ルフィの娘の過去改変記   作:微炭酸は弾けない

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第2話 タイムマシン

エースおじさんのことは、パパはあまり話してくれないのでこれはガープ爺から聞いた話なんだけども、ポートガス・D・エースという男の生涯は常に親から残された因縁と運命が付き纏うものだったという。

彼はその呪縛から逃れたくて、ただ愛を求めて、義兄弟や白ひげ海賊団(家族)と出会い、死の間際で初めて、自分という存在が、父親であるゴールド・ロジャーとは関係なく、愛されているのだと理解し、全ての家族に感謝をしながら逝った。

 

「私はパパとママが大好きだけど、世界から見たら二人共極悪人じゃん?でもな~んにも思わないよ?」

 

「貴女はアマゾン・リリー(ここ)とシャボンディ諸島、あとは私達に友好的な元仲間の故郷にしか行ったことがないからあまり感じないでしょうけど、海賊という悪に脅かされている人々の怨嗟は大きいものよ」

 

アマゾン・リリーではママは皇帝だから皆からきゃーきゃー言われて、我儘し放題。というか国の法を捻じ曲げてパパを住まわせてるくらいだしね。パパも人気者でたまに嫉妬に狂ったママが自国の戦士たちをボコボコにしちゃうくらいだ。

そんな環境で育った私には、同じように極悪人の子であっても、エースおじさんの気持ちなんて分かりはしないのかもしれない。

 

「このタイムマシンが動けば、エースおじさんに直接聞けるんだけどなぁ」

 

「ふふ、フランキーが作った発明品ね?」

 

私は自身の左腕に着けた腕時計をロビンさんに見せながらため息を吐く。『形状記憶合金ワポメタル』で出来ているこれは、ボタン一つで蛸型の気球へと変形する。名前は『オクトパスバルーン54号』。長いので『オクトちゃん』って呼んでる。

オクトちゃんは恐らく世界に一つしかないタイムマシンなのだ。

 

「うん、でもこれ未来にしか飛べないんだよねぇ。構造としては理論上、過去にも飛べるはずなんだけど、そもそも燃料にしているのがトキトキの実の血統因子から作ったものだから、過去に飛ぶには別の燃料が必要なのかも」

 

トキトキの実は自分や他人を未来へ飛ばすことができる能力だけど、あくまで未来へ飛ばせるだけで過去に戻るわけではない。それでも時に干渉する作用があるのは間違いないから、今後、研究が進めばこのタイムマシンも過去へ行けるようになるかもしれない。ちなみに未来へ飛ぶことは成功しているけどかなり燃費が悪い。1年間かけて作った燃料で飛ぶことができたのは僅か3日間。世界的大発明ではあるのだけど、何の意味があるんだという代物になってしまっていた。

 

「戻す、というだけなら昔、モドモドの実の能力者がいたわね。人に触れることで12歳分戻す能力よ」

 

「戻す力……トキトキの実の力で時に干渉し、その力の方向を『戻す』方向に逆転させられれば……」

 

ロビンさんの情報は研究する価値のある情報だ。12歳分若返らせるなんてどんな理論で発現しているのか見当もつかないけども、人間を構成する60兆個の細胞を12年前の状態に戻すなんてことは尋常ではないエネルギーを必要とするはず。これを燃料に利用できれば過去に戻ることも不可能ではないかもしれない。

 

「そのモドモドの能力者ってもう死んでる?」

 

「私達との戦いでは死んでいないと思うけれど、その後どうなったのかは分からないわね。元海兵だからガープさんなら何か知っているかもしれないわよ?」

 

「元海兵!なら、フランキーがDr.ベガパンクから提供された血統因子の中にあるかも!」

 

フランキーはパパが七武海になった後も、しばらく未来国バルジモアで色々研究していたらしく、それに興味を持ったDr.ベガパンクと協力関係にある。Dr.ベガパンクが政府には使わせたくないようなものの研究を一部、委託しているような形だ。これによって数年前、ウォーターセブンはアクア・ラグナの心配がない海へ浮かぶ島になった。島丸ごと船にしてしまったのである。

 

「タイムマシンも元はと言えば、Dr.ベガパンクが構想を考えた装置だからね。ロビンさんは知っての通り、政府は『過去』を知られることを極端に恐れている。よってこの研究も大っぴらには出来ないということでDr.ベガパンクから回ってきた研究ってわけですよ」

 

トキトキの実の血統因子はその時に提供されたもので、他にも超人(パラミシア)系を中心に大量の血統因子を提供されている。元海兵でそんな有用な能力を持っていたのなら間違いなく研究対象になったはず。その中にモドモドの実の血統因子があってもおかしくはない。

 

「早速フランキーに聞いてみよう!くぅ〜研究の匂いがするっ!」

 

「本当、ルフィの子とは思えない頭脳派ね……」

 

パパもママも脳筋なので私のこのワクワクを分かってくれる人ってロビンさんくらいなんだよね。ロビンさんも考古学者として、僅かなヒントから研究を繰り返し、新しい知識を得ることにワクワクを感じるだろうから、ある程度私の気持ちに共感してくれるけど、パパなんて、『不思議〇〇か』で大概適当に理解しようとするし、ママもそんな小賢しいことは誰かにやらせとけという様な無関心だ。あの人達、理論も分かっていないのにラディカルビームを素手で弾くからね……我が両親ながら脳筋が過ぎるよ。

 

私はタイムマシンが完成したら真っ先にロビンさんに見せることにして、フランキーに連絡を取るべく、電伝虫まで走り出した。

 

 

 

 

 

 

「うわぁああああああ!!!フランキーのバカぁ!変な髪型!コーラ狂!」

 

 

嬉しいことにモドモドの実の血統因子をフランキーが持っていたので、私達は三日三晩不眠不休で研究を続け、新エネルギーを開発。ここまでは良かったのだけど、寝てな過ぎておかしなテンションになったフランキーが「俺の発明に失敗はねぇ、スーパ〜!!」とか言ってオクトちゃんを起動してしまったのだ。私も眠さでボーッと眺めていたのだけど、良く考えたら誰も乗ってないのに起動してしまって、本当に過去へ飛んでしまったらオクトちゃんは帰ってこられないんじゃね?ってことに気が付き、慌てて飛び乗る。それが圧倒的ミスであった。一瞬後、ふわりと体が浮き上がるような感覚と共にオクトちゃんが起動する。そしたら――地面も見えないくらい上空から逆さまに落下していた。

 

「ここどこ!?というかこのままだと死ぬぅううう!!」

 

オクトちゃんを今から正常に飛ばすのは不可能なので、腕時計状態に戻し、空を落下しながら必死に周囲を確認する。地形的に女ヶ島で間違いないが、先程まで薄暗い明け方だったにも関わらず、今は薄っすらと日が落ちた夕暮れだ。これは過去か未来かはともかく、時間移動に成功したらしい。設定的に過去に戻ったんだと思うしすごい嬉しいけど、このまま落下していたら死ぬ。落下予測地点は海ではなく、女ヶ島。落下時の衝撃さえなんとかすれば大丈夫!

 

「こんなこともあろうかとっ!」

 

私が懐から取り出したのは『ゴムゴムの風船クッション』。パパの技であるゴムゴムの風船をモデルに開発したもので、砲弾すら跳ね返すその技を再現すべく作られたこいつを盾にすることで落下時の運動エネルギーを吸収、衝撃を緩和しつつ、自身の体は武装色の覇気で守る!

 

「ふぐっ!」

 

ママから妾を除いて世界一と言われる美貌も台無しの、美少女にあるまじき声を出しながら何とか着地。木々を薙ぎ倒し、巨大クレーターを生成したものの、私は無傷だ。ありがとうゴムゴムの風船クッション。

 

 

「ふぅ、何とか生き残ったぁ」

 

生き残ったけど、状況が激ヤバであることは変わりない。オクトちゃんを見てみると燃料は1割を切っていてこれじゃあ現代に帰れない。ここが何百年も前だったら血統因子を取り出す手段がなくて詰みなので泣きそうである。そもそも人がいない時代とかだったらどうしよう。

幸い、研究のためにアマゾン・リリーの近くの無人島にいたため、獣に襲われた時のために完全武装状態だ。ここはパパを見習って何とかなると思っておくことにしよう。

 

「植物の群生を見るに何百年も前とかじゃないと思うんだけど」

 

私の知るアマゾン・リリーと植物は変わりない。空から建造物っぽいのも見えたし、人がいない程の過去ではないと思う。ちょっと希望が見えてきたので見聞色で探ってみることにする。

 

「あ、沢山の人!少なくともアマゾン・リリーは存在してる!そうだよね、良く考えたらあの燃料じゃ精々戻れて20年、最悪でも20数年前なんだよ!」

 

人がいる時代と分かったことで安心したのか頭が回り始めた。20年前ならDr.ベガパンクはもう存在し、血統因子も発見しているはず。悪魔の実や能力者からそれを摘出する技術が確立されていなかったとしても、Dr.ベガパンクが存在してくれれば、私から未来の知識を提供することで速攻出来るようになると思う。そうなると必要になってくるのはモドモドの実とトキトキの実。時間に干渉するトキトキの実は必須として、未来へ飛ぶにしても20年後に飛ぶならば強大なエネルギーが必要なのでモドモドの実も欲しい。

モドモドの能力者は海軍に所属していたらしいから良いとして、問題はトキトキの実。その血統因子をDr.ベガパンクがどうやって手に入れたか知らないからこの時点で持っているのか分からないんだよねぇ。

帰るだけならトキトキの実の能力者に飛ばしてもらえば良いんだけどどれくらいの精度なのかも分からないし、安全を考えたら理論上狙った未来へ飛ぶことが出来るオクトちゃんで帰りたいしなぁ。

 

 

……ああー、これ帰れるまで結構かかるかも。

 

 

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