺されてんじゃねぇか」
「ちょっと待ってよ……隊長のストライクに攻撃が当たったのはこれだけなんだから」
「……それで、ブエル少尉は何を言いたいんです?」
オルガの悪態を受け流し、ノーマの視線を受けたクロトは端末をふわりと手放してガンルームの窓際へと移動する。
眼下では様々なケーブルに繫がれたモビルスーツたちに整備員が取り付き、次の作戦の準備をしているようだった。
「あの時の戦い方をさ……もっと上手くやれば、今度は1回じゃなくてもっと当てられるんじゃないかってさ」
「……どうやってやんの。それ」
いつものように憮然とした表情をしているシャニが、わずかにやる気を出したようにクロトの方を見る。
オルガと、ノーマも同じように彼の方へ視線を向けた。
じっと見つめられたクロトは、再び掴んだ端末をひらひらさせながら言った。
「だからさ、今からそれを……みんなで考えようってコト」
◆◇◆
「……熱心だな」
「ン……?」
艦橋に入るなり、ナタルが呟く。
CICの管制席で、実機を用いて実施された模擬戦のデータを処理、解析していたサクヤが声に反応して顔を上げると、ぱちりと目と目が合った。
チョコバーを咥えたままの男ときょとんと見つめ合った後、若干気まずそうにナタルが視線を外してCICへと降りて表示していた画面を覗き込む。
「隊長だからさ、成果と課題出して処置しないと……ドミニオンとの連携もまだまだだからな」
咀嚼してそれを飲み込み、再びキーボードに指を走らせながらサクヤが言う。
そういう元交際相手の顔は、士官学校時代の時ともアークエンジェルに乗艦していた時よりもずっと神経質そうに見えた。
部隊の長ともなれば、この男でもそういう顔ができるのだな……とその横顔をじっと見つめてしまっていることに気が付いたナタルは、さっと視線を外して自分用に持ってきていた飲み物のチューブを差し出す。
入ってきた時と同じように、きょとんとした顔でそれとナタルの顔を交互に見つめるサクヤ。
「あ、あまり根を詰めるなよ……今はモビルスーツ隊の、隊長なんだからな」
「……ああ、そうだな……でもそれは『艦長』も、だろう?」
差し出されたそれを受け取ると、小物入れから取り出したチョコバーの包みをナタルに差し出す。
増加食として支給されているカルシウム強化チョコバーは、不味くはないが市販のものに替えた方がいいといった評判が大多数なものであるが、ナタルはこの男がそれを士官学校時代から好んで食べている事を思い出す。
使っているもの、好んでいるものはあの時から変わっていないのだな、とそれを受け取った。
「彼等の状況は? 実戦には出せそうか」
画面にはダガーとストライク・ダガーの混成部隊とオルガ達GAT-Xが実機での模擬戦を行っている映像が映し出されていた。
キーボードを打ち込み、その映像を画面いっぱいに拡大させてそれをナタルへ見るように促す。
「連携も取れてきている。最初に比べれば、4人は大きく成長してきているな」
イージスが先行して敵陣に突入し、機動性でダガー部隊をかく乱。
戦場の意識を十分に、赤い機体へと引き付けていく。
『へっへ、ノロマっ!』
戦場を飛び回っていく中で、取得した目標情報を伝送してバスターが火力を発揮し始める。
火箭の嵐に巻き込まれ、混乱しつつある部隊の中でどうにか指揮を取ろうとする指揮官機にランサーダートが突き刺さり、爆散した。
『オラァっ! まだまだあんぞ!』
『そんなウルサイと、死んじゃうよ』
指揮を引き継いだ次級者も、イージスのスキュラで蒸発させられて完全に混乱し始めるダガー部隊、そしてそこにトドメとばかりにデュエルが突入し、フォルテストラの全火力を敵中で発揮していく。
『落ちなさい……!』
縦横無尽に動き回るGAT-Xに蹂躙され、次々と撃墜されていくダガーとストライク・ダガー。
その中にあって、唯一統制の取れた動きで応戦する3機の姿がナタルの目に留まった。
バスターの火力に対して対抗するように撃ち返すバスターダガーと、フォルテストラをパージして身軽になりつつ、その際に生じる閃光で間合いを切るデュエルダガー。
そして、ギリギリの紙一重で攻撃を躱していくエールストライカーを装備したダガーが、反撃とばかりにデュエルへと斬り掛かる。
『おいおいおい、こんなん保たねぇぞ! なんなんだあのガキどもはっ』
『ちょっと、ヤバいかも……っ!』
『…………』
第13独立部隊に召集されている時点で、パイロットとしての才は非凡なものであると証明されているようなものであったが、彼等のそれはダガー部隊の中でも抜きんでているようであった。
しかし対抗できているのもわずかな時間で、まず最初にデュエルダガーがイージスの強襲形態に撃墜され、続いてバスターダガーが背後からブリッツに貫かれて爆散。
そして最後に残ったエールダガーが、バスターの狙い撃ちで機動性を奪われた後にデュエルの斬撃により両断されたところで映像が終了した。
「これは……」
「ダガー部隊も、かなりいい状態に仕上がってきている。今回は相手が悪かったと言わざるを得ないが」
シミュレーションでのザフトとの戦闘ではほぼ完勝できているしなと付け加えるのを聞きながら、ナタルはチョコバーを齧りながら次の作戦の思索に耽る。
パナマを本気で落とそうとするならば、投入される戦力はこれまで以上に大規模になるはず。
ならば、ならば、モビルスーツ隊の戦闘にドミニオン等の艦艇火力も織り込んでいかなければ戦闘を優位に進めることは出来ない……で、あるならばと考えが纏まったところで再びサクヤとばっちり目が合う。
自分の考えが分かったのか、サクヤはクリップボードに挟まれた書類を差し出した。
「多分、考えていることは同じだと思う。俺の方で思いつく限りのプログラムは組んでおいたから、追加と修正を頼む。艦の運用は、君の方が上だったからな」
差し出されたものを受け取り、ぱらぱらと目を通していく。
確かにモビルスーツを運用する側の視点では思いつかないことばかりであったが、やはり艦を運用する側の視点で見れば抜け落ちている部分や調整の必要な部分が多々あるように思えた。
「分かった。私の方で、追加したものを明日にでも渡す」
それじゃあ頼むと言って退出するサクヤの背を見送り、ナタルは自身の艦長席に戻った。
勤務者から異常無しの報告を受けて着席した後、再びクリップボードに目を落とす。
それにしても……いつの間にか昔のように接してしまっていたな、と先程までの会話を反芻する。
アークエンジェルに乗艦している時は過去のあれこれから拗れた接触をしてしまっていたが、今はもう艦長と艦載機部隊の長という関係に落ち着いた……と、思う。
交際していたといってもそれはあくまで過去の話で、今現在彼が誰と交際しようとも私にはもう関係のない話で……と浮かべたところでふと、どうして卒業式以降に連絡をしてくれなかったのだろう、と考えてしまった。
艦橋で一人でいるから、時間的には夜半だからこんな事を考えてしまうのだろうと冷静に分析しながらも、思考は止まらない。
聞けば―――と考えたところで、シートに深く沈み込みため息をついた。
「聞いたところで、私はどうしたいんだ……」
ナタルの手から、ゆっくりとクリップボードが離れてふわふわと浮かび始めた。
◆◇◆
General
Unilateral
Neuro-Link
Dispersive
Autonomic
Maneuver……
何度このOSの起動画面を見たのだろうか。
そして、いつ見納めることができるのだろうか。
それは今日かもしれないし、永遠に来ないのかもしれない。
コクピットハッチを開けた状態のまま機体を起動させ、立ち上げていると格納庫内の喧騒が直に伝わってくる。
それを煩わしいとは思わず、寧ろ安心感すら覚えると言ったらオルガ達に引かれたのはつい先日。
コクピット内の小さなウィンドウには、同じく機体を立ち上げている最中の彼等が映り込んでおり、それぞれが思い思いに機体を立ち上げていた。
「各機、異常は無いな?」
それぞれが異状なし、と返すのを聞いたサクヤは最後まで調整に付き合ってくれた機付整備員にジェスチャーで礼と離れるように伝え、コクピットハッチを閉じる。
予期していた通りに、ザフトはパナマ宇宙港への大気圏突入ポイントへ部隊を集結させつつある。
これをハルバートン提督率いる第8艦隊と共同して叩く、というのが今回の作戦だ。
「あー、キミ達?」
最早見慣れた姿で艦橋のオブザーバー席に座るアズラエルがモニターに映し出される。
少年たちが鬱陶しそうな表情になるが、気にせず画面の中の出資者は続けた。
「これが新生ガンダム・チームの初陣となりマス。いい戦果を、期待してますヨ?」
「ハデにやっていい、って?」
「そういうこと」
シャニがぼそりと言い、クロトがしたり顔で答える。
ノーマは無表情で頷き、オルガは飲んでいたγ-グリフェプタンの容器を苛立たし気にダストボックスへ放り込んだ。
「…………」
「お前等、うっせ」
「そこまでだ。出撃するぞ」
会話を打ち切り、機体をカタパルトへと移動させる。
ストライクの背には、オレンジ色のストライカーパック……ガンバレルストライカーが接続される。
そういえば、前に宇宙で出撃した時もこんな会話があったような気がするな、と少し懐かしい気分になるのもつかの間。
「カタパルト接続、ガンバレルストライカースタンバイ。各パワーフロー正常、進路クリアー、ストライク発進どうぞ!」
「了解! サクヤ・サイジョウ、ガンダム! 行きます!」
きっ、貴様ら! 破廉恥だぞ! 服を着ろっ!!
―――4人の様子を見に来た艦長
映画のキャラを
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出せ♡
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出すな♡
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設定が固まってから出せ♡
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ノベライズ下巻出るまで考えろ♡