頭文字S 未完結   作:ペンギン太郎

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 先週に引き続き会話が中心となっています。


ACT.16 走り屋のプライド

 「拓海がナイトキッズとの交流戦を拒否してるだと⁉どういうことだよそれは⁉」

 

 「ちょっ…落ち着けって。拒否するも何もイツキがナイトキッズの中里って奴からの挑戦を勝手に引き受けたのが原因なんだからよぉ」

 

 

 その日の朝、学校に来ては利樹から拓海がバトルをしないと聞いた光は利樹に詰め寄っては問いただしていた。

 

 

 「イツキが?一体どういうことか説明しろよ…」

 

 「あぁ大まかに言うとだなぁ…池谷先輩と拓海が用事でスタンドを離れている間に中里が挑戦を申し込みに来てな。それをあいつが自分もスピードスターズのメンバーだからって調子に乗った挙げ句勝手に引き受けてしまっては今に至るというわけなんだよ」

 

 「そういうことかよ。ったくイツキのバカが派手にやらかしやがって…。で、肝心の拓海はどうなんだ?」

 

 「相変わらずやる気はなさげだったな。拓海は他人から物事を強制されたりするのを嫌がるし物凄く頑固な奴だってイツキが言ってたからこればっかしはどうしようもねぇぞ」

 

 「マジか。かぁ〜これじゃあ中里さんに合わす顔がないな」

 

 「光、スピードスターズのメンバーでもないアンタがどうしてそんな慌てるのよ?まるでナイトキッズの中里さんって人が拓海君にバトルを挑むのが最初から知ってたみたいじゃない」

 

 「実を言うとだな…。前に秋名を走った際中里さんのR32と遭遇しては少しばかしバトルをしたんだ。んでその後話をした際中里さんがバトルは車の性能が物を言うって発言したのが少しばかし癇に障ってな。拓海なら中里さんの考えを真っ向から覆してくれるかもしれんと思って発破をかけちまったんだよ」

 

 「要するに、お前が拓海と中里がバトルする様お膳立てしたのにイツキが台無しにしてしまったというわけか」

 

 「とにかくだ。拓海をバトルに引き込ませないと収集がつかんからどうするべきか考えんと…」

 

 「あ、いけない…。もうすぐHRが始まるから早く席に付かないと先生に怒られるわよ」

 

 

 真菜が時計を見てみると時刻はもう8時半を過ぎており、担任の先生が来る時間帯であった。

 

 

 「え?もうそんな時間になってたの…やべぇ早く席に付かねえと何言われるかわかんねぇぞ」

 

 「仕方ない…。この件に関しては拓海を説得する他ないか」

 

 

 光は拓海をどう引きずるべきか考えながらも席に付いてはHRを受けることに。果たして拓海はバトルに出てくれるだろうか。

 

 

 

 

 

 藤原とうふ店 早朝

 

 拓海はいつものように豆腐を載せたハチロクに乗り、父親である文太が用意した水入りの紙コップを缶ホルダーに入れては配達に行こうとするや文太にある質問をする。

 

 

 「なぁ親父…。GT-Rって…凄いのか?」

 

 「そりゃまー凄いだろ…」

 

 「親父なら勝てるのか?下りで…GT-Rに?」

 

 「勝つね…。GT-Rだろうがポルシェだろうが目じゃねぇよ」

 

 「……」

 

 

 自分だったらGT-Rに勝てると豪語する父親を見ては拓海は言う。

 

 

 「俺なら…勝てるかな?」

 

 「わかんねーな…。ギリギリの紙一重の勝負だ。何でそんなこと聞く?やるのか?GT-Rと」

 

 

 「別に…ただ聞いてみただけさ。行ってくる…」

 

 

 拓海は配達に行っては店を後にする。

 

 

 「(次はGT-Rか…。ハチロクのセッティングちょっと弄るかな…)」

 

 

 

 

 

 「何でお前がここにいるんだよ」

 

 「それはこっちの台詞ですよ。まぁこんな朝早くからここ(秋名)に来るって事は目的は同じでしょうしね」

 

 

 早朝の秋名山にて光と啓介がここを通るであろうハチロクを待ち構えては待機していた。

 

 

 「言っとくがここに来たのは俺が先だからな。先に用は済まさせてもらうぞ」

 

 「はぁ?秋名に着いたのは俺が早かった筈ですよ。何せ拓海がここを通る時間帯より十分も早く来ては待っていたんですからね」

 

 「ぬかせ。俺はここを三十分も前から来たんだ。お前の方が俺よりも後だったぞ」

 

 「何だと。だったら俺はここを一時間も早く来ては待っていましたから俺が先に済まさせてもらいますよ」

 

 「ほぅ…なら俺はここを二時間も早く来たんだから俺の方が先に…って何下らねぇやり取りをしてるんだ俺は…」

 

 

 啓介は光とのしょうもない張り合いを打ち切っては本題に入る。

 

 「俺とお前がここに来た理由はただ一つ…秋名のハチロクがR32とやり合うからそのバトルに勝てと言いに来た。ただそれだけだろ」

 

 「まぁそんなとこですかね。もうそろそろ来ると思いますけど…」

 

 

 二人が話してる間に前からリトラクタブルのヘッドライトが灯っては近づいてくる1台がいた。

 

 

 「来たか。それじゃあ拓海が来たことだし要件だけ伝えときますか」

 

 「あぁ。あいつにだけはGT-Rに勝ってもらわねぇとな」

 

 

 二人が道路の真ん中で待ち構えているのを確認した拓海はその場で車を停めるや啓介と光と向き合っては互いを見つめていた。

 

 

 「やぁ拓海。悪いな配達の邪魔してしまって」

 

 「この時間に来ればお前に会える様な…。そんな確信があったんだ。初めて会ったのがこの時間帯だったからな…」

 

 「で、会ってそうそう済まないけど要件を言わせてもらうよ拓海」

 

 「ナイトキッズの中里とやるそうじゃないか…。そこら中で噂になってるぜ…」

 

 「言っとくけど…。俺はGT-Rとやるって言った覚えはない…。俺がいない時に申し込まれたらしいけど…。やる気は全くないね…!!」

 

 「何だってぇ?やる気ねぇってどういうことだ?」

 

 「その件については利樹から聞いてるよ、イツキがやらかしたんだってな」

 

 「やらかした?一体どういうわけか詳しく聞かせろ」

 

 「それはですね啓介さん…」

 

 光はイツキが勝手に挑戦を引き受けたと事情を説明し、それを聞いた啓介は納得しては拓海に言う。

 

 「そういうことかよ。だけどよナイトキッズの中里がお前を名指しで挑戦して来てんだろ?受けて立ちゃーいいじゃねぇかよ別に…。GT-Rなんざぶっちぎってみろ。お前にならできる筈だぜ」

 

 「啓介さん。熱くなってるとこすみませんが中里さんとやるかどうかは拓海が決めることですからあんま無理言わないで下さい」

 

 「光の言う通りだ。…あんたにはカンケーないことなのに…。なんでそこまで言うんだ」

 

 「理由は二つある。俺はR32と…インプレッサが大嫌いなんだ!!」

 

 「(この人、俺を睨んでから大嫌いと言いやがった)」

 

 「だからこそ余計お前に負けて欲しくねぇんだよ。分かんねーか走り屋のこの微妙な心理が…。俺が勝てなかった相手には他の奴には負けて欲しくねぇに決まってんだろ」

 

 

 啓介は自分を負かした奴が他の走り屋に負けてはプライドに傷が付くからだと言う。

 

 

 「お前と俺の横に突っ立ってるこいつを負かすのはレッドサンズの高橋兄弟しかいねぇって事さ。絶対負けんなよGT-Rに!!」

 

 「ま、そういうわけだから拓海…。中里さんのR32とバトルしてやってくれないか?」

 

 

 光も二人の間に入っては拓海にバトルするよう頼み込む。しかし、

 

 

 「俺はやらないって言ってんだろ。第一やる理由がないよ」

 

 

 拓海はやらないと言っては断固拒否するのだった。

 

 

 「理由…?何だそりゃ。走り屋同士がバトルすんのに理由なんかあるかよ」

 

 「俺別に走り屋じゃない…」

 

 「ふざけるなよそりゃ嫌味で言ってんのか?。あれだけのテクニックを身につける為には余程の走り込みをしてる筈だ…。走り屋じゃねー奴がなんで走り込みなんかやるもんか余程好きでなきゃーできねー事だぜ…」

 

 「好きで走り込んでるわけじゃない…!!家の手伝いで仕方なしにやってるだけだ!!」

 

 「(前に社長から聞いた話じゃ拓海は中学の時から配達させられてるから好きになれないのも無理はないか…)」

 

 「嘘付くなよ。嫌嫌走っててあんな凄い技が身に付くわけねーだろ?」

 

 「わかってないよ…」

 

 「わかってねーのはお前の方だろ⁉世の中に車を走らせること程ワクワクすることは他にねぇと俺は思ってる。走ることが嫌いな奴がドリフトなんかマスターするか⁉好きな奴じゃなきゃ絶対身に付かない技だぜあんなの!!」

 

 「拓海、この際はっきし言っておくよ…。お前口では否定しているけど心の底では車を走らせることが好きなんだろ?」

 

 「これを機に自覚しといた方がいいぜ。一つだけ教えといてやる。車を走らせることが好きならそれだけで十分走り屋なんだよ!!走り屋なら自分で身に付けた技術にプライドを持てよな!!」

 

 

 啓介は拓海に自信を持つよう発破をかけるも残念そうな顔をしては話を続ける。

 

 

 「挑戦されたら受けるのが走り屋のプライドってもんだ!!態々会いに来てがっかりしたぜ。兄貴が言ってたGT-Rの弱点を教えてやろうと思って来たけど…。やる気がねぇ奴に何を言っても無駄だ」

 

 

 啓介はFDに乗り込み、プシューとエンジンを激しく蒸しては180度回転させてはその場を走り去って行く。

 

 

 「行っちゃったか…。拓海、このバトルは強制してるわけじゃないからやるかどうかはお前自身が決めることだ。もし来ないのなら俺が変わりにR32とバトルするよ」

 

 「……」

 

 「それと、さっき俺と啓介さんが言ったこと忘れるんじゃねぇぞ…。お前も今では歴とした走り屋だ。その覚悟があるのならバトル当日は絶対に来ることだな」

 

 

 光もインプレッサに乗っては啓介に続き秋名を走り去って行き、その場には拓海一人だけが佇んでいた。

 

 

 「(自分で気が付いてないだけで…。本当は車の運転が好き…⁉)」

 

 「(グサッときたぜ…!!畜生…!!その通りかもしんねーけど。だからといって…、売られたバトルを買わなきゃいけねえってことにはなんねーだろォ…。納得できねーぜ!!)」

 

 

 

 

 

 翌日

 

 「で、拓海に中里のR32とやるよう説得したものの拓海は聞く耳持たずで終わったっのか」

 

 「拓海の奴、素直な性格してないからか俺と啓介さんの前で走り屋じゃないってはっきり否定しやがったしな…」

 

 「う〜ん。流石に今度ばっかしは厳しいかもしれんぞ。何せ相手の車はあのR32GT-Rだ。いくら拓海といえど勝てるかどうか雲行きが怪しいしな」

 

 「どういうこと?拓海君がバトルするGT-Rって車はそんなに速いの?」

 

 「そりゃあそうだ。R32GT-Rはインプレッサと同じFRと4WDを組み合わせた上RB26というツインターボエンジンを搭載してるんだ。少し弄るだけで物凄いパワーを発揮するからこればっかしはハチロクじゃあ勝ち目は薄い」

 

 「えーっとそれって…?」

 

 「要約するとだ。ハチロクとR32じゃあウサギと亀くらい差がついてるってことなんだよ。プロの世界ではR32はあまりにも速すぎてグループAという規格を廃止させる程だからな」

 

 「あぁそういうこと。それだけ拓海君の車と中里さんのGT-Rは差がついてるってことなんだ…ってちょっと待って⁉それじゃあ拓海君には勝ち目がないじゃない!!どうやってそんな速い車に勝てって言うのよ!!」

 

 「いや、んな事俺に聞いたって答えられるわけないだろうが。サーキットならともかく峠ではどっちが速いかなんてわかるわけねえしよぉ…」

 

 「いや、勝つ方法なら一つだけあるよ」

 

 「え?本当なの光?」

 

 「ほぅ…お前R32の弱点を知ってたのか」

 

 「そりゃあ俺だってインプ以外の車についてもちゃんとチェックはしてるからな」

 

 「勿体ぶらないで早く教えてよ…GT-Rの弱点って何なのよ」

 

 「それはだな真菜。R32には…」

 

 

 

 

 

 某ガソリンスタンド 夜

 

 「店長…。外の方は一応片付きました」

 

 「おぉ…ご苦労さん」

 

 「じゃあ俺これで上がりますから」

 

 「まぁちょっとそこかけろ拓海…」

 

 「…」

 

 

 夜勤を終えた拓海は上がる直前に店長である祐一に言われてはソファーに腰を降ろす。

 

 

 「あのなーちょっと小耳に挟んだんだけど…。今夜GT-Rとバトルするそーじゃないか」

 

 「えっ」

 

 「やめた方がいいぞォ!!相手が悪すぎる!!」

 

 「あ…いえ…。その話なら…」

 

 「言うなってその話は言わなくてもわかる!!わかってんだよォ俺には全てお見通しさァ…」

 

 

 祐一は臭い演技をしては拓海にR32の話を続けて行く。というのも祐一はイツキと池谷がどうやって拓海をR32とのバトルに持ち込めるか話し合ってたのを偶々聞いており、それを手助けしてやろうと拓海にこの話を持ち掛けたのだった。

 

 

 「自分がやりたくて引き受けたバトルじゃないのは分かってる。経緯は大体分かってるんだ。イツキが調子に乗って勝手に受けてしまったんで仕方なくやるんだろ?困った奴だよなァイツキも…。だけどお前も人が良すぎるぜー拓海ー。友達の顔を立てるのも程々にしないとなー」

 

 「はぁー」

 

 「悪いことは言わん…GT-Rにだけは止めとけ。お前は車の事詳しくないからGT-Rがどんな車か良く分かってないだろ?」

 

 「……」

 

 拓海はボーッとした顔をしては祐一の話を聞いていては質問をする。

 

 「GT-Rって…そんなに速いんですか店長?」

 

 「(しめた…食い付いてきた。目付き変わった…)」

 

 

 祐一の思惑通り拓海はGT-Rに興味を示し、そこから更にGT-Rの凄さを語り続けていく。そしてGT-Rの話を終えた後本題に入り始める。

 

 

 「無論車の戦闘力がもっと近いんならお前に勝てる奴なんていないだろうがな…。ハチロクとGT-Rじゃ格が違い過ぎる。下手くそなドライバーならともかく…。相手も相当な走り屋なんだろ…。無茶な勝負だよ」

 

 「(親父が言ってたことと違うな…。ギリギリで紙一重の勝負になるって言ってたのに…)」

 

 「だからな…。せっかく赤城レッドサンズとの交流戦に勝って名前を上げたんだからもっと大事にした方がいいぞ。勝ち目のない相手と勝負するのは頭の良いやり方じゃないぞ…。大人の言う事は聞くもんだぞ。なっ?」

 

 「……」

 

 

 祐一はGT-Rとの勝負は避けるように言うも拓海は目付きが完全にやる気に満ちており今にも飛び出さんとしていた。

 

 

 「せっかく忠告してくれてるのに悪いんですけど…。俺、走り屋として名前を売ることになんか別に大事な事だなんて思ってませんから…」

 

 「どうしても…止めない気か?(引っ掛かった…)」

 

 「止めないっすよ。そこまで凄い凄いって言われるとどれくらい凄い車なのかどうしても見たくなるんですよ!!」

 

 

 そして振り返っては祐一にこう告げた。

 

 

 「俺はGT-Rなんて別に怖くないですよ!!店長」

 

 

 拓海はそう言った後祐一に挨拶を言っては店を出ていき自宅へと戻って行った。それと同時に店の扉が開いてはある人物が入ってきた。

 

 

 「相変わらず人を唆すのは上手いね〜祐一」

 

 「なんだ中津。今の話聞いてたのか?」

 

 「まぁね。しかし拓海君は負けず嫌いな性格まで文太に似てしまってるよ。そうでなきゃ彼をどう責め落とすか苦労したことか」

 

 「この手で何度も文太を唆してきたからな。まさかこんなに上手くいくとは思わなかったぜ。ところでお前が何故ここに来てるんだ?」

 

 「実は文太から頼みを引き受けてね。それが終わってはここに寄ったんだ…」

 

 「文太がライバルであるお前に頼み事だぁ?一体何を頼んだっていうんだよ」

 

 「少しね、ハチロクを弄るから手伝ってくれと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 『都合により臨時休業 藤原とうふ店』

 

 

 「ありゃ?」

 

 

 ハチロクを取りに駆けつけた拓海が見たのは一枚の貼り紙ともぬけの殻となった駐車スペースだけであり、ハチロクを出せない拓海はどうすべきなのか混乱に陥るのだった。




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