頭文字S 未完結   作:ペンギン太郎

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ACT.6 ドラテク

 拓海がバイトしているガソリンスタンドに1台の紺色の車が来ては店長の祐一に声をかける。

 

 

 「やぁ祐一。久しぶりだね」

 

 「おぉ中津か。どういう風の吹き回しだ?態々高崎からうちのスタンドに来るなんざ珍しいじゃねぇか」

 

 

 スタンドに来たのはなんと真菜の父親である中津だった。中津は久しぶりにあった祐一に話しかけては来店した理由を言う。

 

 

 「いやぁちょっとガソリンを入れてもらうついでに祐一にお礼を言おうと思ってここに来たんだ。この前うちの娘とその友達である光君が祐一にお世話になったからね」

 

 「お前の娘だぁ…?。そうか、前にあの娘から父親が高崎で車屋をしてるって聞いたときはもしやと思ってたがまさかお前さんの娘だったとはな」

 

 「はははっ。真菜は自分の事を包み隠さず誰にも話してしまう子だからね。僕に似ず妻に似てしまったようちの娘は」

 

 「そうだな。お前の嫁さんは女にしては珍しく俺達と同じ走り屋だったからな。あの娘は母親のアグレッシブさを見事に受け継いじまってるよ」

 

 「うんうん、今でも僕はあの人には頭が上がらないしね。本当によく似てしまったよ」

 

 

 中津の嫁、即ち真菜の母親は中津や祐一と同じく走り屋をしていたことがありその縁があったからか二人は結婚しては今に至るのであった。

 

 

 「そうか嫁さんも元気そうで何よりだな。っとそうだった、ガソリン入れに来たって言ってたが今乗っているそいつがお前の愛車なのか中津?」

 

 「そうだよ。今乗ってるレガシィが僕の愛車さ。前に真菜達が乗っていたインプレッサと比べたら車重は重いけど走りが良くて気持ちいいから今の僕にはこれくらいが丁度いいんだ」

 

 

 スバル レガシィ RS(BC5)

 

 スバルが誇るフラッグシップ機であり、WRCにおいては僅か一勝しかせず途中インプレッサにその座を譲ってしまうもその走りは健在で今もスバルファンからは根強い人気を誇る車である。

 

 

 「OK。じゃあ今から入れてやるからちょっと待ってろよな」

 

 「あぁ頼んだよ祐一。ハイオク満タンでよろしく」

 

 

 レガシィにハイオク満タンを頼んでる間待っているとすぐ近くにいた拓海達が何やらドリフトについて話をしていたので中津はその話に耳を傾ける。

 

 

 「なぁなぁ拓海。お前ドリフトってどういうことか知ってるか?日本中の走り屋が大好きな用語だぞ」

 

 「それぐらい俺だって知ってるよ」

 

 「じゃ言ってみろよ」

 

 「それは…えーとカーブで」

 

 「カーブって言うなーダセーから…走り屋はコーナーって言うんだ」

 

 「あっそ。だからそのコーナーでさ…内側にコーナーが行き過ぎないように前のタイヤを外に流すんだろ…こうやって…」

 

 「「はああ?」」

 

 「(ぎくっ)」

 

 「(ほほぉ。そう来たか)」

 

 

 中津と祐一は拓海が言ったドリフトの意味がわかったのか関心を示すが、それを間近で聞いていた池谷とイツキはというと

 

 

 「「だーはっはっはっはっはっ」」

 

 「勘弁してくれよ拓海」

 

 「前輪が流れるのはそりゃアンダーっていって一番カッコ悪い下手くその代表だよ」

 

 

 二人は笑い転げては拓海を馬鹿にしていたのだった。

 

 

 「ドリフトってのは前輪(フロント)じゃなくて後輪(リア)を流すの…お前っておっかしーよサイコーだよ拓海」

 

 

 池谷が拓海にドリフトについて偉そうに語るもそれを近くで聞いていた中津と祐一は呆れていた。

 

 

 「わかってねぇのは池谷…お前の方だよ。ドリフト中のマシンてのは基本的にアンダーステアなの」

 

 「今拓海君が言ったのは4輪ドリフトをマスターしてないと言えない凄い高度な回答だね。おそらく秋名を頻繁に走り込んではその技を身に着けてはものにしてるみたいだ」

 

 

 話している途中。スタンドには激しいエンジン音を響かせては派手なリアウィングをつけた車が来店し、拓海がいらっしゃいませと言っては入ってきた車の前に出る。

 

 

 「ハイオク満タンだ…」

 

 

 店に入ってきたのはなんとレッドサンズの高橋啓介であり。拓海と池谷はそれに気付くも平然としては客として振る舞う。

 

 

 「随分熱心ですねお客さん…」

 

 「んっ」

 

 

 啓介はスタンドの端に止めてあるS13を見てはあることに気付き始める。

 

 

 「どっかで見たようなS13だと思ったら…。スピードスターズの…」

 

 

 池谷は啓介の言うことを無視しては懸命にFDの窓を拭いていく。

 

 

 「ひとつ…聞いてもいいかな…。あんたなら多分知ってるだろ…」

 

 「?」

 

 「秋名山には幽霊が出るんだろう?」

 

 「(ん…幽霊?彼は一体何を言って…)」

 

 

 ガソリンを入れているレガシィの車内から聞いていた中津は啓介の言うことに耳を傾ける。

 

 

 「鬼みてぇに馬鹿っぱやいハチロクの幽霊さ…」

 

 「からかうのはやめてくれませんかねお客さん」

 

 「(あぁそういうこと。確かにあれは普通のハチロクとは言えないしね)」

 

 

 中津は啓介の言ってるのが文太のハチロクだと理解しては再び耳を傾ける。

 

 

 「幽霊ってのは冗談だけどな白黒のパンダトレノだ。見た目は普通のハチロクだけど中身は多分途方もないモンスターだろ。地元が知らねー筈がねぇぜあれだけの車を…」

 

 「何言ってたんだ…⁉」

 

 

 池谷は啓介の言ってることに驚くも未だに半信半疑になる。

 

 

 「ばっくれやがって…まぁいいさ。土曜日の交流戦の秘密兵器のつもりならこっちも望むところだぜ!!あのハチロクのドライバーに伝えておけ…。この前負けたのはコースに対する熟練度の差と俺の油断だ。俺は同じ相手に二度負けねぇってな」

 

 「⁉」

 

 

 啓介は池谷に宣戦布告してはハチロクを連れてこいとでも言うような言い方をするが池谷は困惑する一方であり。

 ガソリンを入れ終わるやFDのエンジンを掛けてはロータリーエンジンを響かせてはスタンドを去っていくのだった。

 

 

 「ありがとうございましたー」

 

 

 拓海が過ぎ去っていく啓介に礼をしては頭を下げ、見送った後。池谷は啓介が言ったことが余程信じられないのかその場で呆然とする。

 

 

 「(高橋啓介が一度負けただぁ…⁉何のことだ…そんなハチロク知らないぞォ俺だって)」

 

 「(……)」

 

 

 池谷は何か思い出しては拓海の方に顔を向けるも即座に反らした。

 

 

 「(まさか…。だけど拓海ん家のハチロクも確かパンダトレノだ……!!店長の言ってたことは眉唾じゃないってのか…。今でも下り最速のハチロクは本当(マジ)で実在するのかぁ…!!)」

 

 

 池谷は前に祐一が言っていたことを思い出しては例のハチロクが本当にあるとその場で信じようにも信じられない気持ちで一杯だった。

 

 

 「なぁ拓海…。池谷先輩とレッドサンズのFD。何か話してたろ?何話してたか聞いてたか?」

 

 「さぁなー…俺も聞いてなかったよ」

 

 

 拓海はイツキからの質問に素っ気なく返しては仕事に戻るも、今の話を聞いていた中津は拓海を見てはますます興味を示していた。

 

 

 「(まさか拓海君がFDを打ち負かす程の実力を持っていたとはね。文太の奴、彼を一体どこまで鍛え上げるつもりなんだ…。まぁこのことは彼らが自分で気付くまで黙っておくとするか)」

 

 「おい中津、いつまでいる気なんだよ。ガソリンはとっくに入れ終わってるぞ」

 

 「へ?あ、すまなかったね祐一。じゃあまた今度来るときがあったらやっかいになるよ」

 

 「おう、また来いよな中津」

 

 

 中津は祐一に見送られるやレガシィのエンジンをかけては啓介に続くようにスタンドを去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 秋名山

 

 

 「(ダメだ…。こんな恐ろしい思いをしてもタイムはちっとも縮まってない。俺は今までアクセルさえ開ければタイムは縮まると思ってたけどそんな甘いもんじゃない…。俺達は今までこんなトライをしたことがなかったからな…)」

 

 

 この日の夜。池谷は車に乗ってはストップウォッチを片手に一人で秋名の峠をギリギリまで攻めて行ってはタイムを縮めようとするがその記録は一向に変わりはせず、時間と走った分のガソリンを無駄にするしかなかった。

 

 

 「(レッドサンズや光達はモータースポーツの経験者だからタイムの削り方をよく知っている…。このままじゃとても太刀打ちできねぇ…。俺のテクニックなんてこの程度だったのか…!!)」

 

 

 池谷は自分の無力さに悔しがるも、この場には池谷に寄り添う人がおらず。池谷は秋名の峠で嘆く他なかったのだった。

 

 

 

 

 

 藤原豆腐店

 

 

 ピピピピピ カチッ

 

 

 「……」

 

 

 早朝の3時過ぎ。拓海は目を覚まし顔を洗っては服を着替えていき、豆腐が積まれたハチロクに乗り込む。

 

 

 「うし、今日の水はこんなもんか…」

 

 

 父である文太が紙コップに適量の水を入れてはそれを拓海に渡し、ハチロクの缶ホルダーに入れるや拓海に言う。

 

 

 「いいか、こぼすんじゃねぇぞ」

 

 「わかってるよ」

 

 

 拓海はハチロクのエンジンを掛けてはリトラクタブル・ヘッドライトを点灯し店を出ては豆腐の配達をするため秋名のホテル街へと向かっては車を走らせる。峠を上ってゆく途中で紙コップの水を見ては零さないよう気を使いながら秋名の峠を走り続けていくのだった。

 

 

 「考えたね文太。水の入った紙コップを使って走らさせるなんていいアイディアじゃないか」

 

 

 その様子を店の近くで停まっていた車がハチロクとすれ違い。ハチロクが行ったのを確認しては車からある人物が出てきては店の中に入ろうとした文太に声をかける。

 

 

 「あ?なんだお前かよ…。こんな朝早くからうちに来るなんざ一体何の用があって来たんだ?」

 

 

 店の側で文太が拓海に水の入った紙コップを渡すところを見ていた中津は拓海が乗ったハチロクを見送った後文太に近付いては文太の店に来た理由と拓海にやらせていることを口にする。

 

 

 「昨日の昼にレッドサンズっていう赤城のチームのFDが祐一の経営するスタンドに来てね。前に秋名で君のハチロクに抜かれたと言っていたから拓海君にどういう鍛え方をさせたのか気になってちょっと見させてもらったんだ」

 

 「けっ、あれを見ただけでわかる奴なんざお前か祐一ぐらいしかいねぇしな。で、ここに来た理由はそれだけか?」

 

 「そんなわけないだろ。ついさっきホテルに豆腐を持っていったってことは作り立ての豆腐が店にあるんだろ?それを買いに来ては今日のおかずに使おうと思ったんだ」

 

 「あ、そう。なら好きなだけ持っていけよ。どうせ、うちの豆腐はそんな美味くねぇしな…」

 

 「おいおいそんな事言うなよ文太。今の発言はお前んとこの豆腐を使ってくれている方々に失礼じゃないか」

 

 

 互いに愚痴を溢し合っては談話をする二人。中津は文太の店で豆腐を買っては高崎へと帰っていき、拓海が豆腐を卸し終えて下ってきた時の時間は4時過ぎとなっており、既に朝日が昇っていたのだった。

 

 

 

 

 

 「よぉ光。相変わらず不躾な顔をしてるなお前は」

 

 「悪かったな。この顔付きは生まれつきなんだよ」

 

 

 その日の朝。学校に登校するや、教室の前にて利樹から無礼な挨拶をかけられては不機嫌そうな顔をする光。

 

 

 「そういやそうだったな。で話は変わるけどよ、今度の土曜日に秋名で行われる交流戦。お前はどうするつもりなんだ?」

 

 

 利樹が言う交流戦とは秋名をホームコースにしている秋名スピードスターズと赤城山を本拠地としている赤城レッドサンズが行うバトルのことだ。

 最も先週の土曜日にレッドサンズが秋名を走ってはスピードスターズを圧倒していき結果は散々だったが。

 

 

 「どうもこうもねぇよ。あの高橋啓介から絶対に来いって言われた以上行かないわけにもいかんしな」

 

 

 「へっ?なんで高橋啓介がお前にそんなことを言ったんだ…?」

 

 「この前真菜と一緒に秋名に寄った際高橋啓介と遭遇してな。向こうから挑まれては上りでバトルをやったんだ。結果は引き分けに終わったがその時に今度行われる交流戦は来るように釘を刺されたんだよ」

 

 「マジか⁉あの高橋啓介からそんな事言われるってお前相当期待されてるみたいじゃねぇか!くぅ〜永遠のライバルである筈のお前が俺よりも先に行くなんざ羨ましくて性がねぇぜこん畜生め…!」

 

 利樹はやけに興奮しては光を羨ましがるが、光はあまり乗り気でなく。厄介事に巻き込まれたとばかりな気分で一杯だった。

 

 「で、どうなんだよ今のところの心境は?」

 

 「どうってとりあえず今は目の前のことに集中するだけだし、交流戦に関してはその時に考えておくだけさ」

 

 「っしゃあ、今度の土曜日が待ち遠しく思うぜ。あー俺も早く秋名でランエボを走らせたいぜ全くー!」

 

 「(こいつ、この前秋名であれだけのことをしたくせに全然懲りてないみたいだな)」

 

 「おはよう光、利樹…」

 

 「お、どうしたんだ真菜。朝から元気がねぇぞ。何かあったのか…?」

 

 

 いつもは元気そうな顔を見せる真菜が今日に限ってはどういうわけか、げんなりとしていてはテンションが低めであった。

 

 

 「今朝早くからパパが豆腐を沢山買ってきてね。それを今週の間に全部食べないといけないから朝から晩まで豆腐尽くしでうんざりしてたとこなのよ」

 

 「(豆腐?あの人がこのタイミングで豆腐を買う理由として考えられるとするなら拓海ん家の豆腐屋に行った以外に思い当たらんが)」

 

 「うひゃあ〜そりゃ災難だな真菜。俺は豆腐は好きじゃないからその気持ちはよぉく分かるぜ。お前もそう思うだろ光」

 

 「そうか?俺は豆腐は好きだしアメリカにいた時もスーパーで買っては結構食べてたぞ」

 

 「へぇ〜。光がちゃんとした食生活を送ってたなんて意外ね」

 

 「そりゃあ向こうの食事はカロリーが高めのヤツが多くてそういったヘルシーな食材が少なかったからな。母さんが料理研究家で家にいる時料理を教えてもらっては体を壊さないようしっかり考えては食べてきたからな」

 

 「なんだよ。俺だったら毎日ハンバーガーやポテトでも飽きずに食べ続けられるけどなぁ」

 

 「そんなのダメに決まってるでしょ。ちゃんと栄養を考えて取らないといけないんだから」

 

 「おいおいお前は俺のお袋かよ…」

 

 「誰がお袋ですって…!」

 

 

 真菜は利樹の言ったことに腹を立てたのかいきなり利樹の肩を殴ってきた。

 

 

 「痛ったぁ!どうしたんだよ真菜。いきなり殴ることはねぇだろうが…」

 

 「今のは失言したお前が悪いだろうが…。ま、豆腐を食べてはその荒れた顔がますます綺麗になるといいがな」

 

 「アンタも充分失礼じゃない!」

 

 「ちょっ!いきなり蹴飛ばすなよ!」

 

 

 真菜はローキックをしては光に見舞うも、光はそれをくらっては痛みを受けた足を擦って教室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 「いらっしゃい」

 

 

 文太が営んでいる藤原豆腐店に一人の男がやってきた。

 

 

 「(この人が秋名下り最速のハチロク乗り…。あの高橋啓介のFD-3Sをちぎるほどの走り屋か…!!)」

 

 

 やってきたのはスピードスターズのリーダーである池谷で、文太の元へ尋ねては今度の交流戦へ出てくれないか頼みに来たのであった。

 

 

 「…何にします?お客さん」

 

 「あ…あの、えーと…厚揚げ…下さい(何やってんだ俺は…)」

 

 

 池谷は本心とは真逆に厚揚げを注文するが、注文して直ぐ様用件を文太に伝え始めるのだった。

 

 

 「あの…俺池谷っていう者ですけど…。秋名スピードスターズっていう走り屋のチームやってます!!」

 

 「……」

 

 「俺実はある人から変わった噂を聞いて来たんだけど…それはどんな噂かっていうと…秋名の下りで一番速いのはハチロクに乗ってる豆腐屋の親父だって言うんです!!」

 

 「…どこの誰が言った噂か知らねーけど…。俺じゃねぇなそれは…」

 

 「しらばっくれないでもらいたいな…。群馬中探したってハチロクで配達する豆腐屋なんて…他には絶対ない!!」

 

 

 池谷は一向に引き下がらず文太に食いつく。

 

 「オイオイ…お客さん。それがもし俺のことだとしたらどうだって言うんだい?まさか秋名最速を賭けて勝負してくれなんて言わねーでくれよな…。ほい、140円だよ」

 

 

 池谷は厚揚げの料金を渡しては厚揚げの入った袋を貰い、話を続けるのだった。

 

 

 「いや…そんなつもりはないんですけど、ちょっと込み入った事情があって…俺の話を聞いてもらえませんか?」

 

 「困るんだよなー仕事中だからさー」

 

 「ヒマそうじゃないですか客いないし…」

 

 「失礼だなあんた…言いにくいことズバっと…」

 

 「すいません。ちょっと俺も必死なもんで」

 

 「そこまで言うなら話ぐらい聞いてもいいけど…」

 

 

 池谷から話を聞き終えるや文太はタバコを蒸しては口を開く。

 

 

 「なるほどなァ…。昔から赤城の走り屋はうまい奴が多かったなーそういや。何せあいつが走ってたくらいだ。あんたの気持ちはわからんでもねーがその話は断るぜ。今更俺みたいな親父が出張っても場違いってもんだろ…。それはお前ら、若いもん同士でどうにかしなきゃいけねぇー問題だぜ」

 

 

 池谷は前に光から同じ様な事を言われたのを思い出しては歯軋りするが、それでも尚引き下がらずにいてはあることを頼みだす。

 

 

 「なら…せめて俺に秋名の下りの攻め方を教えてくれませんか?」

 

 

 出てくれないならば自分にコツを教えてくれないかと池谷は文太に頼む。が、

 

 

 「せっかくだが…それも無理な注文だな」

 

 文太はその頼みも断っては口を重く開いてはこう語るのだった。

 

 

 「ドラテクってのはたった2、3日でどうにかなるようなもんじゃねーんだ。どうすれば思い通りに車が動いてくれるのかを…トコトン考えてはトコトン走り込むしかない。俺なんざ現役で走ってる頃は夢の中でさえも秋名を攻めてたぜ。寝ても覚めても考えることといえば走りのことだけだったよ。それでちょっとでも思いつくことがあれば夜中でも布団から飛び出して峠で試しに行くんだ。常識では考えられないような素っ頓狂なことも試したな。10個思いついたアイデアの内9つは使いものにならなかったがそれでも懲りずに走り続けたよ」

 

 

 文太の言っていることは自分の生き様を示しており、池谷はそれを聞いては口を紡ぐ。

 

 

 「技術(テク)ってなァそういうもんだ。教えられて身につくもんじゃねぇよ自分で作るもんなんだ…。帰んな、力になれなくて悪かったな…」

 

 

 池谷はその場から立ち去ろうとするが踵を返しては文太に言う。

 

 

 「俺は諦めてませんよ藤原さん。また来ると思います。俺は秋名で育った走り屋だから…。レッドサンズが秋名の走り屋全部をバカにしてるのが見え見えでそれが一番ムカつくんですよ。秋名にだって本当に実力のある走り屋はいるってことをあいつらに見せつけたいだけなんだ」

 

 「……」

 

 「あんたならそれができる…。赤城最速の高橋兄弟を一度負かしてるんですからね…」

 

 

 そういうや池谷は自身の車に乗っては行ってしまい、その場で立っている文太はおでこを掻いてはこう思うのだった。

 

 

 「やれやれ…ホントに俺じゃねぇんだけどな…。池谷とかいったけな…。嫌いじゃねーなああいう奴は…」

 

 

 そうして文太が店の中に戻っては数時間後。池谷は再び秋名の峠を攻めていくが。途中対向車とすれ違ってはなんとか躱すも直ぐ側のガードレールに車をぶつけてしまい。自身と車に重症を負わせてしまうのであった。

 




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