光と啓介が激しいバトルを繰り広げている中スタート地点である秋名の頂上にはスピードスターズやレッドサンズを始め数多くのギャラリーが勝負の結果の報告を待っている。
「利樹、一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
「何だ言ってみろ」
「前に一度光は高橋啓介とバトルしたのは知ってるよね?」
「そりゃあ勿論覚えてるぜ。あの時はヒルクライムだったが接戦したと光から聞いてるしな」
「それでなんだけど。このバトル…光が勝つって利樹は信じてる?」
「あいつが勝てるかどうかと言われたら俺にもわからねぇなぁ。何せ相手はあの高橋啓介だ。光が拓海と同等のドラテクを持っているなら勝てる可能性はあるんだが…」
「多分。勝てるんじゃないかな…」
「え?」
「拓海君、どうしてそう言い切れるの?」
「いや、なんとなくだけど。光はスタートダッシュを見た限りじゃいつでも追い抜くことができるって感じで走っていったんだからそんな気がしたんだ」
「何だそれ?曖昧すぎて俺にはさっぱりだぜ」
「どうやらお前にも奴の凄さが伝わっていたみたいだな」
「?」
「た、高橋涼介⁉」
「な、なんですか急に驚きましたけど…」
「失礼、急に声を掛けてすまなかったかな」
拓海の返答にその場にいた真菜達な困惑するもその答えを理解した人物が突如声を掛けてきた。拓海達が声のした方を振り向くやそこにはレッドサンズのリーダーでもある高橋涼介が立っていた。
「藤原と言ったか。お前のことは啓介から聞いてるよ。秋名で自分を完膚なきまでに叩きのめした走り屋だとな」
「そうですか?俺は別にそんな大した奴じゃ…」
「謙遜する必要はない。うちの啓介を非力なハチロクで挑んでは圧倒的な実力差を見せつけて勝ったんだ。お前の実力が本物であることは誰から見ても間違い」
「はぁ…」
拓海は涼介から称賛され少し照れ臭くなるも満更ではなさそうだった。
「あの〜涼介さん。光が勝つかもしれないって拓海君が言ってましたけど理由を聞かせてもらえませんか…?」
「俺の口から言わなくともいずれ知れ渡る筈だ。インプレッサは性能が高い反面扱うにはドライバーの腕を試されるが使いこなせばそれなりの力を発揮する車だからな」
場所は再び秋名の5連続ヘアピン前。そこでは2台の車が火花をちらしては走り続けている。
「お、おい見ろ。インプレッサが先頭を走っているぞ!!」
「嘘だろ⁉勾配が難しい秋名の下りで高橋啓介のFDを抜くなんざ只者じゃねぇぞあのインプレッサは!!」
ギャラリーもインプレッサがFDの前を走っている姿に驚いておりバトルは白熱の嵐である。
「(ようやく来たか。あの高橋涼介が認めるくらいだ。どれほどのものか見物させてもらうぜ!!)」
先週拓海が溝落としするところを見たナイトキッズの中里もギャラリーに混じってはインプレッサとFDのバトルを見ており。この前会った光が秋名で何を仕掛けてくるか期待する。
「(さっきは抜かれてしまったがここでブチ抜いてやる…!!そうしなければ俺のプライドに飽き足らずレッドサンズの名に泥を塗ることになるからな!!)」
「(もうそろそろ5連続ヘアピンに入るところだな。拓海みたいに溝落としはできないからアレでこのヘアピンを抜けきるとするか)」
ギャラリーが見守る中先頭を突っ走るインプレッサはこの前拓海が溝落としを披露した例の5連続ヘアピンへと突入するやスピードを落とすことなく突っ込んで行く。
「(あいつ、ハチロクと同じ溝落としでもするつもりか⁉あれはここを走り込んだハチロクにしかできない芸当をぶっつけ本番でしようってのか!!)」
啓介は前を走るインプレッサが5連続ヘアピンで拓海が見せた溝落としをやるのではないかとその場を目の当たりにする。が、
チッ
「なっ、あの技は…!!」
インプレッサは溝落としをするかと思いきやタイヤを前回のハチロクみたいに溝に嵌めてはいないものの、鮮やかにコーナーを曲がっては次のヘアピンへと走り抜けるのだった。
「クソっ、タイヤが垂れてるからか奴に追いつけねえ…チクショーが!!」
啓介は目の前で光が見せたものが何なのか理解するも車は既に限界寸前だった為そこから更に引き離されていき目の前を通り過ぎていく光を見ては悔しがるしかなかった。
「そういうことか…」
「中里さん、インプレッサが何をしたのかわかったんですか?」
目の前で光がやってみせた技を中里は理解しては口にする。
「あのインプレッサ。ニュートラルステアで走っては秋名の5連続ヘアピンを抜けやがった。確かにそれならハチロクみたいな芸当をしなくともこの狭い低速ヘアピンをスピードを保ったまま曲れるしインカットもできるしな」
「ニュートラルステア…?何すかそれは?」
「ニュートラルステアは本来二輪の走行技術の一つだが、旋回を一定の操舵角に保ったまま走っては旋回半径が然程変わらないことを言うんだ。あれをやるにはそれなりの技量が問われるんだがあいつはそれを難なく熟してるところから見てかなりのテクニックを持ってるとみていいだろうな」
「となるとこの勝負…」
「あぁ。前回同様高橋啓介の負けだな。ふっ、先週に引き続き同じ場所で二度も負けちゃあ奴は最早立つ瀬もないな」
秋名山 頂上
『こちらゴール地点。あのインプレッサ。啓介を負かしやがったぞ!!』
「そうか、やはり啓介は負けてしまったか。それでタイムの方はどうなんだ?」
『それが聞いて驚くなよ。なんとハチロクが叩き出した記録には及ばねえが啓介との差は5秒もあったんだ!!』
「…了解した」
頂上で結果の報告を聞いた涼介は携帯を下ろすや表情は変わらぬものの悔しそうであることは誰から見ても一目瞭然だ。
「光が…光が勝ったのね」
「やったぜ拓海!!あの野郎、高橋啓介に勝ちやがったぞ!!」
「っしゃあ!!これで益々地元ではハナが高くなるぜ!!」
「く、苦しいってばイツキ。利樹も少しは落ち着けって」
拓海の予測通り、光は勝ちイツキと利樹は嬉しさのあまり拓海の肩を組んでは大はしゃぎしていた。
『……』
その一方でレッドサンズのメンバーは自軍のエースでもある啓介が二度も敗れた事実を受け入れられず、押し黙っていたのである。
「涼介…。今回の敗北はかなり効いたな。只でさえハチロクに負けたばっかしでかなりの痛手なのにレッドサンズの名は益々下がっていきそうだぞ」
「負けたのは仕方ない。それだけ奴が啓介を上回っていたのだからな。何、心配する必要はない。いずれ奴との決着はハチロク同様俺の手で付ければいいだけだ!!」
秋名 ゴール地点
勝負は光に軍配が上がり秋名では未だに盛り上がりを魅せていたその頃、バトルを終えた二人は車を近くの看板の前に停めるや対峙する。
「今回ばっかしは俺の完敗だ。内心認めたくねぇがな」
「そう気を落とさないでくださいよ啓介さん。あなたの走りは荒かったですし無駄がありましたけどいつ追いつかれそうかヒヤヒヤしましたからね」
「お前…それは褒めてるのか貶してるのかどっちなんだよ…」
啓介は怒りを露わにしては睨みつけるも光は然程気にしてなかった。
「まさか負けたまま引き下がるわけじゃないですよね啓介さん?もう一度バトルするのであれば俺はいつでも引き受けますよ」
「チッ…この屈辱は絶対に忘れねえからな…。言っておくがな。俺がお前に敗北を突きつけるまでは他の走り屋に負けたりするんじゃねぇぞ!!絶対にだ!!」
「……俺以外の奴に負けるなか…。まぁ誰にも負ける気は更々ないですし、その約束…守ってみせますよ」
「あぁ。今度こそ俺の手で引導を渡してやるからな!!それまで忘れるんじゃねぇぞ!!」
啓介は光にリベンジをするのを宣言するや自分のFDに乗り込んでは秋名を後にしていき。光は過ぎ去って行く啓介を見送っては言い渡された約束を果たそうと誓うのだった。
光と啓介のバトルから一夜明けた翌日。光は中津モータースに来ては中津社長に言う。
「そうか…。あのインプレッサを購入するっていうんだね光君」
「はい。いつも社長に借りてばっかしは良くないですし、走り屋としては自身の車は持っておいたほうがいいと思い購入することを決断しました。お金に関しては両親に頼み込んでは車を購入して貰えるよう話をつけておきます。高校を辞めてはすぐに社会人になって働いては返していきたいと」
「気が早いねぇ君は。お金に関しては何も高校を卒業した後にしてはどうかね?君のお父さんとは昔からの知り合いし話はつけておくよ」
「いいのですか?そんなじっくり待たなくても」
「別に構わないよ。あのインプレッサは元々君が乗るのを想定して取り寄せたんだからね。それに君のお父さんは僕と同じスバル好きだからきっと了承してくれるよ」
「そうですね。俺がインプレッサを好きになったのも親父が大のスバル好きだった影響もありますし、アメリカでスバル車が走ってる姿を見ては一目惚れしたのが一番の理由ですね」
「はははっ、アメリカでもスバル車は人気だからね。君が惚れ込むのも当然さ。それじゃあ車を購入する件に関しては光君はまだ学生だから親御さん名義になるけどそれでいいかな?」
「はい。必要書類に関しては用意しておきますので後の手続きはよろしくお願いします社長」
「了解した。すぐにでも君の手に渡るよう力を尽くすよ」
数日後
「すっげえーこれがあの時走ったインプレッサかぁ!!くぅ~真近で見るとカッコ良すぎて堪らんぜ…!!」
「本当だな。俺なんかS13買うのに精一杯なのにこればっかしは流石に手が届かねえなぁ…」
「うひゃあ〜。こんなもんよう買えたなぁ…。羨ましぜ全く…」
「ほほぅ。流石に中津が用意しただけはあるなぁ…。こいつじゃあ流石に拓海といえど敵わんだろう」
拓海達が働いている某ガソリンスタンドにて手続きを終えた後、正式に光の車(親名義)になったインプレッサ(GDB)が停まっており。それを見てはイツキを始め池谷に健二、そして祐一が車体を見ては各々感嘆していた。
「どうだ拓海、インプレッサ…格好いいだろ?(と言っても実際は拓海と同じ親名義だからあまり堂々と言える立場じゃないけど)」
「そうか。何ていうかデカい羽がついて空を飛びそうな気がするけど」
「お前なぁ…。WRC(世界ラリー選手権)じゃジャンプするだけでも凄いのにそんな事ができるわけないだろうが」
拓海の珍回答に横で聞いていた利樹は呆れながらツッコミを入れる。
「そうだ光。お前も自分の車を手に入れたんだしさぁいっそのこと。俺と同じスピードスターズに入って見たらどうだ」
「いいね利樹。この際インプレッサにスピードスターズのステッカー貼り付けよっか」
「賛成。んじゃ早速リアフェンダーに付けるとするか」
「はぁ⁉ちょっと待て俺はスピードスターズに入るなんて一言も…て、おい利樹!!何勝手に俺のインプレッサにステッカー貼り付けようとするんだ!!折角買ったばっかしの車に余計なもん付けるんじゃねぇ━━!!」
利樹を筆頭に光のインプレッサにステッカーを貼ろうと一悶着起こしてはギャアギャアと騒ぎ立てていき、それを見ては拓海は呟く。
「なんか向こうは賑やかで楽しそうですね店長」
「あぁ。相変わらずあいつらは大人げないというか何と言うかだ…。でもま、群馬の
そうして光も晴れて?スピードスターズの一員となるや秋名山を舞台に光は拓海を始めとする数多くの走り屋とのバトルを繰り広げようとするであった。
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