「禅城葵のことは忘れろ。そうすればお前は強くなる」   作:らくべえ09

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三章  左門老人 〝山男〟について語り、雁夜 左京なる人物について聞くこと

 

 

 

 

 

「タルカネ、ゴンゾウ?」

 

<例の研究施設は、表向きそうなってたみてーだな。やっこさんの別荘の一つ、ってことで。本丸の研究所は地下に造られてた>

 

 映像の向こうで秋葉が廃墟となった場所をバックに言った。

 

「その男が、人工タイタンの製造に関わっていたわけか。資料では魔術師ではなさそうだが、どういう関係からだ?」

 

 ケイネスはタブレットの資料に素早く目を通して、質問する。

 

<元々そいつは悪どい手で金を稼いでたが、タイタンの出現以降からタイタンの密売でさらに設けてたらしい。最近じゃ、ほとんどそっちが本業になってたようだな>

 

「よくやるものだ……」

 

<実際、儲かるからな。その細胞だけでも研究素材としちゃ価値がある。軍事から医療、美容、食肉、はてはペットまでな。実際、草食性や小型のタイタンをペットにしてる物好きのセレブもいるようだからなあ>

 

「耳の痛い話だな……」

 

 秋葉の言葉にケイネスはため息。

 実際、魔術界でもタイタンの密売に関わっている者は少ないという。

 

<今暴れてるサンダとガイラ以外にも、趣味の悪ぃ人工タイタンがいくつも造られてた。中には妖怪みてえなのもいたぜ>

 

「……まったく」

 

<残ってた記録を調べたところ、サンダは幼体の時に他のタイタンと戦わされたところ、脱走したようだな。ガイラのほうは、海路で他国に輸送されていたようだが、その船はタイタンに襲われて沈没した……>

 

「……聞いたところ、サンダのほうもまともな扱いではなかったようだが、にしてはあの性質は」

 

 詳しい報告を見れば見るほど、サンダは温和、少なくとも人間に対しては積極的に攻撃をしていない。

 むしろ、それを嫌がっているようにさえ思われた。

 

<ああ、そいつぁ……>

 

 

 

 

 

 

 

 ** 〇〇山在住 田口左門老人よりの聞き取り **

 

 ああ、あの山男のことかぃ?

 山男ってのは、俺が勝手に呼んでただけだがよ。

 あいつを見たのは、さて、いつのことだったか……。

 まあ、あのゴジラってのがアメリカに出たろ? 

 あの後ぐらいだってのはおぼえてるよ。

 うん。

 あれからさ、この辺の山でもタイタンってのかい。

 怪獣だか恐竜みてえなのがウロウロするようになったのさ。

 イズチってやつだね、よく見るのは。

 あいつらぁずる賢いうえに、牛や鶏だけじゃなくって人間だって平気で襲うんだ。

 なにせ、熊だの鹿だのよりゃあ楽だもんな。

 そいでも山にいりゃ他に獲物がいねえからね、鹿もだいぶやられてるよ。

 とはいえ、鹿もさ。

 最近冬を越して数増やして、獣害っていうのか。

 そういうのになってたからなあ。

 だからさ、俺らも鉄砲担いで犬連れて、大勢でとにかく撃ってくしかねえよ。

 人襲うんだもん、グズグズ言ってられねえよ。

 そうそう。

 山男と会った時のことだったなあ。

 初めて会った時よ、背丈は俺と同じくらいだったけど、まだ子供だなあって思ったよ。

 いや、そりゃあびっくりした。

 山ん中で、毛むくじゃらの人間みてえなのに会ったんだもの。

 でもよ。

 落ち着いてみれば、そいつはこっちを襲おうってんじゃないのはわかった。

 そりゃ、わかるよ。

 こういう時下手に刺激しちゃダメだ。

 俺がゆっくりと下がると、そいつもだんだん安心してたみてえでさ。

 そん時はちょうど、あのイズチってやつを仕留めたとこえろだった。

 まあ、持ってくこともできねえから、そいつを置いてその場は退散した。

 後でもう一度いってみるとさ、イズチはなくなってた。

 引きずった跡があったね。

 あいつが持ってんたんだろうなあ。

 こいつがねえ、きっかけだったよ。

 何度もあいつと出くわすようになった。

 つかず離れずって感じでさ。

 こっちの話すこともわかるようになってたよなあ。

 いや、勘違いなんかじゃないんだ。

 そいである時さ、イズチの親玉……でっかいやつだよ。

 オサイズチ……。

 ああ、そういうのかい?

 そいつに襲われたことがあった。

 あいつぁ、ちっこいのを連れてやがるから厄介なんだ。

 その上でかいし、頑丈だろう?

 こちとらの使ってる鉄砲もあんまり効かねえ。

 こりゃあ、お陀仏かなと思った。

 その時だよ。

 あいつがな、横から飛び出してきて、助けてくれたのさ。

 この時からだなあ、なんとなく仲良くなったのは。

 そのうちさ、俺も握り飯やら肉のほしたのやらをやるようになった。

 時々だよ。

 するとな、やった日の翌朝は俺の小屋の前に、獲物が置かれていくようになった。

 熊や鹿だったりは、あんまりなかったな。

 やっぱりイズチとかタイタンのことが多かった。

 数も増えてたしなあ。

 礼のつもりだったんだろうねえ。

 鹿なんかはすぐに血抜きもしてないから、質はよくないんだが……。 

 タイタンのほうはさ、お役所でけっこう良い値段で引き取ってくれるから。

 俺も助かってたよ。

 しかしねえ。

 あいつは、見るたびにでっかくなっていって。

 しまいにゃあ家や木よりでかくなっちまった。

 それからすぐさ。

 居場所がないと思ったのかなあ、どこかにいっちまったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 *特生自衛隊の一部会話抜粋――

 

「……で、結局メーサーによる攻撃は?」

 

「効果はあります、ありますが、耐久力が凄まじい。その上、受けるはしから目標は再生しているようです」

 

「それで、そのまま逃がしたというのか?」

 

「はっ……。また、九州に出現したバラゴンも、傷を受けながら土中へ逃走したようです。現在、近くの放射性物質関連の施設は警戒が……」

 

「……」

 

「プロトタイプの特殊車両一台で、よく奮戦したとも……」

 

「まあ、敵さんの一部が得られたってのは大きいか」

 

「現在全力で分析中であります」

 

「そっちはいい。で、サンダ・ガイラのほうはどうなっている」

 

「現在、**山中へと逃げ込んでいるようです。ろくに道路もないような場所ですから、衛星とヘリで追跡中です」

 

「人がいないとはいえ、うかつな攻撃は山火事の危険性も……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、で、ニホンへ行けってかい?」

 

「……」

 

 カルデア所有の特殊輸送機。

 その中で、マスターとサーヴァントは空路を旅していた。

 

<ええ。サンダ・ガイラの2体をできる限り早急に駆除。それが上の決定ね>

 

「もう一体はどうするんです? バラゴンっていう……」

 

 画面越しのソラウに、立香が尋ねる。

 

<負傷しているから、しばらく行動を控えるはず……ということになっているわ>

 

「なっている?」

 

<色々面倒なのよ。上は、サンダとガイラをできるだけ早く処理したい、ということね?>

 

「裏に何かあるってか?」

 

<当然、あるわ>

 

「……おいおい、ぶっちゃけたな?」

 

「その、裏っていうのは?」

 

 呆れるランサーを抑えるように、立香は質問する。

 

<……あの2体は、人間が造ったものだからよ>

 

「え!?」

 

<アインツベルンから流出した技術の一部を応用して、聖遺物として保管していたフランケンシュタイン……その怪物の心臓の一部と、タイタンの細胞を融合させて作られたのが、そいつらよ>

 

「なんてことを……」

 

 立香は、青ざめた顔で身を震わせた。

 

<まったくねえ。おかげでこっちは余計な仕事は増えたわ>

 

 画面の中で、ソラウはうんざりした顔になる。

 

<ついでに言うと、時期は早くなるけどヨーロッパでも同じ実験を行っていたわ。その時の写真が、これ>

 

 送られてきた画像。

 それには、どこか檻のようなものに閉じ込められた、巨大な女性が映っている。

 白い肌。オッドアイ。ピンクに近い赤い髪。

 一緒に映っている人間が、まるで人形のようなサイズだった。

 

「おいおい。ばかでかいのを除いたら、けっこうな美女じゃねえか? これがあの毛むくじゃらの青緑や茶色のやつらと同じだってか?」

 

<同じ素材でも、製造の過程や方法が違っていた。彼女は、むしろホムンクルスに近いけれど、サンダ・ガイラは魔術ではなく科学技術のみで製造されたの。カルデアも、魔術師ばかりではないし。それでやっていける組織でもない>

 

 ランサーの疑問に、ソラウは説明する。

 

「それで、彼女は今は?」

 

 立香は暗い表情のまま、尋ねる。

 

<タイタンと戦って、火山に落ちて消息不明。多分、そのまま……>

 

「怪獣……タイタンと戦ったんですか? 自分から?」

 

<ええ。理由はよくわかっていないようだけど>

 

 次の画像。

 それには、大きな耳と角を持つタイタンと格闘しているフランケンシュタインが映ったもの。

 

「これ、バラゴン?」

 

 立香の言葉通り、それはバラゴンだった。

 ただ日本のものに比べると白目が多く、体色も茶色に近い。

 

<日本に出たものよりも、小型だけどね。それでも20メートルを超えていたそうよ。人畜に大きな被害を出しているわ。近くに放射性物質がなかったので、その代わりということね。自分より小型のタイタンも捕食していたそうだけど>

 

「そりゃおっかねえ」

 

 ランサーは挑むような眼で、画像のバラゴンを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イリヤと士郎。

 そして、セイバーとアーチャー。

 4人はカルデアのヘリでサンダ・ガイラのいる山中へと近づいていた。

 

「サンダとガイラは人間が造ったものよ!」

 

 そんなことをイリヤが叫んですぐに、テレビに映したネット画面が変化した。

 

<イリヤスフィールフィール、シロー。サーヴァント召喚に成功したようね?>

 

 赤い髪をした女性が、厳しい顔で画面の向こうから言った。

 

「フランケンシュタインの聖遺物をあんなことに使ったなんて、聞いてないわよ!」

 

 イリヤはソラウに向けて噛みつくように叫んだ。

 

<カルデア内部でも、ごく少数の人間しか知らなかったことよ。それに、この2体は魔術ではなく科学の領域。魔術師系の私では情報も流れてやりこなかった>

 

「そんな言い訳……!」

 

<そう、言い訳よ。でも、今は早急にその2体をどうにかすること。文句は後でいくらでも聞いてあげるから>

 

「子供扱いして……!」

 

「イリヤスフィール……」

 

 プリプリするイリヤに、横のセイバーが声をかける。

 

「話を聞く限り、あの異形の巨人たちは、怪物、というよりもホムンクルスに近いのですね?」

 

「正確には、半々という感じかしら……? 19世紀に造られたホムンクルスの心臓、その細胞とタイタンの細胞を組み合わせて作られた、バイオテクノロジーの産物ね。異常な生命力と再生能力は、両方の特性が組み合わさって増幅された結果ね。メーサーを何度も受けているのに、ピンピンしてるみたいだから」

 

「そんなものを、魔術を使わずに作り出すとは……」

 

「……半分は、私の親戚みたいなものかもしれない。少なくとも、サンダは知性と理性が確認できる。でも、ガイラは――」

 

「……本能で動く、獣というわけですか」

 

「育った環境のせいでしょうね。多分成長段階で人間と話したこともないはずよ」

 

<逆に、サンダは人間と接触していたようね>

 

「は?」

 

<サンダと接触したハンターの老人から証言を得ているわ。どうやら、それなりの知性と人間に対する親和性もあるようね。たまたま出会った相手がお互い良かったのかもしれないけれど>

 

「なら……サンダのほうはひょっとして――」

 

<説得ということは考えないことね、イリヤスフィール>

 

「……」

 

<どのみち、双子とも言えるガイラがああいった存在である以上、共通の遺伝子を持つサンダも危険視されているわ。それに、被害が大きすぎた……>

 

「これだけ、人間を喰い殺しているんじゃあ……」

 

 士郎は暗い顔でつぶやいた。

 

「結局、原典の怪物と同じ運命だというわけか」

 

 アーチャーは目を閉じて、感情のない声で言う。

 

「……セイバー」

 

 イリヤは少しうつむいた後、意を決した顔でサーヴァントへと語りかける。

 

「わかっています。必ず仕留めましょう」

 

 騎士の瞳が、それに応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっちのほうは、サンダとガイラで大わらわだけどさ。俺たちは別行動かい。ありがたいけど」

 

 助手席で缶コーヒーを飲みながら、雁夜は言った。

 

 メカニコングが特生自衛隊に運ばれていくのを見送った後――

 

 雁夜とウェイバーはまたも車を走らせていた。

 ただし、今運転しているのはウェイバーである。

 

「あんたも、消耗してるだろ?」

 

「まあね?」

 

 ハンドルを握るウェイバーに言われ、雁夜は笑う。

 

 事実。

 アサシンをバラゴンと叩かせた際にかなりの気を使った。

 そもそも。

 アサシンを召喚して、間もないうちにのことであったのだ。

 

 前回と異なり、ある意味? 正当なサーヴァントであるアサシン。

 しかも、セイバー適正さえある英雄。

 

 扱う側が魔術師ではない身としては、なかなかしんどいものがあった。

 

「で、今度は何を探るんですかい?」

 

「カルデアとは別に、聖杯に関わっている魔術組織がある」

 

「うん?」

 

「ヨーロッパに拠点を置く、その組織はアインツベルンの技術をベースに、地球……地脈からわき出す魔力を利用して、聖杯を造った」

 

「つくった? もう完成してるってか?」

 

「冬木のそれとは、用途がいくらか異なるが……。赤と黒。造られた2つのうち、黒の聖杯が奪われたそうだ……」

 

「とられた?」

 

「確定じゃないけど、ほぼ犯人だと思われる人物の目星はついてるけどな……」

 

「――すぐに捕まえないってことは、厄介な相手ってことか……」

 

 雁夜は空になった缶をもてあそびながら、息を吐く。

 

「左京。色んな方面に首を突っ込んでる男だ」

 

「……。俺の知ってるのと同じ人物なら、やべー男だ。頭のおかしいギャンブル狂いってことでも有名だが……」

 

 雁夜は真顔になり、目を閉じた。

 

 一度だけ。

 回線越しに顔を見たことがある。

 長髪のオールバック。左目の傷。

 俳優のような端正な顔で、年齢のよくわからない男だった。

 

 危険な闇ギャンブル。

 特に、ルールなしの格闘技大会の主催していたこともあるという。

 

 格闘技。

 

 そう表現すれば、かっこうがつくようだが。

 本質は、相手を殺すか、再起不能にするまでが決着という残酷で陰惨なものだった。

 

「殺人ショーなどマニアしか興味を示さない」

 

 ある知人のヤクザはそう言っていた。

 

 だが、常人ならドン引きするような殺人ショーを観たがる変人と言うものもいる。

 確実にいるのだ。

 そして、そういう人間はえてして暇を持て余した金持ちであったりする。

 

 このような人間を観客とした、闘犬ならぬ〝闘人〟とでも言うべきものを、左京はギャンブルの場として開いていた。

 

「……さっき、サンダとガイラを作った施設のことも話したろ?」

 

「垂金権造、だろ? そっちの筋でも悪名で知られたオッサンだよ。妖怪より妖怪みてえなツラしてるって評判だったぜ。金あるんだから、そっちにも気をまわしゃあいいのにさ」

 

「タイタン密売で儲けてた、その男のバックにいたのが……左京だ」

 

「……おいおい」

 

「ただ、黒の聖杯には願いをかなえるような願望器としての機能はない。しかし、サーヴァントの召喚と維持、使役は可能だ――」

 

「そんなものなら、何しに英霊様はやってくるんだ? 願いはかなわんのだろ?」

 

「だから、現界すること自体が目的か、さまなくば……理性を持たないバーサーカーを呼ぶんだろう。元々、赤と黒の聖杯は、タイタンに対抗する英霊を呼ぶためのもの……そういう意図だったんだからな」

 

「英雄に、怪物退治をしてもらおうってか。まあ、らしいといえばらしいけどなあ……」

 

「……あの左京が、まともな英霊を呼ぶとは考えられない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃――

 

 

 

 太平洋。ビキニ環礁近くの海上で。

 

 一人の男が、なにかを海の中へと投じていた。

 

 男の名は、左京といった。

 

 

 

 

 

 

 

 






展開どうしようか困ってましたが、左京さんを出すことで多少方向性ができました。
VSシリーズを観直しながら、色々考えてみたりしてます。


来年もよろしくお願いします。


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