「禅城葵のことは忘れろ。そうすればお前は強くなる」 作:らくべえ09
怪獣の名前由来を適当にでっちあげるの楽しかったです。
南米**の、■■■に関する報告書の一部より抜粋――
・■■■いまだ姿確認できず。
・残骸らしき結晶をわずかに発見。
・眠っていたと推測される場所に巨大な地下空洞を確認。
・空洞内より多数タイタンの出現が確認され、内部調査は進まず。
・南米におけるタイタンの出現頻度は、いまや世界最大に……。
氷の世界である。
南極・某所――そこに建設された国連機関カルデアの基地。
男たちが、巨大な氷の山を見上げていた。
どれだけの年月をへたかわからない氷。
それだけでも人間を圧倒するものだが。
彼らが見ているのは、氷ではなかった。
その中に、何かがある。
金色をした、巨大なモノであった。
翼があり、牙があり、二つの首を持った生き物……だったモノ。
「これがモンスターX01……」
「タイタンとは異なる系統の巨大生物か……」
「いまだ仮説の段階に過ぎない古代文明の伝説が、こんな明確な形で現存しているとは」
「通称は、〝ギドラ〟……か」
「――なんという大きさだ。おまけに首は2つも」
「否。本来は三つだった」
金髪を後ろになでつけた男が、代表するように言った。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト。
カルデアの中でも、上位の幹部にあたる人物だった。
「3つ?」
「古代の戦いで、おそらくは他のタイタンに敗れた結果だと推測されている」
「3本首のドラゴンか……。ゾロアスターで語られる、アジ・ダハーカのようだな」
「かつて、詩人ダンテが幻視した氷に封じられた魔王とは、これかもしれない」
「あるいは、その原型となった可能性もあるようだ。これは、それよりもずっと古い」
ケイネスは言って、〝ギドラ〟を見上げた。
「ほかにも、未知の古代遺跡が近くで見つかっている。破壊の後が激しいが……」
「我々の時代に、こんなものが見つかるとはな――」
ケイネスは息を吐く。
白い蒸気が浮かんで、消えた。
「さらに先日、アフリカの……ギアナ高地地下でX……02ともいうべきものが発見されている」
「アフリカ?」
「科学者は、巨大な生物のミイラ……らしいと言っていた。さらに、肉体の半数以上が明らかな人工物で構成されているとも――」
「なんだ、それは……」
「未知の巨大生物の、サイボーグ。そのミイラというのが妥当なところだそうだ。細胞も、人工物部分も、地球には未知のものだと報告があった」
「バカな……!」
「それと同じくらいバカなものが、すぐ目の前にある」
と、ケイネスはギドラを指してぶっきらぼうに言った。
「現地担当は、近くの部族の神話から、ガイガンと名付けたそうだ――」
男が走っている。
奇妙な男であった。
逆立った青い髪をして、奇妙なボディースーツを着込んだ美丈夫。
映画スター顔前の端正な顔の下には、鋼のような肉体があった。
魅力……美しさと実用性を兼ね備えた理想的な、美の筋肉。
「ったく、次から次へと!!」
男は、赤い槍を振るって襲ってくる生物を突き、切り払っていた。
巨大な顎を持つ、昆虫。
そうとしか言えない姿の生物だった。
さらに言うと、アリそっくりの姿。
いや、アリそのものだった。
しかし、そのサイズは全長2メートルを軽く超えている。
それが何十と群れを成している。
昆虫類は巨大化すれば、そのままモンスターとも言えるのだ。
だが、それは各部が巨大化に適した構造になっていた。
まさに、本物の怪物だった。
ニューメキシコの砂漠。
そこで、男はひたすらに怪物アリを駆除し続けている。
男一人ではなかった。
武装した兵士が、火炎放射器や小銃を手に戦闘を続けている。
その戦いは、女王アリの駆除が確認されるまで、ひたすらに続いた――
「ったく、冗談じゃねえぜ……」
カルデア。
特殊巨大生物群に対処するための、国連組織。
表向きはそうなっている。
その組織のニューメキシコ基地。
巨大アリの掃討から帰還した男は、うんざりした顔で部屋のソファーに座る。
サーヴァント・ランサー。
カルデア所属の
強者との戦いを求めて召喚に応じた彼だが――
呼び出されてから今日まで、ひたすら巨大生物……いや、モンスターの駆除にこき使われていた。
最初は、日本の南に位置する鬼界ヶ島だった。
そこに出現した、3体の巨大生物――タイタン。
巨大蟹・ガニメ。
巨大亀・カメーバ。
巨大頭足類・ゲゾラ。
ガニメは、周辺の島で語られる海の怪物。
カメーバは、河童類を指す方言の一種。
ゲゾラは、年経た海の悪霊など指す方言。
いずれも、伝承・伝説から由来する名前だった。
ゲゾラは銃器のよる攻撃がある程度通じたが、残る2体はいずれも頑強な皮膚や甲羅を持ち、対人用の銃やダイナマイトなどでは牽制にしかならない。
それらをほぼ同時に戦って見事倒した手腕は、さすが英雄と言うべきか。
ただし、マスターの魔力消費も大きく、戦闘後マスターである少女は半日ほど寝込んでしまった。
2回目は、南海の孤島・ゾルゲル島。
元々、アメリカの原子力機関の開発・研究が行われていた場所である。
だがGデイ以降、施設にある放射性物質に惹かれ、カマキラス、クモンガの虫型タイタンが襲撃。
長く人の支配権から離れていた。
ランサーは、カルデア所属の特殊部隊の協力を受けながら、これを駆除した。
カマキラス、クモンガ。
これは日本の伝承にある妖怪に由来。
3回目は、ニューヨークを襲来したリド。
リドはアメリカ原住民の某部族の言葉で、トカゲの悪霊を意味する。
学名は、タイタヌス・リドサウルス。
このタイタンは、体内に危険な病原体を秘めていたため、うかつに攻撃できなかった。
そのため。
ランサーもあくまで陽動や牽制を強いられている。
最終的にとどめをさしたのは、日米が共同開発していたM6000TCシステム。
巨大な電子レンジともいうべき、人工雷による撃滅であった。
4回目。
メキシコの島、イスラ・デ・マーラ。
巨大な飛行型タイタンの休眠する土地であった。
そのふもとに、巨大なヤゴ型タイタンともいうべきメガヌロンが多数発生。
より巨大化、成長したものが羽化して成虫になる前に、蛹をランサーが駆除している。
そして5回目。
これが、今回のニューメキシコの巨大アリ群体。
学名はタイタヌス・エキンム。
古代バビロニアの悪霊に由来する。
「……確かに強えやつと戦いたいとは思ったけどよ……。こう引っ切り無しにこき使われたらたまらんぜ。それに、お前さんの魔力量もな……」
「……」
マスターである少女・藤丸立香は応えない。
疲れから、帰投後に眠ってしまったのだ。
「やれやれ。こんな嬢ちゃんにこんな仕事おっつけて、業が深いこった……」
ランサーがつぶやいた時、
<お疲れのところ悪いけれど、次のお仕事よ>
映像通信で、赤い髪の女が言ってきた。
ソラウ・アーチボルト。
立香の、直属上司――とでもいう人間だった。
「おいおい、今帰ったばっかじゃねえか。俺はともかく――」
と、ランサーがマスターを見やったところ、
<今すぐとは言わない。出発は3日後。それまで休んでいてちょうだい>
女はわずかに苦笑して言った。
<正式な命令と資料は明日渡すわ。とりあえず、あなただけ聞いててちょうだい>
「はいはい……。で、次はどんな怪物を退治しろってんだ?」
<これよ――>
そして、送られてきた画像。
青い虎のような縞模様をした、巨大な怪物が映っていた。
その顔は、古代のティラノサウルスに似ていなくもない。
「おうおう、こりゃまた凶暴で、やばそうなツラしたやつだ……」
<あまりお友達になれそうな顔じゃないわねえ。2年前に同族がアリゾナで大暴れしてるわ。米軍自慢の新型戦車を数台おしゃかにした挙句、戦闘機がミサイルを数発撃ち込んでようやく駆除した。被害総額は考えたくもないわ……。名前は、古代**民族の伝説から、暴虐な酋長に由来するティガ。学名は、タイタヌス・ティガレックス>
「戦車も飛行機も、俺から見れば、とんでもない代物だが……そんなのを蹴散らかして暴れる化け物か。一人で退治できたら確かに英雄だ……」
若干皮肉気に、ランサーは笑った。
しかし、その顔には獰猛な喜びがある。
無事、冬木の自宅へ帰宅した時――
遠坂時臣は、ようやく息をついた。
「おかえりなさい」
「ああ……」
出迎えた妻に笑顔を見せるが、やはり疲労の色が強い。
精神的にも、肉体的にも、かなりきついのだろう。
10年前の聖杯戦争以後。
時臣は市会議員をはじめ、市長職。さらには国政へ出馬。
Gデイをへて、現在は防衛副大臣をつとめるまでになっている。
世間的にはとっくに中年ではあるが……。
だが、政治の世界ではまだ若輩にすぎない。
魑魅魍魎の住処とさえ揶揄される政界。
出世の速さは能力や人脈、さらに後ろ暗い魔術師としての側面を駆使してまで得たものだった。
現在時臣は、世間では特生自衛隊にもっとも貢献した人物として知られている。
特自――対特殊生物自衛隊。
もはや当たり前のものとなった特殊生物・タイタン専門の組織であった。
Gデイ以前から、すでにタイタンの存在は密かに確認されていた。
そして、ゴジラ出現以降、世界各国は本格的に対タイタンの軍備を整え始めた。
日本も例外ではない。
非核三原則を強引に解釈して、原潜を製造したのもその一環だった。
しかし、タイタンもその名前の通り巨大なものから、既存の動物クラスのサイズまで――多様なものが存在する。
だが、いずれも放射性物質を吸収し、通常生物よりも強靭な肉体を持つことに変わりはない。
大体が科学的に考えれば、飛ぶことなど不可能なはずの生物が、軽々と空を飛び、中には炎や氷のブレスを吐くものさえいる。
ゴジラの放射熱線がその代表だった。
ただでさえ、野生動物に対人用の銃器などでは効果が薄い。
かといって無闇にミサイルだの砲弾など、撃てるものではないのだ。
また、相手が自然に潜む野生生物では――
通常の武装や自衛隊員では対処が非常に難しかった。
そのため、専門のハンターなどを招き、対タイタンのために設立されたのが特生自衛隊である。
設立直後から、特自の仕事は絶えない。
世界各地でそうであるように、日本全土でもタイタンが出現していた。
被害も多く出している。
代表的なものは――
長野のアオアシラ。
鬼熊という年へた熊が妖怪化したものの伝承があるが、これはその一種から名づけられた。
姫神島のアケノシルム。
ヒザマという火災を起こす鳥の怪。そういったものの類型のひとつであり、島の伝承にもある怪鳥から由来。
琵琶湖のヨツミワドウ。
名前は、人を吞むという凶悪な河童の一種から由来。
北海道のマガイマガド。
虎に似て、災厄を呼ぶという魔物の伝承から由来。
瀬戸内海のイソネミクニ。
人を誘惑して溺死させるドイツのローレライのような海の怪に由来。
熊本のオロミドロ。
濁った湖底に住むとされる蛇怪に由来。
さらに、小型種のイズチと、そのボスであるオサイズチは全国規模で確認されている。
名前は鎌イタチや
マガイマガド、オロミドロの防御、戦闘力は高く――
他のものには通じた通常火器も効果は薄かった。
そこで活躍したのが、特自の92式メーサー戦車である。
本来ミサイル迎撃を目的として開発されていたものだが、Gデイ以降に改良がなされ、今の形となった。
その火力から、他国から、
「日本の再軍事大国化だ!」
と、非難されたきっかけでもある。
もっとも、国内のあちこちに巨大な怪物が出てくるような状況で、いちいち取り合うような余裕はなかったわけだが。
「いやはや、まいったね……」
妻のいれてくれた紅茶を飲みながら、時臣は苦笑した。
「また動物愛護団体からごねられたよ」
「……あなた」
「希少な動物だから、殺すな、保護しろ――ま、それだけなら一理なくもないのだがね……。タイタンの多くが捕食者であり、危険な外来種だということを、理解していないらしい。ああなると、もはや一種の宗教……いや、哀れな
「……」
「――いや、すまない。せっかくお茶をいれてもらったのに、つまらん愚痴を言ってしまったね。ははは」
葵は、痛ましい気持ちで時臣を見た。
ここ10年で年月以上に疲れが濃い。
髪にも白いものが多くなっている。
「国政のお仕事、やめるわけにはいかないの? このままじゃああなたの体が……」
「確かにきついが――しかしね、自分だけのことではない。遠坂の家、引いてはこの土地とそれを維持していくためには、やらんわけにはいかないのだよ――」
「でも……」
「幸い、凛という頼もしい跡継ぎもいる。私の役目は、後の土台となるものをより
そして、時臣は一緒に出された茶菓子を食べて、天井を見た。
――それに、聖杯の活動も本格的になった。英霊召喚がまた行われる……。
すでに、カルデア所属のマスターがランサーを召喚していた。
その報告は受けている。
だが、のんきに? 魔術師同士の争いなどできる状況だろうか。
確かに聖杯自体は稀有な願望器であることに変わりはないのだが――……。
特生自衛隊・習志野駐屯地。
その地下施設で、銀色に輝くものが建造途中だった。
一言でいうと、それは機械で作られた類人猿……ゴリラ。
全高は20メートル近い。
対タイタンの特殊車両? として設計されたものである。
通称・メカニコング。
原型となったものは、本来汎用の土木作業機械として開発・設計されたもので、2足歩行。
加えて大きさは6メートル程度だった。
しかし、戦闘用に再設計した際に、タイタンの大きさを考慮してここまでスケールアップした。
ついでに安定性をより重視してナックルウォーク式に変更されている。
建造は、現在日本最大かつ世界規模の企業であるパシフィック社のスタッフが行っていた。
パシフィック社は、もとは太平洋電気という家電メーカーだったが近年急成長を遂げ、大企業となっている。
「プラモデルじゃあるまいし……」
建造の様子を見ながら、蛇崩雁夜は思わずつぶやいた。
「でっかいゴリラのロボット作って、怪獣とドつき合いさせようなんて……えらい人たちの考えることはよくわかりませんな。ワタクシなんかには――」
「リドサウルスの一件もあって、あまりタイタンに高火力の兵器を使うことは歓迎されてないんだよ。新種の場合、肉片ひとつでパンデミックが起こる危険性もある。それに……」
隣に立つウェイバー・ベルベットは説明した。
二人とも、頭には安全のため黄色いヘルメットをつけている。
彼らはカルデアからの派遣。
と……その護衛として、この基地にいるのだ。
「それに?」
「タイタンは危険な外来種だが、貴重かつ有用な資源でもある。科学的にも……魔術的にも」
「はあ。あいつらをカレーライスに入れて食おうってんですかねえ」
「まあ、家畜に適用できそうな草食性のタイタンも確認されている。それに、中国なんかでは、日本のナズチ――あれの近親種にあたるジャギィ……向こうじゃ
「ホントかよ……」
「現地のスタッフが確認済み」
「たくましいねえ……。そのへんは、日本人もぜひ見習わないといかんですな」
雁夜は冗談めかして笑った。
「ほかにもある。例えば、東南アジアに出現したプケプケは、その毒素は、医薬に応用させるとアルツハイマーの特効薬になる。完成まで秒読みの段階だ」
「ほおぉぉ……。すごいもンすなあ?」
「そんな宝の山とも言えるものを、簡単に吹っ飛ばしたり、粉々にしたいと思うか?」
「だが、それで踏みつぶされる人間はたまったもんじゃない」
「そうだな。過激なタイタン駆除派がいるかと思えば、逆に保護を訴える集団もある。世の中、ままならないよ。それだけじゃない。タイタンを神だと崇拝するような連中だっているんだ」
「……確かに、あいつを見りゃそう思いたくもなるよ」
雁夜はゴジラのことを思い出しながら、ため息を吐く。
その時――
「いてっ……」
雁夜は右手の甲に、痛みを感じた。
そして甲を見た瞬間、
「マジかよ……」
心底嫌そうな顔になる。
そこには、令呪が刻まれていたからだ。
***
カルデア所属――調査員カレン・オルテンシアの個人的手記より。
・やはり計算すると、彼の誕生、正確には生命体として母体に宿った日からと、変化の始まりはほぼ一致している。
・彼に関する調査では、多くの人間が彼の性格を天才特有の激しさ、不安定さと語る中、興味深いものがある。
・彼は、まるで魂を二つ持っているようだったという意見。確かにそれを事実とすると、説明できることが多い。
・成長に伴い、才能と共に性格の不安定さや異常性が多く見れている。
・彼は若くして死亡しているが、その死後も世界の変化は終わっていない。
・一度水に投じられた毒は、もう分離することはないのだろう。
・彼を殺害した人物が、自分の父にあたる男だと知った。
・言峰綺礼。現在も消息は不明。
***
次回よりstay night編に移行します。