ブルーアーカイブRTA 実績「三人力」獲得 Any% 作:ガバるな——!!
人賑わう百鬼夜行連合学院、その中央にて。
近・現代的工法からなる他の区画とは異なり、瓦葺きの木造建築が並ぶこのエリアは、あたかもこの土地だけが歴史に置き去りにされたかのような印象を与える。
景観のために高層建築を近辺から排したこの地区は、行政の中心地であると同時に、キヴォトス中から人の集まる百鬼夜行
入念に手入れのなされた――しかしそれとは感じさせぬ――魅せるための"野生"と"洗練"。
エキゾチックでありながらも旧き良きレトロな雰囲気を感じさせる"異国情緒"と"安堵感"。
一見、相反する複数の要素が組み合わさることで、初めて訪れた者にさえも、まるで自分の故郷にいるかのような、不思議な安らぎを抱かせるのだ。
(百鬼夜行……やはりいい所だ。いつ来ても心が洗われる)
春夏秋冬、朝昼晩。いつどの時期に足を運んでも、この街は色を変え、決して飽くことのない味わい深さを見せてくれるのだから素晴らしい。こんな場所が他にあるだろうか?
何が変わり、何が変わらないのか、この二重の期待感が訪れる人の心を捉えるのだと思う。実際、私にとってもそうだ。
観光客は史跡を訪ねたり、縁結びのスポットを見つけたり、運が良ければチセ様の思いがけない突発的なイベントに遭遇することだってある。
一年中いつでも大小何らかのイベントが催され、客足は決して絶えることがない。この土地の観光的価値は、もはやキヴォトス随一と言っても過言ではないだろう。異論は認める。
いずれにせよ、ここは老若男女を問わず誰もが楽しめる場所であることは確かなのだ。
たとえ仕事終わりの商社マン――そう、まさにこの私のように――であっても、例に漏れないのだから。
ああ、期待で胸がいっぱいだ……おかげで
人工骨格とそれを繰るカーボンファイバーを、もはや抑えきれないステップで軋ませながら、目的地に向かってスピードを上げる。
サラリーマンに限らず、働き手というものは一体に仕事が終われば癒しを求めるものだ。私のようにわざわざ遠出をしてまで百鬼夜行に足を運ぶ者も珍しくはないだろう。
しかし、楽しみの形は人それぞれだ。例えば、展望台から広大な景色を眺め、その壮観さに息を呑むかもしれない。あるいは、古跡にて歴史の流れに心を打たれるのかもしれない。色んな商店街を訪れて掘り出し物探しと洒落込むのも乙だろう。……では私は?
カランコロン
「おかえりなさいませ! ご主人様!」
シズコたーん!
くぅーっ! シズコたん、今日もカワユス……! 異論は認めん。
「本日のおすすめは、いちご大福ですよ!」
いいねえ、いちご大福かあ……。あの甘さの中に、ほんの少し塩気が聞いてるのがまた絶妙なんだよなあ……! やはり塩要らない派は滅ぶべきだよ。文句あっか。
『すみませーん、こっち注文お願いできますかー』
『あ、オイラもお願いしまーす!』
ふむ、常連仲間の皆さんもいらっしゃるようだ……あちらにいるのは餡蜜好きの柴次郎さん、向こうにいるのは塩少なめ派――これはまだ許せる――のトラ吉さん、それに、可愛いものに目がない生徒さんたちも。今日は学外からのお友達も一緒なのだろうか? 百夜堂のファンが増えるのは嬉しい限りだ。
おや、あそこにいるのは……?
「委員長! ワタシには山吹色のお菓子?というのをお願いしマス!」
「はーい、今お待ちを……って、フィーナ!? あんた見回りは!?」
「ハイ、今日は早めに終わったので、百夜堂の様子を見に来マシタ!」
「だとしてもなんで注文してるのよ! 忙しいのに仕事増やすような……! というか
し、シズコたんのツッコミが炸裂している……! ふとした瞬間に時折見せる素の部分だけでも破壊力が高いというのに! なんてレアイベントっ!!!
「エ? でも『任侠ニャンニャン伝』でそういうセリフが……」
「それ、任侠物というよりは時代劇の要素な気がするけど……って、いつもの映画の話はいいから! 今日はお客さん多いし、ちょうどいいから、フィーナも手伝って!」
「ワオ、委員長、今日は特にキレキレデスね! 分かりマシタ! では不肖フィーナ、精一杯お手伝いさせていただきヤス!」
ありがとう……フィーナ=サン。あなたの行いは我々の胸に未来永劫刻まれることでしょう。心なしか常連の皆さんの顔も晴れ晴れとしています。
『お待たせしました! こちら、ご注文の豆大福セットです!』
『あら、わたくしが頼んだのは豆ようかんだった気が……?』
『ああっ! シズコったらとんだうっかりを……!』
『……き、キタッ! キタわよ!! ほらっ!』
『ごめんなさぁい……! すぐに新しいものをお持ちしますからっ』
オワーッ! シズコちゃんのドジっ子イベント!
キヴォトスの全住民は一度はシズコたんに注文を間違えられるべきだね。いや一度と言わず百度でもどうぞ。
『キャーッ、シズコちゃん、ほんっとカワイイーッ! ……ね、来てよかったでしょ?』
『――ええ、控えめに言って最高ですわね』
堕ちたな……。
うーむ、初めて来店した子すら虜にするとは、なんという破壊力。注文を間違えちゃうドジっ子シズコたんは、一種の破壊兵器のようなものだからな……。
「お待たせしております、ご注文はお決まりでしょうか? にゃんにゃん!」
にゃんにゃん!
脳が……仕事で酷使された演算野が回復していく……!
ああ、その笑顔を向けられただけで、今日まで頑張ってよかったって思える……。このために生きている、間違いなく。現代人のオアシスだよ。なぜ連邦生徒会はこの子にキヴォトス栄誉賞を与えないんだ?
「ええ、それでは今日のおすすめの、いちご大福をいただけますか?」
「はい、かしこまりましたっ!」
ううっ、世界の平和だ。
それじゃあ、スイーツが届くまで待つとしますか。
待ち時間さえも退屈せずに、店内の喧騒を楽しめるのが百夜堂の特徴の一つ。今日はフィーナちゃんもいることだし、いつもと違った感じで楽しめそ、う……? あれ? ん? んんっ!?
「うあああ!? あ、あの、すみませーん!」
「は、はい、いかがなさいましたか、ご主人様?」
「いえ、その、さっきした注文、いちご大福のキャンセルってできたりするでしょうか……?!」
「ええ、さっき注文を頂いたばかりですし大丈夫ですよ。ただ、オーダー順にお届けしてますので、注文を変えるとなるともう少しお時間いただくことになってしまいますが……」
一息ついて余裕が出たからか、とんでもないことに気づいてしまった……っ!
「じ、実は財布を失くしてしまったようでして」
「ええっ!? そ、それは何とも災難ですね……」
「切符は買えていたので、少なくとも電車に乗るまでは持っていたはずなのですが……」
つまり、今日のところはお帰りという訳で……。
いや、というか、財布がないんじゃ、バスもタクシーも駄目だし、私はどうやって帰ればいいんだ……? 徒歩で?
「それに……先週も何件か同じようなことがありましたので、もしかしたら
「言われてみれば、私の同僚も
「もしそうだとしたら物騒ですね……私たちも用心しないと」
「ええ、ぜひそうしてください」
もし窃盗の横行が事実なら、百夜堂に被害が出ないことを祈るばかりだ……。
「うう、では、そういうことなので、また今度来ますね」
はあ……スリのバカヤロォーーッ! トンチキーッ!
今日完全に甘い物の舌だったのになあ……。
「お元気出してください……あれ、そういえばご主人様って、かなり遠くからいらっしゃってると聞いていますが……このままだと家までお帰りになれないんじゃないですか? もしよければ、足代をお渡しすることもできますけど……」
「そ、そんな、注文もしてないのに悪いですよ!」
「いえいえ、一度お越しいただいたなら、その瞬間から百夜堂のお客様です! ご来店からお帰りまで、ご主人様にご満足いただけるおもてなしをさせていただきます! それがここ、百夜堂の流儀ですから!」
「そういうことなら……ありがたくご厚意に甘えさせていただきます」
ありがてぇ……ありがてぇ……!
やっぱシズコたんは天使だったか……前から怪しいと思ってたんだ。
「そのかわりぃ、といってはなんですが……今度いらっしゃったときは、うんと注文してくださいね? えへへっ」
「ええ、もちろんです! とびっきり奮発させてもらいますとも! ではっ!」
「はいっ、今日も百夜堂にお越しいただき、ありがとうございましたーっ」
尊い。
やはり世界平和に形があるなら、それはシズコたんだな、 間違いない。
……よし! 明日も仕事、頑張るかあ!
酔いの勢いで物を書いてはいけない(戒め)