ルフィの娘の過去改変記 作:微炭酸は弾けない
湯浴みから上がると既に服や食料を用意してくれていた。私がパパの娘だからか、食料が1人分にしてはかなり多い量だ。パパみたいに豪快に食べたりはしないけど、ちょっとばかり食べる方なのでありがたい。オクトちゃんに乗せられる量ギリギリまでは持っていくことにして、時間もないのでこのまま出発することにする。
「必ず無事に帰ってくるのよ」
「自分の無事を一番に考えなさい」
ママより過保護な2人の叔母はどうやらもうその兆しがあるようだ。もう何回目かも分からない2人の心配の言葉を有り難く頂きつつ、振り切るようにして私はアマゾン・リリーを出発した。
オクトちゃんによる移動は私の能力があれば燃料の心配はない。出せる最高速度で目的地へと突き進んでいく。
「思ったより近い……天候も安定してるし、これなら今日中に着きそう」
手に持っているのはビブルカード、それも未来で開発された最新式。
髪の毛なんかの体組織を材料にして作られたこの紙は、材料に使った体組織の人間がどこいるのか常に示す便利なアイテムなのだ。紙を置くと常に対象者の方へ動いていくので、その方角に向かえば辿り着ける。
「見えてきた」
目的地の島が見えきたので着陸の準備。なんか警鐘が鳴らされているのが聞こえるけど、気にせずそのままゆったりと着陸する。
うわぁなんか凄い数の兵士が出てきた。そりゃこんな気球で近づいてくれば警戒もされるし、そもそもここに予定外の来訪者が訪れることなんてないのだ。そう――
「貴様何者だ!どうやってここへ来た!この――バルティゴに!!」
――ここは革命軍の本拠地『バルティゴ』。
革命軍は世界政府の打倒を掲げて活動する反政府組織で、何を隠そうここには絶対にエースおじさん救出を手伝ってくれるであろう人物、パパとエースおじさんの義兄弟、サボおじさんがいるのである。
四年に一度、世界政府加盟国の国王たちの代表が集まり大会議をする
そんなわけでここへ来たのだけど、すっかり囲まれて厳戒態勢って感じだ。サボおじさんの記憶を戻して手伝ってもらうために、まずはここのボスに会いたいんだけど……うん、こんな時はママ直伝の必殺技を使うとしよう。
「革命軍総司令官ドラゴンに会いに来ました――私の美しさに免じて、案内してくれますよね♡」
可愛く微笑みながらウィンク。ロビンさんでさえ大概のことは許してくれるこの必殺技の効果は覿面だった。
「なんと美しい方だ♡」
「急いで案内して差し上げろ♡」
もはや武器を投げ捨て、メロメロになっているので、優しいお兄さん方が案内してくれそうだ。ここでこの人達を叩きのめしていれば、幹部クラスが出てきたとは思うけど、無駄な戦闘はしたくないからねぇ。
さあ、お祖父ちゃんに会いに行きましょうか。
◆
革命軍総司令官ドラゴンは私のお祖父ちゃんである。とはいっても一度も会ったことはなく、これが初対面なので凄く感動だ。そんなワクワクした私とは裏腹に、そのドラゴンお祖父ちゃんは入墨の入った怖い顔をさらに怖くして私を見ていた。
「何故バルティゴの場所が分かった?ここは政府ですら発見出来ていない程に厳重に秘匿している」
怪しげな侵入者に好戦的な警備部隊だったけど、可愛くお願いしたら心良くドラゴンお祖父ちゃんのところまで連れてきてくれた。勿論、この場には革命軍の現在本拠地に残っている最高戦力が集められているわけで、寧ろここの方が処理しやすいって考えもあってドラゴンお祖父ちゃんは、私に魅了された兵士を突っぱねずにここへ私を招いたんだと思う。実際、周りにいる人達はいつでも戦えるように準備をしている状態だ。
「このビブルカードを辿ってきたんですよ。対象者は――サボさんです」
「はぁ!?俺!?」
「どういうことだサボ」
革命軍の人間がビブルカードを作られたりしたら速攻で本拠地がバレてしまうので、活動時には髪の毛一本にまで気を使っている。勿論、知人であってもビブルカードを作らせるようなことはしないし、それが参謀総長という革命軍No.2のボジションにいるサボおじさんなら尚の事。
「サボくんまさか、この娘の色香に引っかかってビブルカード渡したんじゃ……」
「そんなことするか!こんな女あったこともない!」
「えー本当かなぁ、こんな美人に言い寄られたらサボくん簡単に騙されちゃいそうだけど」
「コアラは俺をどう思っているんだ!?」
サボおじさんがゴツいゴーグルをかけたワインレッドの帽子を被っている女の子に冷たい視線を向けられて大慌てしている。周りの革命軍メンバー、特に女性陣は同じ様な視線を向けているため、その慌て様は見ていて面白い。尚、男性陣の一部は羨ましそうな視線をサボに向けており、自分たちもその冷たい視線の対象になっていることには気がついていない模様。この人達はともかく、冤罪のサボおじさんが可哀想なので、助けてあげることにしよう。
「サボさんは私にビブルカードを渡したりはしていません!私がその……ベッドに残っていた髪の毛から勝手にビブルカードをっ」
「はぁああ!?ちょ、俺はそんなこと――」
「サボくんのスケベ!ケダモノ!」
あ、間違えちゃった♡
いやー、ちょっと慌てるサボおじさんが面白過ぎて口が滑ってしまいましたねぇ。女性陣はもうゴミを見るような目になっている。先程の帽子の女の子はサボおじさんをたぶん武術経験のあるしっかりとした拳でボコボコにして、男性陣は血涙を流して武器を手に取っている。あれ?やり過ぎたかもしれない。
「あ、今のウソなんで無しで」
「えっ!?そうなの!?」
「
顔をボコボコに腫らしたサボおじさんが涙を流しながらツッコむ。ウソップ直伝のウソだったんだけど、思ったより決まり過ぎたよ、ごめん!
「茶番は良い。お前が何者で、何故サボのビブルカードを持っている?」
ドラゴンお祖父ちゃんの一言で場が一気に引き締まる。皆、一様に真剣な顔で……いや、サボおじさんは殴られた女の子に膝枕されて治療を受けていた。
「複雑な話になりますので、まず事実だけを述べますと――」
私が何者か、ということを説明するためにはまず、未来から来たということを説明しなくてはならなくて。さらにビブルカードを持っていた理由も、サボおじさんが失っている過去の話をしなくてはならなくて、全部説明するにはちょっと複雑で長くなるので、この場はまず、分かりやすくキャッチーに重要な事実だけを話そう。
「――私が貴女の孫で、未来から来たからですね」
静寂。それがしばらく続いて……。
「「「はぁああああああああああっ!?」」」
バルティゴに天まで轟く程の驚愕が響き渡った。良いリアクションをありがとうございます。過去に来てから、なんだかもうその驚愕が楽しくて仕方がなくなってきた。
「よろしくお願いしますね、ドラゴンお祖父ちゃん♡」