ルフィの娘の過去改変記 作:微炭酸は弾けない
「ソニア叔母さん!マリー叔母さん!」
過去のアマゾン・リリーへやってきた私は、見聞色で見つけ出した2人の元へ真っ先に向かった。この国の皇帝が住む九蛇城にいたわけだけど、つまりは勝手知ったる実家なので安々と侵入できた。
ママの妹である2人、サンダーソニア叔母さんとマリーゴールド叔母さんは現代よりもやや若い姿で確かに存在していて泣きそうになる。抱き心地がとてもいいマリー叔母さんに飛びつくと2人は警戒心と共に慌てていた。
「貴女誰!?どこから入ってきたの!!」
「まさか、姉様が不在の時を狙って!?」
なんかこのままだとヤバそうなので、私は名残惜しくもマリー叔母さんから離れて服装を正した。
ママとお揃いで着ている動きやすいように深いスリットの入った体に沿ったドレス。九蛇の民族衣装のようなものであるそれに、これまたママとお揃いの蛇のイヤリング。こちらはワポメタルで作った特注品。ドレスとは合わないからママに美しくないと言われているポーチと、ブーツ。何より目立つのは腰に差した刀が大小様々で六本。
「この反応ってことは私が生まれる前か、かなり小さいってことか……でも2人の外見からしてやっぱりそこまで過去じゃない」
身嗜みを整えつつ、私が状況を整理していると、完全に臨戦態勢に入った2人が目の前にいた。やばい、思考に没頭しすぎた。
「目的は何!?姉様が不在の間、この国は何があっても私達が守る!命が惜しければ今すぐ降伏しなさい!」
何て説明すれば分かってもらえるのか、長々と状況を説明している余裕はなさそうだったので、とりあえず、自己紹介をすることにした。
「私はボア・ソラーレ」
「えっ、『ボア』?ふざけているのなら――」
名乗ったところで一気に2人の覇気が強まるのを感じたので、言葉を遮るように続きを話す。
「アマゾン・リリー皇帝ボア・ハンコックと、その夫であるモンキー・D・ルフィの娘――つまり、貴女達の姪です!よろしくね!」
「「えええええええええええぇぇええっ!?」」
数秒か、数分か。絶妙な停止期間を経て、2人は目玉を飛び出させながら、驚愕の声を上げた。
◆
「つまり20年前くらいの過去ってことかな……」
2人から今の暦を聞いた感じ、私がいた未来から大体20年前ってところだ。燃料の減りから予測した通りなのでオクちゃんが理論通りの働きをしていてとても嬉しい。この時代ならDr.ベガパンクはバリバリに活躍してるし時間はかかっても何とか帰れそうな感じで良かった。どうやって接触するかとか、トキトキの実はもう入手済みなのかとか、問題は山積みだけど帰れる可能性が0ではないなら希望はある。
「ルフィがここに来たことはアマゾン・リリーの人間しか知らないし……それにこれだけの美貌、姉様の子と言われても納得がいく。でしょ、マリー」
ソニア叔母さんがまじまじと私の顔を見ながら、未だ放心状態といった感じのマリー叔母さんに語りかける。
「ええ、そうですね。未来から来たなどととても信じられませんが、この美しさだけは偽りようがない」
凄いなママの美しさ。理論的な説明を超越して、この美しさはボア・ハンコックの娘以外ありえないって結論で落ち着いたよ。やっぱりママの言う通り、美しければ何しても良い理論って正しいのだろうか。パパの超楽観主義も、ママの超我儘独裁も、こんな大人にならないぞって反面教師にしてきたけど、こうして窮地に陥ると正しかったんじゃないかと思えてくる。あの思考って強者が辿り着く境地みたいなものだったのかもしれない。
「新聞ってあります?今がどのくらいの時期なのか知りたくて」
「確かそこら辺にニョン婆の読んでたものが……」
マリー叔母さんが探してきてくれた新聞を読んで、私は椅子から転げ落ちそうになった。だって――
「ポートガス・D・エースの公開処刑!?」
「ええ、そのために姉様は海軍に招集され、ルフィはそれに乗じて兄を助ける作戦なの」
何の偶然か、今はマリンフォード頂上戦争がもうすぐ始まるってところらしい。パパから聞いた話ではママの手引でインペルダウンに侵入したパパは、何とかエースおじさんの囚われていたレベル6へ到達するも既にエースおじさんはマリンフォードへと護送されていて、パパは頂上戦争へと踏み込むことになるのだ。
そういえばママは、ここでルフィに求婚されたって言ってたけど本当なんだろうか。パパにそんな余裕なかったと思うんだけど。
「この戦争でエースおじさんは死にます」
「そんなぁ!じゃあルフィは!」
「私が生まれたようにパパは生き残りますが、エースおじさんの死がキッカケで仲間を失うことを恐れ、パパは海賊を辞め、ママと結婚するんです」
パパが海賊を辞めたことで仲間達は皆、それなりに楽しくやれているように思える。この時の選択は正しかったのかもしれない。冒険を捨て、現実を取ったパパの判断が間違っていたはずがない。でも私は知っている。パパが時折、宝物の麦わら帽子を抱きながら海を眺めているのを。ロビンさんが未だに辺境のアマゾン・リリーでコツコツと研究を続けているのを。他の仲間達だって、解散した後も夢を抱き続けてる。
過去を変えれば未来がどうなるか分からない。もしかしたら過去を変えたところで、私の知る未来は変わらないのかもしれない。最悪の場合、私が生まれずに消えてしまうかもしれない。誰も過去にタイムスリップなんてしたことがないんだ、どうなるかなんて分からない。
それでも私は、パパやその仲間達の夢の果てって奴を叶えたいと思うんだ。
だからそのために私は――エースおじさんを助ける。
「私は今からエースおじさんを助けに向かいます」
「え!?無理よ!今からでは到底、処刑時刻に間に合わない」
「普通の手段では無理でしょうね。でも私には未来の交通手段がある」
オクトちゃんは気球としても運用が可能だ。
「申し訳ないですけど、食料を頂けますか。後……色々汚れてるので湯浴みさせて下さい」
えげつない量の冷や汗かいたし、土埃まみれだ。一回湯浴みさせて貰って、綺麗にしたい。パパは全然気にしないけど、私はちょっと潔癖気味なのでこうも汚れているとぞわぞわして仕方ない。
「分かったわ!後は着替えも用意しておくわね」
「すいません、お願いします」
私の着ている服は特別製で、ワポメタルを加工した糸を編み込んで作られているため防御力に優れ、壊れてもワポメタルを補充することで自動修復する一張羅だ。とはいえ、この時代ではワポメタルが簡単に手に入るとは思えないので、いざという時まで温存しておこう。形状記憶合金であるワポメタルを使っているのでサイズを小さくしておくことも出来るから持ち運びには困らないし。
「ふぅ、未来と変わらない我が家のお風呂が落ち着くぅ」
脱いだ服を洗濯のために預け、お風呂に浸かる。
1日に何回も入るくらいにはお風呂が好きで、この場所も私の部屋かと言うくらい使用頻度が高かったので非常に落ち着く。最近はロビンさんが一緒に入ってくれなくなって寂しかったんだよな。もしかしたらこの時代のロビンさんならワンチャンあるかもしれないので未来に戻るまでにチャンスがあれば会ってみたい。この頃の麦わら海賊団メンバーってそれぞれがバラバラに色々なところに飛ばされているから会うのは苦労しそうだけど、ロビンさん以外にも会えたらいいなぁ。