頭文字S 未完結   作:ペンギン太郎

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ACT.4 豆腐屋のハチロク

 「光。さっきの黄色い車を抜いたって話本当なの⁉冗談じゃないよね⁉」

 

 「お前マジで言ってるのか⁉高橋啓介っていったらレッドサンズNo.2と言われる程の凄腕で。そんな奴を相手にしかもレッドサンズの地元である赤城山で抜くなんざどう考えたって嘘としか思えないくらいヤバいことなんだぞ!!」

 

 

 「い、いや本当なんだけどなぁ…。あははは」

 

 

 真菜と利樹から激しく詰め寄られるやどう返したらいいか光は困惑する。

 

 

 「お、おいそこの君、今の話詳しく聞かせてくれないか⁉」

 

 

 真菜達に質問攻めされてる光を他所にスピードスターズの方から一人の男性が近づいては光に声を掛けてきた。

 

 

 「えっと、あなたは…?」

 

 

 「俺はスピードスターズのリーダーを務めてる池谷っていう名でな。まぁ早い話、さっきまで君達と話をしていた拓海とイツキの先輩みたいなもんだ」

 

 「そうですか。で、池谷さん。話っていうのは…」

 

 「恥ずかしい話なんだが、君があの高橋啓介を赤城で抜いたって話を聞かせてもらってな。それでもし君が良かったらの話なんだが今度の交流戦で俺達スピードスターズの代表として出てくれないか?」

 

 「それって要するに俺に出ては秋名でレッドサンズを負かしてやれってことですね」

 

 「あぁそうだ。どうだ引き受けてくれるか?」

 

 

 池谷さんは光に対して必死に頭を下げてはお願いするも当の光はというと

 

 

 「池谷さん。申し訳ありませんが、その話はお断りさせていただきます」

 

 「え⁉そうか。それは残念だな」

 

 「何でだよ光⁉拓海達の先輩がこうして頭下げてるの何で断るんだ!?」

 

 「そうよ。引き受けてあげてもいいんじゃないのかしら」

 

 「い、いやだからそれとこれとは…」

 

 「まぁまぁ二人共落ちついて。光だっけか理由を聞かせてくれないか?」

 

 

 光は真菜達に再び詰め寄られるも池谷さんが二人を落ち着かせてくれた。その場が落ち着くや光は断った理由を三人に話す。

 

 

 「理由も何も。これはスピードスターズとレッドサンズの問題でしょ?レッドサンズを一泡吹かせたいのなら余所者の俺が負かすのではなく地元であるあなた達が自らの力であいつらを負かすのが筋じゃないですか?」

 

 「ゔっ。確かに…」

 

 

 理由を話すや池谷さんは痛い所を突かれたか何も反論せず沈黙した。

 

 

 「でもまぁあなた達がレッドサンズに負けたくないっていう気持ちは凄く伝わりましたよ。けど、今のあなた達の走りではレッドサンズとやり合うのは物凄く難しいと俺は思いますがね」

 

 「え?それだけスピードスターズとレッドサンズの走りには差があったの?」

 

 「何せ俺と光が両チームを追いかけて行った際後ろから見させてもらったが、スピードスターズのメンバーはレッドサンズの走りに誰一人付いてこれてなかったからな」

 

 「そ、そんなに⁉どうしよう、絶望的じゃない」

 

 「はははっ、恥ずかしい話俺達は元々走り好きが集まっただけの同好会みたいなもんだからな。本格的な走りを追求するレッドサンズとは質が違うから敵わないのも当然だよ」

 

 

 池谷が悲しそうな顔をしては自分達のチームを卑下する。

 

 

 「まぁ本来走り屋のチームっていうのはそういうもんだし。寧ろレッドサンズが異常なだけだと俺は思うんだが」

 

 「だったら尚更どうしょうもないわね…。せめて秋名に凄腕の走り屋がいたらこの件に関して頼めたかもしれないのに」

 

 「そうだな。そんな人がいれば天を仰ぎたいくらい…あぁぁぁ!!」

 

 「ど、どうしたんですか池谷さん⁉急に声を出したりしてはびっくりしましたよ⁉」

 

 「実は俺が働いているスタンドの店長がつい最近話してくれたんだけどな」

 

 

 池谷さんは何かを思い出したのか、その場で光達に話し始める。

 

 

 「店長?それって俺と真菜がここに来る前に寄ったスタンドの店長である立花さんのことですか?」

 

 「そうだ。店長が言うには俺達と走る時間帯が異なっているんだが、物凄い走りをする走り屋がここ秋名にいると以前教えたくれたんだ」

 

 「良かったじゃないですか池谷さん。だとしたらその人に頼めばこの件は何とかなりますね」

 

 

 少しだけだが池谷さんに一筋の希望が見えてきたのだった。

 

 

 「で、池谷さん。その走り屋が乗ってる車種は何なのかわかりますか?」

 

 

 利樹が池谷さんに車種を問うと池谷さんは口を重くしてはこう告げる。

 

 

 「それなんだが。うちの店長が言うにはその走り屋が乗ってる車はどうもハチロクみたいでな」

 

 「は、ハチロク?」

 

 「それってさっきイツキが言ってた車のことですよね?」

 

 「何故そんな凄腕の乗ってる車がハチロクという旧式の車なんだ?」

 

 「ねぇ二人共、ハチロクに乗ってるのがそんなにおかしいことなの?」

 

 「そりゃあハチロクは速いとはいえ、10年も昔の話だし」

 

 「まさかその店長さん。自分達が走って頃が凄かったことを自慢したいだけで大袈裟に言ったんじゃないすか?」

 

 「それはあるかもしれないが店長はこうも言ってたぞ。その走り屋は今は豆腐屋をしてるってな」

 

 「「「豆腐屋?」」」

 

 「この先にある秋名湖周辺のホテルに豆腐を卸してるみたいで、配達が終えては空になった車で麓まで下るときのスピードは一見の価値があるって豪語してたくらいだ。商売だから雨が降ろうが雪が降ろうが毎日走ってるから年季が違うし、秋名の峠ならアスファルトの染み一つ知り尽くしてると店長は言ってたんだ」

 

 

 池谷さんも疑問に思いながら祐一から聞いた話しを光達に教えるが今の話を聞くだけでは信じられないのか光と利樹は顔を互いに向けては話す。

 

 

 「なぁ光、今の池谷さんの話。信じられるか?」

 

 「にわかに信じ難いがとにかくその人に会ってみないことには何とも言えんな…」

 

 「それだったら、そのハチロクがここを走るのを待ってみるってのはどう?」

 

 「それは難しい話かもしれんぞ真菜。ホテルに豆腐を卸してるっていうのならおそらく早朝の時間帯だろうし、そんな時間になるまで待っていたら真菜の親父さんに叱られるし今の俺達では会うのは難しいかもしれないぞ」

 

 「俺も親父から車貸すのは構わんがあまり夜遅くまで遊ぶんじゃねぇぞって念を押されてるしな。とてもだか遭遇できそうにねぇな」

 

 「そうよね。アタシ達はまだ高校生だし会えないのならせめてお店だけでも分かればいいんだけど…」

 

 「だよな。その豆腐屋の知り合いがここにいてくれたら良かったんだけどな」

 

 

 これ以上はどうしようもなく俺達はその場で豆腐屋のハチロクに会えないか考えるも答えには辿り着かず諦めるしかなかった。

 

 

 「へっくしょい…!!」

 

 「どうしたんだよ拓海、急にくしゃみなんかしたりしてさ?」

 

 「いや、何か噂されてる気がしたんだけどな」

 

 「はぁ?何言ってんだお前?」

 

 

 今ここに豆腐屋のハチロク乗りと知り合いどころか身内がいることに誰も気付かなかったのである。

 

 

 「すみません池谷さん。力になれなくて」

 

 「いやぁ。元はと言えばこれは俺達の問題だし、気にしなくていいよ。それに明日は俺は午前中は非番だからちょっくらその豆腐屋とやらを自分で調べてみるよ。それじゃあまた今度来る機会があれば会いに来てくれよな。その時は色々と世話になるかもしれんから」

 

 「はい。池谷さん、頑張ってくださいね」

 

 「俺達もできるだけのことはしてみますから」

 

 「お気を付けてくださいね」

 

 「あぁ、またな三人共。気を付けて帰るんだぞ」

 

 

 そうして俺達三人は秋名山を後にしては地元である高崎へと車を走らせ帰路に着くのだった。

 

 

 

 

 

 高野モータース 入口前

 

 「おかえり真菜、光君。秋名の峠は楽しめたかい?」

 

 

 俺と真菜が高崎にある真菜が住んでる住宅兼販売店である中津モータースに着くや、父親である中津社長が俺達を出迎えてくれた。

 

 

 「全然よ。光ったら利樹と一緒にアタシを置き去りにしては二人だけで峠を攻めてたんだから」

 

 

 真菜は未だに置き去りにされたことを根に持ってたか、口を膨らませてはムッとしていた。

 

 

 「あははは、そりゃ残念だったね真菜。ところで光君、何か深刻そうな顔をしてるみたいだが一体何があったんだい?」

 

 「実は秋名に行った時色々ありまして…」

 

 

 秋名の峠で起きた事を事細かく説明し、それを聞き終えた中津社長は光と同じ様な顔をしては口を出す。

 

 

 「なるほどね。レッドサンズが秋名の走り屋チームであるスピードスターズを相手に交流戦をするからそれをどうすればいいか困っているんだね」

 

 「はい、池谷さんから俺にチームの代表として出てくれないかと頼まれましたが。この件に関しては地元の人達が解決しないといけないと思い断ってしまいました」

 

 「うん。光君の判断は正しいと僕は思うよ。もしそれでレッドサンズに勝てたとしてもそれは秋名の走り屋が凄いわけでもない上それを気に彼らは味を占めては光君に頼りガチになるかもしれないからあえて断っておいて正解だったね」

 

 「そんな…。じゃあパパは池谷さん達がどうなろうが構わないっていうの?いくらなんでもあんまりだわ」

 

 「あのな真菜。こればっかしはスピードスターズの人達が自力で何とかしないといけないことで俺達がしてやれるとしたら池谷さん達を見守るくらいしかできないんだ」

 

 「でも…」

 

 

 真菜が光に抗議するも、その場にいた中津社長は辛辣な言葉を真菜に言う。

 

 「いいかい真菜。遊びで走るだけならそれで構わないかもしれないけど、バトルをするとなれば話は別なんだ。走り屋は自分の走りに誇りを持っては車の性能を限界ギリギリまで引き出し、それこそ血の一滴まで搾り取る程の気持ちでやっていかないといけないんだ」

 

 「そ、そこまでやらなくちゃいけないの走り屋って…」

 

 「まぁ中津社長の言ってることあくまで例えだから真に受けなくていいよ。となるとこの状況を打破するにはやはり例の豆腐屋のハチロクを見つけないと」

 

 「そうよね。豆腐屋っていったって群馬には何十軒もあるんだからその中から探し出すなんて難しい話だし。豆腐屋のハチロクって情報だけじゃ居場所を見つけられそうにないわ」

 

 「豆腐屋のハチロク?文太がどうかしたのか?」

 

 「えぇ。その文太さんって人を探し出さないことには……へ?」

 

 「パパ、さっき豆腐屋のハチロクのことを文太って言ったよね?ひょっとしてパパはその人のことを知ってるの?」

 

 

 真菜が父親に尋ねると中津社長は答える。

 

 

 「そりゃあ知ってるも何も文太とは昔散々やりあったくらいだし。あいつとは長年のライバル関係だったんからね」

 

 「マジですか社長⁉」

 

 「嘘でしょ⁉パパとハチロク乗りのお豆腐屋さんが知り合いだったなんて初耳だわ!!」

 

 

 なんという偶然か。中津社長は豆腐屋のハチロクのことを知っており、光と真菜はそれを聞いては驚愕する。

 

 

 「ちょちょちょちょっと待ってください⁉ひょっとしてその人が今何処にいるか知ってるのですか!?」

 

 「勿論だとも。文太は渋川市の商店街にある『藤原とうふ店』って豆腐屋をしているからそこに行けば多分会えるかもしれないよ」

 

 

 中津は店の情報も知っており、それを聞いた二人はその場で歓喜する。

 

 

 「光!!」

 

 「あぁ。そうと分かれば明日の昼にでもその藤原豆腐店へ行ってはこの事を頼まないとな」

 

 「う〜ん。それは難しい話かもしれないよ」

 

 「え?」

 

 光が喜ぶのも束の間、中津社長は理由を説明する。

 

 

 「文太はとても頑固な性格をしていてね。頼まれてはいそうですかと簡単に聞き入れる奴じゃないのは僕自身何度も会っているからよぉく分かるんだ。それに豆腐の配達は今は息子に任せてるって言ってたから多分聞き入れてくれたとしても今の文太の腕は昔と同じかどうか怪しいしね」

 

 

 「マジかよ。これじゃあ八方塞がりだな。こうなってはもう潔くレッドサンズに負けるしかないか…」

 

 「そんなぁ…。じゃあどうしたらいいっていうのよぉ…」

 

 

 二人は中津社長から文太が頼みを断るかもしれないと聞いてはその場で落ち込み、結果は振り出しに戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 場所は再び秋名山。

 

 その場に残っていたのはレッドサンズのNo.2こと高橋啓介であり、兄の高橋涼介が帰った後、ここに残ったメンバーと一緒に走り込んでいたのだった。

 

 

 「随分走り込んだな…俺もうガスねぇや。何時だ今?」

 

 「もうすぐ4時ですよ…」

 

 「よっしゃボチボチ引き上げだ」

 

 

 啓介は残りのメンバーと一緒に秋名を下っては自分が住む高崎に帰ろうとするもこの前走った赤城と同じ様に他のメンバーがついてこれず啓介はその場でアクセルを緩める。その直後、ある一台の車がヘッドライトを照らしては近づいてるのに気付く。

 

 「うちのチームの車じゃねぇ…。何者だ⁉暗くて車種まではわかんねぇな…MR2か180…デカい車じゃねぇな」

 

 

 またしても走り屋としての本能か。啓介はこの前と同じ様に後ろから車に勝負を挑もうとした。

 

 

 「上等じゃねぇか!!赤城ではインプレッサを相手に抜かれはしたが、今度こそは勝ってやる。コーナー2個も抜けりゃバックミラーから消してみせるぜ!!」

 

 

 そうして秋名を舞台にバトルをするが、後ろを走ってる車は前と同じく後ろから付いていっては啓介から離れず、どんな車が走ってるか気になった啓介はサイドミラーを見ては驚く。

 

 

 「ハチロクだとぉ⁉ふざけんなァ」

 

 

 なんと後ろから啓介を追いかけてきたのはハチロクで啓介はそれに負けじと走り続けていくが全く振り切れず、ハチロクはFDを追いかけては離さないでいた。

 

 

 「(振り切れない。悪い夢でも見てんのかァ、ハチロクに追っかけ回されてるだとォ⁉)」

 

 

 啓介はハチロクに振り回されてることに腹を立てては怒りを全面的に出す。

 

 

 「ジョーダンじゃねぇくそったれがァ!!俺は赤城レッドサンズのNo.2だぞォ!!」

 

 

 だが、後ろを走ってるハチロクはFDについてきており。右側からFDを追い越してはスピードを上げる。

 

 

 「(こいつ…先を知らないのか!!減速して入らないと谷底へ真っ逆さまだぞ!!この緩い右の後はきつい左だ!!)」

 

 

 ギャ

 

 

 「言わんこっちゃねぇっ!!遠心力で後輪が出てる。あそこまでスピードが出てれば例え減速しても立て直すスペースはないっ‼」

 

 

 だがハチロクはそこでステアリングを切り替えしては慣性を生かしながら曲がっていき、勾配のキツいコーナーを切り抜けた。

 

 

 「か、慣性ドリフト⁉」

 

 

 ハチロクは慣性ドリフトでコーナーを曲がって行ってはそのまま走り去っていく。

 

 

 「(信じられん。俺は秋名山で死んだ走り屋の幽霊でも見たのか…。1つ目の右のカウンターは次の左の姿勢作りのフェイントだった…。腹立つくらいに完璧なスーパードリフト。)」

 

 

 啓介がその場でブレーキを踏み留まってから数分後、後ろからレッドサンズのメンバーが遅れてきては車を止めては啓介と合流する。

 

 

 「(俺のプライドはズタズタだぜ。峠仕様のFDで10年前のボロハチロクに負けた…。あのハチロク、この前のインプもそうだが何者なんだ…)」

 




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