擬人化モンスターハンター   作:鉄の掟

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まだ完結まで遠い作品が沢山あるのに、また書いてしまった。
だって仕方ないよ、書きたいんだもの みつを。


御伽話の中の伝説

 

 

 

 

 

 

 夢を見ていた気がする。

 

 いや、それが本当に夢だったのかについてはよく分からない。

 現実の様な感じもあったし夢の様に朧げで掴みどころの無い感じもした、まぁ何はともあれここでは夢という事にしておこう。

 そう、俺は夢を見ていた。

 

 固く何かに削られたような地面、そして冷たい空気。

 それらが心地よく眠る俺の体を少しずつ現実に戻す様に感じていた、しかしどうにも俺の頭の方にはそれが無かった。

 まるで柔らかい肉の塊に頭を預けてる様な感触、そして心地よい人肌の様な温もり、それが何とも心地よく俺が夢から覚める事を優しく邪魔していた。

 

 ふと、その柔らかい肉の塊が動く。

 そして寝ている俺の顔の前に何かが近寄って来る感覚があった。

 甘い匂いが俺の鼻をくすぐる、そして何やら人の吐息の様なものを感じる、果たしてこれは一体何だ。

 そもそも俺は今何処にいる? 確か俺はあるモンスターの狩猟に来ていたはずだ。

 ギルドから極秘で依頼された禁忌の古龍、ダラ・アマデュラ。

 

 千剣山に住むといわれごく少数の間で語り継がれる伝説。

 古い御伽噺に出て来るそれは山をも凌ぐ巨体を持ちまさに災害そのもの、身動き一つで何もかもを破壊するような怪物だ。

 そんな怪物の存在を確認したハンターズギルドは焦った、何故か? 簡単だ。

 ほんの少し体を動かすだけで山を崩す様な怪物を生かしておけば今後何が起こるのか分かったもんじゃ無い、幸い見つけた時は眠っていたらしいがそれは言い換えれば明日にでも今日にでも起きる可能性があると言う事だ。

 

 そうしてそんな怪物の討伐依頼が一握りのハンター達に知らされた。

 一人は勿論俺、そしてあともう一人。

 ……英雄の名を欲しいままにする伝説のハンター、俺はこの目で見た事はないが、確かその小さな身の丈にも関わらずヘビィボウガンを自分の手の様に自在に操り、モンスターを蹂躙すると聞いたことがある。

 名前は確か……【(すみれ)】だと噂で聞いた。

 

 しかしそんな伝説のハンターはその依頼を断った。

 何故かは分からないが……噂ではその菫というハンターは子供の様に人を馬鹿にし、貶す事が大好きな女児だと言う。

 まぁあれだ、俗にいうメスガキとでも思ってくれればいい。

 そして二つの選択肢の内、一つが無くなった以上消去法で討伐依頼は俺が受けることになったという訳だ。

 

 そうして俺はしぶしぶその依頼を受け、千剣山に向かった。

 険しい岩肌を登り人が登れるとは到底思えない岩壁をどうにか乗り越え辿り着いた山の頂に、奴はいた。

【蛇王龍、ダラ・アマデュラ】

 御伽話にしか登場しない伝説の中の伝説。

 情報通り奴は身動き一つせずに目の前に聳える岩の塔に巻き付いていた、寝ている様には見えるが俺は念には念を込め、気づかれない様に恐る恐るダラ・アマデュラの下にまで歩みを進めた。

 そして背中に担いだ大剣を右手で固く握り締めた俺は、目の前の見上げる程に巨大なダラ・アマデュラから目を離さずに一歩ずつ近づいて行った。

 

 巨大な体、それはたったそれだけの理由でどんな兵器や武器よりも恐ろしい力を発揮する。

 ましてや相手は視界に収まらないほどの規格外のデカさ、以前俺がまだ上位ハンターだった頃、あのラオ・シャンロンを遠くから見た事があるがそんなの比べ物にならない。

 正に御伽話、だからこそ俺は最大限目の前の怪物に集中していた、どんな小さな動きも見逃さないように……しかしそれが最大のミスだった。

 

「……ぁ、まず」

 

 あともう少しで奴の下に辿り着くという時、何か小さな石が目の前に転がっていった。

 そしてそれはよく見ると俺の下に無数にある石の一つで、奴に注意を向けていた俺は動く時に誤って足で小石を蹴り上げてしまったのだと気付いた。

 ペイントボールよりも少し小さい程の小石、普通のモンスターなら気にも留めないような小さな音。

 しかし、目の前の伝説はそんな小さな音で俺の身長より巨大な目を開いた。

 

「くそっ!」

 

 ギロリと俺を睨む目と目が合った瞬間、岩の塔に巻き付いていた巨体が動き出した、それはまるで山が動いた様に見え、俺の視界いっぱいに奴の頭が近付いた。

 そして大型モンスターを丸呑みに出来そうな程巨大な口から、紫色の口内と無数に生えた牙が覗き、刹那俺が横へ全力で回避したのと同時に、俺がさっきまで居た場所の地面が無くなっていた。

 代わりに見えたのは奴の鱗、一つ一つが俺の身長と同じぐらいのサイズだ、まるで討伐出来る気がしない。

 

 奴は外したのを目で確認すると、巨大な頭を持ち上げ口を目一杯に開くと、空へ向かって咆哮した。

 耳が引き裂かれるような爆音が辺りに響き、それと同時に咆哮の衝撃で崩れた天井の岩が辺りに無数に落ちて来る。

 このままではまずい、奴がもしこの山を崩す様な攻撃をすれば俺は間違いなく死ぬ、そして眠りを妨げれられたモンスターがどう言った行動をするのかなんて、簡単に想像がつく。

 

「……早めにケリを付けなきゃいけないみたいだな」

 

 そう言いながら俺は背中に担いだ大剣を前に構える。

 俺の大剣、ベースは何の変哲もないバスターソードだが、俺はこのバスターソードをめちゃめちゃに改造しまくっている。

 

 まず刃の部分はディノバルドの尻尾の部分を使っていてその切れ味は折り紙つきだ、鉄でもモンスターの鱗でも豆腐みたいに切れる。

 そして大剣の胴体の部分は強度のあるカブレライト鉱石とドラグライト鉱石を混ぜ込み、例えラージャンのブレスでも耐えられる硬さに仕上げた。

 そして持ち手の部分には滑らぬ様にセルレギオスの逆さの鱗を使っている、そしてそんな俺の大剣の一番の特徴は……この持ち手の部分にあるスイッチを押す事によって作動する【爆発機構】だ。

 

 大剣の胴体部位に取り付けた機構によって、持ち手のスイッチを押すと大剣の刃の部分に、ブラキディオスの粘菌が付着し、もう一つのスイッチを作動させると大剣の反対側にある機関が粘菌に火をつけ、大爆発を起こすというものだ。

 そうして加工屋のおっちゃんとああだこうだ言いながら年月を掛け遂に先日完成した俺の武器、名付けて【竜熱機関式】。

 

 しかし爆発を起こせると言っても回数は限られている。

 機構の中に溜まった粘菌の量はモンスターにダメージを与えるなら多く見積もっても3回分、そして大爆発を起こすなら機関内の粘菌を全て使わなくちゃいけない。

 そしてそんな大剣の相手は山ほどの大きさの怪物。

 ちまちま爆発を起こしても到底ダメージを与えられるとは思えない、よって俺は目の前の伝説をたった一撃の大爆発で討伐しなくちゃならない。

 全くもって無茶苦茶な話だ。

 

「畜生……畜生畜生畜生っ! やっぱり俺も断っておけば良かったぜっ!!」

 

 長い咆哮を終えた瞬間、ダラ・アマデュラはその巨体に似合わない素早さで俺の方に突っ込んできた。

 しかしその速さはナルガクルガを追い回した俺の速さには到底及ばない、奴の攻撃を避けた俺は崩れた地面に潜り込んだダラ・アマデュラの鱗を掴み、そのまま頭の上まで駆け上がる。

 

 奴は巨大な分、周りの視野はとんでもなく広いが自分の後ろや死角は疎かだ、付け入る隙があるのならそこ。

 死角から粘菌全て使い、大剣を奴の喉に深く突き刺し爆発させる、チャンスは一度きり失敗すれば……俺はここで終わりだ。

 

「うおおおぉぉおお!? 高ぇぇええ!?」

 

 奴の頭に振り落とされない様に剥ぎ取り用のナイフを鱗に突き刺した俺は、奴が地面から頭を上げるのと一緒に、凄まじい高さにまで連れて来られる。

 さっきまでいた地面がまるで小さな皿の様に見える、ここから落ちれば間違いなく俺は死ぬ、失敗は許されない。

 奴は目をぎょろぎょろと動かして俺を探しているようだったが、やはり奴の大きさで俺のように小さな存在を探し出すのは難しい様だ。

 

 今俺がいる奴の目の少し上の方から頭の上まで登れれば、取り敢えず奴の頭に生える巨大な剣のような鱗に捕まりバランスは保てる、そこから奴の鱗の薄い喉元までいければ……。

 

「!? ふ、振り落とされるっ!!」

 

 ダラ・アマデュラは目を使い俺を探していたが、埒が開かないと考えたのか巨体を動かして、俺がさっきまでいた地面を破壊し始めた。

 力を絞り振り落とされない様に必死にしがみつく俺だったが、このままではこの空間自体が奴に壊されかねない。

 そうなれば最悪だ、この千剣山が崩れこいつが山の外に出て来てしまう、それだけは阻止しなくてはいけない。

 この山の近くにはシナト村もある、そこで俺の事を待っている仲間も居る、だからこそ俺が今ここで決めなくちゃならない。

 

 腕や足、体全体の力を振り絞り唸る巨体にしがみ付く。

 そうしてる内に奴は地面を破壊し終わったのか、また岩の塔まで戻るとてっぺんまで頭を動かし、高所から辺りを見回した。

 もうさっきまで立っていた地面はない、つまり今の奴は俺が何処に居るのか検討が付いてないはずだ。

 そうなれば今すぐにでもこの山を手当たり次第に壊しかねない。

 

 もう……迷ってる暇はない。

 鱗に突き刺していたナイフを引き抜き、奴の喉元まで素早く移動していく、幸いなことに奴は俺が移動しても気付く気配はない。

 恐らくその巨体故に鱗のセンサーは敏感ではないんだろう、有り難い話だ。

 

「はぁ、はぁ……よしっ」

 

 奴の喉元、姿勢は宙吊りのベストとはとても言えない体勢。

 でもやるしかない、足を鱗の生え際の部分に上手く引っ掛け手に持っている大剣を両手に構え直す。

 この一撃に全てを賭ける、俺の命を賭けるんだから……お前の命も貰わせて貰うぜっ! 

 持ち手の機関をフル稼働させ、粘菌が塗りたくられた大剣を喉元に当てがった。

 

 

「食らいやがれっっ!!!」

 

 

 

 奴の最も皮膚が薄い場所に大剣を差し込み、もう一つの機関で炎を放った後、爆発に巻き込まれない様にナイフを使い、すぐさま奴の喉元から離れる。

 

 直後、背後から途轍もない爆音と熱が俺に直撃する。

 そして血と硝煙の匂いと共に、黒煙に包まれた奴の頭がぐらりと揺らぎ、真っ逆さまに下へと落下していく。

 やったっ! やったぞ、どうだ見たかっ!? 俺が御伽話にしか登場しない伝説の龍を討ち取ったぞぉぉ!! 

 

「はっはっはっはっ!! ……ん?」

 

 この時、俺は緊張と達成感から忘れていた事がある。

 さっきまで立っていた地面は崩落、そしてしがみ付いていた奴の体は下に見える明かりの届かない暗闇に落ちていっている。

 と、なれば今も尚、奴の体に張り付いている俺は何処へ行く? 

 

 奴の頭、腕、腹、と徐々に落下していく光景がまるでこの世の終わりの様に俺の目に映し出される。

 ……あれ、俺もしかして……ジ・エンド? 

 

「ふ……ふふっ! ふざけんなあああぁぁぁぁ……!!??」

 

 

 そうして俺は抵抗する暇もなく、奴の巨体と一緒に奈落へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちて行ったのだが……多分生きてる、うん。

 ていうか、そろそろ俺の顔の前の何かが鬱陶しい。

 二つに割れたミミズのような温かく柔らかい何かが、俺の顔中の行ったり来たりしている。

 仕方ない……まださっきの討伐の疲れが抜けてないが、そろそろ起きるとするか。

 

 

「……あ、起きた」

 

「……えっと、誰?」

 

 目を開けて最初に見えた光景は、白い髪と蛇の様な目を持つ15歳ぐらいの美少女が、俺を膝枕している姿だった。

 

 

 

 




因みに何故ダラ・アマデュラが最初なのかは筆者の推しだからです。
あの顔に似合わない丸くて可愛い目とか最高すぎる、マジ。
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