MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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アカツキのシラヌイパック争奪戦に仕事のせいで一次も二次もボロ負けしました。
ショックで一日に3回しか食事もできません。
RGアカツキも予約できてないけど。


43話 叛く世界

 

 『パナマ陥落せず』―――その一報は、ユーラシア連邦政府と軍首脳部にビクトリア宇宙港の奪還を前倒しすることを後押しした。

 地球連合内部の2大勢力のうちどちらも宇宙への大量の戦力投射を可能にする宇宙港、ひいてはマスドライバーの確保は急務であった。

 しかし、協力者よりもたらされたザフトの新兵器とそれが及ぼす影響から、陥落の公算が大であったパナマが陥落せずとあれば今後主戦場を宇宙に移すにあたり発言権を獲得するのは、大量の戦力投射が可能な大西洋連邦というのは共通の見解であったし、それが専らの懸念事項でもあった。

 アラスカ基地に集結させた大西洋連邦の勢力を削ったまでは思惑通りであったものの、依然として最精鋭部隊である特殊戦技教導隊と第13独立部隊は健在であり、量産モビルスーツの『ストライクダガー』と『ダガー』の配備は日に日に―――とは言わずとも、着実に増加傾向にある。

 

 早急に手を打たねば、戦力を増大させた大西洋連邦がビクトリア宇宙港奪還を主導するという可能性は、ユーラシア連邦首脳部を恐怖させた。

 自国領内のマスドライバー奪還を自らの手で為し得なければ、それはユーラシアの国力の低下を内外に発信するものであり、国内に抱えた独立志向の反政府勢力を増長させることにもなる。

 幸いなことに、初の制式量産型モビルスーツである『CAT1-G ハイペリオンG』の量産が軌道に乗り、部隊配備も始まった今であれば奪還は可能、といった軍からの報告もあり、パナマ基地防衛成功の報から1週間後。

 国内から急ぎ掻き集めたモビルスーツ部隊と多数の戦力で臨時編成された奪還部隊は、ビクトリア基地への侵攻を開始した。

 

「Nフィールド、敵増援多数!」

「こちらFO26、射撃中止! 射撃中止! 味方が突出している!」

「モビルスーツ隊はまだかっ! もう限界だぞ!」

 

 ビクトリア宇宙港周辺の戦場は、地獄の釜の蓋を開けてそこにおもちゃ箱をひっくり返したとでも言うべき混乱の最中にあった。

 奇襲を受けたザフトの守備隊と臨時編成のユーラシア連邦軍奪還部隊は互いに混乱しつつ一進一退の攻防を続け、モザイク状に入り乱れた互いの勢力圏を塗り潰し塗り潰されを繰り返していた。

 とはいえ、量産型モビルスーツのハイペリオンを中核としたMS大隊戦術群は戦力の中核として安定した戦果を挙げ、宇宙港奪還に現実味を持たせつつあった。

 その中にあって、遊撃部隊として投入された特務部隊『X』は少数ながらも多大な戦果を挙げ、両軍から畏怖の対象とされていた。

 

「最大出力! 消え去れェ!」

 

 背部のウイングバインダーの先端に装備されたビームキャノン『フォルファントリー』が前方に指向され、放たれた高出力ビームが守備隊のジン2機を消失させる。

 そのビームを目くらましにして接近した4機のハイペリオンGが、それぞれ手にしたビームナイフでジンのコクピットを貫く。

 声を上げる間もなく全滅させられたモビルスーツ隊を一瞥することもなく、フォルファントリーを収納した『CAT1-X1/3 ハイペリオン』は僚機を従えて前進を再開した。

 包囲による殲滅から、モビルスーツ大隊戦術群による多方面同時突入を陽動とし、浸透した特殊部隊による宇宙港中枢のコントロール奪取を目的とした作戦への切り替えが政府と軍首脳部の焦りを反映しているというのは、兵士の中で専らの噂でありそれはハイペリオンを駆るパイロットの耳にも入ってきていた。

 どうでもいいことだ、とふと思い浮かんだそれを忘却の彼方へと追いやった。

 これまで実験動物のように扱われていたのが、モビルスーツの開発が始まればそのパイロットとしてコキ使われ、そして今はモビルスーツ隊の隊長として無口で不気味な部下を付けられまたいい様に扱われている。

 我ながら飼いならされたものだ、と鼻を鳴らす。

 

 生きていれば、『失敗作』であるオレが『成功作』を倒すことが出来る―――そう考えていた。

 上官のガルシアから、ヘリオポリスから脱出したストライクのパイロットの名前を聞いた時は遂に見つけた、と歓喜したものだった。

 しかし現実には、『成功作』はオーブ沖で撃墜されMIAとなり『失敗作』は何の目的もなくのうのうと生き続けている。

 では今、オレの生きる意味は―――そう考えながらも、手にしたビームサブマシンガン『RFW-99 ザスタバ・スティグマト』で立ち塞がるジンを蜂の巣に変える。

 存在を証明するためには、生き続けなければならない。

 成り代わる存在が消えたとして、そうであるならばオレが生き続けることが『成功作』としての証明になるのではないか。

 で、あれば―――

 

「オレは、更なる高みに行く! キサマよりもだ、キラ・ヤマト!」

 

 増援に現れた3機のバクゥが、迎撃の弾幕を潜り抜けてハイペリオン―――カナード・パルスに迫る。

 ビームサブマシンガンで牽制しながら、ビームナイフを逆手に持ち背部のウイングバインダーを展開し、モノフェーズ光波防御シールド『アルミューレ・リュミエール』を前方に発生させた。

 バクゥが撃ち出すビームキャノン。ミサイルといった射撃武器が完全に無効化され、それであってシールドの中のハイペリオンはサブマシンガンで猛烈に反撃を加える。

 

「ザコが! 俺の前に立つなっ!」

 

 3機のうち、1機がその反撃で装甲をグズグズに融解させ擱座し、爆発した。

 挟撃せんと針路を変え、ハイペリオンを左右から挟み込むようにバクゥが飛び掛かる!

 

「イヌなど、地べたがお似合いだ!」

 

 サブマシンガンのサイトセンサーとバレルの間に装着されたビームナイフを右から飛び掛かるバクゥに射出し、左から飛び掛かる敵に向きを変え光波防御シールド発生装置を変形させる。

 射出されたビームナイフは頭部からその身体をパイロットごと穿ち、自身が消失した事を知覚することなくそのまま爆散した。

 

「キサマもだ! 落ちろ!」

 

 前方で展開されていた光波は形を変え、盾から槍へと姿を転じさせた。

 飛び掛かるバクゥに、ハイペリオンはビームランスとして展開させたウイングバインダーと一体となり、投げられた1本の槍のように飛び出す。

 果たしてハイペリオンは、先程のビームナイフと同じようにバクゥの頭部を突き刺し、そのまま巨大なビームランスでその機体を刺し貫き、爆散させた。

 

「ザコが、相手にもならん」

 

 機体を着地させ、周囲を警戒すると恐れをなしたのか敵のモビルスーツ部隊が後退しつつあるのがモニターに映った。

 再びの前進命令を出し、部隊を動かしながら機体のチェックを行う。

 長期間の戦闘で満足な整備が出来ていないとはいえ、各駆動部の状態はオールグリーンであるのはこの機体が堅実かつ堅牢に構成されている事の証左であり、その部分は素直にユーラシア連邦の良い部分だとカナードは認識していた。

 作戦の強行で、本来特務部隊Xに配備されるはずであったモビルスーツではこうはならなかっただろう、と改めて感じる。

 あのような小回りの利かない不細工のでくの坊でなく、攻守を兼ね備えたこのハイペリオンこそが最強のモビルスーツなのだ。

 

「各機、停止だ」

 

 モニターの端に映る時計は、間もなく浸透した特殊部隊が突入を開始する時間に差し掛かろうとしていた。

 後は突入する連中の掩護か、と携行していたドリンクのチューブに口をつけその様子を見守っていると、どこか様子が不自然であることが気になった。

 

「……なぜモビルスーツが1機もいない?」

 

 司令部への問い合わせと、周辺のスキャンを行うも周囲に敵影無しというログのみが表示される。

 敵の本陣の喉元まで来ているのに、この防備の薄さは何だ、と訝しがった瞬間。

 

「なっ!?」

 

 一瞬の閃光に視界が塗り潰され、それと共に激しい衝撃がカナードのハイペリオンを揺さぶる。

 瞬時の状況判断で、機体を覆う様に光波防御シールドを展開できたのは特務部隊Xの面々だけであり、練度の高さを証明していたがそれ以外のモビルスーツは衝撃波と瓦礫により吹き飛ばされていた。

 

「特務兵! カナード・パルス特務兵! 何が起きた!?」

 

 スピーカーから耳障りな男の声が聞こえ、カナードは舌打ちをするが、しかしそれ以上に顔を歪める状況が眼前に広がっていた。

 目の前にあったマスドライバー、それとともに広がる宇宙港と基地は跡形もなく吹き飛びその残骸を無残に横たえている。

 シールドのお陰で無事だった機体を飛ばし、周囲の状況を確認する。

 周辺に動くものはなく、見渡す限りに瓦礫の山。

 やってくれたな、と顔を歪めた。

 

「……報告する。基地が自爆した」

 

 まるで意味が分からんぞ、とスピーカーの向こうから禿頭の男ががなり立てている。

 それを言いたいのはこちらの方だ、とカナードはその無線を切った。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 ビクトリア基地崩壊の報はある地域では熱狂的に、またある地域では冷やかに報じられていた。

 それはまるで地球連合内部の対立を表面化するように、そしてこれまでくすぶり続けていたものに火を点けてしまうような―――そうした予感を抱えながら、カガリは病室のテレビを違うチャンネルに変えた。

 大西洋連邦寄りのメディアはユーラシア連邦のモビルスーツと比較するように連日連夜、先のパナマ基地防衛戦で活躍した第13独立部隊とその旗艦『ドミニオン』、そして最精鋭たるガンダム・チームの話題で持ちきりだった。

 つい先ほどまで映していたチャンネルでも、目覚ましい戦果を挙げたストライクとそのパイロットのサクヤ・サイジョウ中尉とその部下が操縦するGAT-Xの4機の資料映像と戦果、そして彼の経歴が映し出されていた。

 一時期同じ艦に乗っていた人物がここまで取り上げられているのは妙な気分ではあったが、それでも好意的に取り上げられているのは少し嬉しく思えた―――が、ベッドに身体を横たえながら同じテレビを見ている彼の心境を考えると複雑な心境にもなった。

 

「……ビクトリア、か」

 

 目を覚ましたのはつい先日。

 例えコーディネイターであっても、目を覚ますのは絶望的だろう―――と医師には言われていた。

 しかし、起き上がれるレベルまでには回復し、見舞いに来ていたカガリと話をしていたアスランが、点けていたテレビを見ながら呟く。

 瓦礫の山と化したビクトリア基地と、その周辺で捜索を行うユーラシア連邦軍が画面の中を忙しく動き回り、ワイプの中でニュースキャスターと専門家たちが何やら言い合っているようだった。

 

「……これから、どうするんだ?」

 

 画面から目を離したアスランは、カガリに向き直る。

 いきなり話を振られたカガリは少し驚きながらどう答えるべきか迷っていた。

 

「オーブは、どうなろうと中立だっ」

 

 そう言うしかない、とばかりにカガリが若干語気を強めながら言うとアスランは眉間に皺を寄せた。

 気分を害してしまったか、と若干自身の短慮を反省したが別に彼は気分を害した訳ではなく、ただ考え込んでいるようだった。

 しばらくの気まずい沈黙の後、重々しくアスランが口を開いた。

 

「戦場になるぞ、ここは」

「!」

 

 アスランの言葉に、カガリはうっと詰まる。

 その兆候は、確かにあった。

 開戦以前から地球連合が掲げる「ワン・アース」という標語は、中立国やザフトに協力する国家がある以上強制力を伴わないただのお題目となっており、それを掲げる当人も半ばそれが無意味なものであることも分かり切っていた。

 しかし、パナマ基地の防衛が成功した以後から状況は一変した。

 マスドライバーを保有しない地球連合加盟国はこぞってオーブに対する圧力を強め、特にユーラシア連邦に至っては軍艦を伴う外交使節を派遣するまでに至っていた。

 各国の圧力を受けつつも、予てよりの外交方針を堅持する方針を打ち出したホムラ代表は未だ内外に対する影響力の強いウズミを代表首長に再就任させると共に下野し、ウズミのサポートに回った。

 同じくカガリも、ウズミの秘書として各地を回っている。

 その中で、カガリもアスランの言った事を薄々感じ取っていた。

 話す使節の人々の表情や仕草、その一つ一つが砂漠の戦地で接した、戦が身近に迫ってきている時の顔つきと仕草に似てきているのだ。

 勿論一つ一つが全く同じ、という訳でもなく違う部分も多々あるが、纏っている雰囲気が剣呑なものになってきているのは確かであった。

 

「それ、は」

「その感じだと、きみも感じているみたいだな」

「…………」

 

 カガリが押し黙る。

 いくら無人島で一夜を過ごした仲とはいえ、立場というものがあった。

 更に相手は、自国が直接関係ないとはいえ戦争当事国の軍人だ。

 そのような相手に浮動状況にある国家の現状についておいそれと話すわけにもいかず、カガリは黙ったままであった。

 点いたままのテレビに放映されていた報道番組は、いつの間にか他国の戦争の話題から自国内のゴシップの話題に変わっていた。

 





役立たずの特務兵どもが!

―――禿頭の指揮官

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