中里がバトルを申し込んだ当日の秋名山では2週間前に行われたレッドサンズとの交流戦よりもギャラリーが集まっており。とてもだが拓海がバトルには参加しないと言えない状況になりつつあった。
『おぉー!!インプレッサだ!!』
『あれが高橋啓介のFDを打ち負かした車か〜』
『しかも乗ってるドライバーは秋名のハチロクと同じ免許取って間もないくらい若い奴だって話みたいだぞ』
バトル開始時刻までまだ余裕があり、秋名山を駆け抜ける光のインプレッサにギャラリーは注目する。光は視線の釘付けになっているもそれを全く気にすることもなく走り続けていくのだった。
「うわぁ…こんなにたくさんギャラリーがいたんじゃイツキ君、引くに引けなくなったわね」
「まさかここまで来るとは予想外だったな。大方拓海のドリフト目当てで集まってるみたいだが」
「どうする光?拓海君はバトルする気がないって言ってたんだしひとまずナイトキッズの中里さんって人に謝りに行くの?」
「そうだな。元はと言えば俺が拓海とバトルするよう強気に言ってしまったからなぁ。とりあえずスタート地点まで行っては報告だけしておくか」
「(何でだ…死ぬほどイライラする。秋名山行きたくて堪んねーや…)」
光達が拓海が来るのかどうか心配しているその頃、当の拓海はハチロクが無いことに絶望感を漂わせてはどうしたらいいかわからず途方に暮れるしかなかった。
「走ることがそんなに好きなのかどうか自分でも良くわかんねーけど…。5年間一人で走り続けて積み重ねた技術にはプライドあるんだ…。そんな気がする」
「その技術がどこまで通用するのか試してみたい…。皆が速い速いって言うGT-Rに俺が今できる全てをぶつけて挑戦してみたい…」
「こんな気分になったの初めてだ…。車がないのに諦めがつかない…。逆に走りたい気持ちがどんどん強くなる。バカ親父ーどこほっつき歩いてんだよ⁉」
拓海が一人虚無感を感じているや外から車のエンジン音が聞こえたのでもしやと思い窓を開けるとそこにいたのは
「池谷先輩」
「拓海!!」
外にいたのは父親ではなく池谷と健二であり、二人は拓海を説得しに拓海ん家に来たのだが拓海は車がないことを説明する。
「なんだって?親父さん車乗ってどっか出かけたまま帰ってきてないー?どこへ行ったかわかんないのか?」
「飲み屋じゃねーかと思って心当たりは全部電話してみたんですけどねー」
「捕まんないのか?」
「(コクリ)」
「なんてこったー予想もしてない事態だったなーこりゃ…。ハチロクがなくちゃー説得のしようがないよー」
「先輩…。俺のこと説得しに来たんですかー」
「まーな…。
「ナイトキッズの中里や高橋兄弟のRX-7。それに光もギャラリー沸かしてるけど、なんたって今日の主役はお前だぜ拓海ィ…」
「ちょっとタンマ。止めて下さいよ言われても困っちゃいますよー」
「やっぱり、気持ちは変わんないのか…」
「そうじゃないんですよ。俺行く気になってたんですよ実は…」
「「なにーっ⁉」」
実は拓海が行く気満々だったことに池谷達は驚くも拓海はそれを平然と流しては話を続ける。
「でも車ないんじゃあどうしようもないじゃないですか…。さっきまで一人で落ち込んでましたよー」
「それならさ拓海。健二の180SXで走るってのはどうだ⁉同じFRだしターボ付いてっからパワーあるし、お前が乗れば速いぞォ?」
「ダメですよ先輩。人の車じゃ俺走りませんよ。いつも乗ってるウチの車じゃなきゃダメなんですよ」
「それもそうだよな」
「他人の車で攻めるってのは走り屋の世界では良いことじゃないんだよなー」
「とにかくギリギリまで待ってみますよ…。うちの親父飲みに出ると大体朝帰りだから、もう99%諦めてっけど…」
「俺達も…ここで一緒に待ってみるよ…」
拓海が父親が帰って来るのを待っているその頃、秋名山では来るかどうかわからない秋名のハチロクとナイトキッズのR32とのバトルを大勢のギャラリーが待ち侘びており。イツキはそんな中で一人腕につけた時計の時刻を見ては不安そうな顔をする。
「……」
「イツキ。探したぞ」
「…光?」
イツキに声を掛けた光はスタート地点に着いては真剣な顔をしてはイツキに話しかけてきたのだ。
「お前勝手に中里さんからの挑戦を引き受けんだってな」
「……」
イツキは悲しそうな顔をしてはコクリと頷き、泣きかけた顔をしては光を見つめる。
「ったく仕方ねぇな。拓海が来るか分からないんじゃ収集がつかないし、ひとまず中里さんに謝りに行くぞ」
「えっ?」
「何だその惚けた顔は…。この騒ぎを起こしたのはお前なんだから責任を取るのは当たり前のことだろうが」
「確かにそうだけどさぁ。この状況をどうしろって言うんだよ。俺一人謝ったところで向こうが許してくれるわけないだろ」
イツキは自分一人だけの責任ではどうにもならないと弱腰になる。
「その時は俺が中里さんとバトルするよう話は着けておくよ。だからイツキ、さっさと謝りに行くぞ」
「い、痛いってば光!!み、耳を引っ張るなって…」
「やかましい!!自分の行いを少しは反省しろ!!」
光はイツキを無理矢理引っ張ってはナイトキッズのいる方へと歩いて行くのだった。
「何時だ?」
「9時40分回った…」
「(どこ行ってんだ親父…。頼むから帰ってきてくれ…もう時間が無いんだ!!」
すると
ウォンウォン
どこからかエンジン音を蒸した音が響き渡りそれを聞いた拓海は立ち上がる。
「帰ってきた…。国道から曲がる時の二回吹かすあのリズムあの音…。親父が帰って来る!!」
「
「わかりますよ。絶対間違いない!!」
スタート地点では既にナイトキッズが大所帯で来ては集まっており、今夜戦うであろう秋名のハチロクこと拓海が来るのを待ち構えていた。
「あれがナイトキッズなんだ。なんて言ったらいいかこの前見たレッドサンズと比べると柄が悪そうな人が大勢いるみたい」
「そうだな。レッドサンズが走り屋のエリート集団とするならナイトキッズは走り好きなヤンキーの集まりってとこかな」
二人が言うようにナイトキッズは見た目的に柄の悪い人が多数であり、それを取り仕切ってるのがチームのリーダーで今回ハチロクとバトルする中里毅である。
その近くにはレッドサンズの高橋兄弟も来ておりこの状況を見守っている。
「ところで光はどうしたの?」
「さっきまでここにいたのに一体どこへ行きやがったんだあいつは。まさか、自分一人だけ逃げ出したりしたんじゃねえだろうな…?」
「光がそんなことするわけないでしょ。ほら、あそこにいたわ。隣にはイツキ君も一緒にいるみたいだけど何を話してるのかしら?」
真菜が見つめる先には光がイツキを連れてはナイトキッズの陣中に来ており中里と話をしていた。
「何だと?ハチロクが来ねえかもしれないだと。一体どういう理由か説明しろ」
「すみません中里さん。元はといえばコイツが勝手に引き受けたのが原因でして…」
光は中里に事情を説明しては拓海が来ない理由を話す。
「というわけですので、秋名のハチロクが来るかどうかは未だに分かりませんので予定時刻までに来なければ俺が秋名のハチロクに代わってあなたとバトルします。それで勘弁してくれませんか?」
「そうか話は大体わかった。お前の横に突っ立ているそいつが本人の許可無く勝手にバトルを引き受けたってことなんだな」
「えぇ。こうなったのも
「す、すみませんでした…」
イツキは涙目になりながらも光に後頭部を掴まれては頭を下げさせており、光もその場で一緒に頭を下げては中里に謝る。
「中里さんどうします、ハチロクが来ないんじゃ今回のバトルは無しにしときますか?」
「いや、ハチロクが来ないのならそいつが代わりに相手をすると言ってきてるからな。そいつとは前に一度バトルしてるから腕が立つのは分かってることだ。今ここで
中里はハチロクが来ないのならばここで光とバトルしても構わないと言う。
「それじゃあイツキの件に関してはこれで手打ちにしてくれるのですね」
「あぁ構わねえぞ。だがやるからには手加減はしないからな。この前の借りはここで返させてもらうぜ」
「俺だって負けるつもりはないですよ。車は性能もそうですけど本当に大事なのはそれを操作するドライバーの腕に掛かってるってことを証明して見せますから」
光と中里は互いに見つめては強者が放つであろうオーラを出しては今にも走り出さんとしていた。
「じゃあそういうわけだから車使うぜ親父!!」
「急いだ方がいいぞ拓海もうギリギリだぞ時間!!」
漸く帰ってきた父親からハチロクを借り、拓海は池谷達とバトルの舞台である秋名山へと向かっていった。
「(いつもとは目付きが違ってたな…。どうなってんだ…)」
「おいイツキ。拓海の方はどうなってんだ?まさか未だにしらばっくれてるんじゃ…」
「さっき池谷先輩達が説得しに拓海ん家に行ってくれたんだけど多分無駄だと思うよ。あいつの性格は俺自身よぉく知ってるから」
「そうか…」
イツキは拓海は来ないかもしれないとショボくれており、光と一緒に来ていた利樹もどうしようないと絶望感を出す。ところが
『来たっー!!』
『来たぞォッ』
ギャラリーが騒いでは盛り上がっており、ギャラリーが見ている方向に目を向けるとそこにいたのは…。
「た…た…拓海?」
白黒のパンダトレノが特徴のハチロクがリトラクタブルを点灯しては突っ立っており、それを見たイツキは今にも泣き出さんとしていた。
「拓海ぃ…。来てくれたのか…あ…」
「うん。ごめんなイツキ」
ハチロクの窓から拓海が顔を出してはイツキに謝る。
「たく…みい…」
「
「たぁうびぃ〜(たくみーと言ってるつもり)」
「拓海。よくぞ来てくれたな畜生!!」
「もう。心配したんだからね拓海君」
イツキは涙と鼻水を出しては激しく号泣し利樹達も拓海が来てくれたことに感激していた。
「どうやら本日の主役が来たみたいですし、俺との決着はまた今度ってことでいいですよね?」
「ったく、折角お前とやれると思ったんだがまぁいい本来の目的はハチロクだったからな。お前との勝負は奴とのバトルが終えた後に着けるからな!!」
「了解です。んじゃ早速並べるとしますか」
中里は光とのリターンマッチが行えないことに少しガッカリするも当初の目的であるハチロクが来たことに喜ぶや今にもハチロクとバトルを行おうと激しい闘志を燃やすのだった。
「ところで拓海、来てくれたのは嬉しいんだがどうしてこんなギリギリになるまで遅れたんだ?」
「いや、最初はそのままここに来ようと思ってたけど…。親父がハチロク持ってどっか行っててな。それで帰って来てからすぐに駆け付けてきたわけなんだ」
「親父さんがハチロクを?…そういうことか」
「え?」
「いや気にすることはねぇよこっちの話だ。ほら、もうそろそろバトル開始時刻になるからさっさと車をR32の横に並べろ」
「お、おう」
光は拓海の父親である文太がハチロクを弄る為にどっかへ持っていたのかもしれないと予測するも、拓海はそれが何なのか分からないからかボケっとした顔をしては言われたとおり車を並べる。
トルルルル
「ハイ藤原とうふ店…なんだお前か」
『なんだはないだろ文太。態々人がハチロク弄るの手伝ってあげたのにさぁ…。で、車はちゃんと拓海君に渡したのかい?』
「拓海ィ?あぁ血相変えてすっ飛んでったよ秋名山…」
文太が電話している相手は中津であり、拓海の走りを見ようと秋名山に来ていたのだ。
「一体どうなっちまってんのかなー中津…。あいつが自分から
『拓海君が自ら出向くのが青天の霹靂だってさ祐一』
『夏に雪が降るかよバカ…。やっぱ蛙の子は蛙ってことだろ』
「なんだよ。祐一もそっちに来てるのか」
祐一も中津と一緒に拓海のバトルを見に来ており、電話に出ている文太をからかっていた。
『そんなことよかなー文太。今日の相手はGT-Rなんだろ。何かアドバイスをしたのか…勝ち目はあるのか?』
「別に何も言ってねーけど…。
「本当に来たなハチロク…お前の言った通りだったな啓介」
「……」
「R32の弱点をあのハチロクのドライバーに教えてやるんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったけどやめた…。顔見たら急に憎たらしくなってきたやっぱあいつらは敵だ。負けねーよあいつは…」
啓介は拓海が来たことに内心ホッとするも忌々し気にハチロクと拓海を見ていく。
「光。この前GT-Rには弱点があるって言ってたよね…。どんな弱点があるのかもう一度教えてくれる?」
「いいぜ良く聞けよ真菜、GT-Rは圧倒的なパワーを持つ反面ヘビー級の重さからくるアンダーステアが弱点なんだ」
「え?車が重いのってそんなに悪いことなの?」
「そりゃそうだろ。車重が重いってことはその分ガソリンをかなり消費するしコーナーを曲がっていく際かなり負荷が掛かるからな」
「こればっかしはいくら足回りをチューニングしドラテクでカバーしても車が持つ特性は変えられないからな。サーキットみたいな平坦なとこならまだしも峠となれば話は別だ。只でさえ負担がデカいダウンヒルでブレーキングを続けたら最後フロントタイヤとブレーキが垂れてくるに決まってる」
「もしブレーキをチューニングしたとしても麓まで下りて来る頃にはコーナーの入り口辺りからアンダーステアとやり合うことになるからな。拓海がこの勝負に勝つのならそこを狙うしかないってことだ」
「最もこの勝負の肝は拓海が麓辺りまでR32に食い付いて行けるかどうかなんだが…」
「それなら心配ないよ二人共」
「「へ?」」
GT-Rの弱点を語っている二人に声を掛けた人物がいたので振り向くとそこには真菜の父親である中津が立っていた。
「パパ?いつの間に秋名山に来てたのよ」
「今さっき来たところさ。君達は拓海君がR32に着いて来れるか心配してるみたいだが実はね、拓海君が乗ってるハチロクには少しばかし細工を施してあるんだ」
「細工?一体何を…」
「アクセルを踏めばドアンダーが出やすくなるようにちょっとばかし弄ってあるんだ」
「はぁ⁉何でそんなセッティングをしたのですか⁉それじゃあ拓海の持ち味であるドリフトを活かせないじゃ…」
「いや、これはこれで間違いじゃないよ利樹」
「光、お前も一体何を…」
「FRはアンダーが出やすい方が踏みやすいからな。R32はストレートなら前回のFDより速いからそっちの方が全開で走れる時間が長くなるし食い付いていける可能性が高くなるかもしれないんだ」
「そうか。相手は国内最速のモンスターマシンと名高いR32GT-R。勝つからには後半セクションまで追い続けないと行けないんだからその方が攻略するのに向いてるかもしれねぇな」
「と言っても仕様が変わってるハチロクを拓海が乗りこなせるかどうか心配なんだが…」
「大丈夫だよ光君。ハチロクのドライバーはあの拓海君だ。最初は戸惑うかもしれないけど拓海君なら絶対乗りこなせるって文太が言ってたからね」
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