MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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9話 出撃! ガンダム・チーム

 

 

「『アムンゼン』と合流できました。これで、ラコーニ隊の穴埋めはできましたな」

 

 ナスカ級高速戦闘艦『ヴェサリウス』のブリッジで、艦長のフレデリック・アデスは自身の上官である仮面の男―――ラウ・ル・クルーゼに報告をすれば、航路図を見つめていた無機質な銀色のマスクがこちらを向く。

 顔の上半分を覆ったそれによって、上官の表情を読み取ることはできなかったが覆われていない口元が普段と変わらない様子であることが分かれば、特に何かしらの問題はない事が分かった。

 

「何とか、間に合ったようだな……連中が気付いた様子は?」

「ありません。どうやら現在は補給作業中のようです」

 

 『ヘリオポリス』襲撃と崩壊から約2週間。

 脱出した地球連合軍の強襲機動特装艦『アークエンジェル』を追跡していたクルーゼ隊は、V.I.Pを護送するというイレギュラーが発生はしたものの、戦力を増強しつつ、その任を継続していた。

 共通作戦状況図を表示させつつ、クルーゼは顎に手を当て唸る。

 

「まさか、足付きはそのままアラスカに降りるつもりだとはな……」

 

 作戦図に表示された敵の予想針路等から、クルーゼが推測した結論だった。

 追跡から逃れるアークエンジェルは、今まさに地球連合軍第8艦隊と合流し補給作業を受けつつ地球へと降下すべく、そのポイントへと向かっていた。

 地球連合軍の総司令部で、最重要拠点でもあるアラスカにアークエンジェルを降下させることは即ち、モビルスーツの開発計画を加速させることになる。

 ここで逃してはわざわざ敵に戦争の勝ち目を与えてやるようなもので、無様に逃したとあれば、それはクルーゼの無能を証明した。

 

「月本部に向かうものだと思っていたが……しかし、ある意味では好都合だな」

「こちらの勢力圏内のうちに、叩くと?」

 

 そうだ、とクルーゼは言いアデスと共に部隊の現有戦力を確認する。

 ヘリオポリスで奪取したMSが4機、本来艦載していたMSと『ガモフ』、『ツィーグラー』、『アムンゼン』の艦載機を合わせれば、少なくとも1個艦隊の相手はできそうであった。

 予想される敵の規模と行動、そしてこちらが取り得る最良の行動方針を天秤にかけ、しばらくの思案の後、見る者を震え上がらせるような笑みを漏らす。

 それは、隊で最も長くクルーゼと接してきたアデスにとって見慣れたものであったが、いつ見ても腹の底が冷えるものであった。

 

「智将諸共、ここで退場願おうか……」

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「状況は、芳しくないようね」

「第8艦隊の連中は補充兵と後方から引き抜いた連中ばかりですからね。こうなるのも仕方ないかと」

「にしたって、もう少し粘るもんだと思うんだがね」

 

 『ストライク』のコクピットの中。

 持ち込んだタブレット端末に表示されている状況図を見れば、今まさに交戦しようとしている第8艦隊は陣形はお粗末なもので、このままではアークエンジェルの大気圏突入地点に辿り着く前に全滅してしまうように思えた。

 ハルバートン提督にしてはらしくない、とサクヤは思う。

 開戦初期の第8艦隊は精強で知られ、ザフトのモビルスーツ部隊ともその艦隊運用とモビルアーマーの数の利を生かした戦術で五分五分に渡り合っていた。しかし数々の攻防戦以後、熟練の将校と兵士を失い、ハルバートンの手足の如く動いていた艦隊の動きは今や精彩を欠き、かつての戦歴は見る影もなくなっていた。

 

 計器類が堰を切ったように動き出し、高まる駆動音が機体を徐々に揺らす。

 緩やかな振動が腰椎を心地よく揺らし、モニターがコンピュータ処理された機体の外の風景を映し出すとともに、OSの起動画面が表示された。

 

 ―――General

    Unilateral

    Neuro-Link

    Dispersive

    Autonomic

    Maneuver……

 

 表示画面に赤く輝く頭文字を拾ってみれば、画面の向こう側にしか居なかったはずの、憧れのロボットの名前となった。

 全く正式な名称ではなく、アクロニムとして読めばの話であったが。

 

 コクピットハッチの向こう側では整備員たちが忙しなく動き、先発する『デュエル』、『バスター』の発進準備に大わらわとなっていた。

 そんな中で、教導隊の3機に通信が入る。

 モニターに映るのは地球に帰るついでに、と乗り込んで艦橋でVIP待遇を受けていたアズラエルであった。

 

「あー、君達?」

 

 戦闘宙域でノーマルスーツも着ず、いつも通りの青いスーツに身を包んだ彼を随分と肝が据わっているな、と思う。

 戦火の及ばない後方地域でのんびりと暮らして、いつも通りの日常を送れるはずの立場であるのになぜわざわざここに……と艦のクルー達は疑問に思っていたが、それが彼の主義なんだろうと思うことにしていた。

 そういえば、妙なところで現場主義だったよなぁとサクヤは記憶(ガノタ・ヴィジョン)を再生する。

 

「これが『ガンダム・チーム』の初陣な訳です。派手に暴れてきてくださいね」

 

 『ガンダム・チーム』。特殊戦技教導隊は今や軍内において正式名称で呼ばれることは少なくなり、前述のそれで呼ばれることが多くなっていた。

 切っ掛けは、ローレンツ・クレーター基地でデュエル、バスター、ストライクがロールアウトして運用試験が開始された日の終わり際、AARでのサクヤの発言だった。

 本当に無意識で、ふとポロリとこぼれてしまった。機体の名を呼ぶ時に、『ガンダム』と。

 OSのアクロニムで、と言い訳してその場を煙に巻き切り抜けようとしたサクヤであったが、メディア宣伝向けの名前を欲していたアズラエルはその発言を聞き逃さなかった。同じ顔をしている機体の総称、戦局の回天となり得る機体のコードネーム、そしてそれを扱うエース・パイロットの集団。話題にならないはずがなかった。

 

 「ガンダム、ですか……強そうでいいじゃないですか」と嬉々として会社へと通信を始めるアズラエルを、サクヤはやや微妙そうな顔つきで見つめていたが。

 

 了解と短く返答をして、サクヤのストライクも発進シークエンスへと移る。

 急拵えの改装であったが、教導隊の運用するネルソン級にはモビルスーツ運用能力が追加されており、限定的ながら教導隊の3機を搭載し、運用することができていた。

 

「中尉! あの新型でいいんですかい!?」

「頼みます! 実験もしなきゃならないんで!」

「了解! 『エール』じゃなくて新型のやつだぞぉ!!」

 

 サクヤの返答を受け、機付の軍曹が親指を立てて機体から離れると同時に、周囲の喧騒に負けないよう大声で怒鳴りながら指示を出していく。

 ストライクの背にメビウス・ゼロの機首部分を折りたたんだような形状のストライカーパックが取り付けられ、そのまま艦の外へと機体が移動させられた。

 教導隊のネルソン級にはあくまでも後付け、急造のものであるため発進のための加速設備はなく、自身で発艦しなければならない。

 モニターに映し出された暗闇の先では既に、火線と光芒が瞬き、破壊と生命の光を輝かせていた。

 

「コントロールをサイジョウ中尉へ。ご武運を!」

「了解! ロック解除! サクヤ・サイジョウ! ストライク、行きます!」

 

 ストライクを艦に固定していたロックが号令と共に外れ、ネルソン級の艦体が一瞬前に流れるも、フットペダルを踏み込んだストライクは急加速。それをすぐに追い抜いた。

 急激に伸し掛かるGが身体をシートに押し込めるが、ジンよりも発達した対G装置が作動してそれを気休め程度に緩和させる。ジンのGに慣れ親しんだサクヤにとっては、半ば物足りないような気持ちになるが、ナチュラル用の機体が量産されることになればそういう事も言ってはいられないだろうな、とも思う。

 

 ストライクの背に取り付けられた新型ストライカーパック、『ガンバレルストライカー』のスラスターが火を噴いて煌めく。

 圧倒的な加速度で一気に先発していたバスターとデュエルに追い付き、後方にデュエルとストライク、先頭にバスターといつもとは少し違うフォーメーションを組んだ。

 

「我々はこのまま戦闘加入し、第8艦隊を援護する」

 

 バスターに乗るレナからの指示に了解、とエドがデュエルの右手に持たせたビームライフルを返事と共に掲げた。

 同じくサクヤも返事をしながら自身のストライクとガンバレルストライカーのマッチング、そして機体自体の調子を確かめる。

 今回の出撃前に、アズラエルによってストライクのコクピット部分に補強板のようなものが急遽取り付けられていた。曰く、メビウス・ゼロのコクピットブロックに使用されている素材に非常に酷似しているようで、ガンバレルをより確実かつ正確にコントロールすることが可能となるらしい。

 半信半疑かつある一種の疑念を持ちながら、サクヤは機体の各部をチェックする。

 

「機体とストライカーには異常なし……この感覚、ゼロに乗ってた時以来か」

 

 自分の意思を前へ、前へと拘束され突進させられるような感覚。

 それでいて、周囲の気配をより過敏にこちらへと知らせてくれるような感じがある。血のバレンタインの際の戦闘で、コクピットの破片が身体に刺さった後からずっとその感覚が強化されつつあるのを感じていた。

 

(コクピット周りに補強板って、まるでサイコ・フレームみたいだよな)

 

 そんな事を考えていれば、こちらに気が付いた敵のジンが数機でフォーメーションを組んでこちらに接近してくるのがメイン・カメラで捉えられ、モニターにその景況が映し出される。

 前方のバスターが、両肩のミサイル・ポッドを開きその火箭を前方のジンに伸ばしていく。それを号砲とし、サクヤも背部のガンバレルを4基射出。ミサイルを回避したジンのうち、1機に殺到させた。

 

「ゼロとは一味違うぞ! 当たれっ!」

 

 ガンバレルストライカーから射出されたそれはまるで生物のようにジンを取り囲み、そしてその砲口を開いた。

 有線(・・)の軛から脱したその4基は、これまでと違い有機的な動きでジンを追い詰めていく。

 その動きはサクヤの記憶の中にあったある武器に酷似していたが、新型のガンバレルともあればそういうものか、と考えて完全に別物として捉えてしまっていた。

 

 ガンバレルから放たれた、これもまた新型の徹甲弾がジンを襲う。

 鹵獲したジンの装甲と避弾経始を研究し、その装甲を貫徹するために研究し尽くされ開発された弾は、果たしてその性能を遺憾なく発揮してジンの胸部を全て撃ち貫いた。

 

「凄い! これなら……!」

 

 更に接近してくるジンが2機。

 ガンバレルをいったん戻し、こちらに突入してくるジンへ右手の57mmビームライフルを数発射撃、1発はコクピットを貫くも、残りは思い切りのいい敵の機動で回避された。

 重突撃銃を撃ち散らしながらこちらに向かってくる敵機に、それを躱しながら機体を加速させる。

 

「ナチュラルのMSが!」

「舐めるなっ!」

 

 左手にアーマーシュナイダーを握らせ、更に接近。

 重斬刀を振りかぶったジンがストライクを切り裂こうとそれを振り下ろすが、それよりも早くカウンターでアーマーシュナイダーをコクピットに叩き込む。

 接触回線でコクピットが潰れていく音が流れるが、パイロットは怨嗟の断末魔を上げる間もなかった。

 高周波振動ナイフで微塵に切り刻まれ、肉片は構造材に押しつぶされ、そして再度射出されたガンバレルに啄まれるように射撃を受け、棺桶代わりの機体が爆発して塵一つ残さず消滅した。

 

「よく動く……!」

「そらっ! 止まって見えるぜ!」

「このまま突入よ!」

 

 遅延なく、自身の意思通りに動くそれに驚嘆しながら、サクヤは今しがたジンを350mmガンランチャーで始末したレナ、ビームサーベルでジンを切り裂いたエドに続くように、更に機体を戦闘宙域の中心に突進させた。

 

 





なんでビームサーベル着いてないの!?

―――新型ストライカーパックを見た教導隊中尉

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