赤城レッドサンズが秋名スピードスターズと交流戦を行った翌日。
秋名山では日が沈んでは鎮まりかえってる秋名の峠を一台の車がロータリーエンジンを蒸しては走っていた。
「高橋涼介だ!!ついに出てきたぞレッドサンズのナンバー1が」
「何しに来たんだろ⁉秋名に…」
「弟の仇討ちだろそれ以外は考えられないけどな…」
「冷静沈着な理論派でどんなテクニックも使いこなしどんな状況でも速くどんな相手でも負けない…。名実ともに赤城最速の男高橋涼介」
「昨日の今日でもう出てくるとは…」
「下りでハチロクにやられたことが余程腹に据えかねているってことか?」
ギャラリーが高橋涼介の登場に驚いていたその矢先、黒い車が先程のFCに負けない程のスピードを出しては先程のギャラリーの前を駆け抜けるの。
「アイツは…?」
「知らない 秋名では見たことない車だ…!!」
「黒のR32GT-R‼ゾっとするような存在感があるな…」
「誰だァ!?あいつぅ」
黒のR32GT-Rはストレートで突き進んでは前を走っているFC3Sに追いつこうとしていた。
「ストレートの速い車が追ってくる。少し様子を見てみるか」
スピードを少し下げては様子をみる涼介。後ろを走っている車を確認するや車種を判別する。
「(R32 GT-R‼)」
「白いFCか。次はコイツだ!」
「(どれ程のものか試してみるか。……ならやってやろうじゃないか。80%程度でかっ飛ばすぜ、ついて来れるもんなら、ついて来てみな!!)」
「そう来るかそう来なくっちゃな!!」
涼介はギアを上げてはスピードを増して前へと進んでいき、R32はバトルを挑まれたとわかっては目の前を走るFCを追い抜こうとスピードを上げては突き進んでいくのだった。
途中前を走っていた地元の走り屋の車を2台は軽々と追い越して行き、追いつけそうにないスピードを出しては暗闇の彼方へ消えゆく。
高嶺展望台前
「試しに走ってみたはいいがまだまだ調整が必要みたいだな…。ん?向こうでスキール音が響いてるみたいだが一体誰が走ってるんだ…?」
新型インプレッサを試乗するため秋名で流していた光は車を展望台の近くに止めては休憩し。展望台から見える群馬の夜景を眺めているとやどこからか車が走る音が響いてきたので音のした方を見てみる。
「あれは高橋涼介のFCだな。それにあのR32、ちょっとばかし気になるな…。丁度いいやあの二台の車を後ろから見させてもらうとするか」
FCとGT-Rが上り方面へと走っていく姿を目撃した光はその走りに興味を示したのか再びインプレッサを動かしては2台の車が向かっていった方向へと走らせる。
「(中々まともだぜ……。ちゃんとついてくるじゃないか)」
「(ついて行けるぜ……。あの高橋涼介に…!?いくらドライバーが上手くても、所詮は型遅れのFCじゃこの辺が限界ってわけか!?)」
「(速えぇ…。コーナーからの立ち上がりは勿論R32に至っては弱点ともいえるアンダーステアを荷重移動を上手く使っては打ち消している。あのR32のドライバー結構良い腕をしてるみたいだ…)」
二台が激走を続けていく中その走りを後ろから見ていた光は後ろから見ていっては分析し、2台の後に遅れないように走り続けてゆく。
「(インプレッサ!!あの車がここに来てるということはおそらく乗っているのはあいつか!!)」
「なんだあの車は⁉俺や高橋涼介の走りについて来れるなんざ只者じゃないみてぇだな!!」
二人は後ろからついてくる光のインプレッサに驚くもそれに負けじと秋名の峠を上っていくのだった。
秋名山 旧料金所跡
秋名山の頂上に辿り着いては向かい合うかのように車を端に停める二人。光も二人から離れたとこに車を停めては話に混ざる。
「俺は高橋涼介。レッドサンズのメンバーだ。そっちの名前は?」
「中里毅。ナイトキッズという妙義山のチームにいるんだ」
「妙義の中里……?。そうか。名前くらいは聞いてるよ。妙義の走り屋が、秋名の峠で何をしているんだ?」
「人のことは言えないだろ。自分だって赤城の走り屋だろうが。お互いに同じ目的で来てんじゃねーのかなー」
「それはどちらともあのハチロクを探しに来たんでしょ…?それ以外に思いつかないですしね…」
「お前は…さっき俺達の後をついて来た走り屋か…」
「まさかここで再び会うとはな」
「どうも昨日以来ですね涼介さん」
涼介と中里が話してる輪の間に入ってきたのは先程まで二人の走りを見物していた光だ。
「そういえばそこにいる中里さんには自己紹介がまだでしたね。僕は青葉光。只のスバル車好きな走り屋ですので以後よろしく」
「ほぅ…聞いたことねぇ名だな…」
「それもそうだ。何せこいつはどこのチームにも属してないからお前が知らないのも当然だ」
「高橋涼介。こいつのことを知ってるのか」
「知ってるも何も。昨日の交流戦でうちの啓介のFDとハチロクを後追いした旧型の白いインプレッサがいたのはお前も知ってるだろ?そのインプレッサに乗ってたのがこいつだったからな…」
「何だと⁉お前があの時のインプレッサのドライバーだと…⁉。まさかこんな若僧がインプに乗ってはあんなキレた走りをしていたとはな…」
「それはどうも…」
「話を戻そうか。中里お前はハチロクに噛み付こうとしてるみたいだがこれ程噛み合わない取り合わせも珍しいぜどんなステージで勝負しようってんだい?ハチロク相手にチューンした380馬力のR32で…」
「何…?何故俺の車のエンジンのパワーを知ってんだ?(俺の車って有名なんか?まいったなぁ)」
「流石にレッドサンズのリーダーなだけはありますね。さっきまでの走りを見ただけで車の馬力を当てるなんて…」
涼介が中里の車の馬力を割り当てたことに二人は驚愕するも涼介は話を続ける。
「やる前から結果はわかりきってるぜ上りじゃハチロクがGT-Rに歯が立たないだろうし…。逆に下りならどうあがいてもあのハチロクには勝てっこないぜ」
「なんだとォ?」
「それに関しては俺も同感ですね。いくらR32の性能が凄くても峠でのバトルとなると勝手が異なりますし」
「俺のR32が下りでハチロクに負けるってのか…」
涼介と光からハチロクに敵わないと言われ怒りを露わにする中里。
「そうだ…。気を悪くするなよ俺は思った通りのことを言っているだけだ」
「その理由は自分で考える事ですね中里さん。R32には致命的な欠陥があることはあなた自身気付いてはいるでしょうから」
「なんだよやけに弱気じゃねぇかよ。弟が負けたからってそこまで怖じ気つくこともないだろうが相手はたかがハチロクじゃねーか」
「一度あいつとやり合えばわかるだろう…。奴に勝てるのは俺だけさ」
「それと秋名のハチロクを過小評価する考えは改めておいたほうがいいですよ。昨日後ろから後追いした俺から見てもあのハチロクの走りはそこら辺の走り屋とは次元が違いましたからね」
涼介と光に思われたことを口にされた中里は更にヒートアップする。
「ふざけんなよ。そこまで言われちゃあ意地でも引き下がれねぇな…。あのハチロクに勝って今言ったことを取り消させてやる」
そうして怒りを爆発させてはこう言い放つ。
「いい気になっているのも今のうちだけだぜ。妙義にはナイトキッズの中里がいるってことを忘れるなよ。ロータリーや水平対向なんざR32の敵じゃねぇってことを思い知らせてやる!!」
そうして中里はR32に乗っては秋名を下っていき、暗闇の中へ走り去っていくのであった。
「さて、俺もそろそろ地元に戻るとするか…」
「待て青葉。少し聞きたいことがある」
「ん…なんですか?」
光はその場を後にしては地元である高崎に戻ろうとするや涼介に止められては留まる。
「お前がここに来てるということはうちの啓介とここでバトルをするために来たんだろ?そうでなきゃ態々秋名に来る理由が見つからないからな」
「概ねあなたの言った通りですよ。今度の土曜日に啓介さんとここでやり合うのでちょっとばかし練習しようと思ってここに来ました。と言っても俺は頻繁に秋名の峠を走り込んでいませんからまだまだ練習する必要はありますけど」
「そうか…。だが新型に乗り換えたからといってうちの啓介に勝てると思い込むのは気が早いと思うな…。ノーマルのままの280馬力しか出せないインプレッサでどう勝つつもりなんだ?」
「流石にこいつの性能に気付きましたか。まぁ馬力ではFDには敵いませんが何も峠を走るのに必要なのは馬力が全てではありませんからね。現に高橋啓介はFDの半分以下の馬力しか出ないハチロクに負けてることがそれを証明してますし」
「確かにな。あのハチロクの後を追っていたお前なら知ってる筈だ。啓介の乗るFDをハチロクがどう抜かして行ったかを…」
「勿論知ってますとも。この目で見た俺が言うのもあれですけどあんな芸当はここを頻繁に走り込んでいなきゃできませんよ。俺もあれを見た際度肝を抜かれましたからね」
「やはり気付いていたか。なら今度の土曜お前の走りを見させて貰うぞ」
「構いませんよ。今度のバトルは絶対に負ける気はありまけんからね」
翌日 渋川市 ガソリンスタンド
「「ありがとうございました」」
ここは秋名のハチロクこと藤原拓海がバイトをしているガソリンスタンドで今日も元気よく挨拶しては利用客を見送ったのであった。
客がいなくなった今この場にいるのは拓海の他、同級生のイツキと遊びに来ていた利樹。そしてバイト先の先輩である池谷と店長である祐一の5人である。
「俺が池谷先輩のチームにですかぁ……!!」
「なぁ頼むよ是非入ってくれよ」
「絶対入れよな拓海。お前とセットで俺も入れてもらえることになってんだからな!!」
「イツキ。お願いする割には態度が図々しいぞ」
拓海にスピードスターズに入るよう頼んでいるのはチームのリーダーである池谷で、もう一方の偉そうな態度をとっては拓海に入るよう強気にせまるイツキである。
「入るのは別にいいんだけど……。先輩のチームって走り屋じゃないですかァ。俺別に走り屋ってわけじゃないから……」
「何言ってんだよお前が走り屋でなかったら誰が走り屋だよー。お前ほど速い奴なんて秋名には一人もいないんだぜ」
「池谷さんの言うとおりだぜ拓海。お前の走りは本物だって光が言ってたぐらいだから自信持てって」
「そうかなぁ…」
拓海はボケてはいるが、池谷と利樹の言うことはあながち間違ってもいない。
「なぁ拓海、俺先輩から聞いたんだけど…。お前5年前から秋名湖へ豆腐の配達してたってホントか?」
「まーな」
「知らなかったぞそんなの。黙ってるなんて水臭い奴だなー」
「あのなイツキ。普通そんなこと大っぴらにするもんじゃねぇぞ。バレたら色々とマズイんだしよぉ」
「そうだよなー5年前って言えば俺達中学一年だから…バリバリの無免許運転だぜー」
利樹とイツキが言うように拓海がしてきたことは無免許運転であり決して褒められたことではない。
「俺よかずっと運転歴長いことになるのか…。雨の日も雪の日も毎日だもんなーすげーな…(池谷21歳。運転歴3年)」
「俺だって公道じゃないとはいえ伊達にカートでは走り込んでませんからね(利樹18歳。運転歴10年)」
「キャリアだけなら負けねーけどな(祐一43歳。20年超えてる)」
「どんな気分だった?中ボーが無免で運転するなんて…」
「始めて一ヶ月くらいで運転することのキンチョー感は抜けますよ。朝早いから誰にも会わないし…。そりゃ始めの頃はカーブは怖かったけど…半年もすれば怖さも全く無くなったなー。スピードを出していくと自然とタイヤが滑るから…。思い通りに滑らせたり止めたりできるようになるまでもう半年…。毎日やってるとすべることの緊張感なんてすぐ麻痺するから…。仕方ないから滑りながらどれだけガードレールに近づけるか試すようになって…」
「普通やるかァそんな危ないこと」
「別に危ないことだなんて思ったことないけどな…。調子いい時は一センチくらいまで寄れるぜ」
「いや、それするだけでも充分な気がするが…」
「そういう風にして楽しいこと無理に見つけないとつまんなくてしょうがないんだ仕事の手伝いなんて…。だから俺運転上手くなりたいなんて思ったこと一度もないんだ…。ただかったりーから早く帰りたくて豆腐が載っていない下りは思いっきりすっ飛ばして帰るんだよ」
「拓海…一つ聞いていいか?豆腐を載せてる時はどうやって走るんだ。あんまり飛ばすと豆腐が傷むだろ?」
「上りは飛ばせないですよあんまり…。親父が紙コップに水を入れてそれを缶ホルダー置くんだ見やすいところに…。この水さえ溢さないように走れば急いでも豆腐は壊れないって言うんですよ」
「缶ホルダーに水入りの紙コップだぁ?それがどう役に立つっていうんだよ?」
「……」
「やってみるとこれがすげー難しいんですよ。初めはノロノロ走ってもバシバシ溢れちゃって…。ブレーキ・ハンドル・ギアアクセルどれを取ってもちょっと荒いとすぐ車がガクガク揺れて水が溢れちゃうから…。紙コップの中で水を回せって親父はよく言ってました…。それができるようになるまで3年掛かったけど」
「コップの中で…水を回す…?なんだそれ」
「表面張力で膨らんだ水面がコップの縁ギリギリのところをグルリと半周するんですよカーブ一つ抜ける度に。そうやって縁ギリギリのところで水を回しながら上っていくんです。コップの水を溢さないで上りのドリフトができるまでは5年掛かりました…それに比べたらコップのない下りのドリフトなんて楽すぎて眠くなっちゃいますよ」
「なにぃ…コップの水を溢さないドリフトォ⁉吹かすなよ拓海ィ冗談だろそんなのォ⁉」
「おいおいおい。いくらなんでもそれは誇張し過ぎじゃねぇか拓海よぉ⁉」
「できますよ」
池谷と利樹は拓海のトンデモ技に驚き冗談じゃないかと聞くも拓海はケロッとした顔をしてはできると言う。
「(すげーぜ文太…。お前とんでもないニュータイプの走り屋を作り上げようとしてるぞォ…。コイツはただの
祐一は文太が息子にとんでもない教育をしては超天才的なドライバーを育成してることに驚く。
「拓海、頼みがある…!!俺をナビシートに乗せて秋名の下りを攻めてみてくれないか⁉」
池谷は拓海に自分を乗せてダウンヒルするよう頼み出す。
「えっ俺の横に?なんでですか?そんなもん別に面白いことないと思いますよ」
「そう言わずにさー頼むよ…。どうしても乗せてもらいたいと思ったんだよ」
「はぁー」
「てめーっ拓海!!池谷先輩があんなに頼んでんだからもったいぶらないでOKしろよなっ!!」
「イツキ無理言わせるなよ。拓海が困ってるだろうが」
「いてて…わかったよ離せよイツキ」
池谷の頼みに渋るもイツキからヘッドロックを掛けられては了承せざるを得なくなった拓海。
「俺はいいですけど車をいつも借り出せるとは限らないからー。親父が乗っててもいいって言ったらその時乗せますよー先輩」
「そうか…それなら今晩はどうだ?さっそく聞いてみてくれ」
「はぁー?」
そうして今晩は池谷を乗せて走ることになるやお客さんが来ては再び仕事へと戻る。
「にしてもどうして拓海の親父さんは水の入った紙コップを載せては豆腐の配達をやらせてるんだ?紙コップの水が一体何の役に立つって言うんだ。俺にはさっぱりだぜ…」
「いや、俺もさっきは何気なく聞いていたが考えてみれば案外いい線言ってると思うぞ」
「へ?それはどういう意味ですか店長?」
利樹が文太の考えてることに疑問を浮かべている横で祐一はその意味を理解したのか利樹に理由を話す。
「俺も紙コップの水の話を聞くまでは拓海は秋名の下りを攻め続けることによってあの超絶テクニックを身についたとばかり思っていたんだが、そうじゃなかったんだ…。紙コップの水を溢さないように気遣いをしながら走る上りの方が重要だったんだ」
「はぁ…」
「車をコントロールする為に一番大切な基本は荷重移動だ。紙コップの水を溢さないように走るにはとてつもなくデリケートな荷重移動のコントロールを身に付けなくちゃいけないからな…」
「つまり拓海の親父さんは拓海に荷重移動を覚えさせる為に紙コップの水を溢さないよう走らせてるってことなんですね」
「そういうことだ。流石だよ文太。お前がやることは…」
「拓海のハチロクに相乗りするって?」
「そうだ。池谷さんが今夜秋名でハチロクに乗っては拓海のドラテクを真近で見てみたいって言ってたぞ」
「へぇ〜。拓海君の車に相乗りねぇ…。面白そうじゃない」
「そうか?寧ろ池谷さんが危ない目に遭うだけな気がするんだが…」
ガソリンスタンドから帰ってきた利樹から事の経緯を聞いた光と真菜。真菜は興味を示す一方で光は拓海の運転を真近で見ていた為それに乗ることがどれほど恐ろしいことなのか理解していた。
「だったら光も一緒に行ったらどう?ほら、パパから新型のインプレッサを貸してもらったんだしそれの練習も兼ねて秋名に行ってみようよ」
「新型?それってもしやGDBインプレッサのことか?」
「あぁ。入院させてしまったGC8の代わりとして貸してくれてな。それを使って今度の土曜に高橋啓介と勝負をすることになったんだよ」
「それならいっその事そいつを今晩にでも持っていってそいつで拓海の乗るハチロクを追ってみたらどうだ」
「あ、それいいかも。折角の機会だしアタシも拓海君の車に相乗りさせてもらおうかなぁ〜♪」
「おい真菜。それ本気で言ってるのか?この前の交流戦で拓海の運転する姿を見たばかりだろ。それに相乗りするってことは絶対に碌な目に合わないのは確かなんだぞ」
「大丈夫よ。アタシだって伊達にパパや光の車に乗ってきたんだからそれくらい何ともないわよきっと…」
真菜は拓海のハチロクに自分も相乗りすると豪語するもそれを聞いた二人は声を潜ませてはこう語る。
「(真菜はああ言ってるが絶対後悔する羽目になるなきっと…)」
「(それは同感。まず間違いなく酷い目に合うなアイツは…)」
そんなこんなありながらも今晩秋名の峠にて光は拓海の走りを再び真近で見ることになるのであった。
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