MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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!主人公が赤いガンダムに乗ってるのは全くの偶然です!

面白かったですね、毎週見に行ってます。
マチュかわいいよマチュ



47話 黒邪の機甲

 

「サクヤ、てめぇっ! 何でここに!?」

 

 ムウの怒鳴り声には応じず、サクヤは対艦刀を収め、腰部にマウントしていたビームライフルを取り出させる。

 周囲のハイペリオンGは突然現れた不明機に狼狽しつつも、態勢を立て直しつつある。

 フラガ少佐の言う通りだよな、と自分の立ち位置の難しさを再認識しつつ、戸惑うオーブ軍のモビルスーツ隊に指示を出した。

 

「こちらは総司令部直属のカグツチ隊、隊長のアレックス・ディノ2尉だ! M1アストレイの部隊は、敵モビルスーツに対してツーマンセル以上を徹底しろ!」

 

 再びハイペリオンGとの交戦を開始しながら、新たな乗機となった赤いストライクのビームライフルとコンバインドシールドに装着された30mm6銃身ガトリング砲で敵を牽制する。

 分間8000発のチタンカーバイドの嵐が光波防御シールドに叩きつけられ、敵機は防御のため成す術もなくその場に立ち尽くす。

 その射撃の勢いを全く緩めず、ストライクルージュは敵機に更に接近していく。

 

「今だ!」

 

 その指示とともに、ルージュの陰から飛び出した白いM1アストレイが、腰部から引き抜いた対艦刀を突き出して敵に突っ込んでいく。

 銃撃を防御していたことによりシールドをその方向に向けられなかった敵はそのまま為す術なく対艦刀に貫かれ、爆散した。

 

「敵のシールドが展開できるのは1方向のみだ! M1アストレイの機動性でかく乱して、チームプレイで押し込め!」

「りょ、了解! ……マユラ、ジュリ!」

「分かったわ!」

「任せて!」

 

 サクヤの指示を真っ先に受け取ったのは、オーブ軍の中で唯一彼のレクチャーを受けたことのあるアサギ達3人だった。

 混乱と疲労に染まった思考の中で、その声の指示には自然と従うことができた。

 

「そこっ!」

 

 勝る機動性で攪乱しながら2人で牽制し、残った1人が敵の意識の外から敵機へ接近する。

 有視界での戦闘を基本とするモビルスーツ戦では視界の外、つまり意識の外からの攻撃は必殺の一撃となり得る。

 だからこそメビウス・ゼロの特性でもあるガンバレルを軸としたオールレンジ攻撃はザフトのモビルスーツに対して有効な戦術であり、多大な戦果を挙げることが出来たのだ。

 オールレンジ攻撃を行わない場合では、相手を先に発見できれば大きなアドバンテージとなり得るがその状態で先制攻撃を相手に回避されてしまった場合、我のアドバンテージを失うだけでなく自機の存在と位置情報を相手に知覚されてしまう。

 このアドバンテージを最大限に保持するためには、複数機でチームを組み、常に相手が視界内に収められない機体を1機以上用意する必要がある。

 常に相手の視界外、意識外から攻撃ができればそれは大きなアドバンテージとなり得るのだ。

 

「斬るのがダメなら、これでっ!」

 

 機動性に翻弄されるハイペリオンGは、縦横無尽に動き回るアサギ達のマニューバについていけず、遂には決定的な隙を晒してしまう。

 

「そこっ!」

 

 アサギ達は3人一組で、他のチームのぎこちない動きとは違う有機的な連携で敵機を追い詰めていく。

 意識の外から接近したアサギが、敵の背後から対艦刀を突き立てる。

 警報音でパイロットが後方からの接近に気付くよりも早く、その刃が装甲を一気に突き破った。

 初のM1アストレイによる被撃墜にユーラシア連邦軍が浮足立ち、戦場の空気が動き出し始めた。

 

「ムウさん、トール!」

「ちっ、サクヤのことは後だ!」

「キラっ!」

 

 再び飛び上がったフリーダムが5つの砲口を煌めかせ、飛び出した光条が地上のハイペリオンGに襲い掛かる。

 どの機体も上方に光波防御シールドを展開して防ぐが、その隙を突くように地上を疾るパーフェクトストライクのシュベルトゲベールが敵機を切り裂き、それに追随するダガーのアグニが残った機体を薙ぎ払った。

 やった、と声を上げるトールだが撃墜直後の慢心で生じた隙を狙い、残った敵機がトールに襲い掛かる。

 

「うわあっ!?」

「トールッ!?」

 

 ダガーに襲い掛かるハイペリオンGが銃の下部に装着したビームナイフを突き入れようとした瞬間、空中のフリーダムがビームライフルを発砲して突き出した右腕を抉り取る。

 危機を脱したトールはその場から離脱し、それと入れ替わるようにパーフェクトストライクとストライクルージュが接近、両側を2機が交差するように敵機を切り裂いた。

 

「サクヤ、お前っ!」

「…………」

「サクヤさん……!」

 

 切り裂いた後、膝をついた2機がほぼ同時に立ち上がる。

 敵の先遣は壊滅したようで、M1アストレイの部隊が残敵掃討を始めていた。

 不穏な空気が漂い、一触即発の雰囲気を醸し出すストライクとストライクルージュの間に、フリーダムが降り立った。

 

「落ち着いたみたいだな……さて」

 

 ストライクのツインアイが、ルージュのそれを睨みつける。

 ムウの怒気を装甲越しにも感じたが、それは至極当然のことだなとサクヤはそれを真っ向から受け止めて見せた。

 

「お前には聞かなきゃならんことが色々ある……アラスカのこと以外にもな」

「わかってます。一度ここを離れ……」

 

怒気を孕んだムウの声に、ストライクルージュを首肯させてそれに応じる。

 一度態勢を立て直すために、ここを離れる提案をしたサクヤだったが不意に気配を感じ、視線を海の方向へ向けた。

 

「この感覚は……?」

 

 何かがこちらを見ている。

 段々と、圧迫感のような何かがこちらに圧し掛かってくるような感覚。

 強く主張するそれは、オーブ護衛艦隊の残骸が燃えている方向から強く発している。

 それは徐々に膨れ上がっていき、遂には不快感を覚える程度にまで増大していった。

 サクヤとムウは、その感覚に覚えがあった。

 

 月面でのグリマルディ戦役。

 サイクロプス起動直後に、見えた巨大な幻影。

 この宇宙すらも飲み込んでしまいそうな、意思の塊。

 

「おい、サクヤ……!」

「……各モビルスーツは、海の方向を警戒!」

 

 ムウもストライクを臨戦態勢に戻し、マウントしていたアグニを両手で保持させている。

 ちりちりと、開戦当初に受けた腹の古傷が疼くような感覚。

 来る、とサクヤが呟いた瞬間、残骸を押し流して海面を切り裂き長大な砲身が姿を現す。

 まさか、そんなはずが―――という驚愕と、あれではないという安堵。

ごちゃ混ぜになった感覚の中、半ば反射に近い反応で機体を砲身の射線上から退避させた。

 

「各機、散開! 敵と一直線上になるな!」

 

 警告の直後、その砲口から尋常でないレベルの熱源が膨れ上がる。

 充填されたエネルギーはついに解放され、迸る光が人々の網膜に焼き付けられると同時にその一直線上のすべてを蒸発させた。

 

「どうなってる……!」

「なんだよ、ありゃあ……」

 

 同じく退避したムウ達が、その破壊力に息を吞む。

 30m近い巨大な砲身から放たれた光の奔流は、沿岸部から内陸まで長い溝を刻み込こんでいた。

 逃げ遅れ、巻き込まれた者はモビルスーツも車両も、人体も関係なく炎の塊と転じ消滅してしまった。

 雲を纏う砲身は、海岸に近付くにつれて徐々にその姿を現した。

 

 全高30mを超える巨体。

 カブトガニを思わせるような円盤の全周にはビームの砲口を覗かせ、上部には先ほど海岸線の陣地を壊滅させた巨大な2対の砲身を背負っている。

 そしてその下部からは、鳥のように折れ曲がった2本の脚が伸びている。

 間違いなくこれまでの兵器体系から逸脱するような異様な兵器であったが、サクヤはそれに見覚えがあった。

 それに加えて、感じる違和感―――本来それとは全く関係がないはずのものを、その巨体から改めて幻視した。

 

「デストロイ……いや、何かが違う……この違和感は……?」

 

 水しぶきを上げ海上に姿を現したその兵器―――ユーラシア連邦内部でのコードネーム『ギガンテス』―――は、漫然と海岸へ接近する。

 その巨体だけでも圧倒されるオーブ軍であったが、脅威と認識すればそれへの凄まじい対抗射撃が開始された。

 M1アストレイのビームライフル、リニアガン・タンクの射撃、対MS誘導弾といった多種多様な弾種の攻撃が加えられる。

 その巨体からすれば、間違いなく外すことのない標的であったが、しかし放たれた攻撃はすべてギガンテスの直前でキラキラと弾けてしまった。

 

「リフレクター……いや、ハイペリオンと同じか?」

 

 サクヤが、攻撃を受けたギガンテスの映像を分析しつつ呟く。

 確かに、その巨体の周囲ではハイペリオンGと同じように光波防御シールドを発生させるためのそれが展開しており、同種のものが利用されているのだろうと窺い知れる。

 出現時期のせいだろうか、本来のデストロイが装備しているものとは差異が出てきているのだろう。

 それならば、対処の方法はいくらでもある―――と考えたが、それは自分だけの話で他は違う。

 あの巨体を倒すためには自分独りの力だけではおそらく不可能だ。

 どうする、どうする―――と思考を巡らせながら、ギガンテスへ肉薄しようとルージュのスラスターを煌めかせる。

 うかつな行動である、という自覚はあった。

 ただ、自分が感じた何かを確かめるため、そして纏わりつく感覚が彼を行動させていた。

 

「この感覚……まさか、引き寄せられてる……!?」

「おいっ! 不用意に近付くな!」

 

 ムウの警告を無視して、サクヤは更に機体をギガンテスに肉薄させる。

 それを迎撃するように円盤部の円周を取り巻く砲口が煌めき、一斉に全方位へビームが発射された。

 縦横無尽を埋め尽くす火力に、流石のサクヤもたまらず怯む。

 

「っ、この火力はっ!」

 

 機体に急制動をかけ、複数の砲門から放たれるビームを回避しながらレールガンと単装砲をギガンテスの脚部に斉射する。

 しかしそれらは先ほどの射撃と同じように、直前で緑色に弾けた。

 近づけず離脱していくストライクルージュに、勝ち誇るようにギガンテスがその動きを止めた。

 

「……?」

 

その動きに戦域の誰もが釘付けになるが、次に見たものは最初の驚愕さえ覆すほどのものであった。

 突然脚部が180度回転し、円盤部が後方へスライドする。

 駆動音を大きく響かせながら、機体構成ががらりと変わり各部がヒトの形状を模した形へと変わっていく。

 最後に頭部が顔を出し一対の目が輝いた時に現れたのは、天を衝くかに思える巨大な人型兵器だった。

 

「ガン……ダム……?」

 

 キラが呻くように呟く。

 その頭部は、先ほどまでオーブを守護するモビルスーツと同様の意匠を持ちながらもどこか禍々しい雰囲気を纏っていた。

 それは口にあたるような部分が、全てを飲み込んでしまうように開いているからであろうか。

 光輪のように円盤を背負った、全高50mをゆうに超えるであろう鋼鉄の巨人。

 対峙すれば、モビルスーツでさえミニチュアの模型のように見えてしまう。

 それが幅だけで10m以上はあろう足を踏み出した。

 踏み出した足によって海水が巻き上げられ、海岸に刻み込まれた溝へ流れ込んでいく。

 後退したサクヤは再び接近しようとするも、今度はギガンテスの胸部に3つ並んだ砲口が臨界して刺々しい光を迸らせた。

 

「なんて火力だ……!」

 

 放たれた光は、先ほどまでサクヤがいた空間を貫いて伸び、はるか後方の内地を一瞬にして焼き尽くした。

 手を出せず、呆然とするオーブ軍を尻目に海岸線付近でギガンテスはその付近を掃射しようと砲門を全方位に向けた。

 

「まずい! 各モビルスーツは、後退しろっ! 掃射が来るぞ!」

 

 サクヤの警告の直後、ギガンテスの全砲門が開き戦域一帯を光の奔流で覆い尽くす。

 多くのM1アストレイが巻き込まれ、爆散すると同時に各陣地、トーチカの類もビームに貫かれて焼失する。

 焼失した陣地の中で唯一機能を保っていた無線から流れていた後退命令は、あまりにも遅きに失した。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「…………」

 

 避難する住民で渋滞する車道と歩行者通路を、アスランは無感動で見つめていた。

 身体は本調子といえずとも動ける程度には回復していたが、以前のパトリックの演説の衝撃が未だ彼の心から抜けず、それが彼を動けなくしていた。

 カガリからの差配でシェルターのある行政府区画までの車は差し向けられていたが、それも避難民が乗り捨てた車両に起因した渋滞で身動きが取れなくなってしまっていた。

 まずいな、という運転手の呟きも聞き流しアスランはぼうっと逃げ惑う人々を見つめる。

 

 あの演説の中では自分は祖国に、軍務に殉じた英雄として取り上げられていた。

 戦争継続のため―――戦意高揚のプロパガンダとして使われることは、人質として利用されたラクスを取り戻し、プラントへ戻った時と同じであったしそれはそうするだろう、という確信もあった。

 しかし今回は、状況が違う。

 自身は死亡したことにされ、それを政治の役割として父の口から利用される。

 アスラン自身の立場はあまりにも無力であり、それはそのまま受け入れられるようなものでもなかった。

 だからといって、何もできない自分自身という事実がアスランを叩きのめし無力感に打ちのめされていた。

 

「俺はどうしてここに……」

 

 病院を抜け出し、ザフトに戻るべきであったか?

 しかし戻れば再び兵士として戦場に戻り、また友達と―――キラと殺し合うことになるだろう。

 キラが生きていることはアスランにとっては晴天の霹靂であったが、しかしそれでも友達と殺し合ったという事実は消えることはなく彼の心に大きく圧し掛かっていた。

 思い悩む彼と同様に、車も同様に全く動かない。

 袋小路に入り込むアスランだったが、突如窓をノックされその顔を上げるとそこには見知った顔があった。

 

「こんな所で、奇遇じゃないか! そんな暗い顔して、どうしたのかね」

 

 砂漠にいたはずの虎が、そこにいた。

 突然の出会いにアスランの思考は完全にフリーズしてしまい、開いた口が塞がらないといったふうに唖然としてバルトフェルドを見上げた。

 

「おやおや、その感じ……どうやら中々に酷い目にあったらしいな」

 

 ま、事情は理解しているがねとバルトフェルドが付け足す。

 週刊誌のような何かを小脇に挟んでいることに気が付いたアスランは、それでパトリックの演説の内容を知ったのだな、と推測した。

 

「……バルトフェルド隊長は、どうしてここに?」

 

 陰鬱な話題を避けるように、アスランは気になっていたことを尋ねる。

 アフリカでの戦闘の後今の自身と同じくMIAになっていたはずの彼が、海を隔てたこの地に居ること自体があまりにも可笑しな話でアスランは更に混乱してしまう。

 そんな混乱を吹き飛ばすように、バルトフェルドはもう隊長じゃないさと朗らかに笑った。

 

「ま、自分探しの旅……なんてところだ。この年にもなってな」

 

 彼のそれが可笑しかったのか、寄り添っていたアイシャが堪え切れず吹き出した。

 はぁ、と何とか愛想笑いを返したアスランだったがすぐに目線を落として元の表情に戻ってしまう。

 そんな様子のアスランを見かねたバルトフェルドは、アスランの肩を掴んで自分の顔を見させるように軽く揺さぶってやった。

 

「君も、一緒に探してみるかい? 棺桶で寝ているよりは心地いいかもしれないぞ」

 

 そう言うバルトフェルドの顔は砂漠に居た時よりも生き生きと見え、全く清々しく思えた。

 そして、答えるよりも先に身体が動いていた。

 ドアを開け、舗装路の上に立つ。

 

「……こんなにも、簡単なことだったんだな」

 

 運転手が驚き引き留めようとするが、運転席側のドアは隣接する車両が近く開けて降りることすらままならない。

 彼に一言謝りながら、アスランはバルトフェルド達と共にその場から立ち去っていった。

 






うぁぁぁ き……巨大モビルスーツが浜辺を練り歩いてる

―――M1アストレイのパイロット

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